Manacle (手錠 / 足枷 / 束縛)

「ねぇ、。最近アンタ、おっさんとやけに仲がいいみたいだね?」
「え?普通だと思うけど・・・、特に他の皆と変わらないし。」
「へぇ、アンタ他の連中ともあんなに仲がいいんだ?ふぅん・・・。」

言った猫の金色の瞳の奥。
スゥ、と、細められた。
ああ、最悪。
はどうやら、地雷を踏んだらしい。
とは言っても、彼の場合数え切れない位地雷が仕掛けられてあるから、
気を遣うと言う事が無意味だとは知っていた。
気を遣って逆に深みにハマることもザラ。
ボリスは気まぐれで残酷な猫。
特に、の前では。

ゆらり。
ボリスの鮮やかなパープルの尻尾が揺れる。
その動き。
知ってる。
獲物を狙う、猫の尻尾。

、前に俺言わなかったっけ?アンタを虐めるのは俺だけで十分だってさ。」
「ボリス・・・あっ!」

強引に手首を掴まれ、抱きすくめられたかと思うと、
そのまま乱暴にベッドの上へと押し倒される。
ボリスはの首筋に顔を埋め、猫独特の小さくて鋭い牙を肌に軽く突き立てた。

「っ!」

ツキン。
何とも言えない痛みを感じ、は小さく体を震わせる。
ざらつく舌がの肌を這い、同時に牙が少しずつ食い込んでくるのが分った。
そして。

「っつぅっ!」
「アンタって、血の味まで甘い。ねぇ、この甘い匂いで他の連中のことも引き寄せてるの?」

見なくても分かる。
彼の言葉通り、の首筋。
食い込んだ牙。
血が、滲んでる。

「まだ分かってないみたいだから教えてあげるよ。アンタは俺の獲物。俺だけの獲物だってこと。
今回はちょっとしたお仕置きも兼ねてイイ物を用意してあるんだ。」
「え?な、何言って・・・・・・・。」
「これ、何だと思う?」

――ジャラ。


言って、彼がの目の前に差し出した、それ。
銀色の鎖。
黒光りする手枷。
そう、それは、手錠だった。
彼は楽しげに口の端を上げて笑い、ぶらぶらとの目の前でその手錠を揺らめかせる。


はこれを知ってる。
但し、『プレイヤー』として。
アリス。
そうだ、ボリスがアリスにつけたものと同じだ。
本気、あり得ない、こんな形で、本物を目にすることになるなんて。

「ボリス、本気でそれをにつけるつもり?」
「フフ・・・勿論本気だよ。ああ、そうだ、言い忘れてたけど、。」
「え?何、まだ何か――――――。」

ガシャ・・・
――ガッシャ・・・ン・・・



の言葉が終るよりも素早く、彼はの両手を拘束した。
そう、両手首、それぞれ、ベッドの枠に手錠を繋げて。
手錠は、ひとつでは、無かった。

「手錠はね、ふたつあるんだ。この方が俺も色々と動き易いからさ。」
「ボリスっ!あんた・・・・っ!」


不意に嫌な事を思い出した。
昔見た古い映画。
牢獄に囚われた捕虜が拷問されるシーン。
薄暗い室内に、石の壁。
両手首を鎖で拘束されて、壁にはりつけにされた男の姿。
何だか、今のの格好、それによく似てる気がする。

「何をする気!?」
「何って?楽しいことだよ、スゴく楽しいこと。
甘くて美味しいアンタをサイコーのヤり方で俺が食べるんだ。
ま、アンタはちょっと怖い思いをするかもしれないけど、
これはお仕置きを兼ねてるから仕方ないね。」
「な、何考えてんの・・・・・・・?ボリス、本気、ふざけないで。こんな―――」

ギクリ。
反論する為に続けようとした言葉を、
は最後まで言い終える事が出来なかった。
ボリスの視線。
今まで見た、どんな時よりも、冷たい。

。」
「っ!!」

の口から思わず悲鳴が零れそうになる。
ギリギリ、それを堪え、彼と瞳を合わせた。

「アンタは俺がふざけてこんなことしていると思ってんの?
残念、俺はそこまで心の広いヤツじゃない。」

言いながら、ボリスは舌なめずりをするように自分の唇を舐めた。
危険信号。
いつもより、ずっと大きいその音が、の脳内で鳴り響く。
彼の掌が、洋服の上からの胸元にそっと置かれる。
ボリスの表情やの状況とは裏腹に、驚く程、優しい動きで。

「心音が速くなってる。怖いの?・・・・アンタも知っていると思うけど、
俺はアンタが怯えれば怯える程興奮するんだ。」

そこで彼は、の耳元に唇を寄せ、ベロリと舌での耳朶を舐めた。

「・・・・っ。」

震えるの体。
恐怖なのか、それとも別の感覚なのか、分らない。
ふふ、可愛いね。
耳元で哂う、ボリス。


「今回はちょっとハードだぜ。覚悟しなよ、。」


彼の尻尾がゆらりと揺れた。
はただ、ボリスを見上げて唇を噛みしめることしか出来ない。


手錠で拘束された両手首。
ぎりぎり。
ぎりぎり。
の肉に、食い込むような、錯覚を、起こした。

眩暈を起こしそうな、束縛感。
を、侵食する。


(終わり)


後書き
またダークな物が仕上がってしまった!
でも考えてみたらヒロA相手の場合、ペーターとボリスはダーク系しか書いてないですね・・・。
ヒロBだとボリスはヘタレっぽくなってしまうしなぁ(苦笑)
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様、誠に有難うございます。