「ども、久しぶりね、ユリウス。さんこれからお世話になります。」
「帰れ。」
「わおわーお!一言目がそれ?でもほら、帰る家がないから。」

けらけらと楽しげな笑い声と共に、はユリウスにそう返事をした。
ユリウスはそんな彼女の様子に眉間にしわを深く刻み、げんなりとした表情を見せる。

「どうして私の所に滞在しようなどと面倒なことを考えるんだ、お前は。
いつもいつもふらふらふらふらしているんだから、何もここを選ぶことはないだろう。」
「ほっほ!いいじゃないの、あの長い階段を上って来たのよ。中々に疲れたわ。」
「誰も来てほしいと頼んでなど居ない。
迷惑だ、お前が居ると私は余計な事に気を取られて苛々する。」

素気なく返した彼は、眉間に寄せたしわを益々深めていた。
その口調には確かに苛立ちが滲み出ている。

「酷い、酷いわっ!ユリウスに会いたくて頑張って上って来たのにっ!」

はユリウスの態度に構わず常通りのおどけた口調でそう口にし、
よよと芝居染みた声音で泣き崩れる様を演じた。

「なっ・・・!き、気色の悪い事を言うな…!何なんだ、お前は…!」
「ユリウスってば照れてるんでしょ?うん、うん、はよく分ってるから。
だからここに滞在してもいいわよね?」

唇で妖しい弧を描き、彼女はユリウスをジッと見つめた。
彼はそのの瞳を暫くの間見つめ返した後、深く大きな溜め息と同時に片手で自らの額へと触れた。
頭痛さえ禁じえないと言う彼の無意識の所作だ。

「どうせ私が首を縦に振るまでここに居座って、そうして下らない会話を続けるつもりだろう。
・・・・フン、言っておくが、私の仕事の邪魔だけはしてくれるなよ。」
「ありがと、ユリウス。アナタならそう言ってくれると思ってたわ。」

言いざま、彼女はユリウスの体に腕を回し、彼の耳朶に軽く唇を押し当てる。
彼は一瞬身を強張らせた後、徐々に顔を朱に染めて抗議の言葉を口にした。

「だからっ…お前は、すぐそう言うことをして余り不用意に私に近寄るなと言っているっ…!」
「おお、新鮮な反応。さん初々しい反応って大好きだわ。」

くすくす。
は彼の身体に腕を絡めたままの態勢で、ユリウスの耳元で小さな笑い声を洩らした。
揶揄する如くの彼女の言葉。
されどユリウスは何故か不快さを感じてはいない。
だがそれ故に苛立ち、彼女の言動一つ一つに常に翻弄されているのだと自覚させられるのだ。

「離れろ・・・、わ、私はお前のお遊びに付き合っていられる程暇ではない・・・!」
「久しぶりなんだからもう少しこの感動を分かち合いましょうよ。」
「うるさい、私は感動など全くしていな・・・・・・っ、離れろと言っているだろう!」

動揺を隠せぬ様子で抵抗を示す彼だが、決してハッキリと拒絶の姿勢で彼女を振り払いはしない。
はユリウスの白い首筋に唇を埋め、赤い舌をゆっくりと這わせた。

「っ…!お、おまお前、お前と言う女は、何を考えているんだ…!離せと言っているだろう!」
「そう言う反応をするから放せないのよ、相変わらず初々しくて、嬉しいぞ。」
「――くそっ!だからお前は面倒だと言うんだ…、どうしていつもこう・・・っ。」

更に苛立ちを露にし、彼は自らもの背に腕を回して強く抱きしめた。
それとほぼ同時に、彼女は踵を上げ、ユリウスの唇へと自らの唇を寄せる。
重なり合った唇と唇。
二人はすぐさま深く濃厚な口づけを交わす。
半ば貪る如く互いの唇を味わいながら、は彼の長い蒼髪に指を滑らせていた。
幾度も唇を合わせては接吻を交わし続け、暫くの後、二人はようやく唇を離した。

「お前と居ると、下らない事に意識を移さねばならない時間が増え過ぎる・・・。」
「下らないこと?」
「そうだ、下らない・・・・・・・・・・・・・いや、下らなくはないが…。」
「フッ、つまり惑わされてる?うん、やっぱり可愛いわ、アナタは。」

心底楽しげにそう口にし、彼女は再び踵を上げると、
ユリウスの唇を赤い舌でなぞる様にして舐めた。

「・・・っ・・・!お前はまた・・・」
「これからまた暫くの間宜しく、ユリウス。」
「・・・・・・・・・・・ふん・・・。」

せめてここに居る間は余りふらふらと出歩かない事だな。
次いで告げる筈だったその台詞を、ユリウスは敢えて飲みこんだ。
そんな事を言えば彼女は再び彼を揶揄するのは目に見えている。
彼は無言でに背を向け、私室へと足を向けた。


お前がいつどこで誰と何をしているかなんて、
どうして私がこんなに気にしなければならないんだ。


仕事が手に付かぬほどに彼女の行動についてばかりに思考が働く。
の言葉通り、ユリウスは彼女に『惑わされている』のだ。
そしてまた、彼自身が自覚している以上に、に捕らわれてしまっているというのも事実だった。

ハァ。
彼の唇から、知らず、溜め息が漏れる。
それは第三者が目にすれば、恐らく恋に落ち、戸惑っている年頃の娘の姿の様に映ったに違いなかった。

(終わり)


後書き
久しぶりにヒロB、そして初めて表でヒロBユリウス夢でした。
弄られてる弄られてる(苦笑)って感じですけど、ヒロB相手だと彼はきっとこんな感じだろうなと。
ヒロBは全体的に振り回し役ですが、ユリウスは特に無茶苦茶に振り回されてそうなイメージ(笑
後はゴーランドもそれっぽいですが、彼は年の項でどうにか乗り切っていそうな気も…。
ではでは、ここまでのお付き合い、大変有難うございました。失礼致します


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