「まぁさっきも言ったとおり、俺は次元と時空の歪みを修正してる。
毎度毎度どっかで歪みが生じるから、
マジで恐ろしく忙しい上にちょっとのミスが後々響いてきたりする訳だ。
それでもある程度ならデカイミスになったりはしねーもんなんだけどな。」

男がそう説明を始めた。
はそれを半ばぼんやりと眺める。
この男の言う事を全て信用していいものなのか。
大体漫画やドラマの世界じゃあるまいし、次元や時空なんて馬鹿げている。
ゲームの設定でもありそうな話だ。
はやっぱり性質の悪い電波男に捕まったんじゃないだろうか。
いや、それ以前にこれはもしかして夢なのかもしれない。
が、今ここに居るが、交通事故で死んでしまっているなんて。
だけど、あの『記憶』は、確かにのもので。
そう、あの瞬間を思い出すだけで、体中にガタガタと震えが来た。
男はそんなの胸中を知ってか、知らずか、の反応も確認することなく説明を続ける。

「今回もミスが分かってすぐにあれこれ修正加えてみたんだが、何度やっても駄目だった。
データも確認したし、計算で行くと間違っちゃいねぇ筈なんだけどなぁ・・・、っと話が逸れたな。
つまり、平たく言うと、俺のミスってのがその世界でまだ寿命の来てない人間を、
早死にさせちまうことになったって訳なんだ。」
「早死・・・・・・・・・・・・・・・・・まさか、それって――――――――――――――――――――――」


と言う言葉を続けるより早く、男は肩をすくめて苦笑した。
否定とも肯定とも取れる曖昧な態度。

「残念だけど、この世界(・・・・)のあんたの寿命は23歳までだ。でもマジな話、ハッキリ否定もできねぇな。
・・・さん、あんた、パラレルワールド、って知ってるか?」
「ああ、SFなんかでよく聞くあれよね。
異世界っていうか、ここ以外にも別の世界が存在してどうのって言う。」

漫画やゲームじゃ珍しくない話だ。
もそう言う話は嫌いじゃない。
どちらかと言うと好きな部類だ。
だけど。
まさかこの電波男。

「そうそれそれ。修正が上手くいかずに俺が早死にさせちまったのは、そのパラレルワールド、
あっちの世界(・・・・・・)のあんただよ、さん。何と皮肉なことに、向こう(・・・)の彼女も交通事故に遭うんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「本当は75までは生きる筈のあんたをたった17歳で死なせちまった。
しかもあっちの世界じゃあんたは結構特殊な存在で、
このままじゃ確実に歪みが色んな場所に響いて来ちまう。
だから多少強引でも俺は彼女に75までは生をまっとうして貰わなきゃ困るって訳だ。」


夢、だ。
これはきっと夢。
この期に及んで、交通事故のあの記憶が嘘だとは思わない。
あれは事実、の身に起こったことだろう。
だけどきっと、これは、今目の前で起きているコレは、意識不明のが見ている夢に違いない。
でなければ、こんな話、到底信じられる訳もない。
次元。
時空。
パラレルワールド。
そう言えば最近読んだ小説にそんな設定の話がなかっただろうか。
ああそうだ、きっとそう。
あれの影響だ。
うわ、恥ずかし。
、自分が死にそうな時に、こんな夢を見ているなんて。

「俺はあんたをあっちの世界(・・・・・・)に送り届ける。
少し説明しとくと、向こうじゃあんたはまだ17歳で、こっちの世界とはちょっと違う生活送ってる。
最初は色々苦労すると思うけど、あんたの寿命だけは俺が守るって約束するから、ヨロシク頼むぜ。」

電波男、基、次元時空修正屋は何やら一人で話を進めてまたしてもにっこりとほほ笑んで見せた。
これが夢の中だと思うと、このおかしな空間も、このぶっ飛んだ設定も納得がいく。
だって、これは夢なんだから。
夢だから。
どんなに感覚的にリアルであろうと。
これは夢なんだから。


「ま、6歳も今より若返れるんだ。青春謳歌できちまうかもしれないぜ?
・・・・・まぁ、ただし、こう・・・色々苦労するだろーけど・・・な。」
「?何?」
「え!?いや、こっちの話、こっちの話!とにかく急いであんたを送る。
ちょっと説明に時間取り過ぎたから、急ごう。
この歪みにだけ集中してられるほど俺も暇じゃねーしな!」

言いざま、タレ目の時空屋がの手を取る。
ついさっきまでのなら、この手を確実に振り払っていただろう。
だけど、これは夢。
抵抗するのも馬鹿らしい。
の見る夢にしてはかなり作り込まれたSFもどき。
意識が戻る瞬間まで、流れに任せるのも手かもしれない。
本当は、早く目覚めてしまいたいけれど。

「向こうの世界の知識だけど、
実は俺がこっそり自然にあんたにも分かる様に、
あんたが自分の世界で生きてる間に仕込みをしといたんだ。」
「?へぇ、そうなの?って言うか、知識って・・・そんな特殊な場所な訳?」
「うーん、そうだな、世界観が全部激しく違うかっつーと・・・。ま、それは向こう(・・・)に行けば分かるだろ。
ほら、あの光が扉代わりだ。あれに向かっていけばいい。」

七色の光がぐにゃぐにゃと曲がり、交錯する中。
その奥。
一部だけ、真っ白な光が差している部分がある。
時空屋はの手を離すと、その光の中へ進む様にを促した。
は一歩。
また一歩。
光へと近づく。


ドック・・・ン。


「・・・・・・・・!」
「どうした?」
「・・・・ううん、別に・・・。」


一歩。
近づく度。



ドックン。
ドックン。


鼓動が聞こえる。
の、心音が聞こえる。


ドックン、ドックン。
ドックン。


これは夢。
これは、夢。


だけど、本当に?


どっくん。どっくん。どっくん。
どっくん。どっくん。どっくん。



これ(・・)が、夢、なの?




―――――カッ!!!!



やわらかな光。
白くあたたかな光。
を包み込む。



これは、が異世界へ足を踏み入れることとなる少し前の物語。
そして、これから。
この先。


それが、が、彼らと出会ってからの、物語だ。


(プロローグ3へ続く)



アトガキ
とりあえずオリキャラ時空屋くん登場はここで終わり。