「ブラッドやアリスがアンタのことを鳥みたいだっつってたけど、本当にそうだな。」
エリオットの私室。
ベッドの上。
彼はを組み敷いた形で彼女を見下ろし、半ば独り言の様にそう呟いた。
「どうしたの、急に。ウサギちゃん。」
彼女は常と同様軽い口調で言葉を紡ぎ、
片手を伸ばしてエリオットの鮮やかな橙色の髪に指を滑らせる。
存外柔らかな彼の髪は、するすると指の間を滑らかな動きで落ちた。
「俺はウサギじゃねぇって言ってるだろうが!」
一層機嫌を損ねた様に返すエリオットに、はほっほ、と、
常の芝居染みた笑い声を上げて見せる。
彼は深く大きな溜め息を吐き、
同時に彼女の肢体に覆いかぶさる如くして抱き寄せた。
「こう言う状況になっても、余裕があるのはいつもアンタだ、。
アンタは俺を拒みはしねぇが・・・完全に受け入れてる訳じゃねぇ・・・。」
「さすがに好きでもない男とこんなことはしないわよ?」
「・・・ああ、だろうな。けど――――」
そこで彼は先を続けることを止め、彼女の背に回した腕に更に力を込める。
は無言で自らも彼の体にそのしなやかな腕を絡めた。
重なる、互いの生命の音。
の心臓。
エリオットの時計。
だが彼ははっきりと感じ取っていた。
自身の指針の刻む音の速度が、明らかに彼女のものよりも勝っていると。
僅かなすれ違い。
されどそれが全てを物語っている。
エリオットが望めばは必ず彼に身を任せるだろう。
だが、そのハートは、決して彼のものではあり得ないのだ。
彼女はまさに各地を渡り、羽ばたく鳥だ。
自由奔放であり、彼の心を魅了して止まない、美しい翼をもつ、鳥。
END
**「Dreamy tea-party In Private garden」提出作品**
「お願いします、僕の手で殺させてください」
うっとりと恍惚の表情を浮かべ、
真っ赤な血の色をした瞳の狂った白ウサギはわたしに告げた。
極上の口説き文句を口にしたばかりの青年よろしく、僅かに瞳まで潤ませて。
――お願いします、僕の手で殺させて下さい。
彼が今わたしに向けたばかりのその言葉を頭の中で反芻する。
今まで彼には散々最低の扱いを受けてきたけれど、『お願い』されたのは初めてだった。
彼の最愛のアリス。
この真っ白で真っ黒なウサギは、彼女以外の存在を認めない。
例えわたしが『余所者』だろうと、それは変わりのないこと。
最初はそう思っていた。
だけど――――
――あなたの存在が僕の心を波立たせる。
あなたは僕から愛しいアリスの事を考える時間を削り取ってしまうんです。
これは決して許される事じゃない。僕にとっての至福の時を奪うなんて、
許されていい筈がないんですよ――
ペーターがそうわたしに告げたのはいつだったか、
それから彼は執拗に陰湿にわたしを追い詰める行為ばかり繰り返し仕掛けてきた。
そして、有る意味で極めつけがこの台詞。
眩暈がする。
「どうしました?。返事位したらどうです。」
最高の申し出でしょう?
続けられた台詞。
歪んだ笑み。
赤い瞳。
狂気の瞳。
真っすぐ、わたしを、捕えてる。
反論しようとしたわたしの唇に、薄く綺麗な形の彼の唇が強引に押し付けられる。
曲げて笑んだままの、その唇で。
わたしの言葉は、彼の狂気の中に、飲みこまれた。
――あなたが僕を憎んでいるのは知っていますよ。
だからこそ僕の手で殺させてほしいんです。
あなたの心をもっと染めて上げましょう。黒い黒い憎悪の色にね。
僕から最愛のアリスを想う時間を奪った罪はそれ程に重い。
だから、そう、それくらいは許されてもいいでしょう?
END
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