「・・・暁、ごめん、休講なのにわざわざ来てもらって。
枢先輩とかに知られたら絶対ヤバいわよね、これって・・・。マジごめん。」
「そうだな、寮長に知られたらどうなるのかを考えるとさすがに俺も怖い。」
「だ、だよね・・・。余りにも危険指数高い我儘でごめん。」
「いや、いいさ。その危険を全て承知でここに来ているのは俺だし、
こうでもしないと時間が取れないのも事実だからな。」
言って、暁はフッと瞳を微かに細めて笑った。
日曜日の今日は昼間部、夜間部共にお休み。
今校内に居るのは多分部活動の生徒達や教師だけだ。
そしてと暁が居る場所は、現在は殆ど利用されていない倉庫状態の空き教室。
因みに今は夕方。
さすがに真昼間っから思いっきり夜型の吸血鬼である彼を叩き起こす訳にもいかず、
校内の見回りが始まる1時間半程前にここに来てもらった。
理由はが暁に数学を教えて貰うため。
現役高校生だった頃はそれなりに数学も出来ないと言う程ではなかったんだけど、
はある意味で卒業後6年のブランクがあり、その上この世界で高校生としてやってきてた時の記憶もない。
そのおかげで授業について行くのも一苦労と言う教科も幾つかあった。
(とは言っても、優姫程酷い点を取った事はない。)
舞踏祭に関わる学年末まではまだ時間がある訳だけど、
その前までには委員長に目を付けられない程度の学力を身につけておきたかったからと言うのが大きな理由。
だけど暁と二人きりになる時間を作りたかったと言う邪な心がなかったとも言い切れない訳で。
勉強会(ってのは大げさだけど)と言えどもこうして誰の目も気にせず会話できるのは嬉しかった。
「・・・で、X=-5・・・と。どうにか解けた・・・。」
「ああ、正解だ。そうだな、こっちのページの問1〜5までも解いてみてくれ。やり方はさっきとほぼ同じだ。」
「ん。」
幾ら付き合っているとは言え、甘さの欠片もないのはしょうがない。
それが寂しくないと言えば嘘になるけど、わざわざ暁にここまで来て貰った理由はあくまで勉強を教えて貰う為なのだ。
・・・って言うか、今の状況だってにとっては十分幸せすぎるんだし、
贅沢なこと考えすぎってヤツよね・・・・・。
雑念は振り払って勉強に集中しよう。
そう思いつつ、参考書のページをペラペラと捲ったその瞬間。
「あ・・・!」
「!?」
指先。
紙の端でスパっと縦に切り傷が出来た。
ヤバ、と思った時にはもう遅くて。
ツキンとした独特の痛みと一緒にジワリときり傷に沿って血が滲み出てくる。
同時に、の隣に座っていた暁が身を硬くしたのが分かった。
「・・・・・・・・暁・・・。」
「俺なら平気だ・・・。それより早く手当してこい、続きはそれからの方がいい。」
本来ならこの程度のきり傷は手当てするまでもなく、ティッシュで指先を抑えて血が止まるまでは放置している。
だけど、吸血鬼である暁が側に居るなら話は別。
彼の言うとおり、さっさとそれなりの対処をすべきなのだ。
だけど。
「・・・・・・・・・・。」
「・・・、お前の血の匂いは他の人間の物とは違う。特に俺には・・・・。頼むから早く―――」
言いかけた暁の唇に、は既に血が伝い落ちそうな指先を軽く押し当てた。
「舐めて、暁。」
「・・・・!?」
「キミに、の血の味を知ってほしい・・・。」
驚いたように見開かれた彼の瞳に、ジッと視線を向けてはそう告げた。
「・・・俺は・・・。」
「お願い。」
本当は、も分かってる。
校則がどうとかそう言った意味でなく、暁がの血を吸おうとしない理由。
我慢してくれている理由。
それはを大切にしてくれているからだと。
分かっていても、それでもは。
赤い雫が傷を辿る様に流れ、やがて床に向かって滴り落ちようとした、その時。
「・・・・・・。」
「・・・・・・・・っ・・・・・・。」
暁が、の指先を、口に含んだ。
同時に感じる、ぬらりと濡れた生温い舌の感触。
それから暁は傷口を確かめるように舌を動かし、滲み出ていた血を舐め取っていく。
そうしている間に、は指先が少しずつ熱を持っていくような錯覚に陥っていた。
「暁・・・。」
やがて彼はゆっくりとの指先から唇を離した。
色素の薄い暁の瞳が、何処か恍惚感を湛えた色を滲ませている。
は椅子から立ち上がり、彼の頬を両手で挟み込んだ。
「・・・?」
「キスしていい・・・?」
そう問いかけながら、は座っている彼の方に身を屈め、至近距離まで顔を寄せた。
「・・・・・・・・・・・・・・・いや、・・・俺からさせてくれ。」
言いざま、暁はの腰に腕を絡めると、自分から距離を詰めての唇に彼の唇を重ねた。
血を口にしたばかりだからだろうか。
暁の唇は驚くほど熱を持っている。
の唇を割って口腔内に入り込んできた彼の舌は、それ以上に熱かった。
絡み合う舌と舌。
鉄錆の味がじわりとの口内に広がる。
暁の焼けつくような湿った吐息が喉を焦がし、達は貪る様に相手の唇を求めた。
お互いの口内から生じたとろみのある唾液はの血液と溶け合い、まるで媚薬のように脳内を犯す。
やがてそれを飲み下すように、暁はゴクリと小さく喉を鳴らした。
「・・・・お前があんまり煽るから・・・理性が追い付かないところだったな・・・。」
どこか熱を含んだ声で暁が低く呟く。
は思わず苦笑した。
「勉強どころじゃなくしたわ。」
「・・・そうだな・・・、だが・・・俺としてはこんな脱線なら大歓迎だ・・・。」
暁はそう言って笑い、さっき紙で切ってしまったの指先に軽くキスをした。
「・・・・・暁・・・・。」
そうだ、も結局こう言う展開を望んでいた。
覚悟していたこととはいえ、彼と二人きりになれるチャンスは自分たちでどうにかして作らなければ滅多にない。
暁と付き合い始めて2ヶ月弱。
その間に二人になれた回数なんて片手で事足りる程度だ。
「ただし・・・余り行き過ぎると俺自身責任を取れねぇから、これ以上は止めておく。」
「・・・・・・・・・・え?」
暁はそう口にすると、を自分の腕から解放した。
咄嗟には不満の表情を見せてしまう。
不満と言うよりは、寂しいと言うべきなのか。
今の状況が贅沢だなんて言っておきながら、それはやっぱり自分にそう言って無理に納得させているだけ。
は結局暁に触れたくて、触れて欲しくて堪らないのだ。
「そんな顔するなよ・・・。お前を・・・放してやれなくなる・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。だったら放さなきゃいい・・・。って言うより、が放して欲しくない・・・。」
「・・・。」
暁は椅子から立ち上がると、いつもよりほんの少し強引にを抱き寄せた。
「あんまり可愛いことを言って俺を追い詰めるな・・・。
これでもギリギリなんだ・・・、特にお前の血の味を知ってしまったばかりの今は・・・。」
微かに熱を含んだ暁の低い声。
の鼓膜を震わせて、同時に心臓がひと際大きく胸を叩く。
「・・・分かった、今日はこれで許す・・・。」
言って、は背伸びをすると彼の唇に軽くキスをした。
暁は一瞬驚いたような表情を見せ、それからすぐに小さく笑った。
「校内の見回り時間が迫っていなければ、・・・お前が嫌がっても俺はお前に触れていたかもしれない・・・。」
その台詞に、は思わず苦笑する。
だったらは見回りの先生の方を恨むんだけどね。
なんて心の中で思いつつ、いつの間にか暁の言うとおり、後15分位で見回りが始まりそうな時間だと気付いた。
は急いで勉強道具を片付け、その後月の寮に戻る彼と別れを告げた。
暁が教室を去ってから、ひとり、ぼんやりと既に血の止まった指先の傷口を見つめた。
そして、はそこにゆっくりと舌先を這わせる。
どうしてだろう。
もう血は止まっているのに。
甘い甘い、媚薬の味が、した。
(END)
アトガキ
はっはっは!!!これ甘いのか!?どうなんだろおおお(壊)
と言うことで、アンケでヴァン騎士にコメント頂いて嬉しくて執筆した暁夢。
えーと、すみません、管理人の書く甘い夢・・・糖分の配合指数が何か偏ってしまいました(遠い目)
しかも暁2度目ですが、イマイチ性格掴めてないし・・・。
ですが私が楽しんで書いたのだけは間違いないです(笑)
しかし読み直すとクッサイ文章にビックリですが、そこはそれってことで!(逃走)
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様に溢れんばかりの感謝を!本当に有難うございます。
**あ、のんびり更新目指していますので、更新催促等はご勘弁いただけると幸いです〜。