「おい、!」

名前を呼ばれて視線を上げたその先。
しゃがんだ状態じゃまともに顔すら見えない位の長身。
一瞬ぽかんと数秒ほど視線を上に彷徨わせて、だけど声だけで誰なのかは分かって居た。

「花井、どうしたの?」
「いや、それはこっちの台詞だろ。何やってんだよ、お前。」

言いざま、花井は少しだけ身を屈めての足元に散らばっているプリントの一枚を手に取った。
は取りあえず廊下を埋めるようにして落ちているプリントをせっせと拾い集めつつ、花井に答える。

「授業の資料用のプリント・・・、運んどいてくれって頼まれたんだけど予想外に多くてさ。
重いの我慢してたんだけど・・・・・・・・・・・とうとう・・・。」
「我慢できずにバラまいちまったのかよ。つーか誰か他の男子に頼むとかしろよ。」
「丁度暇そうなのが居なかったから。
それに野球部のマネジやって鍛えられたから、これ位ならイケると思ったんだけど。」
「つーかどう見てもイケてねーし。しゃーねーな。」

やれやれ的なニュアンスを含ませて、小さく溜息を吐きながら、
それでも花井はがプリントを拾うのを一緒に手伝ってくれた。
さすが野球部で全員一致でキャプテンに推されただけはある。
が言うことじゃないけど、こう言う状況の人間を放っておけない性分なんだろう。

「で、これで全部か?」
「うん、多分この位の量だった。
一応この辺見たけど落ちてないみたいだし。手伝ってくれてありがとう、花井。
んじゃあ、、これ教室まで持ってかなきゃいけないから。マジ助かった!」

言って、は未だに花井が持ってくれているプリントの束に手を伸ばした。
瞬間。


  スカッ。


「っ!?」


の両手が見事に空振りする。
(言いたかないけどかなり間抜けな格好だった)
それもそのはず。
花井の奴がプリントをから遠ざけたのだ。
更に、アイツはそれを持ってさっさとの教室に向って歩き出した。

「おい、。何遊んでんだ、置いてくぞ。」
「え?えええ!?いやいやいや、いいよ、花井!持って行くから。」
「もう一回廊下にプリントばら撒く気かよ?いいよ、この位オレが運ぶ。」
「・・・え?けど・・・」
「この程度の重さ何でもねぇよ。
大体オレらが毎日どんだけ鍛えてんのかお前だって知ってるだろ。
つーかこの状況で女子に任せるって、どんな男だよ。」

会話を続けながらも花井はスタスタ先へ進んだ。
早足で歩いてる訳でもないのに、それだけでとアイツとの距離が開く。
は慌ててその後を追った。

「マジで有難う。花井ってホント、ジェントルマンだね。」
「ブッ・・・、ンだよ、それは。全然嬉しくねェ。」
「褒め言葉だって。ほら、こないだが牛乳ぶちまけた時も掃除手伝ってくれたじゃん。」
「ああー、あれか。そう言やぁお前バケツもひっくり返してなかったか?」
「げっ、それも思い出したか。うん、その時も助けて貰ったね。」

あは、はははは。
乾いた笑いを響かせつつ、いつの間にか自分がドジっ子属性付けられたみたいで複雑な気分になる。
まぁ元々そう器用な訳でも運動神経が特別いい訳でもない平凡な女子高生じゃあるんだけど、
特にマネジ始めたばっかの頃は妙に力んでて(初めて部活入ったってのもあって)
その分ベタなミス連続させてたのは確かだ。
勿論今でも同じ野球部のマネジの千代には遠く及ばないけど、
それでも最初よりは幾分かマシになった方。
とにかく、何かミスをやらかす度、花井には助けられてた記憶がある。
と言うか、現在進行形でそうな訳なんだけど。

「やっぱ花井はジェントルマンだな、うん。」
「いや、だからンな褒め言葉いらねー。」

とか何とか会話をしている間に、達は教室のすぐ前まで来ていた。

「あ、ここでいい。どうせそこの教卓に置くだけだから。
ホント、感謝!有難う、花井。」
「ああ、別にこん位どうってことねぇよ。ほら、落とすなよ。」
「うん。そんじゃ、また部活で。」

花井からプリントの束を受け取り、落とさないよう慎重に教室に戻る
そのの背中。


「言っとくけどな、。オレだって、別に誰にでも手ェ貸すほどお人よしじゃねぇんだよ。」
「・・・え?」
「振り向かなくていい!つか振り向くな!落とすだろ。」
「ええ?ああ、えー・・・う、ん。」

花井の方に視線を向けかけたところでそう言われ、はまた前方に視線を戻す。


何か、どっちかというと、この方が不自然な気が・・・。

「・・・後、たまたまお前がオレの視界に入るとこでドジやらかしてるとか、
そんな理由でもねぇぞ。」
「・・・・・・・・・・・・び、微妙な表現使うわね。」


明らかにドジっ子☆属性付けられてるとか思えない発言。
だけど何故か、背後から聞こえる花井の言葉に、妙にどきどきしている自分が、居る。

「・・・・目が、追っちまってるから気付くんだよ。お前が何やってんのか。」
「―――――――――――――え?」
「そんだけだ、じゃーな。」


言葉と同時に花井がの側から離れてく気配がした。
は咄嗟に振り返ったけど、どれだけ早足で歩いてるのか、
花井の姿はとっくに廊下の向こうに小さく見えてる状態で。
数十秒。
はプリントの重さも忘れてぽかんと馬鹿みたいに突っ立っていた。



   ・・・・目が、追っちまってるから気付くんだよ。お前が何やってんのか。



ドサドサドサドサッ


それから。
結局。
はまたしてもその場にプリントをばら撒いて、
その場に居合わせたクラスメイトに手伝って貰ってプリントを拾い集めたのだった。


ドジっ子属性☆も、たまには悪くないかもしれない。
なんて、も大概、現金なヤツだ。


(END)


おお振りキャラって書くの難しいいいいいい!
私の最愛は浜田なんですけど、き、きっと書けない。
阿部、榛名も好きですけど、既にこの夢の相手キャラである花井も凄い苦労しました。
初おお振りの田島夢もかなりてこずったんですけどね(それでも書こうとする自分に笑います)
ではでは、ここまでお付き合い下さった激しく貴重な姫様(日本語間違ってる)誠に有難うございます!