「ん?、どうしたんだ?俺の背中なんかジッと見つめて。何かついてるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・ええ、そうね、ついてるわ。」
「?何がついてんだ?ゴミか何かか?」
「いいえ、そう言うものじゃないわ。もっと痛々しいものよ。
・・・・・ハァー・・・、ごめんなさい、エリオット。まさかこんなとこにまで影響してるなんて。」
溜息交じりにそう口にするに、エリオットは衣服を身につけようとしていた手をピタリと止め、
上半身を露わにしたまま、ベッドの上で身を起こしているに視線を向ける。
「なぁ、さっきから何の話してんだ?何であんたが俺にあやまるんだよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・、背中よ。」
「は?背中?ああ、何か付いてるって言ってたな。」
「・・・・・・・爪痕、・・・・・・血が滲んでるわ。」
言って、は傷口に指が触れないように気を付けながら、エリオットの広く筋肉質な背中のその周辺をそっと撫ぜた。
そこには細い筋の様な傷が幾つもつけられている。
そしてその数本には所々薄らと血が浮き上がってきていた。
それらはつい数十分前にがつけたものだと言う説明は不要だろう。
「爪痕・・・、ああ、ンなことか。別にこの程度傷のうちに入らねぇだろ、俺は全然気にしてねぇぜ。」
「・・・だけど結構な範囲だわ。・・・以前はこんな癖なかった筈なんだけど、
やっぱり長く猫の姿で居るせいなのかも・・・。本当に、まさかこんなところにまで・・・。」
は再度、深く溜息を吐くと、自分自身の指先に視線を移した。
爪の長さは適度と言うには少々長すぎるかもしれない。
だが、人間の姿のの爪は当然のように猫の爪のような鋭さは持ち合わせておらず、
指先に相当力を込めなければ彼の肌にあそこまで傷を付けることにはならない筈だ。
つまり、それ程力を込めて背中を引っ掻いてしまっていたことになる。
「でもこういうことって気をつけるとか付けないとかの問題じゃないし・・・・、
―――・・・?エリオット、君今凄く怖い顔をしてるわよ。やっぱり怒ってるの?」
「・・・・・・怒ってねぇよ。」
「だけど、そんな顔してるわよ。やっぱり傷が痛むのね?
ごめんなさい、猫の爪とまで行かなくてもこれはかなり酷いし「そうじゃねぇ。」
彼は半ばの言葉を遮るようにそう言い、体を完全に此方に向けると、の肩を両手で掴んだ。
「言っただろ、この程度の傷、傷の内にゃ入らねぇんだよ。
それにこれはあんたがそれだけ夢中になってくれたって証拠だ。そんなことで俺が怒るかよ。」
「OK・・・つまり、それ以外の事で他に何か君の気に障るようなことをが言った訳ね?
・・・・・・・・・・・・分からないから教えてくれると有りがたいわ。」
妙に苛々とした口調で返され、その原因が全く予測できないは彼と同じほど苛立ちを込めた声音でそう答える。
エリオットはすぐにはの言葉に返事をせず、暫くの間ジッとを見つめていた。
その彼の群青色の瞳の奥に薄らと滲んだ複雑な感情。
はこれまで幾度かこんな瞳をしたエリオットを見たことがある。
「・・・・・・・・・・・・、さっきあんた、以前はこんな癖なかったって言っただろ?
そりゃつまり俺より前に居た男の話だよな?」
「・・・・・え!?」
「そう言う意味だろ?そう言う意味にしか取れねぇよな?それとも違うのか?」
失言だった。
確かに彼の言う通りだ。
以前はこんな癖はなかった、と言うのはつまり、以前の恋人とこう言った行為をした際はこんなことはなかった、
そう暴露しているようなものだ。
よりによって今、こんな状況の時に口にするようなことじゃ決してない。
エリオットが苛立つのも当然だ。
「・・・・君の言う通りよ。・・・・ごめんなさい、エリオット。あんなこと、口にすべきことじゃなかった。」
「・・・当然、昔の話、だよな?」
「当たり前でしょう。」
「分かった。だったら許してやるよ・・・。
すっげぇムカついたけど・・・・・・・・、あんたが背中に爪痕を残した相手は俺だけだってのが分かったしな。」
言いざま、エリオットはの唇に噛みつく様なキスをした。
唇ごと食べられてしまうような錯覚に陥るほど、激しい口付け。
再び覆い被さってきた彼の体が、に僅かに心地よい重みを与える。
エリオットのキスに自分から応えるように唇の角度を変え、自身も彼の唇を貪った。
彼の手がの胸元の膨らみに伸ばされ、掌全体で胸を包み込むように揉みしだき始める。
クチュリとお互いの口内から水音が響くのと同時に、エリオットは絡めた舌と舌を強く吸い上げた。
微かに唇を離せば、熱く湿り気を帯びた吐息が重なり、透明の滴が唇を濡らしていた。
「、これからも、あんたが爪痕を残すのは俺だけだって約束してくれ。
もしも他の野郎なんかに付けてみろ、ソイツ・・・マジでぶっ殺してやる。」
「ええ、エリオット、約束するわ。・・・・・・・・、但し、猫の姿の時は保障できないけどね。」
クスクスと小さく笑い声を立てて笑い、は彼の背中に腕を伸ばした。
「エリオット、君も・・・以外の女に肌を傷つけさせないでね?」
「そりゃ絶対心配ねぇな。あんた以上の女なんか俺の中で存在しねぇ。
あんた以外で、この俺の体に傷なんか付けた奴は男だろうが女だろうが殺してやるぜ。」
そこで達は互いに視線を絡み合わせ、そしてまた幾度目かのキスを交わす。
は背中に回した手の指先で自身が彼の肌に付けた爪痕をそっと撫ぜた。
だけがエリオットに残すことが許された傷。
先刻目にした際は痛い思いをさせたことに申し訳なさしか感じなかったが、今回は少々それとは違っていた。
独占欲と言うのは何も男だけが持っている感情じゃない。
女だって好きな相手を独占したいと思う気持ちは変わりない。
知らず、の唇が弧を描く。
僅かに唇を離したエリオットと至近距離で瞳がカチ合った。
「・・・?・・・何笑ってんだ?」
「ふふ、内緒・・・。」
言って、はまた自分から彼の唇に自分の唇を寄せた。
猫の姿に戻る時間は今回は珍しくまだ先のようだ。
爪痕で刻印
(END)
アトガキ
くっ、超難産だったあああああ!!爪痕ネタは黒猫シリーズ書こうと決めた時からあったんですが、
短いし、もっとスラスラ執筆出来ると思ってたのに、最後とかもう、何度書き変えたんだ!?
しかも自覚あるんですけど、書き足りないと言うか書き切れてないと言うか、でも書けないと言うか。
エリオットと黒猫嬢の関係はアリスは勿論、ヒロA・Bとも違う本当の意味で対等な感じにしたいです。
・・・・・・・・・・あくまで願望ですけどねっ!!あはははははははは!!(怖い)
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様、誠に誠に有難うございます!失礼致します。
ブラウザバック推奨