彰がから離れて行ってしまう。
彼が玄関のドアノブに手をかけ、ガチャリとドアが開く音がした。
瞬間。
は殆ど反射的に彼を追いかけていた。
彰は分ってない。
そして多分、も今の今まで分かってなかった。
自分の気持ち。
「彰!待って!待ってよ。」
「!?」
彼の筋肉質な腕を両手でつかんで、出て行こうとするのを寸での処で引き留める。
彰は驚いたようにを見下ろした。
「?」
「行かないでよ・・・。頭なんか、冷やさなくていい・・・。」
ドクドクと。
の心臓が早鐘を打ってる。
は彼の腕を掴んで居る両手に力を込めた。
「、彰に触れてほしい・・・。」
喉がカラカラになって張り付きそうな錯覚。
だけど言った言葉にウソはなかった。
大胆な事を言ってる自覚はある。
でも、このまま彰が離れて行ってしまうことだけは耐えられなかった。
何より、ずっと心の奥でが望んで居たことでもあるから。
昔とは違う、『男』としての彰に触れられること。
「、自分で何言ってんのか分かってるのか?」
「分かってる・・・。だから・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「彰・・・・・・・。」
彼の瞳の奥。
と同じ物が見える。
「今の俺がお前に触れたら、その先は止まれねぇ。それでもいいんだな。」
彼の問い。
今なら、拒絶する事も許されるのかもしれない。
だけど、はそんなこと、全く考えもしなかった。
したく、なかった。
「止まらなくていいわ。」
「。」
の答えと殆ど同時。
彰が、片腕でを引き寄せる。
そして、の唇に、噛みつくようなキスをした。
「・・・ンっ。」
いつもの彰とは違う。
人懐っこい笑顔を浮かべる、あの唇が、今は、まるで獣みたいにに食らいついてる。
いつでも人を食ったみたいな態度の彼が、今は全く余裕が感じられない。
口内をこれでもかと言う程荒らされながら、
彰の硬い胸板に押しつけたの体が少しずつ熱を高めていく。
それは彼も同じで、密着した部分から感じるお互いの体温が、
益々の気持ちを昂ぶらせていた。
と彼。
同じボディソープの香りが、一人の時より濃厚に鼻をくすぐる。
彼の大きな掌がTシャツ越しにの胸を持ち上げる様にして揉み始める。
慣れない感触に、思わずビクリとの体が震えた。
でも勿論、全然嫌じゃない。
逆に、体の芯から妙に疼く、何かが芽生えてくる。
その間も夢中で彰からのキスに応えていると、彼が少し切羽詰った様な声で熱っぽく囁いた。
「ベッドに移動しよう・・・。このままだとここで全部終わっちまう・・・。」
「・・・・・・・・うん。」
は短く返して頷いた。
―――ドサリ。
お互いに体を絡みあわせたまま、たちはベッドへ倒れ込んだ。
の心臓の鼓動は爆音を鳴らしっぱなしだ。
やっぱり、彰に触れられたかったんだ。
今更ながらに再認識する。
その証拠に、これでもかと言う位に緊張してるのに、彰に触れられる事が気持ち良くて、嬉しくて堪らない。
「ワリィ・・・・・・・。」
「え?」
「余裕なくてがっついてるみたいで、格好悪いよな・・・。
けど、俺はずっとお前に触れたかったんだ・・・。」
言いながら、彰の長い脚がの脚と絡みあわされる。
そして、Tシャツを脇から捲る様にして、彼の手が直にの肌に触れてきた。
ビクリ。
咄嗟にの身体が大きく脈打つ。
「っ!」
「怖い?」
「・・・・・少し・・・だけ。」
「そーか・・・。けど、さっきも言ったけど、もう止められないからな。」
言いざま、彼がゆっくりとのTシャツを脱がした。
ブラのホックを手慣れた様子で外し、掌で包み込むみたいにして胸を揉まれる。
「・・・っァ・・・!」
自分のものとは思えないほど甘ったるい声が漏れそうになり、はそれをどうにか堪えた。
「聞かせてくれよ、の声。・・・今まで聞けなかった・・・誰も聞いた事のない声をさ。」
の胸をゆっくりと掌で弄びながら、耳元で囁く彰。
湿った熱い吐息がの耳朶に吹きかかる。
それだけで眩暈をおこしそうな錯覚に陥った。
でも、彰はきっと初めてじゃない・・・・。
不意に彼の慣れた手つきや仕草にそんな思考が働いてしまう。
彰に今まで何人か付き合った人が居るのは知ってる。
当然だ、あれだけ人気があるんだから。
今更そんなことを気にしたって仕方ない。
分かってる。
だけど。
「・・・こんなに緊張して、傷つけるのが怖くて我慢してたのはお前だけだぞ・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・え?」
「こんな俺に抱かれるのは、嫌か?」
の心を見透かしたみたいな彰の質問。
は思わず彼をジッと見つめてしまう。
「何で・・・・・・・・・・・・・・・。」
「フッ、お前は昔から・・・分り易いからな。けど、今言った俺の言葉にウソはない。
お前相手じゃなきゃ、俺はこんなになるまで我慢なんかしてないさ・・・。
怖かったんだ・・・。お前に触れたくて抱きたくて仕方ないのに、
行動を起こして嫌われるのが怖かった。」
「彰・・・・・・・・・・。」
じんわりと。
心の奥底が、温かいような、くすぐったいような気持ちになる。
知らなかった。
彰が、そんなことを考えてくれてたこと。
知らず、の唇に、笑みが浮かぶ。
「嫌いになんかならないわ。
も、彰じゃなきゃこんな気持ちになってない・・・・・。」
「・・・。」
は自分から腕を伸ばして彼の体に抱きついた。
彰の言葉が真剣なこと。
それがとにかく嬉しかった。
明け方。
不意に目が覚めて、は瞼を開けた。
まっ先に目に入った彰の寝顔に、思わず一瞬ドキリとする。
そうだった・・・たち・・・。
彼とが眠ったのはほんの数時間前だ。
はぼんやりと視線を彼の寝顔に合わせた。
ソファでうたた寝してた時も思ったけど、こうして見ると昔の面影が残ってる。
髪を下ろした彼は、少しだけ幼い。
「彰・・・・・・・・・・・・。」
彼の名を呟いて、その髪に手を伸ばす。
「ん・・・・・・・・・。」
「!」
彰が小さく声を上げて、腕枕をしてくれていた腕でを自分の胸に引き寄せた。
起きてしまったのかと思ったけど、どうやらそうじゃないみたいだ。
「好きだよ、彰・・・・・・・・・。」
次にこの部屋に泊まるその時は、押しかけの幼馴染としてじゃなく、
恋人として来る事が出来る。
そう思うと、無性に顔がニヤけてしまった。
(END)
いっそ喰らって
しまいたい
お前を思う分だけ我慢したこの気持を、ぶつける事の出来る幸せ。