「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「おや?どうしたんだ?お嬢さん。顔色が悪い様だが。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「さて、それで?これは結局、何なのか教えて貰おうか、
君の首にあるこれは、何だ?」

凍死出来る。
間違いない。
は今なら確実に凍死出来る。
ブラッドの瞳。
表情。
声。
どれを取っても、底冷えする冷たさを持っていた。
加えて室内は極寒地帯。
これはもうに死ねと言っているに違いない。

・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「答えなさい。」

スゥ、と、間近にあるブラッドの瞳が細められる。

「答えろと言っているんだ!!」
「っ!!!」

は咄嗟にビクリと体を震わせた。
いつも気だるい口調のブラッドが、
ここまで声を荒げたのを、は今まで見た事がない。
同時に、の体が竦み上がる。
予想以上に最悪の事態。

「歯形を付けられるほど激しい行為をしてきたのか?
私以外の男と!外出を許した途端にこれなのか!?君は!」
「違うっ・・・!これはそんなんじゃないっ!」
「だったら何だと言うんだ!?」

怒鳴り声。
もう、そう言っていい程の声量だった。
彼はの首筋、例のボリスの歯形のある場所に片手で触れ、微かに爪を立てる。

「っつぅ、ブラッドっ・・・や、痛いっ・・・!」
「誰だ?君の体にこの歯形を残した男は、誰なんだ!?言いなさい、言ってみろ!!」
「・・・・・・っ。」

言える訳がない。
双子と仲のいいボリスはこの屋敷にも度々遊びに来てる。
名前を出せば、次に来たときどうなるのか分ったもんじゃない。

「言えっ!」

答えを促すブラッドに、は首を左右に軽く振って答える。
彼が怒りと同時に苛立っているのが良く分った。

「ほぉ?そんなにその男が大事なのか?
そうまでして庇いたい程に?この歯形を付けた男はそんなに君の大事な相手なのか!?」
「違う、そうじゃないっ、そうじゃないわ!
ブラッド、これはホントにそんなじゃなくてっ。」

どんなに否定しても今のブラッドには届かない。
そして自身も、上手く彼を納得させるような言葉も見つからない。

、君は・・・あくまでも相手の男の名を口にしないつもりか・・・。」
「ブラッド、は浮気なんかしてない!!」
「・・・・・ならばその首にハッキリと付いている歯形は何だと言うんだ?」
「じゃあ・・・じゃあ他を調べればいい!!
あんたが言うには歯形を付けられるほどの激しい行為なんでしょ!?
もしそうならの体に他にも痕があるのが普通だわ!
でもそんなもの絶対にないから!」

涙声になってしまいそうなのを必死で堪え、は彼と同じ位大きな声で言った。
分かってる。
歯形なんて生々しいものが付いてれば、誰だって浮気だと疑って当然だ。
でも、はどうしても疑いを晴らしたかった。

「・・・ッゥっ。」

を冷たい瞳で見下ろしながら、
ブラッドは片手での首を絞めてしまいそうな位に力を込めた。
の喉の奥で呼吸が詰まる。
少しずつ力を緩め、だけど歯形の付いている部分を引っ掻く形で彼の手が動いた。

「イタっ、やだっ、ブラッド、やめ・・・っ!」
「私をここまで苛立たせてくれた女は、未だかつて君が初めてだよ、・・・。」

やけに冷静で、それなのにさっきの怒鳴り声よりもずっと、
彼の怒りの度合いが読み取れる口調。
歯形のある部分から、少しだけ血が滲んでいるのが感触で分かった。

「私はな、。自分のものに手出しをされるのが、大嫌いなんだ・・・。
君を傷つけるのも、悲しませるのも、私だけでいい。私だけにしか許されないんだ。」
「――ンっ。」

言いざま、彼に乱暴に唇を奪われる。
ブラッドの手は未だにの喉元にあって、本気で殺されるんじゃないかと思った。
何度も何度も唇を合わせては離れて、離れては合わせられる。
今までしてきたどんなキスよりも情熱的で、そして荒々しいものだった。
は殆ど涙目になりながら、それでも必死で耐えていた。
お互い息を乱して、いつの間にかはスカートまで脱がされ、
下着もずり下げられてる始末。
ブラッドは執拗にの唇を求め続け、骨ばった掌での胸を激しく愛撫した。
それこそ、の肌が真っ赤に色づいてしまう位の勢いで。

「・・・っゥ・・・ブラッド・・・、ブラッドが好きよ・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ブラッドしか、・・・好きじゃな・・・い、から・・・。」

泣かない。
絶対泣かない。
そう思っていたのに、さすがにもう耐えきれなかった。
嗚咽と一緒に言葉を漏らし、目尻から雫が流れて行く。
多分この世界に来て初めて、は彼の前で涙を見せてしまったのだと思う。

・・・まったく・・・君は本当に厄介な・・・。」

急にブラッドが動揺し出す。
今まで何度もの泣き顔を見ていたのならまだしも、
初めてのことでさすがに驚いているようだった。
それでもさっきまでとはまるで別人のように優しい手つきでを抱き寄せ、
ブラッドは宥める様に背中をさすり始めた。

「涙は女の武器の一つとは・・・よく言ったものだ・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・ブラッド・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「私の怒りはまだ納まってはいないが・・・、・・・・今回だけだ、
今回だけは君の初めての涙に免じて赦してやろう。」

彼はそう言い終えると、再びをソファに沈め、
の体へと覆いかぶさってきた。





その後―――――
ブラッドは口では許すと言ってたけど、
ハッキリ言って行為は今までで一番激しかったんじゃないかと思う。
しかも、自分ではよく見えないけど、首から鎖骨、そして胸元、
多分、埋め尽くす勢いでキスマークをつけられてしまっているらしい。
つくづくドグサレた男だ。
はもう心身ともにズタボロだった。


ボリスと言いブラッドと言い・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・死ねばいいのに!!!!!!!!!!!


「どうしたんだ?お嬢さん・・・疲れた顔をして・・・。
歯形を付けられるほど激しい行為をしてきたんだ、
この程度、まだまだ序ノ口だろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジで死んでほしいよ、あんた。」

ブラッドは未だにの体を離さずに、しかも洋服さえ着せてくれない。
悪戯にの胸に手を伸ばしては、撫で上げる様にしながら弄び続ける。

、ひとつ言っておくが・・・。」

いつもと同じ気だるい口調を完全に取り戻した彼がまた口を開いた。
は視線を上げてブラッドを見る。

「この忌々しい歯形が完全に消えて無くなるまでは、君はこの部屋以外出入り禁止だ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっ!?本気で!!??」
「当然だろう?それとも、私が冗談を言っているように見えるかな?」


神様!!!今すぐコイツに手を下しますから、力を貸して下さい!!!!!


「安心しなさい。君がこの部屋から出ようなどとは考えられないように、
私が手伝ってあげよう。君の思考も体も全てが私のことだけを求める様にね。」

ニヤリ。

哂ったブラッドの表情。
この上なく、凶悪だ。
は咄嗟に口元を引きつらせた。

「さぁお嬢さん、楽しい時間を共に過ごそうじゃないか。
君が他の男の事など2度と考えられないように、君の体に直に教え込んであげよう。」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



の声にならない大絶叫は、神様に届くことなく、
ブラッドの唇の中に、消えた。



END



独占する方法

誰であろうと君に不逞を働く輩は許さない。君は私だけを見ていればいいんだ。