ーっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
「帰るぞ!」


ああ、またデスか!てか今日もデスか!田島・・・あんたって奴は・・・。


西浦高校。
野球部・部活終了後。
モモカンや先生と少し話をして着替えを済ませ、帰宅しようとするその直前。
まるでタイミングを見計らっていたかのようにそのに向って走ってくる田島。
達はここ最近、何故かずっとこんな感じだ。
そう、なぜか。


「田島、何度も言うけど自転車だし。送ってくれなくていいから。
大体田島の家目と鼻の先にあるんだし、面倒くさいでしょ?」
「メンドーくさい訳ないじゃん。どーせ真っ直ぐ帰ったことねぇしな。
それに、メンドーだったら最初っから送ってくなんて言ってねぇって。」

ほら、行こうぜ!
とか何とか言いながら、田島はナチュラルに人の手を握って歩きだした。

「ちょっ・・・!は、放してよ!」
「ええ!?あ、ヤッベ、もしかして汗かいてたとか!?ちょお、待ってろ!」

言いざま、田島は慌てたように自分のシャツでゴシゴシと掌を勢いよく拭きまくった。
そして再度、の方に手を差し出す。

「これならいいだろ!」
「いやいやいや!良くない!方向性間違ってるから!!」
「ええー?何だよ、これ以上何が嫌なんだぁ?もっとゲンミツに答えろ!」

ブーブー。
とばかりに唇を尖らせる田島。
その姿が可愛くない事もない。
ないけれども。
それとこれとは、別問題なのだ。


・・・しかも厳密の使用法が未だに微妙だし・・・!!
寧ろ間違ってる時のが多いし・・・!
―――じゃなくて!!!


「ねぇ田島、あんたも練習で疲れてんでしょ?ホント、一人で帰れるからさ。」
「え?そんなこと心配してたのか?ははははっ!お前ンち位までなんて全然ヘーキだぜ!」
「いやいやいやいや・・・あのね、そうじゃなくて・・・。
いや、まぁ質問の内容はそうなんだけれども・・・。そうじゃなく・・・」


どう言えば、どう言えば分かってくれるの、コイツ。


なまじ天然っぽいだけあって会話の方向性がいまいち定まらない。
が言ってる事が全ておかしな所に受け流されてる気がする。

「ああ!ほら!前はあんた、三橋と一緒に帰ってたし!!寂しがってるってきっと!!!」
「三橋とは送ってった後に遊んでるぜ。」
「・・・・・・・・・ど、どこまで元気なの、あんたら。」
「へへっ、すげぇだろ!」

何故か胸を張って誇らしげな田島。
そして当然ながら、やっぱりちっとも分って貰えないの言いたいこと。
どうすればいいんだ。
なんて、ここ数日何度考えたか知れないことを今更思っていると、
その間に焦れたらしい田島はまたしてもさっさとの手を取った。

「っ!ちょ、ちょっと!?」
「これ以上遅くなったらお前もヤバイだろ。チャリ取りに行って帰ろうぜ。」

言いながら、田島はと手を繋いだままずんずんと先へ進む。
その力が予想以上に強くて、結局は奴の後について行く形になった。





「・・・・・・・・・・・田島・・・・。」
「んー?」
「チャリ、が押すから・・・。」
「いいって、いいって!気にすんな!」


って言うか、チャリ(前カゴに荷物有り)を片手で押しつつ、
手を繋ぐって、どんだけ器用なの・・・コイツ。


薄暗い路を田島と二人で並んで歩きつつ、この謎の状況に今更ながら戸惑う
謎の状況。
謎過ぎる状況。

「あ!そーだ、こないだ借りた漫画明日返すな!アレマジで面白かったぜ。
続きがスゲー気になる!!次ももう出てんだよな?」
「え?あ、あれか!うん、もう出てる。その次まで出てる。」
「おお!んじゃまた貸してくれよ!!」
「オッケ。」

あはは。
うふふ。
有る意味和んだ調子で会話が進む。
ホントはこんな筈じゃなかったのに。
今日こそ田島にはハッキリと分かって貰うつもりだった。
送ってくれなくていいってこと。
なのに。
なのに。
何が曲者って、全部田島の性格のせいだ。
野球やってる最中はともかく(これが悔しい位に格好イイんだけど)
普段は能天気っていうか、何も考えてなさそうって言うか、
たまに露出狂かと思う事までしようとする大馬鹿野郎なんだけど、
コイツにはそこに居るだけで周囲を元気に、楽しくしてしまうパワーがある。
それはとてもいいことだし、
だからこそ田島は同性からも好かれる所謂人気者的な感じなんだろうけど。


・・・・このままじゃ、流されてしまうじゃないか!


なんて思いつつ、は咄嗟にぎゅうっと掌に力を込めてしまった。
それは結果的に、田島の手を強く握ったことになった訳で。

「・・・あ・・・!」

咄嗟に視線を田島に向けると、奴は一瞬驚いたみたいな顔でを見た。
その顔が、瞬間的に赤くなる。
いつも馬鹿ばっかやってる田島のこんな顔は初めて見るかも知れない。
と田島の間に妙な沈黙が流れる。
その間にいつの間にか達はの家のすぐ傍まで来ていた。
言うなら今だ。
もう、送ってくれなくていい。
それをさっきみたいに曖昧じゃなくて、今度はハッキリ言えばきっと田島にも伝わる。
そうだ。
ハッキリ、キッパリ、言ってしまえばいい。
今、すぐ。



ピタリ。


はそこで足を止めた。
田島もそれに合わせて動きを止める。
そして奴はその場にの自転車を停めた。


「田島、・・・・あのさ・・・。」「っ!」
「・・・・・・・・・・へ?あ、何?」

と田島の声が被り、は取りあえず奴の話を先に聞くことにした。


「オレ達は!ぜってぇ甲子園に行く!!
「え?あ、うん。い、行こうね!も皆と頑張るよ。」
「おう!!そんで、本当はそうなるまでもうちょい我慢しようと思ってたんだけど、
やっぱ無理だから今言うぞ!!」

顔を真っ赤にしたまま、田島は真っ直ぐにを見つめる。
それだけで瞬間的にの心臓の心拍数が急激に上がった気がした。


何を、言う気だろ…?


そう思った、その時。


ガシッ


「わっ!?」

田島に唐突に両肩を掴まれる



!オレはお前が好きだ!ゲンミツに!」


「っ!!??」


呆然。
は殆ど棒立ち状態で何も言えなくなった。
と言うより、田島に言われたばかりの台詞を理解するのにとても苦労して。
寧ろ、何を言われたのか分からなくて。
気付いたら、田島は自分の荷物を引っ掴んで走り去って行くところだった。


「んじゃあ!また明日な!おやすみ!」


その一言を残して。


その田島の背中を呆然と眺めつつ、どうにか思考を働かせて思った事。
明日も明後日も、田島はを家まで送ってくれるだろう。


そしては。


それでもいいと思ってる。
それがいいと思ってる。


何て都合のいい奴だろう。
ホント現金な女だ。
だけど元々田島と帰るのが嫌だったから断ろうと思ってた訳じゃない。
は結局、決定的な言葉が欲しかったんだと思う。
今日ハッキリ田島に断ろうと思った理由。
それは、友達の冷やかし半分の言葉だった。


―――最近、玲、田島君とよく一緒に帰ってるんだって?もしかして、付き合ってる?

当然はそれを否定した訳だけど、胸の奥で、
田島に対して何か自分でも分からない感情が疼いてたのは確かで。
その気持の正体が、田島の告白で、今、分かった。
はあの時、否定しない理由が欲しかったんだ。
だけどまさか田島が自分を好きだなんて思わなくて、
だからこそ一緒に帰ったりする不自然さが辛くて。

「・・・・・・・・・・・・・・・返事位聞いてけ、ゲンミツに・・・。」

ボソリ。
呟いて。
心拍数上がったままの心臓もそのままに。
はぼんやりと視線を空に移す。
星が一つ、綺麗に輝いたのが見えた。



(END)



□■アトガキ■□
初・おお振り夢でした。
ええー、田島君は何処にいるんでしょうか。自分で書いてるからこそ言えますが、
・・・・・・・む、難しいな!!!想像以上に難しくてあわあわしてしまいました(苦笑)
まさか大型スランプ到来時に新ジャンルに手を出してしまうとは(笑)
ではでは、ここまでお付き合い下さった有難過ぎる姫様に深く深く感謝しつつ、
失礼致します。