「・・・ン・・・やっぱりお前の血は最高だな・・・。ごちそうさま。」
唇の端からツーと流れる赤い雫を片手で拭い、何処か夢見心地な表情で英はそう言った。
は英の胸に体を預けたまま、小さく頷く。
予想していたより少なめの量で済ませてくれたらしく、以前血を吸われた時よりも疲労感はなかった。
それに、正直意外だったのは、英が会う度に血を飲みたがるんじゃないかと心配してたのに、
実は全くそんな事なかったってことだ。
優姫の時のこともあるし、
心を許せば隙あらば吸血されるかもしれないと覚悟してたもちょっと微妙だけど、
それにしても本当に思ったよりも英はちゃんと我慢してくれていると思う。
実際英に血を吸われたのはまだこれで2度目だった。
「英ってもっと自己中かと思ってた・・・。」
「――――・・・・・・・・・。はぁ!?・・・な、何だよ、、急に・・・失礼なヤツだな!」
吸血後の余韻に浸っていたのか、うっとりとした瞳でぼんやりと空中を眺めていた英は、
の台詞に数秒間遅れて反応を示した。
「だってほら、もっと問答無用でがっつり吸うのかと思ってたから。」
「お前、僕を何だと思っているんだ!?そんな愚かな真似はしないぞ!
大体この状況でそう言うムードのない事言うなよな・・・!」
「・・・いや、血を吸われてるのにムードも何も・・・。」
確かに他人同士の吸血シーンと言うのはそれなりに色気がない訳じゃない。
妖しい艶やかさと言うか、そう言ったものが見え隠れしてる感じがするのは分かる。
だけど自分がいざその立場になって見ると、そう言った物とは程遠い気がした。
「・・・、お前・・・知らないのか、吸血鬼が血を吸うことの意味は・・・ひとつじゃないってこと。」
「え?」
「別に。聞こえなかったんだったっらいいよ・・・。」
答えた英が、プイっとから視線を逸らす。
怒ったというよりは拗ねているような顔だ。
その様子が可愛いと思ってしまったも相当青々しい春を満喫していると思う。
は片手を上げ、英の頬に手を伸ばした。
至近距離にあるエメラルドグリーンの瞳は未だに血を吸った後の感覚が残っているのか、
少しだけその奥に赤い色を滲ませ、潤んでいる。
「・・・、英には嫌われてるんだと思ってた・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。この僕が本当に嫌いな人間に呼び捨てにされて許すと思うか?
そんなことあり得ないね、絶対に。」
言って、英は頬に触れたの手に自分の掌を重ねた。
確かに英の言う通りだ。
は最初、『キャラ』に対しての態度として、この黒主学園で出会った生徒達を殆ど呼び捨てにしていた。
(さすがに枢や理事長に対してだけは違うけど。後、立場上一条に対しても。)
英に対してもそれは変わらなくて、彼は初対面の時からいやにを嫌っている様だったので、
色々と考えた結果、途中で『藍堂先輩』と呼んでみることにしたのだった。
だけど結局『気持の悪い呼び方するの止めてくんない?今まで通り呼べばいいだろ。』と、
えらく機嫌悪く返されたので呼び捨てのままにすることになった訳だ。
・・・・・・あれってそう言う意味だったんだ・・・。
今更ながらに納得する。
枢の前ではしおらしい態度を見せることがあっても、基本、プライドの高い英だ。
自分が嫌っている相手に呼び捨てなんて許さないと言うのは頷ける。
「 、お前こそ・・・僕の事を嫌っていたんじゃないのか。生意気に僕の事を睨んでいたじゃないか。」
「・・・・・・・・嫌ってるって言うかさ、あんな態度取られたら普通警戒するでしょ。」
「だったら今も警戒しているんだろうな、・・・お前、そんな目をしてる。」
「キミが苛々してるからよ。」
「ああ、してるさ。僕はいつでもに対しては苛々している。」
本当におかしな話なんだけど、達はほとんどお互いの吐息が吹きかかる位近くに顔を寄せて、
こんな甘さの欠片も見当たらない会話を繰り広げていた。
「・・・、お前がいつまで経ってもキスをしてくれないから、僕は苛々しているんだ。」
続けられた英からの台詞に、は一瞬きょとんとした間抜けな表情を晒してしまいそうになった。
しかも、彼の声はさっきより益々拗ねたようなものになっている。
は咄嗟に小さく苦笑を洩らすと、自分から彼の唇に自分の唇を押し当てた。
そして、頬に触れていた手を英の後頭部まで伸ばし、少しだけ踵を上げる。
同時に英がの体に腕を回した。
「・・・ん・・・・。」
微かに零れたの吐息を飲み込むように、英がキスを深くする。
密着したお互いの体と体から、少しずつ熱が生まれて来るようだった。
息苦しさを覚える程長く、達は唇を合わせたまま舌を絡め合い、相手の吐息を味わうようにキスをした。
「・・・・・・・・はな、ぶさ・・・。」
ようやく僅かに唇を離したその合間、は殆ど囁くように彼の名前を口にした。
口の端から透明の雫がゆっくりと流れて行く感覚。
英はそれを赤い舌でぬらりと舐め取った。
「・・・、僕・・・そろそろ我慢できないかもしれない・・・。」
「っ・・・!それって血を吸いたい・・・ってこと・・・?」
「いや、そうじゃない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「?・・・じゃあ・・・・・・・・・・・」
言いかけたは、そこでビクリと体を震わせる。
の脇腹付近。
英の手が、洋服を捲って直接肌に触れてきたから。
「・・・このままお前に触れたいって言ったら、嫌・・・?」
なんて問いを口にしながら、
英は既にその掌を素肌のの背中に回して周辺を撫でまわすように動かしていた。
「・・・の意思なんて聞く気ないんじゃないの、キミ。」
「んー・・・気持ちイイ・・・いい匂い・・・。」
言って、彼はの首筋に顔を埋めた。
どうやらの台詞は綺麗にスルーするつもりらしい。
その証拠に、彼はの背中を壁に押し付け、自分が思うままに触れている。
こう言うところはやっぱり英だと思う。
人の話を聞いてやがらないのだから。
まぁ、拒絶出来ない位拘束されているかって言うと、そうじゃないんだけど。
プツッ
「っ!」
背中。
ブラのホックが外された小さな音と極軽い衝撃。
コイツ、本気だ・・・!
「は、英、ちょっと・・・幾らなんでもマズいわよ・・・!」
「もう少し位なら時間があるだろ・・・。それに・・・ここまできちゃったらもう・・・。」
いつもより低めの声で囁くようにそう言うと、
英は背中に回していた掌をゆっくりとの胸元に移動させた。
そして下から持ち上げるようにして膨らみを揉み始める。
「・・・ァっ・・・!」
「・・・ホント・・・・やわらかくて気持ちイイよ・・・。・・・。」
吸血直後の夢見心地の声色と変わらない調子でそう言い、
彼は掌を動かしたまま、の耳朶に唇を寄せた。
膨らみを揉む彼の手の指先が、その動きに合わせて胸の先端に触れる。
その度は体に微弱な電流を流されたような気分になった。
「・・・・・・英・・・・。」
「ほらね・・・お前も嫌じゃなかったんだろ?・・・僕に触れられて嬉しいって顔をしてる・・・。」
「・・・・・・・・・・・・よ、よくそう言う事を・・・。」
言えるわね。
続ける筈だった言葉は、英の唇に飲み込まれてしまった。
この室内にはまだ、の血の匂いが残っている。
本当なら気分が悪くなりそうなものなのに、は甘い気分に酔ってしまっていた。
吸血鬼の恋人は、本当に性質が悪いと思う。
色々な意味で。
「なぁ・・・もう1回僕にキスして・・・。お前から・・・。」
甘えているようなのに、どこか威圧的。
色気があるように見えて、やっぱり子供っぽさを滲ませた表情。
後数秒でも迷えば、彼はまた苛々して拗ねてしまうかもしれない。
だからと言ってここですぐにキスをすれば、今より行為が加速しそうな気がする。
凄くする。
そう、分かってるのに。
は結局、自分から彼にキスをした。
吸血鬼の恋人は、本当に性質が悪いと思う。
(END)
アトガキ
甘ラブではなく、エロラブ??になってしまったという。あはははははは!!!(誤魔化せてない)
裏はテンションがあるので無理なんですが、微エロ方向に向かわせるのは得意です(どんな)
一応彼らが居る場所がどこなのかは敢えて書いてません。ご想像にお任せします。
てか英分岐も入れたら3本目!?実は私の一番のラブキャラは夜刈十牙だったりしますが(聞いてない)
ネタが出しやすいのは英とか暁みたいですね。この従兄弟コンビも勿論好きです。
因みにアンケでコメント頂いたので執筆してみたのですけど、・・・す、すみませんでした!
ではでは、ここまでお付き合い下さった貴重な姫様に感謝しつつ、失礼致します(脱兎