俺を虜にした
責任は取ってくれ


「グレイ!」

が休憩に入ってすぐにタイミング良く廊下でグレイの姿を見つける。
彼は丁度数人の部下と話終わって別れた所らしかった。
グレイの姿を少しでも早く見つけられた事が嬉しくて、思わず満面の笑みを浮かべてしまう。
我ながら単純で分かり易い行動だ。
小走りにまでなってしまうなんて、何だかわかり易過ぎて自分に笑ってしまう。
グレイの傍に駆け寄ると、彼は瞳をフッと柔らかく細めて微笑んだ。

・・・、休憩に入ったのか?」
「うん、でも次の時間帯にはまた戻って仕事なんだけど、
多分こっちはそれもすぐに片付くと思う。・・・グレイは・・・やっぱり無理っぽい?」
「いや、それが今回は珍しくナイトメア様が数時間帯連続で仕事をして下さったんだ。
だから次の時間帯を過ぎれば、恐らくはいつもよりまともな休憩を取れるだろう。
それに・・・・そうでなければいい加減俺の身がもたないからな・・・」

言ったグレイが軽い溜息を吐いて苦笑する。
その表情には確かに疲労が滲んでいた。
瞬間的に吐血夢魔に対して怒りがこみ上げる。


みの虫!!芋虫〜!!・・・・・・・・よし、今度アイツの料理に薬をしこんでやろう・・・。
うん、それがいい。そうだ、そうだ。


今に始まった事じゃないのはもうよく分かってるけど、やっぱり許せない。
今回はそれなりに(直に見てなくてもあくまでもそれなりだと分かる)仕事をしたらしいけど、
今まで奴がもっとまともに仕事をしてくれてたらグレイだってこんなに疲れずに済んだ筈だ。
大体グレイは疲れていても人前で滅多にそれを悟らせる人じゃないんだから

「だよね。次の休憩はゆっくり休んで。もこっちの仕事が終わったら手伝いに行くし」
「いや、そうじゃないんだ」
「え?」
「俺は確かに多少疲れては居るんだが・・・、この程度ならば問題ない。問題なのは」

そこでグレイは言葉を切り、不意にの腰に腕を回して自分の方へと引き寄せた。
は驚きつつも、抵抗もせずにその腕にぽすりと収まる。

「えっと・・・、ぐ、グレイ?」
「・・・・・問題があるとすれば・・・・、君にこうして触れられない事だ」
「っ!!」

を腕に抱き、耳元に屈みこんで来たグレイが低く囁くようにそう言った。
耳朶を撫でる温かく湿った吐息にびくっと大げさにの体が震える。
同時にカァッと血が顔に集中するのが分かった。
一気に心拍数が上がる。


「おかげでナイトメア様に心を読まれ易くなってしまっている。
・・・さっきも仕事中だと言うのに、
君の事ばかりに気を取られていることを知られてからかわれたんだ」
「っ!!??」

プレイヤーの時の知識とリアルな体験とでグレイにそう言う部分があるのは知っていたつもりだったけど、
こうして彼の口から告げられるとこっ恥ずかしくて嬉し過ぎてどう言う顔をしたらいいのか分からない。
は顔を真っ赤にしたまま妙にあたふたとした行動を取ってしまった。
恋人の腕の中と言う甘い空気の中だと言うのに挙動不審にも程がある。

「・・・・・・・くくっ、君は・・・顔が真っ赤だな」
「〜っ〜っ!だ、だだだ、だって、グレイがそんな・・・!そんなこと言うから・・・!」
「そんなこと?・・・俺は本当の事しか言っていないぞ。情けないことに、
長時間君に触れないと、集中力まで乱されてしまうんだ」

ちゅ、と、わざと音を立てて耳朶にキスを落とされる。
はそこでようやくここが廊下だと言う事実に気付き、慌てて身を離そうと抵抗を試みた。

「グ、レイ・・・!」

恥ずかしさの余りに声が震える。
幸い周りには誰も居ないけど、いつ誰が通りかかるか分からない様な場所だ。
だけどそう思っている割に抵抗する腕に力が入ってないのも事実で。

「ま、まだ仕事中なんだよね!?そうだよね?」
「・・・君は、俺に早くここから立ち去って欲しいのか?」
「そうじゃなくて!」

そんな訳がない。
だってグレイに会いたくて会いたくて仕方なかったんだから。
だけどここは廊下だ。
それとこれとは別問題と言うか。
これを知り合いに見られた日には恥ずかし過ぎて羞恥心で死ねると思う。
でもそんなことを考えながらも、グレイの腕を本気で振りほどけない自分が居る

「・・・・そ、そんな訳ない!け、けど・・・」

ううー、と、何とも言えない唸り声を上げてしまう。
はこの人の前だと必要以上に挙動不審になり、子供っぽくなってしまう。
頼りがいのある大好きな恋人で、凄く落ち着くのに、同時に全然落ち着けない。

「・・・・、もう少し充電させてくれないか。
・・・後もう少し、君と離れて仕事をする気力を俺に与えてくれ」
「・・・え?・・・・・・っ・・・・ン!」

耳元に触れていた唇が突然の唇に触れる。
上唇を柔らかく啄ばまれ、瞬間的には硬直してしまった。
たったそれだけのことで思考回路が溶けてしまいそうだ。



ここは廊下なのに、廊下なのに、廊下なのに!!・・・廊下、だけど・・・・・・・・・・・・・・・・・
いやいやいやいやいや、駄目だろ、ダメダメダメ、だ、め・・・・・・・。


「んぅ・・・」

甘くの唇を食むグレイのキスに、鼓動が爆音を上げ、思考回路はあっという間に蕩けた。
気付かない間に自分自身も彼のキスに応えようと必死で踵を上げ、両腕を背中に回している。
あり得ない。
こんな、誰が来るとも分からない場所で、こんなキスをするなんて。
だけどもうそんな理性的な考えはぶっ飛んでしまっていた。
苦い煙草の味の口付けに溺れてしまう。
グレイの濡れた舌との舌とがねっとりと口内で絡まり合う。
このままずっとこうして居られればいいとまで思ってしまう。
完全にイった状態だ。


「・・・・・・・・・・・・そろそろ戻らなくてはならないな・・・」


お互いの唇がゆっくり離れると、名残の雫がの唇から溢れた。
グレイはそれを舌で舐め取り、吐息と一緒にそう呟いた。



「・・・・・・・ルイ、俺を虜にした責任は取ってくれ」



濡れた唇でグレイがいつもとは違う、どこか悪人っぽさを含んだ艶やかな笑みを浮かべた。


――――――――――――ドクンッ


ひと際大きくの心臓が跳ねる。
この続きはまた後でな。
そう耳元で囁いて、グレイはの傍から離れて行った。



――――――――虜にした責任、なんて。



それはこっちの台詞だし!!
は心の底からそう叫びたい気分だった。


(END)



アトガキ
グレイが始終くっさい台詞を連発した感じになっちゃったかな(笑)。
久しぶりにトリヒロAを書いたんで、最初はちょっと書き辛くなってるかな?
と思ったんですが、・・・いやーノッてくると全然そんな事ありませんでした。
お相手がグレイってことも有って割と素直な方向に動かし易かったですし、
極甘とはいかないまでも中々甘い仕上がりに出来たのではと・・・自分では思います。
―――が、いかがでしたでしょうか?
リク下さった方のご要望にきちんと応えられて居ればいいのですが・・・。
ではでは、水瀬様、そしてこれを読んで下さった姫様、大変感謝なのです!失礼します。
『ぼくを虜にした責任は取ってね』 Title by 群青三メートル手前

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