ごろごろと喉を鳴らしての膝に頭を預けているボリスの髪にそっと指を滑らせる。
その間も彼が首に巻いているファーがふわふわとをくすぐるように揺れ動いていた。
ボリスは金色の瞳を僅かに細めてを見上げ、の頬に片手を伸ばした。

「・・・・・・・・・何だか不思議だね、俺があんたに膝枕までしてもらって、しかもあんたを見上げてるなんてさ。」
「いつもは逆だからね。・・・と言っても、の場合は体ごと君の膝に乗せて貰ってる訳だけど。」

クスクス。
小さく笑ってそう返すと、彼はそれに応えるように微笑んだ。

「あんたが本当は人間なんだって知った時、マジでビビッたんだぜ?何で教えてくれなかったのさ。」
「一緒に居ればその内嫌でもバレると思ってたし、・・・・そうね、やっぱり警戒もしていたのよ。」
「ふぅん、、あんた・・・俺のこと、信用してなかったんだ?」
「まぁね。君だって、最初から懐いてくるような猫じゃないって分かってたでしょう?」
「・・・・・まぁ、そうだけど。・・・・って言うか、あんた実は猫じゃないんだよね?
それともやっぱりこの世界の役持ちとかみたいに人型になったり動物になったり出来んの?」

の頬に掌を触れ合わせたまま、ボリスは大真面目な顔でそう訊ねてきた。
は思わず小さく吹きだすと、再度、クスクスと声を立てて笑った。

「残念だけどそれはないわ、ボリス。の世界はそんなメルヘンな展開は起こり得ない場所だから。」
「つまんない世界だね、あんたの居た世界って。」
「ま、ここの住人にとっては間違いなく、ね。」

答えて肩を竦めると、不意にボリスが身を僅かに起こし、の頬に触れていた手を更に後頭部へと移動させた。

「そんなつまんない世界、あんたにだって向いてないよ。
何たって今のあんたは猫の姿になっちゃう体なんだしさ・・・・・・・。」

言いながら、がそれに返事をするより早く、彼はの顔を軽く引き寄せ、
そのまま自分の唇を押し付ける形での唇を塞いだ。
ボリスのざらついた猫の舌が口内に侵入し、の舌と絡まり合う。
お互いの舌と舌がまるでそこだけ別の生き物のように相手のものを求めてぬらぬらと強弱をつけて縺れた。
熱く湿った吐息が、の口腔内に生じたぬるい唾液にまで熱を移していく。
うっすらと瞼を開けると、同じようにを盗み見ている彼の金色の瞳とカチリと視線が合った。

「・・・・のキスする時の顔、いつかこうして見下ろして見たかったんだよね・・・。
あんたの場合理由が理由だからさ、チャンスが少ないからずっと狙ってた・・・。」

唇を離した瞬間、囁くようにボリスはそう言って、自分の口の端を伝って流れる滴を舌で舐めとった。
はそこでまた小さく笑い、ボリスの濡れた唇に舌を這わせた。

「それで?ご感想は?」
「・・・・ん?そんなの決まってんじゃん・・・・・・。最高に綺麗で、最高に・・・色っぽい顔をしてる。」

言いざま、ボリスは素早く体勢を変え、をソファへと押し倒す。
やわらかなソファがの背中を優しく受け止めた。

「おかげで俺は、キスより先に進みたくなっちゃったんだけど・・・・・・・あんたは?」
「・・・・・・・・・・・・・、そうね・・・それは・・・・・・。」
「・・・そこ、即答してくんない訳?あんたは嫌なんだ?」

先刻と体勢が逆転し、を見下ろしたボリスが不満そうな表情を浮かべる。
は彼の瞳と視線を合わせ、軽く肩をすくめて苦笑した。

「そうじゃないわ。だけど、途中で猫の姿に戻ったら、君が萎えるんじゃないの?
時間的にそろそろ戻る時間だってには分かるのよね。」
「・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・、マ、マジで?
それってつまり・・・お預けってことだよね?俺って猫であって犬じゃないんだけど。」

ボリスの猫耳が力なくへにゃりと頭に張り付く。
に触れる体温が最初よりも一層上昇していることからも、彼が欲を膨らませていることはにも分かっていた。
そしてそれは、自身も同じだったからだ。

「ごめんなさい、ボリス。」
「いや・・・が謝ることないよ・・・。つーか・・・俺ってそう我慢強い方じゃないし、正直ムチャクチャ辛いんだけど・・・。」
「・・・ボリス。」

彼の名を口にしながら、は無意識にボリスが巻いているピンク色のファーをぎゅっと掴んでいた。
どんなに甘い空気で盛り上がろうと、の姿が猫に戻るその時が来る度、その空気は跡形もなく消えてしまう。
普通の恋人同士であれば、普通の体の人間であれば、毎回こんな思いをしなくて済むと言うのに。

「そんな顔しないで、。・・・・・・俺が我慢強くないってのは本当だけど、あんたの為なら待てるからさ。
次に人間の姿になった時には・・・・・・・・覚悟しといたほうがいいぜ?」

ボリスはの耳に唇を押しつけるようにしてそう囁いた。
湿った吐息がの耳朶に熱を移す。

「・・・・・・・・・・期待、の間違いじゃないの?」

努めて明るくそう返すと、ボリスは不意にの瞳を至近距離から覗き込んだ。

「・・・・・・・そう言うこと。・・・・・・・・そうだね、今は、あんたが猫の姿に戻るまでの間、キスさせてくれればそれでいいや。」

は無言で頷くと、自分から彼の体に腕を絡めてボリスの唇に自分の唇を重ねた。
甘く蕩けるようなキスを交わしながら、だが決してそれに溺れきることが出来ない。
それでも君がを求めてくれるなら。
ボリス、は、君と一緒に居続けるから。



溺れきれない、糖蜜空気


(END)




アトガキ
突発的に思いついた話だったんですけど、本来ならドップリ甘いままで終わる筈が、
ヒロインの状況的にそれも微妙かなーと思ってたらこんなことに(笑)
恋人同士になってからボリスの前で人間の姿になったのはまだ3回か4回程度のころだと思われます。
猫の体の時間が長いんで、普通に考えたら恋愛に発展するまで時間かかりそうだなぁ。
幾らボリスが猫とは言え、完全猫の姿な彼女を恋愛の対象に見るとは思えんし(笑)
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様!誠に誠に有難うございます。
貴重な姫様に深く感謝です!(幽霊少女に続き、ヒロイン、設定共に特殊過ぎる感が拭えない)
失礼致します


ブラウザバック推奨