ロマンシング・ア・

      ロマンス





「悪い、、待たせちまったな」
「ジャン、は大丈夫。そっちは?」
「ああ、ま、どうにかな。つーか、年寄りの話は長くてしつこくて困っちゃうワン」
「見てる限りじゃ何か妙に気に入られてたっぽいけど」
「まぁな、あんたも知っての通り、俺、親父とジジイ受けの良さには自信あるからな」


ニィッと笑ってジャンが続ける。
はいつものように同じくニッと笑い、そうになって慌てて止めた。
そしてクスクス、程度の可愛らしい笑いに留めておく。
この場合、ふふふっとかの方が良かったかもしれないけど、きっとこれもセーフの内に入る筈だ。


いかん、いかん!ジャンの傍だからって気を抜き過ぎるな!


最初のがちがちに緊張し過ぎてた自分もどうかと思うけど、
油断し過ぎてリラックスするなんてもってのほかだ。
とは言え、この状況でリラックスなんて本来絶対無理な事だし、
ジャンの持つ独特のユルい空気のおかげでホッとしてる部分があるのかもしれない。
ジャンカルロと言う男はそう言うヤツだ。
いい意味での緊張を自然と解してくれて、だからこそ、今、
この華やかなパーティ会場でみっともない真似を晒さずに居られる。
まぁ勿論、それは、この会場に来る前に色々と手伝ってくれた他のCR:5幹部達のおかげでもあるんだけど。


「・・・・・・・・・・・・・」
「ジャン?」


不意に黙り込んだ彼がジッとを見つめている事に気付き、
は彼に問いかけた。
ジャンはほんの一瞬ぼけっとしたような顔をした後、わざとらしい程ハッとした様子でまたを見る。
この表情はこのパーティ会場に来る前。
2時間位前にも見た気がする。


「悪い、何か調子狂うぜ。あんたがいつもと違って、その・・・なんつーか、レディに見えるからさ」
「・・・・・・・・・・、もしもしジャンさん、それって褒めてる?けなしてる?」
「モチ、褒めてる。言っただろ?元々あんた―――――――――――」


そこでジャンは言いかけた言葉を切り、フッと、小さく溜息を吐いた。
でも、表情にはそれを出さないようにしてるらしい事が分かる。
同時に護衛の一人がゆっくり近付いてきて、ジャンに告げた。


「カポ・ジャンカルロ。シニョーレ・モラレスが是非紹介したい方が居ると仰っています」


アーロン=モラレス。
反射的に頭の中でその名前を思い浮かべ、
ベルナルドから叩きこまれたお偉方リストの中にその名があったことを思い出す。
そしてこのパーティ会場に到着して早い段階でジャンが挨拶に向かった相手だ。
その時はだけじゃなく、ルキーノとベルナルドも一緒だった。
つまり、揃ってご挨拶にお伺いする程の大物。
最初に話をした時から、ジャンは気に入られたっぽいなと思ってたけど、
まさかまたお声が掛かるとは思わなかった。
とは言え、今回はジャンだけをお呼びのようだ。


「分かった、すぐ行くよ。・・・、すまねぇ、行って来る」
「うん」
「・・・ホントは、あんたを置いてっちゃうのイヤなのよね。ハニーってば注目の的なんですもの」
「・・・ぶっ、・・・っと」


いつものジャンのノリに思わず本格的に吹き出しそうになっては慌ててそれを取り繕う。
そしてまた僅かに口元に弧を描いて微笑した。


「注目されてるのはジャンでしょ、・・・は大丈夫だから。別に一人な訳じゃないし」


ベルナルド達がすぐに戻って来る事は分かってるし、
ジャンのパートナーとして来ている以上、放置されることなんかない。
だけどジャンはの言葉に何だか微妙な、と言うか、複雑そうな顔をして答えた。



「いや、そうじゃねぇんだけど。・・・なんつーか、あー・・・、いや、んじゃま、すぐ戻るわ」
「うん、待ってる」




◆◇◆





パーティ主催者のアガッツァーリ氏が用意してくれていた高級ホテルの最上階の一室。
部屋の外には護衛が待機し、ベルナルドは一足先に戻ってしまったけど、ルキーノは同じホテルに泊まる事になってる。
あの後、約2時間程でパーティは終了した。
緊張しっぱなしで気を張ってたことや、
慣れない服装のせいではもうこれ以上に無くへとへとだった。
ドサリ、と、ドレス姿のまま、少し荒っぽくソファに腰を下ろす。
淑女様の仮面はもうとっくに剥がれていた。



「ハァーー!疲れた!・・・あ、ジャンもお疲れ様。・・・てか、なんかよりジャンのほうが疲れてるよね」
「ん?ああ・・・、まぁそれなりに。でも俺はカポになってからは特にオッサン達やジィ様との付き合いには慣れてるからな」
「そっか・・・」



ああ、魔法が解ける時間だ。



まだ化粧も落としてないし、ドレスだって着たままだ。
皆が「綺麗だ」と褒めてくれたあの恰好のまま。
なのに、は瞬間的にそう思った。
ジャンの隣で笑って、会場に居るお偉方に挨拶して回ったあの時は、
彼のパートナーとして恥ずかしくない様に優雅でおしとやかな大和撫子魂を全力で出し切った。
だから、カポである彼の隣に居る事が当然の様な顔も出来てた。
だけど、今はもう違う。
CR:5の皆がかけてくれた魔法は解けた。


「ごめん、ジャン。もう少し休憩したら、自分の部屋に戻るからさ」


フーっと、今度はさっきとは違う意味で深い溜息を吐く。
そしてそう言ったの言葉に、ジャンは驚いたようにきょとんとした顔をした。


「・・・・・・・・・・・・・・・は?って、あんた別の部屋に行くつもりなのけ?」
「え?うん、・・・だって・・・って、名目上のパートナー・・・だし・・・」


この広い室内にはベッドが二つ用意されてるけど、
だからってがジャンと同じ部屋で一泊する事が許されるとは思えない。
いや、でもパーティ主催者の用意したホテルで、
パートナーが別々の部屋で休んだ事がバレたらそれはそれで微妙なのかもしれない。
そう言う意味でなら、やっぱりはここに泊るべき何だろうか。


「なぁ、・・・」
「うん、何?」
「あー・・・あのさ、・・・俺の最初の誘い方が・・・っつーか、
あんたをパートナーにしたいって言った時の俺の言い方も悪かったんだと思うし、
・・・マジで俺も気付くのが遅れちまった事もあるけど・・・」
「・・・?」


珍しくジャンが先を躊躇う様に言葉を濁す。
彼は少しの間何か考えるように視線を彷徨わせた後、
でも不意に意を決したようにソファの前に立ってジッとを見下ろした。
いつの間にかジャケットを脱いでネクタイを緩めた姿のジャンは、
ピシッとタキシードを着こなしてた時とはまた違う、
何だか妙な色気があるように見えた。


「今日、あんたが俺のパートナーを務めてくれて、マジで良かったと思ってる」
「・・・う、うん」
「けど、パーティ始まってちょいしてからさ、あんたをあの場に連れて来ちまった事、
実はちっとばっかし・・・いや、かなり後悔しちゃったのよね」
「えっ!?」


続けられたジャンの台詞には思わず自分でも情けないほど不安な表情をしてしまった。


「ああ、違う!そうじゃないんだ!あんたが何かヘマったとか、そう言うんじゃなくて!
単に俺のワガママで、あんたが他の野郎に見られるのが嫌だっつー・・・そう言うハナシ」


言ったジャンが、を見下ろしたまま、少し困った様に笑う。
そして、彼の手がの髪に軽く触れた。


「・・・・・・・・・・、え?ジャ・・・ジャン?」
「驚いてる、よな?実は俺も驚いちゃってるよ。こうなるまで気付かなかった俺って鈍感チャン。
でもさあんたはもっと鈍感チャンだぜ。・・・・・・・あんた気付いてなかったろ?
あそこに居た男共、揃ってあんたのこと見てたんだぜ。
・・・確かに最初は俺の隣に居るってことで目がいったんだろうけど、
途中はどう見てもそう言うカンジじゃなかった」


サラ。
と、指先で弄ぶようにの髪をジャンが撫でる。
たったそれだけで、は息が止まりそうな錯覚に陥った。


「つまりー!あんたは元々イイ女なんだ。
・・・でもそれは俺だけが知ってればイイってこと!・・・この意味、お分かり?」


の胸の奥の奥。
喜びと一緒に、甘く温かな感覚が広がってく。
ジャンの言葉が、嬉しくて、嬉し過ぎて、思わず口元が緩んだ。



「・・・・・・・・お分かり、・・・でも・・・・・、もっと詳しく言ってくれるともっと分かる」



の返事にジャンはほんの一瞬キョトンとした後、クスリと小さく笑った。
そして、ソファに座っていると顔を寄せるように身を屈めて来る。



、俺はあんたに惚れてる、だから誰にも渡したくない」



「・・・・・・・・合格!」


エレガントで艶やかなドレスを身にまとったまま、はニヤリと、いつもの笑みで返し、
軽く腰を上げて両腕を伸ばしてジャンの首元に回した。
彼はそれに応えての体に腕を絡める。
そしてクックと喉の奥で笑った。


「ありがとチャン。あんた、やっぱソッチの表情の方が『らしい』な。今の笑顔、ぞくっときちまった」
「何か、パーティ始まって以降、まともに笑ったの始めてかも。
・・・・・・・ジャン、も、もジャンの事が好き」
・・・」



の名前を呼んだジャンが、ゆっくりと自分の唇をのものと重ねる。
やわらかく押し当てるだけの口付けを何度か繰り返した後、
彼はの唇を熱い舌で割り、それを口内に侵入させた。
は無意識にジャンにしがみ付きながら、彼からのキスに必死に応えた。



魔法が解けても、はジャンの隣に居る。
ジャンの腕の中に居る。


そのことが嬉しくて、嬉し過ぎて。
達はお互いを独り占めできる時間を手に入れ、まるで貪るようにして唇を重ね続けた。



(END)




アトガキ

◆頂いたネタ内容(管理人的表現に変換有り)
◆頂いたネタ内容(管理人的表現に変換有り)
ジャンが女性同伴のパーティにお呼ばれし、
夢主が一番気心も知れていざという時にも安心できると言う理由でパートナーに。
ルキーノ&ベルナルドにドレスコーディネイトを、ジュリオにマナーを叩きこまれ、
イヴァンには大量の胸パッドを突っ込まれてパーティに向かう。
招待客にも一目置かれる存在になるが、ジャンは夢主が他の男に見られるのが余り嬉しくなく・・・。


出来るだけ頂いたネタ内容を生かそうと頑張ったんですが、
生かしきれてない所も多々あると思います、すみません!
でもこのシリーズでジャンの個人夢って書いた事がなかったので(脇役とかお相手複数とかならあるけど)
楽しんで執筆出来ました。途中あれこれ考え過ぎてつまった部分も有りますが、
少しでも楽しんで頂けたなら幸いですvではでは、ネタ投下下さった優仁様、
そしてここまでお付き合い下さった姫様、誠に有難うございますvv失礼します。