「っ!一条先輩・・・!?何でここに・・・!?」
「やぁ、ちゃん。こんにちは。
君がここに来そうな予感がしてたから、少しの間待ってたんだ。」

自分の勘を信じて待ってて正解だったよ。
なんて続けつつ、一条は笑顔を浮かべた。
因みに今はまだ昼過ぎで、昼間部(デイ・クラス)夜間部(ナイト・クラス)共に授業はない。つまり休日。
しかも、いつも昼寝に使用しているこの空き教室にが足を運んだのは、
友達に貰ったピアスの片方をこの場所に落としてしまった可能性が高かったからで。
つまりは、全くの偶然なのだ。


「一条先輩・・・いつからここに?」
「30分前位かなぁ。」
「あ・・・思ったより短いんだ。でもキミ、このままがここに来なかったらどうしてたの?」
「そうだね、後1時間くらい待ってもちゃんが来てくれなかったら、僕もさすがに諦めてたかな。
でもほら、こうして来てくれたんだから、結果オーライってヤツだよ。」

言って一条はやっぱりにこにこと笑って見せた。


って言うか・・・、1時間も待つ気だったんだ。


そしてまるで彼の言い方だと、と一条が会う約束をしてたみたいなニュアンスだ。
何よりこれでもしがここに来なかったらが約束破った人みたいに思えるのは何故だろう。


結果オーライってのも微妙に違う気がするし・・・。


一人、心の中で一条に対する疑問とツッコミを連発させていると、彼は更に続けた。


「この教室に君が来るって思ったのは勘だけど、
ずっと待ってみようかなって思ったのはこれのおかげなんだ。」
「え?」

言葉と同時に彼はの目の前に何かを差し出し、は咄嗟にそれを受け取った。
コロン。
開いたの掌で転がった小さなそれは、まさしく、がこの空き教室に足を運んだ理由になったピアスだった。

「あ・・・、やっぱりこの教室にあったんだ。有難う、一条先輩。」
「うん。君は必ずこれを探しに来ると思ったからね。・・・前に言ってたよね、友達に貰った大事なピアスだって。」
「覚えてたんだ。そう、昨日の夜部屋に戻って気付いたから、
今日は明るい内に探そうと思ってたんだけど、助かった。ホント、ありがと。」

返事をしつつ、は早速ピアスを耳につけることにした。
と、不意にそのの手に一条の手が伸びてくる。

「・・・え?一条先輩?」
「僕がつけてあげる。」
「・・・・え?あ、大丈夫、慣れてるから。」
「僕がつけてあげたいんだ、駄目かな?」

小首を傾げるような仕草でにっこりと微笑する一条。
あくまで優しげで、どこか可愛らしくも見える。
男の人が女の子にこう言った事をしてくれるのは、とても意味心に思えるものだけど、
正直、一条の場合はどこまでをそう言った方向(・・・・・)にとっていいのか分からない。
ここで変に意識するのは逆におかしいことなんだろうか。
は少しの間考えた後、結局素直に一条にピアスをつけてもらうことにした。

「ねぇちゃん・・・前から聞いてみたかったんだけどさ。」

の耳元で手を動かしながら、一条が言った。
は視線だけを彼に向ける。

「何?」
「確か君はこのピアスは黒主学園に編入してくる前に居た学校の友達から貰ったって言ってたよね。
これをくれた友達って言うのは、女の子?それとも・・・男の子?」
「両方。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?え?それは・・・もしかしてニューハーフさん・・・とか?」
「いや、違いますから!・・・ごめん、言い方が悪かったわね、双子だったのよ。
女の子と男の子のね。二人でお金を合わせて買ってくれたって言ってた。」

には事故以前のこの世界の最近の記憶はない。
それでも、意味不明の
(実はハンター協会や吸血鬼(ヴァンパイア)のことが書かれて居たのだと分かったのは、十牙に会った後だ)
日記の端々。
学校の友達の話も何度か出てきていて、彼らとどの位仲が良かったのかも大体把握できていた。
それだけじゃなく、が前の学校の友達に挨拶をした最後の日。
クラスメイトや仲の良かった友達との記憶すらない筈のの胸に、広がった寂しさ。
あれは17歳のが純粋に感じていたものだったんじゃないかと思う。

「・・・・はい、つけ終わったよ。」
「あ、ありが――――――――――――」


ちゅ。


お礼の言葉を口にしようとしたその時。
不意に耳元でダイレクトに響いたリップノイズ。
そして、同時に耳朶に感じたやわらかな感触。
一瞬。
は、目が点になってしまっていた。

「!?・・・・・!!!???」

そして、何が起きたのかを理解したその瞬間。
カァッと全身の血が顔に集中するのが分かった。


み、耳、耳朶に・・・・!!!


「一条先輩・・・!?」
「はい?」

はい?じゃないいいいいいい!!!

は掌を耳に押し付けたまま、一条を見上げて睨みつけた。
嫌だったとか、そう言う意味じゃなく。
とにかく恥ずかしかった。
下手に唇にキスされるより恥ずかし過ぎる。
耳朶に、しかもリップノイズまでさせてキスなんて。

「・・・・・・〜〜っ・・・!」
「おまじないだよ、もう君がこのピアスを無くさないように。足りなかった?」
「はいいい?・・・足り・・・・・・・・・・っ!!!!!!!!」

が返事をするより早く、彼はの体に腕を回すと、再度、耳元に屈みこんできた。
そして、慌てるをよそに、唇を耳朶に寄せる。
しかも、今度は彼はの耳を食む様に甘噛みし始めた。

「っちょっと・・・ま、待って・・・一条先輩・・・っ・・・!?」

抵抗しようと言う意思がまったくない訳じゃない。
だけど、正直振り払いたいほど嫌なのかと言うと、そうでもなくて。
勿論、相手が一条じゃなかったら、大声出してでも逃げだしてる。
結局は、彼の腕に捕らえられたまま、動けないでいた。


「・・・・・・っ・・・」
ちゃん・・・。」

彼が囁くようにの名前を口にした。
瞬間。
予想以上に湿った熱い吐息が耳元に直接吹きかかる。
濡れた舌の感触と、時折感じる尖った牙が肌に触れるぴりりとした極軽い刺激。
ぞくり。
の背筋に何とも言えない感覚が走る。

「・・・・・・・一条・・・!」
「・・・・・・・・・・・・・。・・・・嫌だった?」

ゆっくりから身を離した一条が、そう問いかけながらを見つめる。

「・・・い、やじゃ・・・なかった。でも・・・何で急に・・・・・・・。」
「そうだね、僕は少しヤキモチを焼いちゃったみたいだ。君にピアスをあげた友達に。」
「・・・・・・・・え?あ・・・ええ!?でも・・・友達、よ?」
「うん、本当にそうだったみたいだね。安心しちゃったら、今度はどうしても君に触れたくなったんだ。」

言って、ふわり、彼が笑う。
ついさっきまで、の耳を甘噛みしていた同一人物とは思えない位優しい笑顔。
だけど勿論、耳朶には未だに濡れた舌の感触と熱が溜まっていて。

「・・・・・・・食えない男。」
「ええー?そこでそう言う感想なの?ちゃん。」
「やり方がズルいのよ、キミは・・・。」

照れ隠しに視線を逸らし、は自分からも彼の体に腕を回した。
一見華奢な体の一条は、だけどしっかり男の人で。
は踵を上げて背伸びをすると、片手で彼の金髪をゆっくり掻きあげ、
耳元を露出させた。

「・・・ちゃん?」

不思議そうにに声を掛ける一条。
その耳元で、囁くように小さく鳴く

「がお。」

言いざま、は彼の耳朶を口に含んだ。

「っ・・・!?」

さすがの一条もがこう出るとは思わなかったらしい。
かなり驚いているのが分かる。
動揺している一条なんか滅多に見られない。
と言っても、今この状況じゃ、彼の顔を見ることはできないけど。
丹念に彼の耳に舌を這わせ、軽く歯を立ててやわらかく食む。
さっき彼がにそうしたように。
そしてそれ以上に、念入りに。

「・・・・・・・、・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・やられてばかりじゃないのよ、一条先輩。」

ちゅ。

最後に一言そう囁いて、更に耳朶にキスをする。
勿論、リップノイズつきで。
それからはゆっくりと彼の耳元から唇を放し、その表情を覗き込んだ。


「・・・・・・・今回ばかりは、僕の負けだね・・・・・・・。」


そう言って苦笑した一条の顔。
さっきのと同じ位、真っ赤に見えた。


(END)



アトガキ
貴様らは付き合ってるのか、どっちだ?と言う微妙な出来に(笑)
一条は2回目ですか。性格掴もうと足掻いてる最中なので、頑張ってるな、と思って下さると幸い(笑)
スランプ到来中なのにスランプに真っ向勝負を挑んでみました・・・。
甘々??かどうか謎な仕上がりですが取りあえずは、書き終えて良かったです。
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に有難うございました。