「・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」

クローバーの塔内。
執務室。

ナイトメアとグレイは今し方から受け取ったばかりの、
それぞれに綺麗にラッピングされた箱の中身を確認し、沈黙していた。
時間帯が様々にそして出鱈目に変化するこの世界では、
どこからどこまでが1日だと言う概念はない。
だが、そんな中でもバレンタインと言う世俗的な行事は浸透していた。
そしてが二人に手渡した箱の中身は彼らが予想していた通り、チョコレートだった訳だが、
結果的には意表を突かれた形のものとなった。

・・・。」
「ふふふ、何でしょう?ナイトメア様。」
「・・・チョコの上に堂々と義理義理と2回も書かれてあるのだが・・・。」

言いながら、彼は相変わらず色のない唇を僅かに引きつらせ、
手元のチョコを彼女の見える位置へと差し出して見せた。
そして彼の言葉通り、何の飾り気も見当たらぬ平たい長方形のそのチョコには、
ホワイトチョコの白く太い文字でしっかりと義理の文字が繰り返し描かれている。

「ふふふふっ、わたくしの気持ちです、ナイトメア様。」
「い、いや、そんなに綺麗な笑顔を向けられても、全く嬉しくないぞ、これは。」

常と同様温かく優しげな微笑を浮かべ答えるに、ナイトメアは零れ出そうになる涙を必死で堪えた。
無論、嬉し涙でないことは言うまでもない。
そしてナイトメアの隣。
このクローバーの塔のNO,2であり夢魔の腹心・グレイ=リングマーク。
彼もまた、複雑な表情と共に箱の中にあるチョコをジッと凝視し、口元を引きつらせていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ふふふ、何でしょう?グレイ。」
「・・・感謝・・・と言う文字は嬉しく思う。」
「ええ、グレイにはいつもお世話になってますから。」
「いや、俺も君には世話になっているからな。だが、問題はそこじゃない・・・。」

言い終えると、グレイはチョコを取り出し、
ナイトメア同様、彼女の前にスッとそれを差し出して見せた。


「この同情と言う文字は何なんだ・・・?」


感謝と同情。
ナイトメアの物と同じく、
平たく飾り気のないチョコには達筆とも表現できる文字で太々とそう書かれている。


「ふふふふっ、わたくしの気持ちです、グレイ。」


再度、やわらかな日差しを思わせる美しい笑みを浮かべて答える
グレイは更に表情を強張らせた。


「日頃の気持ちをチョコに込めました。どうぞ、遠慮なく受け取って下さいね。ふふふ。」


慈愛に満ちた聖母の如きどこまでも美麗な微笑み。
執務室は珍しく極寒地帯と化すこともなく、平穏な空気が流れている。


しかし、彼女の上司と同僚の表情は、限りなく、複雑なものだった。


(END)


**アトガキ**
どうにも蛇ヒロは無糖傾向にありますなぁ(笑)折角バレンタイン夢の筈なのに。
しかも拍手夢がこれ1本で申し訳ないです!
あ、この話、日本語でしか通用しない内容ですが(チョコの上の文字)そこはスルーで(笑
お越し下さった姫様には深く感謝しております。