「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ねぇ、ふ、二人とも・・・。」
アリスが凄い勢いで走り去って数分。
茫然とその場に突っ立っていたは、
どうにかなけなしの勇気を振り絞って二人に話しかける事にした。
敢えて、どちらかの名前を呼ぶと言うことはせずに。
「ん?何だ?。」
「何かな?お嬢さん。」
彼らは二人同時にの声に応えた。
そしてやっぱりブラッドはエリオット口調、エリオットはブラッド口調で。
は極力二人のどちらとも視線を合わせない、
寧ろメチャクチャに視線を泳がせている状態で、彼らに向かって言った。
「・・・・・・・・・・遊びじゃないとしたら、何で、ここ、こ、こんなことになってる訳?」
「ああー、それ俺達にも分からねぇんだよな。
だって俺もブラッドも普通に仕事の話してただけだしさ。なぁ、ブラッド。」
「そうだな、私達は特に奇抜なことはしていない。極普通に仕事の打ち合わせをしていただけだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そう。」
何度目だか分からないけど、あえて言っておく。
の質問に最初に答えたのはブラッドで、そのブラッドは明らかにエリオットの喋り方だった。
そして明らかにブラッドの喋り方のエリオットは、
ブラッドからの『ブラッド』と言う呼びかけに極自然に答えた。
混乱する。
混乱する。
混乱する。
ぐるんぐるんと思考回路も視覚も聴覚も全部が全部混乱する。
つまり、これはアレだ。
ブラッドがエリオットでエリオットがブラッドで。
中身だけが入れ替わったという、どこぞの漫画やドラマでよくある使い古されたネタ。
信じられないし、本当なら信じたくもないし、
幾らここがハートの国だからってそれはなしだろって感じだけど、実際はそれを目にしてる。
「じゃ、じゃあ、仕事の話中にアクシデントで体がぶつかり合ったとか。」
「はぁ?ンなこと有る訳ねぇだろ!俺もブラッドもそこまで鈍くねぇし、
大体、万が一そんなことが起きちまっても、
俺はブラッドにぶつかるような真似するより床にぶつかる方を選んでるぜ。
ブラッドに怪我させちまうかもしれねぇじゃねぇか!」
「だ、よね。あはははははははは・・・・・・・・・。」
カクカク。
の唇が不自然に笑う。
頼む、頼むから。
お願いだから、幾らエリオット口調とは言え、
ブラッドの体でブラッドの声で、自分大好き発言っぽいの、止めて下さい!!!
「・・・君が聞きたいことは大体察しが付くが・・・。先刻言った通りだ、
私もエリオットも極普通に仕事の打ち合わせをしていた。
そうだな・・・・更に詳しく話せば・・・、
時間帯が夕方に変化した途端に、互いの立ち位置が突然一転してね・・・、
気付いた時にはこうなっていた訳だ・・・。」
言いながら、ブラッドの口調のエリオットは手持無沙汰な様子で手元のペンを片手で握り、
トントン、とその先を掌で軽く叩いた。
もう言うまでもないだろうが、それはブラッドがステッキを手にした時にたまに見せる仕草そのままだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・。
って言うか、何で二人ともそんな冷静なの・・・?
明らかに今の状況異常事態なんだけど。異常事態なんてレベル以上の異常事態なんだけど!?」
「十分狼狽えたさ。だが・・・・・・・・・・それも面倒になった。
勿論、それぞれの体に戻る努力は惜しみなくするつもりだ。
だが、今動揺し続けて居てもそれが見つかる訳でもないだろう・・・。
私は無駄に体力を消耗したくはない・・・。例えこれがエリオットの体だとしても、同じだ・・・。」
「ブラッドはさすがだよなぁ、こんな時でも落ち着いてどっしり構えてんだからよ。
やっぱりすっげぇぜ!だから俺もブラッドを見習ってちゃんと落ち着こうって決めたんだ!」
「―――――――――――――――。」
もうこの際二人が入れ替わったことを認めざる得ない。
認めざる得ないからこそ言いたい。
エリオット、マジ頼むからブラッドの姿で妙にはしゃいで自分大好き発言しないで下さい!!!
生き生きとした瞳でエリオットの体のブラッドに尊敬のまなざしを向けるエリオット。
だけど、何も知らない人間の第三者視点に切り替えれば、
きらきらの瞳でエリオットを見つめるブラッドの図、
と言うハートの国で最も恐ろしい光景が繰り広げられている様な状況だ。
アリス、をたった一人残していったことはお恨み申し上げるけれども、
それでも彼女がこの恐ろしい図を目にしなくて良かったと思う。
有る意味、発狂してたかもしれない。
と言うか、これかアリスじゃなくても見ててキツいものがある。
キツ過ぎる。
怖すぎる。
助けて、へるぷみー、アーメン、南無阿弥陀仏。
「さし当たっての問題は・・・、2回目の夜に入っている仕事のことだな・・・。
それに、今の私達の状況を他の者達に知られることは避けなければならないだろう。
・・・・・・・・・アリスは・・・、彼女は賢いお嬢さんだから心配はないだろうな。」
「ああ!アリスなら絶対ぇ秘密は守ってくれるって。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ってゆーか、口が裂けても言えないと思う。
秘密云々の前に、色んな恐怖のせいで。
彼らはそれから2回目の仕事にどちらが足を運ぶのかを真剣に話し合っていた。
ブラッドの姿のエリオットは自分が行くと言い張るものの、それは余りにも不自然だ。
もう説明するのも馬鹿らしいけど、エリオットは今ブラッドな訳で、帽子屋一家のボスであるブラッドが直接現場に赴く様な大仕事は滅多にない。
今回の仕事もいつもと同様エリオットが済ませる筈だったものらしい。
現在のこの恐ろしく特殊な事態は、内部でも極力少数にしか知らせないつもりらしいから、
この仕事を突然ブラッドが直接手を下すことになると言うことになれば、他の部下達も不審に思うだろう。
「ハァ・・・、仕方がないな。今回の案件は私が処理して来よう。・・・・・・・・・ダルイ、面倒臭いことだ。」
「ブラッド一人にンなことさせられねぇよ!!だったら俺も行く!!」
「・・・エリオット、幹部が揃って出て行く様な真似をすれば、周囲は益々不審に思うだろう。」
「そ、そりゃそうだけどよぉ・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ブラッドの姿のエリオットとエリオットの姿のブラッドは、あーだこーだと仕事の話を進めている。
の存在を全く無視して。
それはいい。
それは全然かまわない。
寧ろ有りがたい。
今の彼らに話しかけられても怖すぎてまともな会話をするのも一苦労だから。
それはいいのだが。
だが、しかし。
そんなことよりももっと気にすべきことがあるだろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
の悲痛な叫びは、勿論、彼らの耳には届かなかった。
ぐるぐるぐるぐる混乱思考
(END)
後書き
まずはこの突拍子もない話に興味を持って下さって有難うございます。
この設定、明らかに文章だけじゃあブラッドとエリオットの体交換劇が、
伝わりきれてないんじゃないかって感じなんですけど・・・。
でも、書いてる方は楽しいんです。うふふ、あはは。
ではでは、ここまでお付き合い下さり、もう本当にどの海より深く!
感謝しております。有難うございます。失礼致します。