「・・・にわかには信じ難い話ではあるが、事実、目の前で起きていることだ、信じない訳にはいくまい。」
「そうだね・・・。さすがに自分の目で見なければ信じられない話だったよ。」
「・・・・・ふむ、・・・物理的にこの状況を解明する事は不可能だな。」

この状況に動揺してるのかしてないのか、妙に落ち着いた口調でそう言う立海のトップ3。
さすが赤也にバケモノと言われるだけはある。
ってのも何か変な話だけど、とにかく、3人揃うとこっちが気後れしてしまいそうな妙な迫力がある。
1メートル位離れた四角い空間越しとは言え、3人同時にに視線を向けられると、かなり居心地が悪い。
パニクっていた頭が違う意味で冷えていく。
もうこうなったら、テニキャラに会えた!きゃー!!
な勢いで積極的に話しかけたりとか有りなのかもしれないけど、正直そこまで綺麗に頭を切り替えられない。
って言うか、無理。
凄く無理。
やっぱり無理。

「・・・幸村、どうする?このロッカーは我々に無断で運び込まれた物だ。
その上この奇妙な事態。俺は直ちに撤去した方が互いの為だと思うが。」

「ええー!?撤去って、これ持ってっちまうんですか!?こんなスッゲェこと滅多に体験出来ないッスよ!?」
「そうだよ、ちょっと待てよ!折角面白ぇことになってんのに勿体ねぇじゃん!」

真田の言葉に即座に反応したのは赤也とブン太だった。

「お前達は黙っていろ!」
「・・・うっ、・・・は、ハイ。」「ちぇっ・・・分かったよ。」

そしてお約束。
真田の一言で二人は同時に小さくなって引き下がる。
二次元でのやり取りをリアルに目にしてるなんて本当に妙な感じだ。
しかも、自分が叱られてる立場でないとはいえ、真田、怖すぎるし。
あの貫禄はどう見ても同い年じゃないと思う。
二次元キャラ的な物だから許される範囲だと思う。

「確かに弦一郎の言いたいことも分かるよ。何より彼女は一人暮らしだしね。
だけどここは俺達の意見だけじゃなく、彼女の意見も聞くべきだ。」
「む・・・そうだな。確かに幸村の言う通りだ。・・・・おい、お前・・・と言ったな。」
「え!?・・・・・はい!」

いきなりこっちに話を振られては大げさにビクリと体を震わせて反応した。
何てお約束な行動だ、

「フフ・・・、君は俺達と同じ学年なんだろう?敬語でなくてもいいよ。それに、そんなに緊張しないで。」
「あー、うん・・・。分かった・・・。」

緊張。
と言うのとはまた違う気がする。
何と言うか、はこの期に及んでやっぱりどこか信じきれてないって言うか。
彼らが嘘を吐いてるなんてことは全く思ってないけど、
だったらこれは夢オチなんじゃないかとさっきから心のどこかで期待していたりするのだ。
今すぐにでも目が覚めて、あ、やっぱりね☆みたいな感じで。

「このロッカー・・・君のところはクローゼットだったかな。
何が原因でこんなことになっているのか分からないけど、君はこれからどうした方がいいと思ってる?」
「え?」
「女の子が一人暮らしをしてる所に男子テニス部の部室のロッカーと繋がっているなんて、
君にしてみたら不安なことなんじゃないか?
勿論、俺達は君に危害を加える様な真似はしないけど、俺達は初対面だ。
君が少しでも心配なら、このロッカーはここから撤去するよ。
当然、その後も人手に渡らないように責任を持って最後まで処分する。」

そう言った幸村の瞳は予想以上に真剣で。
本当にを気遣ってくれてると言うのが良く分かった。
確かにと彼らは初対面だ。
そう、にしてみればリアル(・・・)な意味では。
だけどは少なくとも彼らがどんな人間なのかってことは知ってる(・・・・)
本当に凄く一方的だけど、彼ら一人一人の性格はそれなりに把握してる。
それも踏まえたうえで、今のこの状況を現実だとか夢だとかそう言うのをとっぱらってがどうしたいか。
そんなのは当然、決まってる。
勿論、これが現実だと言う方向で考えてはいないけど、欲望のままに返事をするなら、決まってるのだ。

は、お互いにルールを決めてそれさえ守ればこのままでもいいと思う。
・・・・・・・・・折角、こんな珍し過ぎる状態で知り合えた(・・・・・)訳だし。」

はそう思ったままを口にした。
それと同時に、フッ、と、向かい側に立ってを見つめていた幸村の瞳が細められる。

「そうか・・・。うん、そうだな、君がそう言ってくれるなら・・・・。
実は俺もこんな不思議な縁で知り合えたのに、このまま別れてしまうのは勿体ないなって思っていたんだ。」

にっこりと穏やかな微笑を浮かべる幸村は、巷で魔王と並ぶほど恐れられる存在とは程遠く見える。
華奢で線の細い、いかにも儚げな印象。
こんな人が現実に存在するとはやっぱり信じがたかった。

「じゃあ君の言う通り、お互いの為にルールを作っておこうか。
・・・・その前に、弦一郎、このロッカーはこのまま部室に置いておく、と言うことでいいね?」
「・・・ああ、お前がそれに同意しているならば致し方あるまい。」
「うん、有難う。他のみんなもそれでいいかな。」



結局他のメンバーも特に異議なしってことで、ロッカーはそのまま立海テニス部の部室に置かれたままになった。
それからお互いの為にも絶対に守るべきだと言うルールを作り、と彼らはその後数十分ほど話し合った。
その間もはやっぱりこの状況の余りの不思議さに現実として受け入れることが出来なくて、
夢オチな結果を思い浮かべ続けてたんだけど、最後の最後までそんなお約束は訪れなかった。


こうして、と彼らの奇妙な交流は幕を開けたのである。


(プロローグ・END)



後書き
ようやくプロローグ終ったよ!長すぎだよ・・・!
つーか毎度私のの書くシリーズのプロローグは長すぎる!(分かってはいるんだ)
しかも一応プロローグだけでもとオール狙ったつもりだったんですけど、
えらい偏っててすみません。柳なんて一言だけしか喋ってない・・・orz
柳は好きですが、ああいう理知的なお方を書くのは苦手です。
何故なら、私が書くと全然理知的なお方にならないから(涙)
しかもその一言が明らかに柳生と被ってたと言う・・・。
今後は短編形式でお話を執筆していきます。ここまでお付き合い下さった姫様!
本当に有難うございます。感謝感謝です。失礼致します。