お手上げです、
きみ達には敵いません。
「――――・・・で、・・・の、・・・・ました。
・・・そして、王子様は悪い魔女の罠にかかってしまったのです・・・。
・・・・・・馬鹿だなー、この王子ってヤツ、
こんな見え透いた罠に引っ掛かるなんて相当間抜けだよ。ねぇ兄弟」
「本当だね、兄弟。この程度の罠に簡単に引っ掛かっちゃうなんて、
王子なんて大したことないよね」
「全くだよ、兄弟。それにこの魔女もだ。
罠ってこんなちゃちい物しか用意できなかったのかな?」
「うんうん、僕らだったらもっと凄い罠を仕掛けて、
こんな間抜けな王子なんか一気に叩き潰しているよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二人はそこで王子をどんな罠にかけてやるか、
きゃっきゃとはしゃいだ様子で話し合い始めた。
読書を初めて1時間弱。
彼らは始終こんな感じで、
登場人物たちの行動にいちいち物申しては物騒な話に持って行っている。
はで最近購入したばかりの続きものの文庫本を読んでいる訳だが、
双子達がこんな様子なおかげで読書に集中できないで居た。
気にしないように、気にしないようにとは思うのだが、
いかんせん彼らとの距離が近すぎる。
と言うよりも、寧ろ、読書をするにはのこの位置は余りにも不自然だった。
達が座っているソファは三人掛け。
はその中央に座らされており、左右に双子が座っている。
つまり、明らかに一人で読書をしようと言う位置ではない。
双子に本を読み聞かせているのがならばまだ納得のいく状況だが、
さっきも言った様にはで別の本を読んでいて、
双子は双子でひとつの絵本を広げてお互いが交互に声に出して続きを読んでいる様な形だった。
しかも、当然の様にの膝にその絵本を載せた状態で。
「―――――――――・・・が、・・・と言いました。こうして、
王子は悪い魔女の罠を使って魔女を倒すことに成功したのでした。
・・・・・・・・うわー、この魔女、救いようのない馬鹿だね、兄弟。
自分で作った罠に自分が嵌められちゃったよ。しかもこの間抜けな王子に」
「信じられないね、兄弟・・・。だから最初から詰めが甘かったんだよ、コイツ」
「うん、兄弟の言う通りだ。
大体罠自体がちゃちな物なのに詰めも甘いなんて悪役の風上にも置けないよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・、あの・・・トゥイードル様方・・・」
「うんうん、悪役でその上魔女のくせに恥ずかしい奴だよね」
「・・・・あの、すみません、お二人とも」
「魔女って言う位なんだから魔法でこの程度の人間吹き飛ばすくらいして見せて欲しいよ」
いい加減この体勢も限界だ。
そう思って二人に声を掛けてみるものの、双子達はの声に全く反応してくれない。
魔女の不甲斐無さについてを熱く語ることにすっかり気を取られてしまっているらしい。
だが、この位置での声が聞こえてない筈はない。
はスゥと軽く息を吸い込み、さっきよりも大きめの声で二人に呼びかけることにした。
「トゥイードル様達!!!」
「「わっ!?」」
の左右に居た二人はほんの僅かな差も見せず、
全く同じタイミングで同様の仕草での声に反応した。
そしてまた同時に左右からを睨みつけて来る。
「ルイ!お前、急に大きな声なんか出すなよ!」
「そうだよ!そんなに大きな声を出さなくたって聞こえているよ!」
「・・・・・・・・・・、いや、だったら返事して下さいよ」
は二人の答えに思わずがっくりと項垂れた。
聞こえてはいるんだろうと言う前提ではあったけど、
それにしたってこの反応はどうなの。
「うるさいな。僕達は今読書を楽しんでいるんだ。邪魔するなよ」
「そうだ、そうだ。僕達は今読書を楽しんでいるんだ、邪魔するなよ」
「じゃあせめて場所を変わって頂けないでしょうか?
ご覧の通り、もで読書の最中なので」
口元をひくりと引きつらせつつ、それでもはどうにか笑顔で双子に答える。
とは言え、そう簡単に双子がの申し出を受け入れるとは全く思っては居なかった。
そして案の定、ディーとダムは即座にの言葉を却下する。
「駄目だよ、この本はお前の膝に置くのが一番いい位置なんだから」
「そうだよ、駄目に決まっているよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
絵本は結構大きめなものではあるのでの膝に置いたとしても双子が読めない事はない。
現に今の今まで声に出して読んでいたんだから、きちんと見えてはいるんだろう。
だけど、ここが一番いい位置だと言われるほど絶妙な場所かと言うと、ハッキリ言ってそれはない。
の膝に置いて彼らがそれぞれ左右から覗き込む形になっているので、
余計な人間(つまりこの場合)一人分、本と双子に距離が出来てしまっているのだ。
さっきも言った様に、
これが自身が双子に本を読み聞かせていると言う状況ならまだしも、
そうじゃない今の場合は不自然な位置過ぎる。
「ねぇ兄弟、だけどそろそろ読書も飽きて来ちゃったね」
「そうだね、兄弟。この王子も魔女も間抜けすぎるし、
僕もそろそろ飽きてきちゃったよ」
「お姉さんが秋の夜長は読書をして過ごすのが一番いいって言っていたからそうしたけど、
もう十分なんじゃないかな?僕達きちんとお姉さんの言うように読書はしたんだから」
「うんうん、僕達もう十分読書を楽しんだよね、兄弟」
を挟んだまま、双子は会話を進める。
そこはかとなく嫌な予感を覚えたは、僅かに腰を上げた。
「では、もう本を置く場所は必要ありませんよね。
は一人で読書を続けさせて頂きますので」
――――瞬間。
ガシッ
ガシッ
左右からディーとダムの手が伸びて来たと同時、彼らはの腕を掴んだ。
そして、強引に再びソファへと座らされる。
その拍子にの手から文庫本が床に落ちてしまった。
因みに、双子がの膝に乗せていた絵本はいつの間にかテーブルの隅に押しやられている。
「、誰がお前に動いていいって言ったんだよ!」
「そうだよ、僕らの許可なしに勝手に動くんじゃないよ」
「つまりは読書・・・・・・・・、させて頂けないんですね」
ハァーーーー。
思わず深い溜息を吐いてガックリと項垂れながら、
それでもある意味予想通りなので、もうこうなったら彼らに従うしかないと早々に諦める。
だが、ここで二人は思いがけない返事をして来た。
「別にお前が読書したいならすればいい。ほら、本」
言ったディーが床に落下したの本を拾い上げ、差し出して来る。
その行動と返事に驚いてぽかんとした表情を受けべていると、
ダムが軽く肯いて更に言った。
「うん、勝手に読んでいればいいよ。ほら、早く受け取りなよ」
「・・・・・・・・・・は、はい・・・」
な、何?何なの?
何?何?この反応は何!?
本来なら普通に喜ぶべきところな筈なのだが、
相手が相手だけに何を企んでいるのかと身構えずには居られない。
ディーが差し出した本を恐る恐る受け取りつつも、は二人の次の行動を警戒する。
「何を見ているのさ?僕らを見ていないで、お前は本を読むんだろ?」
「そうそう、はこの場所から動きさえしなければ、
本でも何でも好きなように読めばいいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・はい」
は二人の言葉にぎこちない動きで頷き、
ついさっきまで広げていたページをもう一度捲り直した。
そうしつつも、左右に座っている二人の存在を今まで以上に意識する。
何をする気だ、何をしようとしてるんだ。
ときめきと言う類とは全く違う方向にどきどきが止まらない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
それからは双子達に対する警戒を緩めないままで読書をする
その間も彼らはジッとを観察するだけで、特に何か仕掛けてくる様子はない。
だが、だからこそ怪しい。
何の行動も起こさないことこそが怪し過ぎる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
本の内容なんか実は全く頭に入っていないけれど、
はそれっぽい速度でページを捲ろうとした。
その時―――――――――――
「っ!?」
不意に双子が行動を起こした。
左右に居る二人が同時に、の体のあちこちをぺたぺたと触り始める。
「えっ!?あの、ちょっと待って下さい!トゥイードル様方・・・!?
な、何をしてるんですか!?」
「僕達は僕達の好きな事をする。だからは読書を続けて居ればいい。
僕達は心の広いイイ子だから、お前の楽しみを奪ったりしないよ。ね、兄弟」
「その通りだよ、兄弟。僕達は僕達の、はのしたいことをすればいいんだ」
言っている間も彼らはに触れることを止めない。
ぺたぺたぺたぺた。
二人の少年の手がの体のあちこちに触れる。
無意識にの頭の中に画面越しに見たアリスと双子のとあるシーンがフラッシュバックした。
に触れる手つきは子供が無邪気にじゃれる様な感覚なのに、
触る範囲には全く容赦がない。
胸元だろうが太股だろうがぺたぺたととにかく触る。
しかもいつの間にか左右から伸びて来た手に脚を広げさせられている様な状態で、
メイド服にもかなり乱れが生じてきている。
慌てて両脚を閉じながら、は悲鳴に近い声を上げる。
「ま、待って下さい!ちょ、無理です、この状態なし!無理ですから!」
「何でだよ?何で無理なんて言うんだよ?
まさか僕達に触られるのが嫌なんて言うんじゃないだろうね?」
「ええっ!?お前、僕達に触られるのが嫌なの!?」
何故か『驚愕』と表現していいほど驚く二人。
この状況で何故彼らの方がそこまで驚けるのか、此方の方が不思議だ。
「いえ、あの、嫌とかそういう問題ではなく・・・」
「じゃあ何だよ?」
「そうだよ、何が不満なの?僕達はお前に読書する事を許してあげたって言うのに」
「こ、こんな状態じゃ読書は無理です」
いや、既にかなり前から読書しているとは言い難い状況だったが、
それにしたって今はもう本当の本当にそれどころじゃない。
双子はジッとを見つめた後、揃ってニヤリと少年らしからぬ笑みを浮かべた。
「だったら僕達に付き合いなよ。本に飽きたのなら、僕達と楽しめばいいんだ」
「うんうん、本に飽きたのなら、僕達と一緒に楽しめばいいよ。こんな風に・・・」
「っ!?」
後半。
ディーの声が唐突に少年のものから青年のものに変わったかと思うと、
その唇が突然のものと重なった。
更なる急展開過ぎる状況に、の目が瞬間的に点になってしまう。
柔らかく触れ合っただけのキスで終りはしたものの、
こうなるまでに至る経過が余りに余り過ぎて茫然とした。
「何を間抜けな顔をしているのさ。本を読むより僕らと一緒に楽しみたいんだろう?」
「本なんかより、僕らとこうしている方が楽しいと思ったから、
読書は無理だって言ったんだよね?」
―――――――断じて違います!
そうハッキリと口に出来なかったのは、彼らが言った台詞でが気付いたからだ。
二人が、どうして突然こんなことをし始めたのか。
恐らく、これがアリス相手ならば双子は素直に口にしていた筈だ。
本を読むよりも、僕達に構って欲しい、と。
子供特有の愛らしさを存分に発揮して、それを武器にして素直に彼女に告げていた筈。
そう、画面越しに見た双子とアリスがそうだったように。
だけど今、彼らの恋人としてここに居るのはアリス=リデルじゃなく、だ。
そしては、彼らにとって恋人である以前に特別な玩具だった人間。
いや、現在進行形で恋人であり玩具でもあると言う、恐ろしく特殊な相手だ。
そんなに彼らが可愛らしく自分達の欲求を告げるなんて、滅多にない事。
でも、双子の行動からみて、まず間違いなくの勘は当たっている。
「・・・・・そうですね、は・・・読書も好きですけど、
ディー様やダム様と過ごす方がもっと好きですよ」
「「・・・・・・・!」」
の言葉に、二人の顔が分かり易く明るくなった。
だけど、同時にそれを素直に表せないで居るのも分かる。
「そんなの当たり前さ。、忘れるなよ、お前は僕達の物なんだからな」
「そうだよ、お前は僕達の物なんだ。何より一番に僕達の事を考えるのは当然さ」
双子の頬は赤く染まり、口元には笑みが浮かんでいる。
それでも二人は、何処か素っ気ない態度を装うとしていた。
それがまたおかしくて、そしてそのある意味でおかしな素直さが可愛くて、
は吹き出してしまいそうになるのをどうにか堪えた。
その代わりに、双子それぞれの頬に軽いキスを落とす。
「「」」
二人が揃っての名前を口にし、左右の頬に柔らかな感触を与えられた。
ディーの手がそっとの手から文庫本を抜き取り、それをテーブルに置く。
ダムはそれを確認した後、の頬に手を添え、今度は唇にキスをしてきた。
「ん・・・」
やわらかく触れ合っただけの口付けが、あっというまに濃厚なものになる。
ダムの節くれだった大きな手が再び弄るようにの太股を撫で、
更にディーの手が乱した衣服の下から入りこみ、直接肌に触れて来た。
「秋の夜長に本を読むだけなんてつまらないよ・・・。
こうやって、三人一緒に楽しまないと・・・」
耳朶に唇を寄せて来たディーが青年の声で低く囁く様な口調でそう言い、
ちゅ、と音を立ててその場にキスをする。
同時にその手はの胸をやわやわと揉みしだいていた。
の体に熱が蓄積され始める。
その間にダムは僅かに唇をずらすと、
の唇から溢れた二人分の唾液の混ざった雫を赤い舌でねっとりと舐め取った。
「そうだよ・・・、一緒に楽しむんだ・・・。僕と、兄弟と、・・・勿論、・・・お前とね?」
ダムの濡れた唇が僅かに弧を描く。
その様子を蕩け始めた思考でぼんやり眺めている途中、不意に、の体がふわりと浮きあがった。
「そう言う事。じゃあ、ベッドに移動しようか、兄弟」
「っ!?」
いつの間にそんな体勢になっていたのか、ディーがの体を横抱きにして立ち上がっていた。
今度は驚きの余りには茫然としてしまう。
だが、当然のように、抵抗する気なんて起きる訳もなかった。
の気持ちなんて、とっくに決まってしまっている。
いや、恐らく決まっていなくても、彼らに敵う訳なんかないのだけれど。
「うん、そうしよう、兄弟。このソファは・・・三人で楽しむにはちょっと微妙だしね」
「うん、うん。やっぱり三人じゃなきゃ意味ないよ。そうだろう?」
「・・・・・・・、勿論です、ディー様、ダム様」
苦笑しつつもはしっかりと頷く。
画面越しに見ていたあの頃より、今の状況がどんなに特殊なのかも十分理解している。
そして、あの時見たアリスの苦労がどれ程のものかなんて、実体験済みだ。
だけどその全部、受け入れようと思える位、
どんなことがあっても、結局この二人には敵わない。
の愛しい恋人達。
(END)
アトガキ
またまたなんがああああ・・・!(苦笑)。
でも最初の絵本にいちいち茶々を入れる二人はどうしても書きたかったんです。
因みに絵本の内容は私がテケトーに考えた(内にも入らない)物です。
秋の夜長に読書と言うのがリク内容だったので、
ジョーカー設定で最後は青年な双子も登場させてみましたが、
その辺ちょっと描写を入れていないので分かり難かったかもです、すみません。
しかも最後位まで余りいちゃ甘して居ないと言う・・・。
ですが、愛情は標準装備のてんこ盛り!お気に召して頂ければ幸いです。
ではではリク下さった匿名様、そしてここまでお付き合い下さった姫様!
誠に有難うございますー。感謝感謝なのですv
Title by 群青三メートル手前