無理、もう限界

「遅くとも7時間帯後には戻って来る。戻って来たら俺は真っ先にあんたに会いに行くから、
だからその頃には絶対屋敷に居てくれよな!」

そう言ってエリオットが仕事の為に屋敷を出て行ったのは5時間帯前。
はその間他の使用人達と一緒に仕事をして過ごし、たった今休憩に入ったばかり。
時間帯の巡り的に見てそろそろエリオットが戻って来るかも知れない。
今回は一時間帯ずつの時間がそれなりの長さがあったし、
仕事内容は知らないけど(何となく想像は出来るけど詳しくは聞こうとも思わない)、
エリオットの口ぶりからするとそこまで手間のかかるものでもないみたいだった。
勿論、簡単って訳でもなさそうだったけど。
はお風呂に入る準備を整えると、
エリオットが戻って来る前までの時間潰しとリラックスの為にバスルームへと足を運んだ。
ついさっきまで掃除をしてたせいで体がちょっと埃っぽく感じる。
とは言え、御屋敷内は腕のいい使用人達がいつも掃除しているからそこまで汚れてるって訳でもないんだけど、
それでも何となくそう感じるのは気分の問題かもしれない。
まぁ、どうせ時間帯が変われば服は元通りだし、問題ないと言えばないんだけど、
時間が変わるまでどの位かかるか分からないし、汗もかいてる。

「あれ〜?さん、お風呂に入りに行くんですか〜?」
「あ、うん。そうそう。皆仕事してる間にごめんね」
「そんなぁ、さんは休憩に入っているんですから〜、気にしなくていいんですよ〜」

バスルームに向かう途中。
仲のいい同僚に話しかけられて、は一時的に廊下で足を止めた。
この屋敷内の使用人達は本当に主と同じで揃いも揃ってユルイ空気を纏っている。
画面越しではよく分からなかったけど、喋り方だけでなく、雰囲気までもがゆるだるな感じだ。
それでもテキパキ仕事をこなしてたりするからまた凄い。

「ふふふ〜、そうですか〜・・・今から、お風呂なんですね〜」

彼女は何故か意味深な表情を浮かべつつ、そう言った。

「?うん、そうなんだけど・・・・。ああ!もしかしてお風呂掃除してたりする?」
「いえいえ〜、違います〜。大丈夫ですよぉ。
それより、お引き留めしてすみませんでした〜、お風呂・・・楽しんで来て下さいね〜?」

どうやらお風呂掃除の最中と言う訳でもないらしい。
そう言ってにやにやした感じの笑みを浮かべた同僚は、
これまた何となく意味深な言葉を残して去って行った。
は?マークを浮かべつつも、またバスルームに向かって足を進める。
が同僚の彼女の言葉の本当に意味を知るのは、バスルーム内に足を踏み入れた、その後の事だった。






―――――ガラリ。


!」
「・・・・・・・・へ!?」

バスルームのドアを開けた途端。
聞き慣れ過ぎた声に名前を呼ばれ、思わずキョットーンとした顔でその場に立ち止まる
視線の先にあるバスタブに居るのは、間違いなくエリオットだった。

「ええっ!?エリオット!帰ってたの!?」
「おう!本当はすぐにあんたの所に行くつもりだったんだけどよ、
その・・・・あんた、血とか苦手だろ?
俺、ちっと仕事で汚れちまってたから、きちんと風呂に入ってからって思ってよ」
「そ、そうだったんだ・・・・・」

そろそろ帰って来る頃だとは思ってたけど、
まさかこんな所で顔を合わせることになるとは思ってもみなかった。
そこではハッとして思い出す。
ついさっき、廊下で会った同僚の彼女。
その意味深な笑顔と台詞のことを。


こ。
これかあああっ!!
このことだったんだ・・・!
って言うか、知ってるんなら教えて欲しかった・・・。


もしも知ってたら、は部屋の備え付けのシャワーで手早く済ませて、
そのままエリオットがお風呂から出て来るのを待ってたのに。
彼女はここにエリオットが居るのを知っていて、わざと教えてくれなかったに違いない。
さすがはブラッドの部下。
あのにやにや笑いの意味も色んな意味で理解出来てしまった。

「なぁ、いつまでそこに立ってるつもりだ?中に入ってこいよ」
「えっ・・・!?う、あー・・・・」
「ほら、早く来いって!」

来い来い、と、バスタブからエリオットがを手招きする。
はうーとかえーとか言って迷いつつ、結局小さく頷いてバスルームの中に足を進めた。
実はエリオットとはつい最近恋人同士ってヤツになったばかりだ。
だからこんな状況とは言え断る理由もないと言えばないんだけど、
プレイヤー時のアリス視点の時と違って、
とエリオットはまだキス以上のこと(・・・・・・・)をしてる訳じゃない。
それっぽい感じになったことは何度かあったけど、
エリオットの仕事が忙しかった事とか、
双子の乱入とか、ブラッドの呼び出しとかで最終的には先に進まなかったことばかり。
それなのにいきなりこのぶっ飛んだ展開。
さすがにもちょっと腰が引けてしまう。


い、いやいやいや、待て待て待て、
べ、別にまだそう(・・)と決まった訳じゃないし!


そう言っては心の中で無理に自分を納得させる。
そうだ。
以前も何度かブラッドや双子、それにエリオットと帽子屋一家の皆とお風呂場で顔を合わせた事もある。
あの時も最初はかなり驚いたけど、結局普通にわいわい楽しんで終った。
だから今回だって特に何もなくお風呂に入って会話するだけで終るかもしれない。
とは言え、今は二人きりで、しかもとエリオットは恋人同士。
皆が居る時とは状況が全く違う。
そう考え直してしまう自分に、はまたしてもツッコミを入れる。


いやいやいやいや!何考えてんの!
これじゃあが期待してるみたいじゃないか!


、どうしたんだ?早く入って来いよ」
「あ、う・・・うん」

バスタブに入る前に軽くかけ湯をし、その姿勢のままあーだこーだと考えていると、
エリオットがそう言ってを急かした。
はぎくしゃくした動きで頷き、エリオットから少し離れた場所からお湯に入ろうとする。
すると、彼の方からの傍まで近づいて来た。

「っ!?」
「来いよ、

言って、エリオットが立ちあがり、更にに向かって両腕を差し出してくる。
これはもしかして、もしかしなくても、そこ(・・)に来いと言ってるんだろうか。

「えーっと、あの、エリオット・・・?」
「何だ?あー、いいや。話なら風呂の中で聞くぜ。・・・・・・だから、ほら、焦らすなよ」
「う、あ、・・・・・・・・・・ハイ」

結局は観念して、機械人形みたいな動きで彼の両腕の中に収まった。
正面に向かい合っているとバスタブに浸かり難いから、背中から抱きしめられてる形で。


・・・・・・・・・・・・思いっきりどっかで見た構図なんですけど!!!


思い出した。
思い出してしまった。
プレイヤー視点で見た時にエリオットとのイベントで見たお風呂のワンシーンだ。
まさか自分自身がそれを体験する日が来ようとは思いもしなかった。

「ああー!あんたをこうして思いっきり抱きしめられんの、すっげー久しぶりだぜ」
「ここ最近結構仕事ばっかだったもんね、エリオット。・・・・・これから少しはゆっくり出来るっぽい?」
「ん?ああ、そうだな。今回はブラッドが少し長めの連休をくれたんだ!ホンット、アイツは最高の上司だぜ」
「・・・・・・・・・・その分こき使ってると思うんだけどね。でもまぁ・・・連休になったなら良かった」

エリオットが普段通りの態度で会話を進めてくれるから、もホッとして体の力を抜いた。
だけど背中に直に当たるエリオットの硬い胸板の感触と、
の体に絡められた両腕のことを完全に意識外に飛ばす事はどう考えても無理だった。

「本当は風呂なんてさっさと済ませちまってあんたの所に行こうと思ってたんだ。
だけどここに居て正解だったな」
「え、け、けどエリオット、お風呂は好きよね?」
「ああ、風呂は好きだぜ。けど、あんたに会うことに比べたら、そんなもん関係ねぇよ」

言いざま、エリオットはの体に回した腕にさっきより力を込めた。
そして、首筋に唇を埋めて来る。


ど  く  り  。


既にばくばくと脈打っていたの心臓が、その直後にひと際大きな音を立てて鳴った。
が硬直して驚いている間に、エリオットの大きな手がゆっくりとのタオルをはぎ取る。

「っ!え、エリオット・・・!?」

全く予想して居なかったことじゃないとはいえ、余りの急展開には呼吸を止めた。
後ろから前に伸ばされた彼の手が、胸の膨らみを下から持ち上げる様に少し荒っぽく揉んでいる。
その指の動きに沿ってぐにゃりと形を変える自身の体の一部。
銃を何度も使用したことで出来るエリオットの掌のまめの感触までそこから伝わってくる。
それがいやらしくて、生々しすぎて、の全身の血が沸騰し始めるのが分かった。

「ちょ、・・・・ちょっと、エリオット・・・!」
「安心しろ・・・今回は誰にも邪魔させねぇ・・・・・」

耳元で低く囁いたエリオットが指先での胸の突起を転がす。

「あっ・・・」

ビリリと感じた電流みたいな感覚に、は思わず小さく声を漏らした。

・・・すっげー・・・可愛い・・・」

エリオットは微かに笑いを含んだ声でそう囁く。
密着していることで、腰に一番近い位置の感触からエリオットが今、
どれだけ昂って来てしまっているかがにもよく分かった。

「だ、だだっ、駄目、だって・・・!・・・・誰か、来るかも・・・しれな・・・」
「来ねぇよ・・・・。来ても、邪魔なんかさせねぇ・・・」

熱い吐息がの耳元を掠める。
それは肉食獣の息遣いのような何処か荒々しさを感じさせるもの。
忘れてた訳じゃないけど、エリオットはウサギのくせに、こう言う一面を持ってたんだった。
そんなことを考えている間も、彼の手は容赦なくの胸の弄っていた。
ぴたりと重ね合わせられたお互いの肌がお湯につかっていると言う理由だけじゃなく、
熱いと感じる位に体温を上昇させてる。

「ぶ、ラッドは来ないとしても・・・、双子、とか・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・あんたは、誰かに邪魔して欲しいのか・・・?」
「えっ・・・・!?や、・・・・・・・・そ、れは・・・」

邪魔されたい訳ない。
本当はだって、望んでた事でもあるんだから。
だけど、ここはヤバい気がする。
さっきもエリオットに言った様にブラッドはあんな人だから色々察して入ってこないと分かってるけど、
双子はある意味分かった上で乱入して来そうだし。
っていうか、実際何度か乱入された経験があるし。

「・・・・・・・・俺は・・・もう無理だ・・・」
「え?」
「これ以上我慢できねぇ・・・・。限界なんだよ・・・。ずっと、あんたを抱きたいって思ってた・・・」
「え、エリオット・・・・・・・・!」
「なぁ、焦らさないでくれよ・・・・・、
「ぅんンっ・・・!」

熱を含んだ吐息交じりのエリオットの低い声。
その声にの理性がぐらりと揺らいだその瞬間。
噛みつく様なキスをされていた。
それは本当に、獲物に喰らいつく肉食獣みたいな感じ。
唇から強引にねじ込まれたエリオットの熱い舌が、の口内を荒っぽく蹂躙する。
彼のオレンジ色の髪がの肌を捕らえる様に頬や肩に張り付いた。

「・・・・・ふ、・・・・ァ・・・」

胸元を激しく揉みしだいているのとは反対のエリオットの手がの腹部をゆっくりと撫で、さらに下降していく。
その先の行動を予想して、は無意識に体を震わせた。
お湯の中で動いているエリオットの手の指先の感触が、の思考を奪って行く。
彼の熱い舌がぬるりと、の唇を舐めた。


「・・・・・・・・・もうあんたがどんなに止めたって・・・、待ったは聞かねぇ・・・。
あんたが、欲しくて欲しくて欲しくて・・・、俺は、気が狂っちまいそうだぜ・・・」


欲情の色を濃く滲ませたエリオットのその声と台詞で。
は完全に、落ちてしまった。





「・・・・・・、大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・・・ううー、・・・無理・・・もう限界・・・」

言って、はベッドの上でぐったりと横になる。
ここはエリオットの部屋。
あれから湯あたり寸前、いや、正直それを通り越すまで達はバスルームで過ごしていた。
気付けば2時間帯近くあそこに居たんだから信じられない。
それもこれもあれも、このうさぎの姿をした肉食動物のせいだ。
まぁそりゃ、全部が全部エリオットのせいって訳じゃないけど、
でもは途中で何度ももう止めて欲しいと彼に頼み込んだ。
それでも最初の言葉通り、止めてくれなかったのはエリオットの方で。
結局、本当に動けなくなったに服を着せてここまで運んでくれたのもまた、エリオットなんだけど。

「わ、悪い!このとーりっ!だから許してくれよ、
俺、あんたが可愛くて、好きで・・・。だから・・・・我慢できなくなっちまったっつーか・・・」
「うぅうー」

唸り声を上げつつ、ベッドの端に座るエリオットに視線を向ける
彼は平謝り状態で、床に着くんじゃないかと言う位に長い耳を垂れ下がらせていた。
そうだ。
ついさっきまで百獣の王も真っ青だったくせに、今この瞬間。
彼は大きな体のくせに、リアルにちっちゃなうさぎさんになっている。


で、デタあああ!!・・・・・・・・・・・・は、反則技・・・・・・!


反則。
まさに反則だ。
恋人同士になるより前から、今まで何度、これに抗えなくて彼の数々のご乱行を許してきたか知れない。
今度こそ強気な態度に!と思っていても、この姿を見せられると何も言えなくなる。

「・・・・・・・・・・、俺のこと、嫌いになっちまったか?」

しょぼぼーーーーーん。
擬音語までがついていそうなエリオット。
はハァ―――っと、深いため息を吐いた。
それをどう取ったのか、エリオットがハッとして今度はさっきより更に更にさらーーに落ち込む。
まるでこの世の終わりを告げられたみたいに。

「わぁ!?ちょ、違うから!今の溜息はエリオットのことじゃなく!いや、そうなんだけど、
あんたが思ってるのとは違うからね!?」

何でだ。
何での方がこんなに慌ててるんだ。
だけどこの可愛いうさぎさんを放っておくなんてには出来る筈もない。

「ほ、本当か?本当に、あんた・・・」
「うん。・・・・・・・・ってわああああ!?」

がばっ。
エリオットは唐突に、ベッドに横になっているの上にダイブするように覆い被さって来た。
ガタイがいい上に長身の彼が勢いよくの上に乗っかったのだ。
は思わずぐぇっと女ではあるまじき声を上げた。
だけどこれはのせいじゃない。
断じてのせいじゃない。
これだけ弱り切ってる人間にこの仕打ち。
可愛いうさぎさんだからと言って許せることでもなく。


!!あんたって、ほんっと可愛いぜ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」


言いざま、ぎゅうっとを抱きしめるエリオット。
ああー、ってマジで馬鹿だなー。
なんてしみじみ思いつつ、許せることでもないと思ってた事をまたまたまたしても許してしまう。
なでこ、なでこと彼のふわふわのオレンジ色の髪を撫でながら。
は思わず苦笑した。



このうさぎからは、この先もずっと振り回されていきそうだ。


(END)


アトガキ
久々にエリオットお相手で執筆致しました!以前リクでブラッド夢を書かせて頂きましたが、
その際と同様にお風呂でドッキリ☆ネタで思い浮かんだのでエリオットおんりーVerとして執筆。
久しぶりの割にスイスイ書けたんですが・・・、 ただ、終わりがずっと前に書いたエリオット夢を大分被ってしまいました(苦笑)。
と言うか、流れも被ってる!?・・・・・・・・・・書き終えてから気付きましたので、どうかお許し下さいませ。
強引でケダモノなエリオットが最終的にうさぎさんってのが個人的に気に入ってる私です。
御題の台詞は何気にエリオットもヒロインも口にしてたりします。意味は違いますけども(笑)。
ではでは、今回リクエスト下さいました硲様!誠に有難うございます!
そしてここまでお付き合い下さった姫様にも深く感謝です!

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