傷口に生クリーム



その後がベルナルドの異変に気付いたのは部屋に戻った直後だった。
異変と言うには余りに微妙な。
だけど、何となく彼の機嫌がよくないんじゃないかってのを、は直感的に悟った。


「ベルナルド、あのさ、もしかして何か―――――――――」


がそこまで口にしたところで、
不意にベルナルドがの両腕を掴んで強引に自分の腕の中へと抱き寄せる。
驚いて気付いた時には眼鏡の奥の瞳が間近からを覗きこみ、
唇が触れるスレスレの状態だった。


「何だい?ベイビー」


いつもと同じくジョークを飛ばす時の口調なのに、その瞳は全然笑ってない。
冷ややかと言うのとは違う。
寧ろ眼鏡の奥の彼の瞳はゆらゆら燃えているようにさえ見えた。
だけど例のエロ親父なスイッチが入ってる時とはまた別だ。


「・・・ベルナルド?・・・えっと、何か、余り御機嫌麗しくない?」
「そう見えるかい?」
「う・・・ん、まぁ、何となくだけど」


こう言う時、例えばより付き合いの長いジャンだったら、
ベルナルドの不機嫌な理由がわかったりするんだろうか。


「ふっ、・・・・・・参ったな、幾らお前相手とは言え、
この程度隠せないなんて・・・俺も焼きが回ったらしい」


そう言って苦笑したベルナルドがを抱き寄せたまま首筋に顔を埋める。
柔らかな長髪がの肌をくすぐると同時に、彼の両腕に少しだけ力が入った。
やっぱり様子がおかしい。
それは本人も肯定してるから確かだ。
だけど、未だに原因が分からない。


「・・・・・・が、何かした、とか・・・?」
「いや、そうじゃない・・・・・・。・・・こともない、か」
「どっち!?」
「どっちだろうね」
「ベルナ・・・・・・・・・・ッンゥッ!?」


先を続けて彼の名前を口にしようとした唇をいつもより強引に塞がれる。
どこまでも性急で、普段の彼らしくない切羽詰まったキスだった。
抉るみたいにの唇を割り入って来た舌が口内をぬらぬらと蹂躙する。
唾液があっという間に口の中に溢れて来るのが分かる。


「ちょっ、ッハッ、・・・ンむ・・・・・や・・・、ベルナ、るどっ・・・!?」


無理に唇を離して声を発するの言葉を、
それさえ飲み込むみたいにベルナルドが執拗にキスを続ける。
搦められた舌が強く吸い上げられ、ちゅくちゅくといやらしい水音が妙に大きく耳に響いた。
そうしながら、ベルナルドの手は器用にのスーツのネクタイを緩め、
上着のボタンを外して行く。
こういうことに非常に手慣れてるこのどぐされ男が本当に憎らしい。
確かに彼はより年上だし、大人だ。
そう言った理由がなくても経験値が高いのも頷ける。
だけど、こう言う状況でも変に的確で素早いこの行動はいかがなもんだろうか。


「っ、!?・・・!せめて、先に、・・・理由!・・・教え・・・!」
「理由・・・?」


分かってて惚けるな、このドチキショウ!


分かり易く意思表示をする為に血が出ない程度の強さでベルナルドの奴の舌を噛んでやった。


「つっ・・・」


一瞬ベルナルドの整った眉が顰められる。
僅かながら効果はあったらしい。
ざまぁ見ろ。
なんて思ってる間にもの衣服は着実に乱されていた。
この手際の良さは本当に呪わしいレベルだ。
長く骨ばった指がの胸元に直に触れ、その先端を摘まんでこりこりと転がす。
瞬間的にそこから軽い電流を流された錯覚に陥ったは、ビクリと体を震わせた。
体内の血が少しずつ沸騰してくような感覚。
抵抗してるのに、ベルナルドに触れられる事は全然ヤじゃなくて、
寧ろ体はそれに喜んで応えようとしてる。
どこまでもどっぷりベルナルドに夢中な自分が中々情けない。



「・・・っ」
「お前は自分が思ってるよりずっと魅力的な女だよ・・・」
「・・・・・・・えっ!?」


不意にベルナルドから告げられた言葉に一瞬ドクリと心臓が鳴った。
もしかして例のがお姉さま方に嫌味を言われた一件のことを知っているのかと思ったからだ。
だけど、次の台詞でそうじゃないと分かった。


「・・・お前の気持ちを疑ってる訳じゃない・・・。
それでも俺は、お前に俺以外の男が触れるのが耐えられない・・・、
俺以外の男を視界に入れて欲しくないと思っちまうんだ。
・・・・・さっき、ルキーノと一緒に居たお前を見た時になんか特にね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ベル、ナルド?」


「ハハッ、呆れた独占欲だな。
・・・この歳になってここまで自分の嫉妬心に手を焼くとは思わなかったよ・・・」


は彼の言葉に茫然とその瞳の奥を覗き込む。
そして思わずフッと苦笑した。


「とんだ、どぐされ男ね、スイートハート」
「・・・ふっ、そうだね、ベイビー。自分でもそう思うよ」
「・・・・・・・・・・・・ベルナルド」


彼の名前を呼び、は彼のネクタイを強く引っ張った。
そしてわざと音を立ててその唇に吸いつく。


「今実はが嬉しくて堪らないって分かる?」
「・・・?」


少し驚いた様な表情のベルナルドに、は微笑んでから言った。


「さっき、がルキーノと話してたのは、
周りから見てがベルナルドに釣り合ってないんじゃないかって思って、
凹んでるっての、相談してた」
「・・・・・・・!?」
「ルキーノは、ベルナルドはお前を選んで、お前に夢中なんだから、
どーでもいい周囲なんか気にするなってさ」


続けたの台詞に、ベルナルドがフッと眼鏡の奥の瞳を細める。
そして、今度はさっきまでとは違う、甘ったるくて柔らかいキスをした。


「その通りだ。・・・なんて言うのは癪だが、実際そうだよ。
一体誰がお前に俺と釣り合わないなんてことを言ったのか知らないが、
俺にとってお前以上の女なんて居ないってことは確かだ」


「・・・・・・・ベルナルド」


は自分が今恐ろしくしまりのない顔をしてるだろうと自覚しつつ、
それでもそれを堪える事がどうしても出来なかった。
そうだ、きっとうもう、笑顔と言うよりはニヤニヤニヤニヤしてるに違いない。
だけど仕方ないじゃないか。
目の前に居るこれほどの男前がに向かってこんな嬉しい台詞を言ってくれたんだから。
しかも、それが単に口先だけのものじゃないことは、彼の目を見ればわかる。



「お互いの気持ちを確認し合った所で、・・・今度は体でそれを確かめあわないか?」



の感動を返せ!!


妙に色気のある甘い声で囁かれ、それでもその瞬間思わずツッコミたくなってしまった。
もう少し浸ってたいところではあったけど、状況的に見ても既に流れは決まってしまってる。
寧ろ彼が中断してくれた事の方が驚きな位だ。
は微かに苦笑した後、
未だに掴んだままだったベルナルドのネクタイを再び軽く引っ張って引き寄せた。


そして言葉よりも行動で表す。
さっきより濃厚なキスを仕掛けた。


ああ、の中の大和撫子様、お許し下さい。


(END)





アトガキ

頂いたネタ内容は「ヒロインがお姉さま方にベルナルドに釣り合ってないなどの嫌味を言われ、
それを他の人間に相談→ベルナルドが相談相手に嫉妬しヒロインに・・・」
(ネタ内容の表現は管理人が少々代えてます)
というものだったんですが、毎度のことながら、
他キャラを登場させるとお相手キャラの登場率が低くなってしまいました。
そして頂いた内容に沿っているのか微妙な部分が有るかと思いますが、
楽しく執筆させて頂きました(笑)。
この度はこのドマイナー夢にネタ投下、本当に本当に有難うございますvv
心から感謝感激でした、そしてここまでお付き合い下さった姫様も、本当に有難うございます