君を憎み、君に焦がれる

「僕にとって最愛の人はたった一人、アリスだけなんですよ。
それ以外の人間は僕にとっては意味をなさない。
寧ろ消えてしまえばいいとさえ思います。
僕と愛しい人との時間を無駄に割く要因になりかねない人間ばかりですからね。」

うっとりと、酔っているみたいな表情でを組み敷いた白ウサギはそう語る。
――の両手首を、拘束したまま。

「何度も何度も何度も言ってるけど、ペーター、それはよく分ってる。知ってる。
百も千も億も承知してる。だからさっさと解放して。」

うんざりする。
げんなりする。
ペーターの行動の矛盾にも、
極力彼との接触を避けていたのに何所かで期待してた自分にも。
そして当然、今の状況にも。

、どうしてあなたは僕の心に波風を立たせるようなことばかりするんです?
どうして僕に愛しい人のことだけを考えさせてくれないんですか?」
はそんなことした覚えないんだけど。
って言うか、勝手に存分にアリスのことを考えてればいいし。」

かなり広範囲の音を聞き入れることが出来るはずの長くて真っ白なウサ耳は、
今回も至近距離に居るの言葉を華麗にスルーして、
自分の言い分だけをに押し付ける。
はわざとらしく彼に向けて大きな溜め息を吐いた。
だけど全くその効果は見られない。
それどころかの両手首を押えている手にさっきよりもっと力がこもった。
最悪。

「今すぐに僕の目の前から消えて欲しい位です。
元の世界にでも帰ってしまえばいいんです。」
「元の世界に戻るってのはの意思じゃ無理かもしれないけど、
あんたが今すぐにを解放してくれれば、
もう2度とあんたのテリトリーには近寄らない。」

本気、この白兎は矛盾してる。
矛盾しまくってる。
を視界に入れたくないならさっさと速やかにを解放してくれればいい。
そうすりゃは今言った通り、
2度とペーターの居そうな場所には足を踏み入れたりしない。
特に昼間のハートの城は絶対に近寄らないことだって出来る。
ビバルディから声が掛ったとしても、
彼と城内で鉢合わせたりしないようにするつもりだし。

「僕から逃げるつもりですか?。」

真っ赤な瞳を細め、冷たい視線をに注ぐペーター。
どこまでもどこまでも矛盾してる。

「逃げたくもなるわ。って言うか、あんたがそれを望んだんでしょうが。」
「僕はあなたに目の前から消えて欲しいだけです。僕から逃げろとは一言も言っていない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

何なの、コイツ。
何なの、何なの、何なの。


言葉遊びでもしようってのか、をからかって遊んでるのか。
とにかく矛盾してる上に意味が分らない。
を見下ろす赤い瞳は、底冷えするような鋭さを含んでいるのに、
何所か説明出来ない熱を帯びてる様にも思えた。
でもそんなことあり得ない、錯覚だ。
この白ウサギ・ペーター=ホワイトが、恐ろしく危険な位にアリスに想いを寄せてることなんか、
『プレイヤー』としての知識が無かったとしても、この世界に来た時から強制的に叩き込まれてる。
盲信的に狂気的に、彼はアリスだけを想ってる。
それはある意味この世界の常識。
幾らが特殊すぎる余所者だったとしても、
ペーターの気持ちが移るなんてことはあり得ない筈だ。
実際、彼とは今まで何度か顔を合わせては居たけど、
好感の持てる反応を示してきたことは1度もない。
とにかく嫌みの応酬。
だからは彼との接触を避けるようにしてた。
『プレイヤー』的立場の好意にも限界がある。
だけど――――――


さっきも言った通り、少しだけ、期待もしてた。
もしかしたら今度会えた時は何か違ってるかもしれないと。


ああ、矛盾してるのはも一緒か。
だけどペーターの場合レベルが違う。

「僕はあなたを見ていると、無性に苛々してしまうんですよ、
僕の中の何かが、音を立てて崩れだす。許せません、こんなことは絶対に。」
「それってのせいだと思えないんだけど。」

あんたってば、とっくに壊れてるでしょ、色々な意味で。

先を続けるのはさすがに躊躇われて、は彼から視線を逸らした。

「いいえ、あなたのせいです。あなたがいけないんですよ。」
「・・・っ痛・・・!ペーター!?」

ぎり。
と、拘束されていた両手首にまたしても力が入れられる。
そして彼は不意に空いている片手で、のシャツを横腹から捲りあげた。
ひんやりと冷たい白兎の掌が、直にの肌を滑る。
抵抗の声を上げようとした所で、ペーターが恐ろしく冷やかな視線と口調で言った。

「あなたには罰を受けて頂きます、。銃で撃ったりはしません。
あなたが余所者だと言うことに関わらず、何故か僕にはあなたが撃てない。
だから、僕なりのやり方であなたを無茶苦茶にしてあげます。
あなたの中に、僕と言う消えない刻印を刻んで、ずっと苦しんでいればいい。」
「―――――っ!!??」

背筋の凍るような戦慄。
はこの時初めて、そんな感覚を知った。
それ程、冷たく響いた、彼の声。

「っン・・・っ!」

ペーターが強引にの唇を奪い、唇を割って舌をねじこんで来る。
抵抗の為に必死で足を動かそうとしたけど、すぐに彼の長い脚に絡め取られてしまった。
の喉の奥から悲鳴に成りきれない小さな声が漏れる。
両腕はついさっきまでと同じで、どんなに動かそうとしてもぴくりとも動かなかった。
ブラのフロントホックがぷつと外れる微かな衝撃。
それからの片胸を掌で覆うようにしてペーターの白い手が動き始めた。

「やめてっ・・・!!!」

ようやくペーターの唇が僅かに放されて、は声を上げる。
生温かくて湿った彼の吐息が喉元の辺りを掠めた。

「どうせ初めてって訳でもないんでしょう?それに、まだ始まったばかりですよ。」
「ペーターっ・・・!!」
「潔癖な僕が、直接触れてあげると言うんですから、感謝して欲しい位です。」


言いざま、ペーターの手が無遠慮にスカートの中へ滑り込み、下着へと移動する。
この瞬間、の思考が、完全にクラッシュを起こし始めた。



「これは罰ですよ、
僕が愛しい人のことだけを考える筈の時間をあなたに割いた、その罰なんです。
あなたの身で責を負ってもらいます。あなたの全てを滅茶苦茶にして。」



狂った白兎がうっとりと囁く。
まるで極上の愛の言葉を口にするみたいに。


まるで何かに酔っているみたいに。


(終わり)



後書き
どどどどどどどどおおおおおおおおおおお!!??
ちょっとこれ、ペーター・・・ヤバ過ぎた。そして例の如く前半と後半の釣り合いが微妙だし(苦笑
あ、前作のペーター夢とは別物だと思って下さい。
ペーターのヒロインへの認識は同じですが、話自体は全く繋がってないつもりなので。
・・・・それにしても・・・・ペーターの壊れっぷりが想像以上になってしまった(笑
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫さま、誠に有難うございます。失礼します