「アリスッ!今度こそ見つけましたよ!!」
「わおわーお、アリス、ぎりぎりセーフ。さすがだわ。」

唐突に開かれた客室のドア。
飛び込んできた一匹の白ウサギ、ペーター=ホワイト。
ヒュゥッ
彼の姿を目にしたは、口笛と共に感心した様子で漏らした。
瞬時、ペーターの瞳に不満の色が宿る。

「どうしてあなたがここに居るんです?
アリスは、僕の愛しい人は何所に居るんですか!?」
「ほっほ、残念ねぇ、黒ウサちゃん、
アナタの大好きなアリスは少し前に部屋を移動致しました。」

おどけた口調で返すに、ペーターは苛々と眉間にしわを寄せた。

「ああ、何てことでしょう、また擦れ違いですか!それで彼女はどこに行ったんです?
どの部屋に移動したのか教えて下さい、今すぐに!」
「悪いわねぇ、黒ウサちゃん。アリスは毎回移動場所を誰にも言わないのよ。
アナタも知ってるでしょ、メイドさんにも言わないし、
にも迷惑がかかるからって、場所は言わずに移動したわ。」

出て行ったのはついさっきなんだけど。
と彼女が愉快そうに付け足すと、ペーターは益々悔しげに顔を顰めた。
どうやらはアリスと入れ違いにこの部屋に滞在することになったらしく、
ベッドの上には彼女が滞在所変更時に常に持ち歩いている小さな荷物が置かれていた。

「・・・・、あなた、またこのハートの城に滞在するんですか?」
「そうよ、嬉しいでしょ。宜しくね、黒ウサちゃん。」

言いざま、はペーターに向って片目を瞑って見せる。
彼はげんなりとした様子で溜め息を吐いた。

「仕方ないですね、あなたはあのヒステリーな女王陛下のお気に入り、
無理に追い出すことも出来ませんし・・・。
僕としては愛しいアリス以外の滞在者なんてどうだっていいんですが。」
「わお、そんなに照れなくてもいいのに。」
「どうして僕があなた相手に照れないといけないんですか。
それから何度も言いますが、その呼び方、不快です。止めてください。」

眉間にしわを寄せたままのペーターがピシャリと言い放つ。
だが、はけらけらと笑い声を上げて返すのみだった。

「・・・あなたと話していると僕は頭痛がしてきますよ。」
「凄い、ハートの国の宰相様を頭痛に出来るなんて、この世にさんしか存在しないわね。」
「喜ばないで下さい!褒めていませんから!」

青筋を立てる様にして声を荒げる彼だったが、
は常の冷徹なペーターが感情豊かな部分を見せる相手が(彼の愛するアリスを含め)
ほぼ数人に限られていることを知っていた。
それ故に、彼女はこうして彼と他愛のないやり取りを行うことを好んで居るとも言えた。

「・・・、あなた今度はいつまでこの城に滞在するつもりですか?」
「ん?まだ特には決めてないけど。珍しいわね、黒ウサちゃんがそんなこと聞くなんて。」
「別に・・・。ただ、前回滞在時の時はいやに慌ただしく出て行きましたからね。」

先程までとは違い、ペーターは淡々とした口調でそう口にした。
その姿は彼女に表情を読まれまいとしている様にも見える。
は少々視線を彷徨わせ、やがて、ああ、と、思い出した如くして返事をした。

「あの時はブラッドと約束してたのよ。さん人気者だから引っ張りだこで。」
「っはっ!あなたをそこまでして引き止めるなんて、さすがに物好きな連中ですね。」
「ほっほ、安心して、黒ウサちゃん。今回は次の約束はないから。」
「それは結構ですね。最も、僕には関係ありませんけど。」

返した彼の言葉は、されど何所か嬉しさを滲ませていた。

「さてと、それじゃあ僕はもう失礼しますよ。愛しい人の居場所を探り当てなければ。
きっとアリスもそれを望んでいる筈です。
恥ずかしがって焦らしプレイをして遊んでいる様ですけどね。」
「黒ウサちゃんって幸せな脳の構造をしてるのねぇ。」
「その台詞、あなたにそっくりそのままお返しします。」

ペーターの返事に、は再びけらけらと笑って答える。
彼は幾度目かの溜息を吐き、ドアノブに手をかけた。

「またいつでも遊びに来てよ、当分は、この部屋に滞在してるから。」
「―――気が向けば、少しは顔を出してあげてもいいでしょう。
勿論僕の愛しい人が最優先ですけれどね。」
「ほっほ、いつでもお待ちしてます。」

軽い声音で答えるを背に、ペーターは部屋を出て行く。
彼女の場所からはその表情を窺い知る事はできなかったが、
彼は彼自身も無意識の内に、満足げな笑みを浮かべていた。


(終わり)


後書き
ギャグなのかほのぼのなのか謎な話になってしまいました。
ヒロAには歪んだ愛情を注いでいるペーターなので、
Bには彼には本当なら絶対にあり得ない友情っぽい感情を滲ませた関係にしてみました。
この先彼とどうなるかは…ううーん、ヒロBの行動によります(笑
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました。姫様に感謝しつつ失礼します。


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