「・・・最悪だね、兄弟。」
「・・・最悪だよ、兄弟。」

が丁度門前を通りかかったその時、ディーとダムはピッタリ同じ呼吸で深いため息を吐いていた。
どうやらには気が付いてないようで、二人して浮かない表情で会話を続けている。

「ボスがバカうさぎでバカうさぎがボスなんて・・・・、僕、頭がおかしくなっちゃいそうだよ。」
「僕もだよ、兄弟・・・。これから僕達はどうなっちゃうんだろう?」

双子達はそう言うと、また同時に深い深い溜息を吐く。
は遠巻きにそれを目にしつつ、心の中で二人に激しく同意していた。
あの(・・)ブラッドとエリオットの体逆転劇と言う余りにも衝撃的過ぎる事件から数時間。
依然として状況に変化は見られず、ブラッドはエリオットのままだし、エリオットはブラッドのままだ。
何だかんだで人間ってのはどんな異常事態でもそれなりに時間を過ごせば慣れてしまう生き物な訳だったりする筈だと思うんだけど、
正直あれは何度時間帯が過ぎて行っても無理だと思う。
妙にキラキラな瞳でエリオットに尊敬の眼差しを向けつつ、
自分大好き発言を繰り出すブラッド。
気だるげでダルダルーっとしたいかにもやる気なさ気な様子なのに、
いやにデカイ態度でブラッドに接するエリオット。
中身はブラッドがエリオットでエリオットがブラッドなんだけど、それは分かってるんだけど、
もう分からずにはいられないんだけど、激しくきっつい。
怖い。
恐ろしい。
恐怖。
ホラー。
サスペンス。
ミステリー。
スプラッタ。
それから、それから。
とにかくあの状況に慣れろって方が土台無理な相談だ。
にはどう頑張っても今の彼らを直視することすら出来ない。
したくない。
あり得ない。


「大体僕達が稼いだお金は誰がくれるの?勿論ボスだろうけど、今のボスはあのバカうさぎだよ。」
「そうだよね、それに誰が労働条件の改善について話を聞いてくれるの?今のボスはあのバカうさぎなのに。」


って言うか、そこかよ!!!!!!!!


双子はが彼らの会話を聞いていることも気付かずに更に会話を進めていた。
しかも、の予想外の方向で。
いや、寧ろ有る意味凄く奴ららしい会話なんだけど。
本当にこの上なくあの双子らしい内容だとは思うけど、そう言う会話が出来るってことは、
何気にあの二人、この状況に慣れ始めてるんじゃないだろうか。
さすがはハートの国の住人だとしか言いようがない。
あらゆる意味で恐るべしだ。

「バカうさぎにお金をもらうんだって思うとムカつくよね、兄弟。ヒヨコうさぎのくせに生意気だよ。」
「そうだね、兄弟。だけど今はバカうさぎの中にボスが居るんだし、機嫌を損ねないようにしなくちゃ。
今より労働条件が悪くなんて僕は絶対に耐えられないよ。」
「まったくだよ、兄弟。・・・・・・それにしてもこの間は驚いたね、休憩している途中にボスが怒鳴り込んでくるんだもの。」
「あー、あれは本当に驚いたよ、兄弟。中身はバカうさぎでも、
ボスの体で怒鳴られたから、バカうさぎだって分かっていても反射的に謝っちゃったよね・・・。」

そこで二人はお互いに視線を合わせ、今までで一番深い三度目の溜息を吐く。
双子を怒鳴りつけるエリオットなんて全く珍しくもないけど、それがブラッドになったとなると話は別だ。
彼らの言う通り、幾らブラッドの中がエリオットとは言え、
ブラッドの姿で怒鳴られては従わざる得ないかもしれない。
と言うか、怒鳴り声を上げるブラッドなんて色んな意味でレア過ぎる。

「バカうさぎに謝るなんて僕達どうかしているよね、兄弟。
あれ(・・)はボスじゃない、バカうさぎなのに!」
「うん、その通りさ、兄弟。
・・・・・・・それにこの間はバカうさぎの姿のボスに話しかけられて危うく斧を向けそうになっちゃったしね。」
「うんうん。あれはさすがに焦ったよ。ボスにはどうにか誤魔化せたけど、凄く危ない所だった。
「給料に響くかもしれないよ、もっと慎重に行動しなくちゃ。」
「そうだね!休暇も取れなくなるかもしれないしね!」

二人して、力を入れる所を間違えてる。
間違えまくってる。
いや、それでこそ双子なのか。
だからこそディーとダムなのか。
思わずこっちが遠い目になってしまうほど奴らは逞しい。
ホント、マジでそう言うことまで考えられるアイツらが色んな意味で羨ましい。
どこまでも図太い神経、天晴れだ。

「でもさ、兄弟・・・。正直なところ、僕、ボスの体のヒヨコうさぎ・・・気持ち悪いを通り越して、怖いよ、アイツ。」
「・・・・・・・・・・そうだね、兄弟。ヒヨコうさぎのボスは滅多に外に出てこないけど、
ボスの姿のヒヨコうさぎはよく顔を見せるしね・・・。
うんうん、・・・・・・・・気持ち悪いって言うより、怖いよね、アイツ。」

双子は青ざめた表情で声を落としてそう言うと、二人ともピッタリ同じタイミングでぶるりと身震いした。

「「とにかく一刻も早く元に戻って欲しいよね!兄弟!!」」

ディーとダムが大きく頷きながら、言葉をハモらせそう口にする。
双子から少し離れたその場所で、は彼らに合わせて何度も何度も力強く頷いていた。


何がどうなってああなったのか、なんて経緯はこの際どうだっていい。
(その中に元に戻る鍵があるんだったらまだしも、ブラッドとエリオットの話を聞く限り、
それっぽい感じはなさそうだ)
とにかくお願いだから、本当にほんっっとにお願いだから、二人とも、一時間帯でも、
一分でも、一秒でも早く!!!!!!!!!!!!!


元に戻って!!!!!!!!!!!


ボスとアイツと雇用条件



(END)

「あれ?お姉さん、いつの間にそんなところに居たの?」
「本当だ、お姉さん。かくれんぼ?」
「遅っっっ!!」



後書き
今回はちょっと短めになりましたが、双子達の憂鬱な感じで(笑)
双子としては一番心配なのはやっぱり賃金とか休暇とか労働条件のことだと思います。
ではでは、今回もここまでお付き合い下さった姫様!!有難うございます。
超特殊夢だけに毎回どきどきしつつ更新しております。
それだけに本当に有りがたいです!失礼いします。