落とし穴に片足を突っ込んだ。
咄嗟に気付いて体ごと落ちることだけはどうにか免れたけど、
これはもうある意味で運が良かったとしかいいようがない。
落とし穴。
下をチラリと見てみると、剣山の様に仕込まれた銀色の刃の先が、
わざとらしい程ギラギラ光っていた。
ゴクリ。
唾を飲み込む。
間違いなく、ディーとダムの仕業だ。
幸いこの落とし穴での犠牲者が今まで居なかったようで、
はグロ恐ろしい光景を目にしなくても済んだ。
って言うか、一歩間違えたらが餌食になってんだけどね!!
未だに突っ込んでいた片足を自力で地面へ移動する。
体が小刻みに震えていた。
「「お姉さん!」」
「っ!?」
地面にへたり込んだままの状態で居るの側に、
いつの間にかディーとダムが駆け寄って来ていた。
双子はの両脇に屈みこみ、唐突に、ひし、と抱きついてくる。
「僕達お姉さんがどんなにおかしくても大好きだよ、だからそんなことは止めて。」
「そうだよ、お姉さん。僕達はお姉さんが大好きで仕方ないんだ、
だからそんなことはしちゃいけないんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい!????」
毎度毎度のこととは言え、彼らの言動はよく分らない。
穴に落ちそうになったを見ていて、
『危ないよ』と言っているようにも見えないし、
この二人がそんな正常な思考を働かせるとも思えなかった。
思わず間抜けな声で聞き返す。
双子は益々を強く抱きしめながら、交互に口を開く。
「駄目だよ、お姉さん。僕達に内緒で一人で死んでしまうなんて。」
「そんなの絶対に許せないよ、お姉さんが勝手に居なくなるなんて。」
「!!!???そんなことしてないし!!」
驚き過ぎての声が無意識に大きくなった。
双子にしてはこの方面でベタな勘違いをしたもんだ。
が故意に落とし穴に落ちて自殺を図ろうとしてたと思い込むなんて。
とは言え、余りにエキセントリックな勘違いと言えないこともない。
大体、もし万が一自殺と言う物をやることになるとして、
は断じてこんな恐ろしい状況は選ばない。
グロいだけでなく、死ぬ寸前まであり得ない程の痛みを伴うなんて最悪過ぎる。
アリスのDEADENDじゃあるまいし、好き好んでそんな選択は断固拒否したい。
「良かったね、兄弟。僕達の勘違いだってさ。ホッとしたよ。」
「そうだね、兄弟。本当に安心したよ。」
言いながらも、双子は同時にまたにしがみつく力を強めた。
不覚にも、は感動してしまう。
いつもは傍若無人にを振り回しまくりのディーとダム。
本気で殺意を抱くことも多々。
だけど、だって既に彼らの事を好きになってしまっていた。
現実世界の常識的に考えれば、3次元で×××××なんてあり得ないと思っていたけど、
結局はもこの双子に心を奪われてた。
に縋ってを心配してくれる、この双子が本当に『愛しい』と思う。
「お姉さん、もしもどうしても死にたくなったらその時はこんなことをしないでね。」
「そうだよ、お姉さん。もしもどうしても死にたくなったらその時は僕達を呼んでくれればいい。」
「・・・・・・・・え?」
自分からもディーとダムの体に腕を回そうとしたその瞬間。
双子の赤と青の瞳が妙な輝きを持ち始めた。
はもう、この瞳の意味をよく知ってる。
この、無邪気さの中に潜んだ冷たく残酷な輝きを。
「お姉さんを真っ赤に染めるなら、こんなお遊びの落とし穴でなんて絶対に許せないよ。」
「そうだよ、お姉さんを真っ赤に染めるのは僕達だ。僕達にしか許されない。」
フッ。
同時に、少年悪魔達が瞳を細めた。
「お姉さんがもしもどうしても死にたくなったら、その時は僕達が手伝ってあげる。」
「僕達しかお姉さんの体に触れることは出来ないんだ、
お姉さんのハートは誰にも渡さないから安心していいよ。」
そう口にして、笑った、双子の表情。
今まで見たどんな瞬間よりも、大人びて見えた。
(終わり)
後書き
拍手なのにブラックブラックな感じになってしまいました。
■■TITLE BY capriccio■■