「・・・・・・・・ん・・・。」
ゆっくりと瞼を開く。
ぼんやりとした視界が、徐々にしっかりしてきた。
まずが目にしたのは、見覚えのない天井。
数秒の間そこに視線を彷徨わせて、
そしてどうやら自分がかなり質のいいベッドに寝かされているのだと気付いた。
「目が覚めたのかい?ちゃん。」
「・・・・・え?一条先輩?何で・・・。」
「ん?何故ってここが、僕の部屋だから。」
「あ、そうなんだ・・・。」
「そうそう。」
「――――・・・・・・・・・じゃなくてええっ!!」
ベタ過ぎる会話のノリに思わず乗ってしまったことを密かに後悔しつつ、
は体を起こして再度、一条に質問することにした。
だけどそれよりも先に彼が口を開く。
「ははっ、分かってるよ。どうして君がここに居るのか聞きたいんだろう?
ちゃんは覚えてないかもしれないけど、君はあの後倒れちゃって、
僕がここに運んで一旦休ませてあげることにしたんだ。
枢には了解を取ってるから大丈夫だよ。
残念だけど、授業が終わるまでの間だけだけどね。」
「・・・・・・・・・・・・・・そ、そう、だったの・・・。
って、一条先輩授業に出なくていい訳!?こんな、凄い迷惑かけて・・・!」
思わずベッドから出てしまおうとするを一条は軽く手で制した。
そしてふんわりとした微笑を浮かべる。
「言ったでしょ、枢には了解を得てるんだ。それに君の事を迷惑だなんて思ってないよ。」
「一条先輩・・・。」
「不謹慎だけどちょっと役得だって思っちゃったしね。」
いつも絶えない微笑。
人当たりのいい明るい態度。
実を言うと、リアルに会うなら結構食えない奴だろうとは思っていた。
実際にそれは多分、間違いじゃない。
だけど、一条が優しくて気を遣うのが上手いと言うのも事実で。
現に、私の心は今、軽くなってる。
「体調はどう?枢が熱を下げてくれたから、眠る前よりはいいと思うんだけど。」
「あ、それは・・・確かに、凄く楽になってる・・・。」
「そっか、それなら良かったよ。顔色もさっきよりはいいみたいだしね。」
って言うか、枢にも迷惑かけたんだ・・・。
後でお詫びとお礼を言っておかないと。
・・・んん?いや、それも勿論だけど・・・その前に・・・
「ねぇ・・・一条先輩・・・ここまでのこと運んでくれたのって・・・。」
「ん?ああ、僕だよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?え?え?一条先輩が!?」
「そう、僕。おかげで色々と役得だったよ。ちゃんって柔らかくて抱き心地いいよね。」
言いながら、思いっきり笑顔を見せる一条。
台詞は明らかにセクハラなのに、彼が口にすると全然そんな風に聞こえないのが不思議だ。
「・・・・・・・・・、重ね重ね、ご、ご迷惑、おかけしました。まさか一条先輩が運んでくれたとは思わなくて・・・。」
「うん、本当はさ、錐生君がちゃんを運ぼうとしてたんだけど、咄嗟に僕が運ぶって言っちゃったんだよね。
君を抱きとめたのは僕だったし、何より君を他の誰かに任せる事が出来なくてさ。」
「え?」
「・・・それにこの部屋で君を休ませようって言ったのも僕だしね。だからちゃんは気にすることないって。」
再度、一条がにこにこと笑う。
どこまで本気にしていいのか。
いや、全部本当のことだろうけど、そう言う意味ではなく、
深読みしてしまいそうな事を平気で口にしていることに彼は気付いているのだろうか。
と言うか、故意にそう言う風に言ってからかっているのだろうか。
「・・・おっと、もうそろそろ授業が終わっちゃう時間かな。
残念だけど、君をずっとここに閉じ込めておくわけにもいかないしね。
個人的にはそうしたいけど、そうすると錐生君や優姫ちゃんに怒られちゃうかな。」
さっきと同じ調子で笑い続けつつ、一条は言った。
やっぱり食えない男だ。
こっちがその一言一言にどきどきしているのを分かっているのだろうか。
「・・・・立てるかい?良かったらまた僕が君をだっこして・・・「結構!!」
言いざま、は素早い動きでベッドから抜け出した。
「うわぁ・・・即答?いや、でも・・・うん、元気になったみたいで良かったよ。」
「・・・枢先輩にもお礼を言わないと。でも、その前に一条先輩。」
「ん?」
「を運んでくれた上にベッドまで借りたんだし、近い内お礼させて貰います!
・・・・有難う、それから・・・心配掛けてごめん。」
「ええ、いいよ、そんなの。それに何度も言うけど、全然迷惑じゃなかったよ。
まぁ・・・確かに心配はしたけどね。優姫ちゃんもそうだけど・・・君は無理をし過ぎるからさ。」
そう言って笑った一条の顔。
さっきまでの明るさ全開のものとは違い、柔らかくて優しい眼差しが滲んでいる。
「うん、今度からは気をつける。けど、やっぱお礼はさせて。
さすがにここまでして貰っておいて何もしないってのも・・・。」
「そっか・・・じゃあ、僕へのお礼はちゃんのちゅーがいいな・・・。」
台詞と一緒にポッ、とばかりに頬を赤らめる一条。
ああ、そうかい。
この期に及んでまだをからかいたいらしい。
ここでが顔を赤くして慌てる様でも見て楽しみたいのだろうか。
とは言え、そうは問屋が卸さない。
吸血鬼の年齢でいえば一条は18歳。ある意味でより年下の筈。
「いいわよ、しようか?」
「・・・・え?」
ほんの一瞬、一条が面喰らったような表情を見せる。
は思わずにやりと笑ってしまった。
こう返されて驚く位だからやっぱりをからかおうとしていたに違いない。
はそのままドアに向かって歩を進めた。
「・・・皆の所に戻らないと、お礼は・・・まぁ、近い内に何か必ず――」
「ちゃん。」
そこまで言いかけたところで名前を呼ばれ、は咄嗟に振り返った。
瞬間。
「・・・ンっ・・・・!」
の唇に触れ合わされた、一条の唇。
優しくて柔らかい口付け。
キスをされたんだと気付いた時には、彼はもうから離れていた。
「そろそろ本当に戻らないと皆に怒られちゃうかな、行こう、ちゃん。」
言って、差し出された一条の手。
は少しだけ躊躇した後、自分の手をその手に重ねた。
の手を包み込むその手は、思った以上に大きくて温かい。
一条はさっきのキスなんてまるでなかったことみたいに普通にに話しかけている。
キスの真意は分からないけれど。
は問い質すことが出来なかった。
ただ、熱がぶり返したんじゃないかと思うくらい、体中が熱く感じた。
(END)
アトガキ
お初一条夢でした。今回もツッコミどころ満載でしたね☆(誤魔化せてない
でも書いている方としては楽しかったです。
ただし・・・やっぱりヴァン騎士キャラは難しい・・・。書き慣れる日が来るのか・・・。
私の書くヴァン騎士夢って需要あるのかが激しく疑問。
だからこそ今ここまでお付き合い下さった姫様に感謝です!
本当に有難うございました!ではでは、失礼致します