「・・・・・・・・・・・ん・・・・ん?――――?
・・・・・・・・・・・・なっ・・・!?なっ、何をしているんだ!?お前は!?」
「わお、ユリウスお目覚め?こんばんわ、さん、来ちゃった。」
時計塔。
深夜。
ユリウスは自室のベッドで睡眠を取っていた。
仕事に重きを置き、常に仮眠で済ませる彼にとって、
こうして寝間着を身につけベッドで眠る事など久しくない。
重度の疲労に襲われやむを得ず長時間の睡眠を必要とする場合などを除き、
彼が気まぐれにベッドで本格的な眠りを欲する事は極稀な状況だと言えた。
そして、ユリウスは今まさに、その稀なケースによって眠りについていたのである。
だが、彼は現在それを激しく後悔していた。
原因は無論、ユリウスの知らぬ間に彼のベッドへ侵入し、それのみならず、
彼の上へ覆いかぶさってきているにあった。
彼女は全く悪びれた様子も見せず、常通りの軽い口調で更に続ける。
「また当分の間お世話になろうと思って、宜しくね。」
「、お前はまた何を勝手に・・・っ、いや、その前に早くそこからどけ!
まったく、い、一体何を考えているんだ!?お前は・・・!」
「ユリウスの寝顔があんまり可愛くて、さん我慢できなくて・・・。」
言いざま、彼女は更に彼へと身を擦り寄せ、更に至近距離まで彼の方へと顔を寄せる。
ユリウスはそれから逃れようと、片手で己が身を支え、壁際へと背中を押しつけた。
だが、それを予測していたと思われるは、
彼が逃れようと身を動かす様を楽しげな表情で見つめている。
無論、その間も密着した肢体を離そうとはしなかった。
「いつも思うけど、ユリウスって肌が白いわよねぇ。きめも細かいし。」
くすくす。
小さく笑いを洩らしながら、は指先を彼の首筋にあて、
ゆっくりと鎖骨へ、胸元へと妖しい手つきで下していく。
彼の寝間着のボタンは、既に4段ほどまで外されている。
「なっ・・・、、お前はいつの間に私のパジャマのボタンを・・・!?
よせ、止めろ、止めろと言っているだろう・・・っ。!」
「ユリウスの反応・・・相変わらず可愛くて、やっぱり大好きだわ。」
ユリウスの制止の言葉を全く無視し、
彼女の掌は彼の反応を楽しむ如く白い肌を撫でまわす。
そしては更に屈みこみ、彼の寝間着の残るボタンを唇と舌を使って器用に外し始めた。
「っ!?!お前は、いい加減にしないか、私から放れろ・・・!」
彼女に煽られた事で急激に膨れ上がる情欲に、
ユリウスはあらん限りの理性を用い、懸命に抗っていた。
ここでなし崩しにに手を出せば、それこそ彼女の思うがままだ。
今まで幾度となく繰り返された行為だが、
だからこそここで踏みとどまることをユリウスは選んだ。
だが、それでも、彼の身体の上に圧し掛かり、未だ微塵も彼の言葉に従おうとしないを、
無理に拒絶する事が出来ない。
それは無論、どんなに抵抗の意思を口にしようとも、
相手が愛しい存在であると言う理由に他ならないのだ。
そしてだからこそ、彼は増幅する欲を抑えるのに多大な労力を要さねばならなかった。
ユリウスの胸元を完全に肌蹴させた彼女は、
満足げに彼を見下ろし、唇で弧を描いて見せる。
扇情的とも言えるその眼差しは、言葉で語るよりもより一層彼の中の欲をかきたてた。
「放れろと言っている!何度も言うようだが、私を煽り過ぎるな、!」
「我慢出来なくなるから?大丈夫、大丈夫。さんはいつでも準備万端よ。」
「ばっ、馬鹿だろう!お前は!いいから、もう離れてくれ!」
くすくす。
再びが小さく笑い、彼の胸元にある掌を腰元へと移動させる。
更に彼女は、唇をユリウスの耳元に寄せて囁いた。
「アナタがまるで処女みたいな反応をするから、虐めたくなるのよ。」
「しょっ・・・―――――――!!」
ふつ。
の言葉を耳にしたその刹那。
ユリウスの中で何かが微かに音を立てて切れた。
それは彼の理性の糸とも言えるものだったかもしれない。
「。」
「何?ユリウス。」
「常々言っていた筈だぞ、私を煽り過ぎると責任は持てないと。」
平生のものよりも低く、熱を含んだ彼の声音。
そして何より、つい今し方までのユリウスとは、目つきすら違っている。
いち早く彼の異変を察知したは、僅かに瞳を見開いた。
「わお!いつもと微妙に反応が違うわ・・・!」
常は彼女の強引な誘惑に半ば引きずられるように肌を合わせる結果となるのが、
ほぼ恒例となっていた二人だが、今回ばかりは少々事情が違っていた。
否。
結果としては同様なのだが、状況が異なっていると言った方がより正しいだろう。
その原因には、ユリウスの態度の変化が大きく影響しているのだった。
「いつもいつも振り回されてばかり居てやるほど私はお人好しではないぞ。」
「ほっほ!随分と強気ねぇ。」
「そう言うお前はいつもと変わらず余裕を晒しているが、いつまで続くか見ものだな。」
そう口にし、彼はの唇へ自身の唇を少々荒々しく重ね合わせる。
だが、そこには平生の様な焦りは込められて居なかった。
そして、この状況に内心戸惑いを覚えていたのは、彼女の方だった。
ユリウスの熱く湿った吐息がすぐさまの口内を満たし、灼けつく如く犯していく。
軟体動物を思わせる彼の舌が、容赦なく彼女の舌を絡め取り、弄んだ。
「・・・っン・・・ふ・・・。」
が息苦しさに身悶えするも、ユリウスは唇を離す様子を見せない。
やがて溢れ出た生温かくとろみを帯びた互いの唾液が、彼らの顎を伝って落ちて行った。
「息が上がっているようだが・・・まさかこの程度で根を上げるつもりではないだろうな?」
「・・・・ユリウス、アナタ、キスの仕方までいつもと違うわよ。さんさすがにビックリよ。」
「フン、誘ったのはお前の方だろう、。言っておくが、
今回ばかりは私も手加減は出来ないぞ。」
言いざま、彼の掌がの胸のふくらみを服の上から包み込むようにして揉みしだき始める。
そしてユリウスは再び彼女の唇に己が唇を寄せた。
だが、彼の瞳は薄らと開かれ、の反応を伺うように至近距離から見つめている。
その間も彼は彼女の双丘を弄る手を休めず、
服と下着の摩擦で胸の突起が押しつぶされる感触に身震いしたは、
無意識の内に甘やかな吐息を漏らしていた。
「は・・・・・・ユリウス・・・。」
「何だ?」
唇を触れあわせ、互いに囁くようにして言葉を交わす。
サラリとの頬に降りかかるユリウスの蒼髪。
彼女は常の飄々とした態度と余裕を既に大きく欠いていた。
「服の上からじゃなくて、直にに触れて・・・。」
「ならば自分で服を脱げばいい、
私はお前のおかげで上半身は既に脱いでいるようなものだからな。」
「アナタの手で脱がせてくれない訳・・・?」
ねだる様な口調では言い、ジッと彼を見つめる。
そうしながら同時に、彼女はユリウスに甘えるようにして身を委ねている己自身の姿に、
少なからず驚きを隠せずにいた。
「フッ、お前が私にそんな台詞を向けるとはな。」
「言えてるわ。ユリウスが珍しく乙女じゃないから、
さん雌じゃなくて女になっちゃってるみたい。」
微かに肩をすくめてが笑う。
「私に・・・・脱がせて欲しいのか?」
「ええ、脱がせて。」
艶と熱を含んだ声で、彼女はユリウスに答えた。
彼が僅かに瞳を細めて微笑する。
常のユリウスならば現在の様な状況で、
を前にこれ程までに強気な発言を口にする事など、あり得なかった。
文字通り彼は、俗に言う『キレている』状態だった。
「処女呼ばわりした男の手で裸にされたいのか?」
「・・・・・・・・・・・おっと、やっぱりそれでキレたのか。」
納得。
彼女は半ば独り言の如く呟いた。
窮鼠猫を噛む。
少々意味合いは異なるが、の脳裏に不意に浮かんだ諺だった。
彼女は小さく苦笑し、更に言葉を続ける。
「ごめんなさい。謝るから、お願い。アナタの手で直にに触れて欲しい。
アナタの手で脱がせて、ユリウス。」
今回ばかりは、ユリウスに軍配が上がった深夜の出来事だった。
END
舐めるな
私とて男だ、プライドだってある。特に、お前の前では。