体が。
体中が、痛い。
イタイ。
痛い。
いたい。
ヒュゥーっヒュゥー。
の喉。
おかしな音を立てて、鳴っている。
ぼやけた視界。
曖昧な意識。
動かない体。
ざわざわざわ
若い女の子が車に跳ねられたぞ!!!
救急車を!!救急車を呼べ!!
ザワザワザワ
遠くで誰かが叫んだ。
違う。
実際は、のすぐ傍で叫んでいるのだ。
だけどには、随分離れた場所から声が聞こえているように感じていた。
ドック・・・。
ドック・・・ ドック・・・・
ドック・・・・ ドッ・・・ク・・・
すぐ傍で叫んでいる人の声よりも、自分の心臓が鼓動を刻む音の方がいやに耳に響く。
だけどそれは、限りなく弱弱しくて頼りない音。
更に混濁する意識。
体温が急激に下がっているような感覚がある。
ひゅぅひゅぅと鳴っていた不自然な喉の奥からの音さえ、小さくなっていく。
死にたくない。
毎日が特別幸せだった訳でもない。
悩みだってあったし、何もかも嫌になることだってあった。
楽しいことばかりじゃない。
嫌なことの連続する日々だってあって。
だけどそれでも。
は、死にたくない。
は。
生きたい。
生かして、神様。
ドック ドック ドック・・・・―――
、は。
ドッ・・・・・・ク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドッ―――――――――
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「確保!よっしゃ、どうにか間に合いそうだねぇ。助かったぜ!マジで助かった!」
「・・・・・・え?え?え?な、何!?ここ。」
意識が戻って目を覚ました瞬間。
余りにも唐突に、はそこに、居た。
そこ。
まるでシャボン玉の表面みたいにぐにゃぐにゃ七色の光が揺れ動きながら周囲を包むその場所。
どちらが右で左なのか。
上か下なのか。
平衡感覚がなくなりそうなおかしな場所。
体は中に浮かんでいるみたいでもあり、しっかりと床に足がついているようでもある。
おかしな、おかしな感覚。
だけど何よりもおかしいのは。
「おっと、まずは挨拶しとくか。初めまして、さん!ようこそ、次元の狭間へ!」
にっこり。
満面の笑みを浮かべた怪しすぎる男。
長身に金髪、切れ長のタレ目。
顔のつくりは悪くないけれど、が言いたいのは勿論そんな事じゃない。
「・・・何なの、あなたは・・・。それにここは何処よ・・・!?」
心底訝しんだ表情を隠しもせず、は眉間にしわを寄せて男を見た。
の名前を最初から知っていると言う事実も含め、全てが怪しすぎる。
「ああー、まぁまぁ、そうビビらずに。ってのも無理か。
さっきも言ったけど、ここは次元の狭間。そんで、俺は次元と時空の歪み修正屋さん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
どうしよう。
随分おかしな場所に、随分頭のおかしな男に捕まってしまった。
は警戒心も露わに、一歩、一歩と、男から距離を取る。
不安定にも思える足元は、それでも意外にもしっかりとと男の間を放してくれた。
辺りには未だに七色の光がグニャグニャと曲がって見える不思議な空間が広がっている。
「・・・うん、あんたが今俺をどう見てるかはその顔でよく分かった。
ま、そりゃそうだわな。けど今はその誤解を解くよりももっと重要なことがある。
俺にもあんたにも時間がない。だからそのままでいいから聞いてくれ。」
「をここから出して。」
「それは無理。ああ、話を聞いてくれたら出してやれるか。
これ以上近寄る気はないから話だけでも聞いてくれよ。
そっから後は・・・・俺が説明するまでもねぇ、あんたは自分で分かるだろうしな。」
一人、納得するように何度も頷くと、男は再度、あたしに視線を向けた。
「(23)X商事勤務。君は今日の午前7時15分、出勤途中に車に跳ねられ死亡してる。」
ついさっきまでの軽い口調とは裏腹に、あくまでも淡々とした事務的な声色で男はにそう告げた。
一瞬。
の体と思考が同時に凍りつく。
それでもはどうにか唇を動かし、それに反論しようとした。
「―――――――――な、にを・・・・!」
だけど、掠れた声が音にならない。
ハッキリと否定しようとしているのに。
はここに居る。
それが生きていると言う何よりの証拠だ。
だから反論出来て当然の筈。
なのに。
「残念だけどこれは事実なんだ。こっちの世界のあんたの寿命はここで終わり。」
「うそ・・・。嘘だ・・・!!」
「ここに来る直前の記憶があるならそっちの方が納得いくんじゃねーの?」
「っ!!??」
瞬間。
蘇る。
体中に感じた激しい痛み。
ぼやけた視界。
不自然に音をたてて鳴っていた喉。
そして、自身の、心音。
意識が遠のいた最後の一瞬。
ドッ・・・・・・ク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドッ―――――――――
あれは。
あの音は。
の鼓動が、止まった、音。
「は・・・あの時、死んだって言うの・・・?」
「ああ、そうだ。けど安心してくれ、あんたが死んだのはこっちの世界の話だ。
別の世界じゃあんたは生きてる。とゆーか、生きててもらわなきゃ困る。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?何の話?」
「お互いの為になる話さ。さん、あんた、死にたくないんだろ?」
「・・・は、・・・・」
ちっぽけな幸せ。
憂鬱な日々。
僅かな幸福。
不愉快な毎日。
それでも、が最期、あの瞬間に願ったのは。
「生きたい、・・・・わ。」
無意識に、だけど思いのほかハッキリと、はその一言を口にした。
生きたい。
は、まだ。
の告げたその一言に。
男は、満足げな笑みを零して言った。
「そうこなくっちゃな!!!決まったぜ、これで何の遠慮もなく、あんたを送り出せる!」
(プロローグ2へ続く)
アトガキ
ヴァンパイア騎士の異世界トリップシナリオ始動。
オリキャラは共通シナリオにのみ登場するんですが、思ったより性格が濃い感じに。
脇役も脇役なので名前を付けておりませぬ。この為だけのオリキャラ。
取りあえず共通プロローグは2で終わりで、その後はヴァンパイア騎士プロローグに繋がります。