ーー!」
「エリオット!おかえり!でも早かったね?
今度は12回後の夜まで帰れないって言ってたけど。」
「おう!実はさ、予想以上に早く仕事が片付いたんだ。
それで俺、あんたに早く会いたくって急いで帰って来たんだぜ。」

言って、に駆け寄ってきたエリオットは、
腕を伸ばしてを彼の胸の中へと抱き寄せた。
の体に絡めた腕にぎゅうっと力を込め、さらに肩口に顔を埋めるエリオット。
今現在周囲に人気はないとは言え、ここは廊下だ。
いつ何時人が通るかも分からない。
エリオットからして見れば通りがかる人間と言えば彼の部下達ばかりだから、
ある意味気にならないんだろうけど、
としてはこんな現場を目撃されるのはさすがにこっぱずかし過ぎた。

「こ、ここ廊下!エリオット、ここ廊下だから!」
「関係ねぇよ・・・、俺、あんたに早く触りたくてうずうずしてたんだ。」
「いやいやいや、関係あるから!がスッゴク関係あるから!」
「・・・・・・、そっか・・・分かった。あんたがそう言うんだったら俺の部屋に行こうぜ。
どうせ最初からそのつもりだったしな。」

エリオットはそう言うとの手を取って殆ど大股で足早に自分の部屋に向かって歩き始めた。
いつものことだが、彼はと自分とのコンパスの差を全く考えてくれてないらしい。
2m以上もある彼と日本20代前半女子の平均的身長しかない
言いたかないが足の長さの違いは歴然で。(決して短足なんかじゃないけど)
その上手を繋いでグイグイ引っ張られるもんだから、
必然的には小走りどころか普通に走るような形になってしまっていた。
結局、部屋に着くまで彼は全く速度を緩めず、
は走る続けることになったのだった。
おかげで、部屋に着いた時には軽く息切れしている始末。

「エリオット・・・!早い、早すぎるし・・・!」
「ん?ああ、そっか。悪い、悪い。少しでも早くあんたと部屋でゆっくりしたくてさ。」

ごめんな?
なんて言いながら、部屋に到着した途端、腕の中に抱きこまれ、更にベッドにダイブする。

「ああー!やっぱこの状態が一番リラックス出来るぜ。」

ごとベッドに身を沈めたエリオットがそう言って、の髪に顔をぐりぐり押し付けてくる。
は軽く苦笑しつつも、その背中に腕を回した。

「・・・・なぁ、。あんたさ・・・ここのとこずっと元気ねぇみたいだけど、何かあったのか?」
「・・・・・・・・・・・え?別に・・・普通、だけど・・・。」
「俺にはそう見えねぇ。つーか、結構前から気になってたんだけどさ、
仕事が忙しくてゆっくり聞いてやる機会がなかっただろ?何かあったんじゃないかと思ってよ。」
「エリオット・・・。」

野生的勘と言うヤツだろうか。
としてはかなりいい感じにいつも通りに会話出来てると思っていたのに、
彼の目は誤魔化せなかったようだ。
しかも彼の口ぶりからして今気付いたって訳でもなさそうだ。
それでもはどうにかエリオットを納得させる言い訳がないものかと考えを巡らせた。

「アリスが帰っちまったからか・・・?だからあんた、寂しくて元気ねぇんじゃねーのか?」

アリスの名前が彼の口から出たことに、正直ぎくりとした。
はアリスの事が好きだった。
今でも好きだし、親友だと思っている。
だから勿論、アリスが選んだ道がこの世界に残るという選択じゃなかったことを寂しく思った。
それも嘘じゃない。
でも、が沈んでいた大きな理由は、
ここ最近、ずっとずっと頭から離れなかった不安は、それとは別の事だ。
アリスに関係してはいても、そんな綺麗な感情じゃない。

「・・・・・・・・エリオット。」
「何だ?」
「エリオットも・・・アリスが居なくなって寂しい?」

極力視線を足元に移して、エリオットにの表情を読まれないようにしながら、
は殆ど呟くようにそう彼に聞いた。
アリスはと一緒にこの帽子屋屋敷に滞在していて、当然エリオットとも親しかった。
彼はブラッドに対してと同じようにアリスに憧れて、尊敬していたから。
そうだ、ゲームで見たそのまま、エリオットはアリスを慕っていた。

「寂しいかって・・・そりゃ、当たり前だろ。アリスはスッゲェスッゲェいい奴で。
俺はずっとこの屋敷に居てくれたらなって思ってた。あんただってそうだろ?」
「・・・うん。」

短く返事をしながら、今、自分はどんな顔をしてるんだろうと考えた。
この返事は、半分本当で、半分嘘だ。

「けど・・・・その・・・こんなこと、言うべきじゃねぇのかもしれねーけど・・・。」
「・・・・・・?何?」
「あんたじゃなくて、良かったと思っちまったんだ・・・俺。」
「え?」
がこの世界から居なくなっちまうんじゃなくて、良かったって思っちまった。
アリスが居なくなっちまったのはマジで寂しかったんだぜ!?
今だって寂しいと思ってる。けど・・・俺は・・・・・・・・・・・。」

そこで言葉を切ったエリオットは、の体に回した腕にさっきよりも力を込めた。
そして耳元。
唇を押しつけるようにして続ける。


「もしもあの時帰っちまったのがあんたで、あんたがここから居なくなっちまったらって、
・・・そう考えただけで・・・頭がおかしくなりそうだった・・・・・・・。」


吹きかかる吐息、震えた声。
の耳に触れたエリオットの唇も、微かに震えていた。

「エリオット・・・・・・・・。」

ゆっくりと視線を移し、は彼の瞳を覗き込む。
僅かに潤んでいるようにさえ見える群青色の瞳。
その奥に見える不安、恐怖。
胸が締め付けられるような想いに駆られ、は彼にしがみ付いた。
ずっと思っていた。
彼のこの瞳が、この唇が、この手が、求めてるのは、じゃないのかもしれないと。
こんなにを想ってくれてるのに。
は信じてあげられなかった。
アリスの為のハートの国だとしか考えられなくて。
ただ怖くて。
そして自分の事しか考えられなくて。
エリオットの気持ちに目を向ける余裕すらなかった。

「あんたが好きだ、どうしようもねぇ位・・・。あんたのこと以外、何も考えたくねぇ位に・・・。
だから、あんたは俺の側に居てくれ。
ぜめて・・・、俺の時計を、ブラッドが壊してくれるその時まで。」
「エリ―――――――――――んっ・・・」

唐突に重ね合わされた唇は、さっきと同じ程震えていた。
自身が自分から促すようにして受け入れたエリオットの舌は驚くほど熱く、
彼の吐息が一瞬にしての喉の奥までを満たした。
それから達は何度も何度もキスを交わした。
お互いの不安を飲み込むように、お互いの想いを貪る様に。

も大概現金な女だと笑ってしまう。
エリオットを不安にさせておいて、そこでやっと気付いた。
彼のへの気持ち。
画面の向こうのあの時とは違う。
アリスへの想いじゃなく、間違いなくに向けてくれるもの。
この長い長いキスが終わったら、エリオットに伝えよう。
の大好きな人に。


の方こそ、ずっと側に居させてほしいってことを。



慕う慕う、愛慕う
  ―――こんなにも、こんなにも―――



(END)



後書き
ゼェハァ、リハビリチックに執筆。今回もまずはエリオットでネタが浮かんだので。
一応分岐予定なので他キャラも思い浮かび次第執筆します。
何だかシリアスチックなのか何なのか。
しかしトリップヒロインだと遅かれ早かれアリスはきっと嫉妬の対象になる筈。
と言うか、今までも何度かそれ系の話を書いてはいるんですけど(苦笑)
PS2版やりつつ改めて思いついたというかなんとゆーか。
ではでは、ここまでお付き合い下さった有難い姫様に深く深く感謝しつつ、失礼致します!
Title by 不在証明


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