ミッドナイト・パレード



シャワーを浴び終えたはバスローブを身につけ、寝室のある方向に一旦視線を向けた後、
結局そっちに向かう事を止めて一人でお酒を楽しむ事にした。
一見インテリアにも見える酒棚から適当にボトルを取り出し、グラスを用意して手早く準備を済ませる。
どれも上質なものだってことは分かってるから、味は保証付きだ。
今頃ベッドルームでは可哀そうな、基、
可愛い金髪のわんわんが獰猛で俺様なライオンに捕食されてるだろう。
因みに、その場にが居合わせた場合、
わんわんはライオン野郎と同じほど獰猛なオオカミに変身し、
元々獰猛な俺様ライオンは変わらない食欲を発揮して下さる。
何て素敵でディープでハードな関係。
と、ジャンとルキーノは、そう言う間柄だ。


「・・・・・・・・・・」


はバスローブ姿でソファに座り、
たった今ウィスキーを注いだばかりのグラスをゆっくり傾けた。
まだシャワーの熱の残る体にアルコールでまた少し熱が加わる。
芳醇なウィスキーの香りがの周囲を漂い、思わずうっとりしてしまいそうだ。
はせめてボトル1本空ける程度、もう暫くの間は寝室には戻らないつもりだった。
そしてグラスにもう一度口を付けた後、何気なくぼんやり空中を眺める。


嫉妬、するとして・・・この場合どっちにするもんなんだろ・・・?


不意に、今更ながらの頭にそんな疑問が浮かんだ。
本当に今更ながらだ。
が居ない間に二人が中々濃厚な濡れ場を繰り広げてることなんて、
今に始まった事じゃないし、逆もまた然り。
自身がジャンとルキーノ、どちらかとバカップルよろしくいちゃこらやってることだってある。
そしてその途中で二人目の恋人、
つまりその時一緒に居た相手じゃない方が途中参加(って、ちょっと表現が微妙だけど)
することもあったりなかったり。
元々シャイで奥手な大和撫子なは最初はそれなりに戸惑いはしたものの、
今じゃそれにも慣れたもんだ。
そしてルキーノもジャンも当たり前みたいにお互いを受け入れるし、
自分も堂々と飛び込んで来る。


って言うか、嫉妬って・・・したことあったっけ?


勿論ある。
でも嫉妬する相手はジャンに触れるルキーノにじゃないし、ルキーノに触れるジャンにでもない。
もっと別の、ジャンやルキーノの周囲に居る人間に対して、だ。
それは普通に恋人の周りに居る人間に対する嫉妬と何ら変わりない。
だけどがこの場合言ってるのは、そう言うのとは少し違う。
が居ない間に触れ合ってる彼らの、そのどちらかに嫉妬してるかってことだ。
そして、ルキーノ達はどうなんだろう。
でも、誰か一方だけに嫉妬してしまうんだったら、
もうその時点で気持ちの比重が決まってるってことになる。
と言う事は、今の関係が成り立たなくなるってことだ。


うわ、ヤだな・・・。考えたくない・・・。


無意識に眉間にしわを寄せながら、
はいつの間にか空になったグラスにまた酒を注ぐ。
ぼんやり考えに浸ってる最中に何度かウィスキーを注ぎ足したらしいのグラスは、
だけど気付けばあっという間に空になっていた。
そして、これまたいつの間にかボトルがほぼ空になっている。
少しだけ考えた後、は結局もう1本、ボトルを開ける事にした。



◆◇◆



それから小一時間ほど経っただろうか。
寝室のドアが空き、マイダーリンの一人がこっちに向かって歩いて来る気配がした。
足音や速度でそれがルキーノだとにはすぐに分かった。
バスルームに向かう途中なら、必然的にこっちにも顔を出すだろう。


?ジャンの足音がしない?
・・・ブッ・・・もしかしてお姫様ダッコされてたりして。


ルキーノならやりかねない。
ジャンの奴も最初はわーぎゃー嫌がるかもしれないけど、結局ライオンの腕の中に収まってそうだ。
その場合は思い切りツッコンで笑ってやろう。
なんて思いながら、はグラスに最後の一杯を注いだ。
自分でも驚きなんだけど、どうやら2本目も空にしたってことらしい。
ま、特に酔っぱらっても居ないし、この位なら明日にも差し支えないだろう。


「やっぱり戻ってやがったか、。いつからここに居た?」


そこで上半身裸のルキーノが姿を見せ、
そう言って足早にの居るソファまで近付いて来る。
残念ながら、姫ダッコのジャンは見られなかった。
だけど明らかに乱れたライオンヘアと、いつもより一層気だるげで色気のある表情、
そして何よりルキーノの肌で生々しく光っている半透明の液体がの予想は的中してたことを物語っている。


「1時間半位前・・・だと思う、多分」


シャワーを浴びてた時間を考えればもっと前だったかもしれないが、
まぁそんなところだろう。
の返事に、ルキーノが僅かに形のいい眉を跳ねあげた。


「ストロンツォ!だったらさっさと俺達の所に来りゃいいだろうが」
(馬鹿野郎)
「何かお酒飲みたい気分でして」
「ったく、俺達より酒がいいってのか?・・・・・って、お前一人でボトル2本も空けやがったのかよ!?」
「はっはっは、ごちそうさまでした、signore(シニョーレ)
「上質の酒を相変わらず水みてぇにがばがば飲みやがって、ファンクーロ!」(クソッタレ)


さっきから馬鹿野郎だのクソッタレだの酷い言われ様だ。
だけどそう言うルキーノの表情は『仕方ねぇヤツだな』って感じで、
特に怒ってる訳じゃないのはすぐに分かった。


さんやー、帰ってたのけ?」


ルキーノより少し遅れてこれまた上半身裸のジャンが姿を見せる。
色白の綺麗な肌にたった今付けられましたと言わんばかりの鮮やかな鬱血の後が点々と残されてるのが一目で分かった。
野郎二人のこの状況。
本当なら悲鳴の一つどころじゃなく上げるのが普通なんじゃないだろうか。
寧ろそれをまじまじ見てしまってるはかなり間違ってる。
と言うか、ある意味イカれてるかもしれない。


「一時間以上前に戻ってたらしいぞ」
「そうなのか?何で来なかったんだよ?」
「酒だ。俺達よりも酒が良かったらしいぞ、は」


皮肉たっぷりにそう言ってニヤリと口の端を上げて笑い、
ルキーノはがたった今空にしたばかりの2本目のウィスキーのボトルを片手で軽く振って見せた。


「つーか一人でこの短時間に2本って、マジかよ!?
・・・いや、マジなんだろうな、あんたの場合」
「きゃっ☆ごめんなさい、スイートハート、
あなたがライオンに食われてる間、一人で楽しんじゃった」


そりゃもう自分でも笑える位にわざとらしくそう甘えた口調でそう言って、
はウィスキーの最後の一杯をグピグピと飲みほした。


「酷いわ、ベイビー。おかげでアタシはライオン野郎に食い荒らされてズタボロよ」
「ぬかしてろ。かっわいー金髪のわんわんは俺の下であんあん悦んで喘いでたってなぁ」
「ルキーノてめぇ!」


これがついさっきまでベッドの中で激しく愛し合ってた恋人同士の姿なんだろうか。
そしてこんな状況でそれを見て楽しんでるもホントどうなんだろう。
だけど。


「ブッ・・・あははははっ!!やっぱあんた達って馬鹿すぎだし!」
「フン、良く言うぜ、お前もだろうが」


言ったルキーノがの顎を片手で捕らえて、唇に喰らい吐いた。
反射的に開いたの唇を大きな舌がぬるりと更に割りさく。
強引な様で甘ったるいそのキスに、はあっという間に意識を飛ばしかけ、呼吸困難に陥った。


「俺にもあんたのただいまのキスをくれよ、


ルキーノの奴がやっと唇を離した所で今度はジャンがの口を塞ぐ。
口内に入り込んで来た舌はさっきまで暴れ回っていたものと大きさも感触も温度も違う。
ジャンはとルキーノの唾液で満たされたの口腔で舌を泳がせた後、
それをゴクリと音を立てて飲み込んだ。
どう見ても『ただいまのキス』なんて可愛らしいもんじゃなさ過ぎる。


「二人ともシャワー浴びようとしたところでしょ、そろそろ行って来れば?」


二人の恋人とのそりゃもう濃厚なキスを終えた所ではそう言ってソファから立ち上がった。
そしてそのまま酒棚の傍まで歩いて行く。


「・・・おいおい、ちゃん?何してんだ?お前は」


ジャンが口元を引きつらせつつに問いかけた。
は振り返らないまま返事をする。


「んー?あんた達がシャワー浴びてる間にもう1本空けようかなと」


「「・・・・・・・・・・・・・・」」


そこでジャンとルキーノの沈黙が重なる。
何だろ?と思って振り返ると、不意に二人がスタスタに近付いて来た。
もしかしたら言葉は発してなかったけど、視線で何かやりとりしやがってたのかもしれない。


「な、何!?」


ガシッ。
と、。
唐突にルキーノがの両腕を封じる。


「イクのは、俺達だけじゃねぇだろう?」
「は、はいぃ!?何親父ギャグっぽいこと言って・・・!?え?何!?」
「ジャン」
「おうよ」


ルキーノの呼びかけに、ジャンがのバスローブの腰の結び目に手を掛ける。
そして、が制止の声を上げるより早く、それを一気に解いた。
たったそれだけでバスローブははらりと肌蹴、はほぼ裸同然の姿になってしまう。


何をする気だ!このドチキショウども!


なんて、実はほぼ想像は付いてる。
ついてるからこそ動揺すると言うか、焦ると言うか。


「ちょ、ちょぉっ!」
「シャワー浴びるなら、あんたも一緒でしょ、
「そうだぞ。ま、だが、その為には・・・まず俺達と同じ位には汚れないとな?」


言った二人がニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
こんな展開になるのはもう少し後だと思ってたから、必要以上に慌ててしまう。
しかもルキーノ言い回しが妙にいやらしい。
狙って言ってやがるんだろうけど。


『はっ!?はああいいいっっ!?待って、ちょっと落ち着こう!二人とも!』


「何言ってるのか分からんが、相変わらず分かり易い動揺っぷりだな」
「今更そんなにビビんなよ、。お兄さんたちが優しくシてやるから」


思わず日本語で訴えたを見て楽しげに笑い、二人は勝手に話を進める。
もうこうなったらコイツら二人のこの流れを止める術なんては知らない。
そして何よりそれを激しく拒絶してまで嫌がる理由なんてに有る訳もなく。


「・・・・・・・どぐされ野郎ども」


抵抗を止めて力を抜きつつ、それでも何だか悔しくて憎まれ口を叩いてみる。
ルキーノがの両腕を解放したと同時に、
ジャンが楽しそうにのバスローブを完全に脱がせた。


「そんなの、とっくに知ってるだろ?」


ニィッと笑ってジャンが言う。
悔しい位に綺麗な顔のの、達の金髪のわんわん。


「そうだぞ、いい加減腹括れ」


ルキーノが悪人面でニヤリと笑う。
憎らしい位に男前な、の、達の俺様なライオン。



あー・・・ムカツク。・・・・・・・・・・やっぱり好き。



どっちに誰に嫉妬なんて馬鹿らしい。
だって彼らは両方同じほどどぐされてて、の大好きな愛しい奴ら。
それでいいじゃないか。
因みに、が相当どぐされ女なのも彼らとお似合いな証拠だと思う。


はそこで両腕を伸ばして精一杯踵を上げた。
それでもジャンには届かないし、ルキーノにだったらもっと届かない。
だけど平気だ。

の愛しいどぐされ男達は、に触れる為に屈んでくれる。
そしてまた同時に、隣に居るもう一人の恋人と触れ合うことも忘れないのだ。




(END)




アトガキ

『スパイシーバニラビーンズ』のルキジャンVerでした。
ルキーノの攻めの位置は固定ですが、
ジャンとヒロインはいつか二人で協力してライオン野郎を奇襲してやろうとか考えてそうです。
(ルキーノを受側にさせるって意味じゃなくて 笑)
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に誠に心より感謝です!有難うございます。