「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。この状況は、何?」
目を覚ましてすぐにはが寝かされているベッドのあるここが何処なのか理解できなかった。
だから一応場所を確認しようと体を起こして見たんだけど。
「英が隣で寝てる・・・意味が分かんないし。」
そう、の隣には英がすやすやと気持ちよさげな寝息を立てて眠っていた。
ふうわりとシーツから香ってくるラベンダーの香りが心地よくの鼻をくすぐる。
それで不意に思い出した事があった。
確か“リネンはラベンダーの香りがしないと嫌だ”とか何とか、
家出してる時に英が口走ってなかった・・・?
ってことはもしかしてここ・・・。
いや、寧ろもしかしなくてもここは英と暁の部屋じゃないだろうか。
その証拠にの居るベッドの反対側にも同じようなベッドがもう一つある。
それに周囲を見渡すと、何となく前の世界で見た漫画の中にこんな家具が配置されていなかっただろうか。
英が無防備に眠っていることから見ても、ここは月の寮の彼らの部屋なのだと見て間違いないだろう。
ただし。
何でがそこに寝かされてて、しかも何で一緒に寝てるんだ!!??英!!
あれだけを毛嫌いしているくせに、一番侵入させたくないだろう所にを寝かせて、
しかも自分も一緒に寝ている、その意味が分からない。
を女扱いしているのかどうか以前の問題だ。
更にちょっとどうかと思った大きな理由がもうひとつ。
「・・・・・・・・枢の子供の頃の写真・・・よね、これ、多分・・・。」
そう、恐らく見た目の面影からして枢の幼少時代の写真だろうそれを、いやに大事に手にしてすやすやと眠っている英。
「・・・・・・・・・う・・・ん・・・・。ん・・・?」
「あ、起きた。」
「わあ!?な、何でお前がここに居るんだ!? !?」
「・・・・・・・・・・・・・・いやいやいや、それある意味での台詞なんだけど!!」
ようやく目覚めた英は、の姿を視界に入れるなり勢いよく飛び起きた。
即座、ツッコミをいれる。
英は暫くの間殆ど睨みつけるみたいにジッとを見つめている。
「ああ、そうか、・・・お前あの時倒れたんだったな・・・。」
「え?あ、うん。それでどうして・・・。」
「 、玖蘭寮長に感謝しろ!あの方はお前の為にわざわざ力を使って熱を下げて下さったんだからな!」
「ええ!?そ、そうだったんだ。それは・・・本当に申し訳ないことを・・・。
って、英、枢先輩の写真、しわが寄ってるけどいい訳?」
「え?わあああ!!」
写真を手にしていたことを忘れていたのか、写真は見事に握りつぶされていた。
余程大切な写真らしい。
英の慌てっぷりは普通じゃない。
「・・・英・・・キミって・・・。」
「な、何だよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ううん、ひとそれぞれ、踏み込んで欲しくない部分ってあるものよね。」
「何勝手に納得してるんだよ!?言っておくけどな、これは別におかしな意味で持っている訳じゃないぞ!?
僕は純粋に尊敬と憧れの気持ちでこうして隠し持っているだけだ!」
言い訳すればするほどに、微妙なんだけど、英・・・。
有る意味彼と本当に出会う以前からこう言うとこがあるのは知ってたけど、
本当の本当にこう言う性格だったんだと心から実感してしまう。
「言っておくけどこの写真はやらないぞ!」
「いや、いらないからさ、普通に。」
「どうしても欲しいと言うなら僕の写真をやってもいいけどね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
人の話を聞け!!英!!!
と言うか、達は何でこんな状況でこんな会話してるんだろう。
絶対に何か間違ってると思う。
ん?こんな状況と言えば・・・。
「ねぇ英、誰がここまでを運んでくれたの?
それにキミ、授業を抜けてていい訳?」
余りに余りな展開過ぎて聞きそびれてしまっていたけど、今は夜間部は授業中の筈だ。
普通に考えれば彼がここに居るのはおかしい。
「・・・・・・・・・。玖蘭寮長に許可は取ってある。」
「そう、なんだ・・・。」
よく許してくれたな・・・。
ベッドで休ませて貰っておいて何だけど、咄嗟にそんな事を思ってしまった。
「で、をここに運んでくれたのって誰?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「まさか枢先輩じゃ・・・「そんなことある筈ないだろう!?あの方にそんな真似させられる訳がない!」
「・・・・・・・・・そ、それはまぁ確かに、じゃあ・・・ぜ「ああーもう!いい加減分かるだろう!?頭の悪い奴だな、僕だよ!」
苛立たしげに叫ばれた英の台詞。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
その言葉に数十秒間、たっぷりしっかり、固まる。
え?え?え?ええ??ええええええええええええ!!!???
「英が・・・・・を・・・、ここまで運んだの?」
「だからそうだって言ってるだろ。
・・・・それで授業が終わるまでの間だけ、お前をここで休ませることになったんだ。」
正直とても信じられない話だけど。
でもこの状況からして嘘じゃないだろう。
「・・・有難う、それからごめん、心配掛けて。」
「フン、僕は別にお前の心配なんかしてないさ。だけど、
わざわざ玖蘭寮長にお力を使って頂いたんだ、僕が何もしない訳にもいかないだろ。」
いまいち理屈が通っているのかいないのか分からないことをぶつくさ口にして、
彼はから視線を逸らした。
「・・・それでもとにかく有難う。今は無理だけど、近い内何かお礼をするから。
ここに運んでもらった上にベッドまで借りたんだし。」
「いらない。大体お前程度に出来ることなんて僕には簡単に出来ることばかりだろ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?いや、まぁ、うん、それを言われると・・・そうなんだけどね。」
確かにまったくその通りだ。
大体英は吸血鬼の階級で言えば並の貴族よりは上だし、
性格云々はさておきエリートと言われる位の能力だってある。
言ってしまえば凡人なが彼に出来ることなんて殆どないに等しい。
だけどそれはそれ。
お礼ってのは気持の問題と言うか、とにかくその気持が大事なんじゃないかと思うんだけど。
まぁでも、やっぱり英の言う通りでもあるとは思う。
「じゃあ何かに出来そうなことで役に立てることがあったらいつでも言って、
どんな形でもやっぱお礼をしておきたいし。」
「・・・・・・・・・・特にないと思うけど、ま、覚えておいてやるよ。」
素っ気なく言い放ち、彼は小さく欠伸をした。
つられても欠伸をする。
「・・・そろそろ戻るぞ。早めに向こうに行っておかないと、僕が玖蘭寮長にお叱りを受けるんだからな。」
「分かった、有難う、英。」
「別に・・・。」
英がベッドから抜け出たのに続き、もベッドから離れることにした。
その時。
シーツに足を引っかけ、は危うく正面から床に激突しそうになる。
「っと、何やってるんだ、。体はもう本調子の筈だろう、どこまで鈍いんだよ。」
そこを抱きとめてくれた英は、呆れたように言った。
こ、こいつ・・・。
いやいやいや、助けて貰ったんだから・・・!
「ごめん、ありが・・・・。?英?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
お礼を言い掛けて、彼の様子がおかしいことに気づく。
の体を抱きとめたまま、英の動きは停止していた。
さすがに二人きりの室内のこの状況はマズいんじゃないか、なんて考えていたその時。
グイッ
「っ!?」
力一杯引き寄せられたかと思うと、次の瞬間には、の体は再度、ベッドに沈められていた。
見上げるとすぐに、英の姿が目に映る。
即座、身の危険を感じた。
女としてと言うより、人間としてと言った方がいい。
「はな・・・「、お前が僕の為に出来ることをひとつ、思い出したよ。」
嫌な予感がした。
と言うか、これはもう、確信に近い、
この先の、台詞の内容。
「血を吸わせてくれることなら、お前にだって出来るよね。」
案の定、英はそう口にした。
瞬間的に、は身を硬くする。
だけど、確かに英の言う事も一理あるのだ。
が彼に出来ること。
血を吸わせることなら、にも出来る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいわよ。」
「・・・・・・・・・・何?」
「血、・・・吸っても・・・、いいって言った・・・。」
「お前・・・・本気で言ってんの?」
コクリ。
は無言で一度、小さく頷く。
英はを見下ろしたまま、瞳を一瞬大きく見開いた。
「本気で吸うぞ、いいのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。いいわ・・・・・・・・・。」
「・・・お前って本当に・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・何でもない・・・・・。」
言って、彼はゆっくりとに覆いかぶさってきた。
そして、の首筋に顔を埋める。
それから肌をなぞる様にしてねっとりと舌を這わせ、唇を押し当てた。
ビクン。
既に小刻みに震えていたの体が大きく跳ねる。
怖かった。
怖くて怖くて。
今にも逃げ出してしまいたい位に。
だけど。
「・・・・・・・・・・・・っ。」
の肌に、英の牙の先端が軽く当たる。
同時に彼の湿った吐息がの首筋に吹きかかった。
そして、覚悟を決めた、その時だった――――――――――――
「バーカ!・・・本気で吸っちゃうわけないだろ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・え?」
プイッ。
彼はから視線を逸らし、さっさとベッドから立ち上がる。
それからまた口を開いた。
「優姫ちゃん時の事もあるし、バレたら今度は前よりもっと重い処分を受けなくちゃならなくなる。
それにこんな所で吸血行為なんてしてみろ、その瞬間に皆がここに踏み込んでくるに決まってるだろ。
この寮内に居るのは皆吸血鬼なんだからな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、何、じゃあ今の・・・・。」
「からかったんだよ・・・。」
言いざま、英はそのままさっさとドアに向かって歩いて行った。
は少しの間呆然とした後、慌ててベッドから起き上がると、その後を追う。
英はからかっただけだと言ったけど、それが本当なのかは分からない。
正直、からかわれたと言われてムカついてない訳でもない。
だけど、そんなことより驚いてるのは、何処かでガッカリしてる自分が居ることだ。
英に噛まれてしまうと思ったあの時。
は、その瞬間を心のどこかで期待していたのかもしれない。
確かに・・・バカかもしれない・・・。
それから授業が終わって皆が戻ってくるまでの間、と英は一言も会話を交わさなかった。
気のせいかもしれないけれど。
その間中、噛まれてもいない首筋が、妙に熱を持って疼いていた。
(END)
アトガキ
はあああああああ!2度目の英!やっぱり難しかったです…orz
もう自分で言うのもなんですが、英はどこに居るんだ?(涙)
でも執筆してる最中は楽しかったです。
因みに写真ネタは某動画で仕入れてきました。
アニメは見たことないけど、ドラマは聴けるんだな!(笑
ではでは、ここまでお付き合い下さった貴重な姫様方、誠に有難うございます。
失礼致します