奪うようにキスして
―――――『すまない、今日はどうやらまだ戻れそうにない。
申し訳ないが、君は帰宅してくれ』
「・・・・・・・・・・・・・ハァ・・・・・・・・・・・」
保健室のベッドの端に腰かけ、
ケータイのメール画面をぼんやり見つめた後、私はもう何度目かになる溜息を吐いた。
そう言うオチですか・・・・、そうですか・・・・・。
外は既に薄暗くなり始めている頃。
電気を付けていない室内は暗く、肌寒い。
更に言えば、今の私の胸の中にもひゅるりらと木枯らしが吹いている気分だ。
パチンと小さく音を鳴らしてケータイを片手で閉じた後、
私はそのまま背中からベッドへと倒れた。
そしてその状態で天井を睨みつける。
ここでこうして待っててもどうせ山崎烝の奴、基、山崎保健医補佐はお戻りにはならない。
そうと分かっていても、すぐには帰ろうと言う気になれなかった。
これで約2週間以上、彼とまともに会話してないことになる。
勿論学園内に居る限りは私が保健係だって事も有って自分からここに来れば、
毎日だって会えない事はない。
だけどそうして顔を合わせる場合はあくまで私達は教師(保健医補佐だけど)と生徒として、
特に当たり障りのない会話や接し方をしなくちゃならない。
しかもここの主は本来保健医である山南先生。
そして山南先生目当ての女生徒がきゃぴきゃぴと周囲をうろついていることもあり、
ここへ顔を出しても余り長居出来る状況じゃないのも確かだ。
こう言う事を、覚悟してなかった訳じゃないし、
仕事が忙しい時期ってのはどんな職業にも必ず付きものだってのも、
元居た世界で一応社会人として働いてた私としては理解してるつもりだ。
私もその頃似た様な理由で1ヶ月以上遊ぶ余裕が全くなかった経験だってある。
だけど、毎日顔を合わせてしまう分、どうしても不安と不満が溜まってしまうのだ。
特に烝の場合、プレイヤーとして画面越しに見ていた頃も恋愛面での前知識が全くない事も原因の一つだと思う。
彼の僅かな表情の変化を読むことにも私は未だに慣れてない。
しかも、この学園内で私と接する時の烝は完璧に普段の山崎保健医補佐殿で。
いや、それでいいんだけど・・・、って言うか・・・そうじゃなきゃいけないんだけどね・・・。
そしてだからこそ、今日の昼休み、彼が言ってくれた台詞が嬉しくて堪らなかった。
――――――――「・・・、その・・・今日は山南先生は一日学校には戻られないんだ。
良ければ放課後、時間を取れないか?」
机の上の書類整理をしていた彼は、私が来た時もずっと手を動かし続け、
殆ど会話らしい会話が出来なかった。
それでも烝の傍にいたくて、
だけど余り長居をしたら他の生徒や教師が来た時に変に思われるとも思ったから、
私は適度な時間で保健室を出て行こうとしたのだった。
その出際に何処か照れ臭そうに告げられたのその台詞が余りに嬉しくて、
私は即座に笑顔で頷いて応えた。
その後、昼休みが終わって放課後になるまでが待ち遠しくて待ち遠しくて。
そしてやっと放課後になって保健室に来たんだけど、
保健室に彼の姿はなかった。
その直後に烝からのメールで急に山南先生に呼び出された事を知らされて、その後も待つ事約30分。
届いたのが例のメールって訳だ。
ごろんと体を反転させ、私は再びケータイのメール画面を開く。
そしてまたしても烝がくれたメールの内容に目を通し、溜息を吐いた。
「・・・・そうですか、では後は君に任せて構いませんね?」
「はい、俺もすぐに帰れると思います」
「・・・・・・・・・ン・・・・、・・・っ!!??」
不意に私は人の声で目を覚まし、大慌てで体を起こした。
ベッドのカーテンは念の為閉めてたから良かったものの、
まさかいつの間にか眠ってるなんて思いもしなかった。
眠る前には暗かった部屋が、電気がついたせいで酷く明るく感じ、
慣れない目がその光を受けてチカチカする。
カーテンの外に居るのはどうやら山南先生と烝らしく、
二人は私がここで寝こけて居る間に戻って来たようだ。
私がこっそりとカーテンの隙間から覗いてみると、
丁度山南先生が烝に挨拶をして保健室を出て行く所だった。
「ああ、そうだ、山崎君」
「はい?」
「くれぐれも、忘れものには気を付けて下さい。
室内はきちんと見回っておいた方がいいでしょう。隅々まで確認しておいて下さいね」
にっこり、と、
山南先生が穏やかに、それは美しく笑う。
同時に眼鏡の奥の瞳が意味深に光るのを、私は確かに見てしまった。
瞬間的に私は凍りつく。
さ、さすが・・・山南敬介、恐るべし!
――――――じゃなくて!!・・・・・・・ど、ど、どうすれば・・・!?
「・・・・・・はい、承知しました」
「ええ、それでは私はこれで失礼します」
再び笑顔を浮かべ、今度こそ山南先生は背中を向けて保健室を出て行く。
私は安堵の溜息を吐きながら、ドサリと再度、ベッドに腰を下ろした。
その時――――――――
シャッ。
乾いた音と一緒にカーテンが一気に引かれ、烝が私を見下ろしていた。
「あ」
「・・・・・・、やはり君か」
「・・・・・・・・・ど、どうも」
「俺は君に帰宅してくれと言うメールをしなかっただろうか?」
呆れた溜息交じりにそう言われ、胸の奥がチクリと痛む。
私はそれを堪えつつ、苦笑して返事をする。
「貰いました、・・・すみません。何かいつの間にか眠ってしまってて」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・怒ってますか?」
「いや・・・・」
短く答えた烝が私の隣に腰を下ろした。
その横顔が疲れて見えるのは気のせいじゃないだろう。
ここ最近はその位本当に忙しそうだった。
そう思うと急激に罪悪感が込み上げてくる。
この人を私の我儘に付き合わせる訳にはいかない。
「・・・すみません、私・・・帰りますね。
山崎先生も早く帰ってゆっくり休んだ方が良いですよ・・・」
「・・・・・・・っ、待ってくれ」
「えっ!?・・・・・・っっっと」
立ち上がろうと中腰になった所で烝に腕を掴まれ、
私はそのままバランスを崩して背中からまたしてもベッドへと身を沈めた。
背中に柔らかなベッドの衝撃、そして正面には。
「す、すまない、手荒な真似をするつもりはなかったんだが」
「いいえ、こっちこそ大げさに倒れちゃって・・・・・・・・・」
ぽかんと間抜けな顔で驚く私に、珍しく動揺した様子の烝。
この状況はお約束ながら、保健室のベッドに押し倒される女子高生の図、になってしまっている。
どくどく、ばくばくと私の心臓が分かり易く早鐘を打ち始めた。
そこで不意に烝がゆっくりと私の方に体を傾け、覆い被さって来る。
「っ、あの・・・」
「・・・・・・・少しだけ、こうさせてくれないか?」
私の体に腕を回し、肩口に顔を埋めるようにして彼が言った。
その声にも何処か疲れが滲んでいる。
「・・・・・・・・はい」
私が頷いて答えたと同時に烝がホッとしたみたいに体の力を抜く。
彼の体温と重みが凄く心地よく感じた。
こんなに間近に烝を感じて、彼の匂いに包まれるのは久しぶりだ。
久しぶりだと言うより、今までだって数えるほどしかなかったりする。
私は実はそのことに物足りなさを感じてたりするんだけど、今までずっと口に出せずに居た。
「本当は、私の方こそ山崎先生に触れて欲しかったんですよ」
「・・・・・・・・・・・・え!?」
独り言のように漏らした私の台詞に、烝が驚いたように瞳を見開いて顔を上げる。
私は慌てて彼から目を逸らした。
「あっ・・・、す、すみません・・・・・・、あの、疲れてる時に言うことじゃ、ないですよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・俺は・・・」
私が視線を外した後も彼がジッと私を見つめている気配を感じて、
私は恥ずかしさの余り居たたまれなくなってしまった。
本当に、今言う様な事じゃなかったかもしれない。
恥ずかしい、恥ずかし過ぎる。
「えっと、今のは・・・、き、聞かなかったことに・・・・・・・・・・、
―――――――――ンんぅっ・・・・っっ・・・!!??」
烝と視線を合わせられないままそう口にしかけたその途中。
それを遮るように烝が突然私の唇を自分のもので塞いだ。
さっき突然腕を掴まれてベッドに倒れ込んだ時もかなり驚いたけど、
今回はさっきよりもっとずっと驚いてしまった。
いつもはどちらかと言うと冷静で、喜怒哀楽を分かり易く表情に表さない彼が、
まるで別人みたいに強引な仕草で私の唇を奪っている。
それこそそれは言葉も、そして呼吸も全部奪われるんじゃないかと思う位に激しいキスだった。
――ギシッ。
小さくベッドのスプリングが軋んだ音が私の耳に響く。
ぬらりと熱い烝の舌が口内を這いまわり、喉が焼けつく様な錯覚に陥る。
彼の長い脚が私の太股に押し付けられ、スーツのズボンの冷たい感触が伝わって来た。
私はいつの間にか自分からも烝の背中に腕を回し、
そのスーツのジャケットをぎゅっと握りしめていた。
「・・・・・」
「・・・・・・ふ、・・・っ・・・」
唇を軽く触れ合わせたまま、いつもより低く甘い声で名前を呼ばれる。
同時に、烝の温く湿った吐息が私の顔を撫でた。
「・・・俺はずっと、君に触れたくて仕方がなかったんだ・・・。
だが、怖かった・・・。一度 君に触れてしまえば、俺は自分を抑えられる自身が無かったからな」
「・・・・え?」
「ここのところ仕事が忙しかったのは本当だ・・・。
だが、一方でそれを自分の抑えきれない気持ちの逃げ場にしようとしても居たんだ」
「・・・・・・・山崎先生」
「すまない、君には・・・・寂しい思いをさせてしまったな」
ぎゅ、と。
彼の両腕が力を込めて私を抱きしめる。
私はそれに応えるように自分の両腕にも力を込めた。
そして、彼の唇に自分からキスをする。
「・・・私の寂しかった気持ち、全部、山崎先生が埋めて下さい」
「・・・・・・」
私が言い終えるのとほぼ同時に再度、彼に唇を奪われる。
ぬるりと私の口内に侵入して来た烝の舌が私の舌を捕らえ、絡まり合った。
深く濃厚なキスを交わしながら、私達を少しずつお互いの衣服を乱していく。
彼の骨ばった手が私の制服の赤いリボンを解き、シャツのボタンを外した。
そして服の中に侵入した手が、少し躊躇いがちに肌を撫でる。
更に、その手がゆっくりとブラのホックを外し、掌が私の胸の膨らみに触れた。
やわやわと指先が動き、
私の体の一部がそれに合わせて粘土細工のようにぐにゃぐにゃと形を変える感覚がある。
「っ・・・」
それに反応して漏れた吐息さえ奪う様に、烝は私の唇を貪り続けた。
温い唾液が口の中で溶けあい、溢れだす。
クチュリと粘着質な音が私の鼓膜を震わせる。
心音は未だにドクドクと不自然な速さで鼓動を刻んでいた。
窓の外はもう随分暗くなってて、室内の電気は付いてても暖房は入ってない。
だけどそれでも、私の体はもう十分熱を持っていた。
そしてこの熱は、この人が更に上昇させてくれるに違いなくて。
「、・・・君が好きだ・・・」
甘く掠れた声がキスの合間に囁くようにそう告げる。
私は微かに笑みを浮かべ、彼に答えた。
「私も烝が好き」
いつもなら恥ずかしいとからしくないとか、余計なことをゴチャゴチャ考えて余り口にできなかった台詞。
だけど今回ばかりは自然にそう返すことができた。
そしてそれは正解だったと思う。
その瞬間に彼は今まで見たどの表情より幸せそうな笑顔を浮かべ、
私の唇に何度目かのキスをくれたから。
(END)
―――――『すまない、今日はどうやらまだ戻れそうにない。
申し訳ないが、君は帰宅してくれ』
「・・・・・・・・・・・・・ハァ・・・・・・・・・・・」
保健室のベッドの端に腰かけ、
ケータイのメール画面をぼんやり見つめた後、私はもう何度目かになる溜息を吐いた。
そう言うオチですか・・・・、そうですか・・・・・。
外は既に薄暗くなり始めている頃。
電気を付けていない室内は暗く、肌寒い。
更に言えば、今の私の胸の中にもひゅるりらと木枯らしが吹いている気分だ。
パチンと小さく音を鳴らしてケータイを片手で閉じた後、
私はそのまま背中からベッドへと倒れた。
そしてその状態で天井を睨みつける。
ここでこうして待っててもどうせ山崎烝の奴、基、山崎保健医補佐はお戻りにはならない。
そうと分かっていても、すぐには帰ろうと言う気になれなかった。
これで約2週間以上、彼とまともに会話してないことになる。
勿論学園内に居る限りは私が保健係だって事も有って自分からここに来れば、
毎日だって会えない事はない。
だけどそうして顔を合わせる場合はあくまで私達は教師(保健医補佐だけど)と生徒として、
特に当たり障りのない会話や接し方をしなくちゃならない。
しかもここの主は本来保健医である山南先生。
そして山南先生目当ての女生徒がきゃぴきゃぴと周囲をうろついていることもあり、
ここへ顔を出しても余り長居出来る状況じゃないのも確かだ。
こう言う事を、覚悟してなかった訳じゃないし、
仕事が忙しい時期ってのはどんな職業にも必ず付きものだってのも、
元居た世界で一応社会人として働いてた私としては理解してるつもりだ。
私もその頃似た様な理由で1ヶ月以上遊ぶ余裕が全くなかった経験だってある。
だけど、毎日顔を合わせてしまう分、どうしても不安と不満が溜まってしまうのだ。
特に烝の場合、プレイヤーとして画面越しに見ていた頃も恋愛面での前知識が全くない事も原因の一つだと思う。
彼の僅かな表情の変化を読むことにも私は未だに慣れてない。
しかも、この学園内で私と接する時の烝は完璧に普段の山崎保健医補佐殿で。
いや、それでいいんだけど・・・、って言うか・・・そうじゃなきゃいけないんだけどね・・・。
そしてだからこそ、今日の昼休み、彼が言ってくれた台詞が嬉しくて堪らなかった。
――――――――「・・・、その・・・今日は山南先生は一日学校には戻られないんだ。
良ければ放課後、時間を取れないか?」
机の上の書類整理をしていた彼は、私が来た時もずっと手を動かし続け、
殆ど会話らしい会話が出来なかった。
それでも烝の傍にいたくて、
だけど余り長居をしたら他の生徒や教師が来た時に変に思われるとも思ったから、
私は適度な時間で保健室を出て行こうとしたのだった。
その出際に何処か照れ臭そうに告げられたのその台詞が余りに嬉しくて、
私は即座に笑顔で頷いて応えた。
その後、昼休みが終わって放課後になるまでが待ち遠しくて待ち遠しくて。
そしてやっと放課後になって保健室に来たんだけど、
保健室に彼の姿はなかった。
その直後に烝からのメールで急に山南先生に呼び出された事を知らされて、その後も待つ事約30分。
届いたのが例のメールって訳だ。
ごろんと体を反転させ、私は再びケータイのメール画面を開く。
そしてまたしても烝がくれたメールの内容に目を通し、溜息を吐いた。
「・・・・そうですか、では後は君に任せて構いませんね?」
「はい、俺もすぐに帰れると思います」
「・・・・・・・・・ン・・・・、・・・っ!!??」
不意に私は人の声で目を覚まし、大慌てで体を起こした。
ベッドのカーテンは念の為閉めてたから良かったものの、
まさかいつの間にか眠ってるなんて思いもしなかった。
眠る前には暗かった部屋が、電気がついたせいで酷く明るく感じ、
慣れない目がその光を受けてチカチカする。
カーテンの外に居るのはどうやら山南先生と烝らしく、
二人は私がここで寝こけて居る間に戻って来たようだ。
私がこっそりとカーテンの隙間から覗いてみると、
丁度山南先生が烝に挨拶をして保健室を出て行く所だった。
「ああ、そうだ、山崎君」
「はい?」
「くれぐれも、忘れものには気を付けて下さい。
室内はきちんと見回っておいた方がいいでしょう。隅々まで確認しておいて下さいね」
にっこり、と、
山南先生が穏やかに、それは美しく笑う。
同時に眼鏡の奥の瞳が意味深に光るのを、私は確かに見てしまった。
瞬間的に私は凍りつく。
さ、さすが・・・山南敬介、恐るべし!
――――――じゃなくて!!・・・・・・・ど、ど、どうすれば・・・!?
「・・・・・・はい、承知しました」
「ええ、それでは私はこれで失礼します」
再び笑顔を浮かべ、今度こそ山南先生は背中を向けて保健室を出て行く。
私は安堵の溜息を吐きながら、ドサリと再度、ベッドに腰を下ろした。
その時――――――――
シャッ。
乾いた音と一緒にカーテンが一気に引かれ、烝が私を見下ろしていた。
「あ」
「・・・・・・、やはり君か」
「・・・・・・・・・ど、どうも」
「俺は君に帰宅してくれと言うメールをしなかっただろうか?」
呆れた溜息交じりにそう言われ、胸の奥がチクリと痛む。
私はそれを堪えつつ、苦笑して返事をする。
「貰いました、・・・すみません。何かいつの間にか眠ってしまってて」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・怒ってますか?」
「いや・・・・」
短く答えた烝が私の隣に腰を下ろした。
その横顔が疲れて見えるのは気のせいじゃないだろう。
ここ最近はその位本当に忙しそうだった。
そう思うと急激に罪悪感が込み上げてくる。
この人を私の我儘に付き合わせる訳にはいかない。
「・・・すみません、私・・・帰りますね。
山崎先生も早く帰ってゆっくり休んだ方が良いですよ・・・」
「・・・・・・・っ、待ってくれ」
「えっ!?・・・・・・っっっと」
立ち上がろうと中腰になった所で烝に腕を掴まれ、
私はそのままバランスを崩して背中からまたしてもベッドへと身を沈めた。
背中に柔らかなベッドの衝撃、そして正面には。
「す、すまない、手荒な真似をするつもりはなかったんだが」
「いいえ、こっちこそ大げさに倒れちゃって・・・・・・・・・」
ぽかんと間抜けな顔で驚く私に、珍しく動揺した様子の烝。
この状況はお約束ながら、保健室のベッドに押し倒される女子高生の図、になってしまっている。
どくどく、ばくばくと私の心臓が分かり易く早鐘を打ち始めた。
そこで不意に烝がゆっくりと私の方に体を傾け、覆い被さって来る。
「っ、あの・・・」
「・・・・・・・少しだけ、こうさせてくれないか?」
私の体に腕を回し、肩口に顔を埋めるようにして彼が言った。
その声にも何処か疲れが滲んでいる。
「・・・・・・・・はい」
私が頷いて答えたと同時に烝がホッとしたみたいに体の力を抜く。
彼の体温と重みが凄く心地よく感じた。
こんなに間近に烝を感じて、彼の匂いに包まれるのは久しぶりだ。
久しぶりだと言うより、今までだって数えるほどしかなかったりする。
私は実はそのことに物足りなさを感じてたりするんだけど、今までずっと口に出せずに居た。
「本当は、私の方こそ山崎先生に触れて欲しかったんですよ」
「・・・・・・・・・・・・え!?」
独り言のように漏らした私の台詞に、烝が驚いたように瞳を見開いて顔を上げる。
私は慌てて彼から目を逸らした。
「あっ・・・、す、すみません・・・・・・、あの、疲れてる時に言うことじゃ、ないですよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・俺は・・・」
私が視線を外した後も彼がジッと私を見つめている気配を感じて、
私は恥ずかしさの余り居たたまれなくなってしまった。
本当に、今言う様な事じゃなかったかもしれない。
恥ずかしい、恥ずかし過ぎる。
「えっと、今のは・・・、き、聞かなかったことに・・・・・・・・・・、
―――――――――ンんぅっ・・・・っっ・・・!!??」
烝と視線を合わせられないままそう口にしかけたその途中。
それを遮るように烝が突然私の唇を自分のもので塞いだ。
さっき突然腕を掴まれてベッドに倒れ込んだ時もかなり驚いたけど、
今回はさっきよりもっとずっと驚いてしまった。
いつもはどちらかと言うと冷静で、喜怒哀楽を分かり易く表情に表さない彼が、
まるで別人みたいに強引な仕草で私の唇を奪っている。
それこそそれは言葉も、そして呼吸も全部奪われるんじゃないかと思う位に激しいキスだった。
――ギシッ。
小さくベッドのスプリングが軋んだ音が私の耳に響く。
ぬらりと熱い烝の舌が口内を這いまわり、喉が焼けつく様な錯覚に陥る。
彼の長い脚が私の太股に押し付けられ、スーツのズボンの冷たい感触が伝わって来た。
私はいつの間にか自分からも烝の背中に腕を回し、
そのスーツのジャケットをぎゅっと握りしめていた。
「・・・・・」
「・・・・・・ふ、・・・っ・・・」
唇を軽く触れ合わせたまま、いつもより低く甘い声で名前を呼ばれる。
同時に、烝の温く湿った吐息が私の顔を撫でた。
「・・・俺はずっと、君に触れたくて仕方がなかったんだ・・・。
だが、怖かった・・・。
「・・・・え?」
「ここのところ仕事が忙しかったのは本当だ・・・。
だが、一方でそれを自分の抑えきれない気持ちの逃げ場にしようとしても居たんだ」
「・・・・・・・山崎先生」
「すまない、君には・・・・寂しい思いをさせてしまったな」
ぎゅ、と。
彼の両腕が力を込めて私を抱きしめる。
私はそれに応えるように自分の両腕にも力を込めた。
そして、彼の唇に自分からキスをする。
「・・・私の寂しかった気持ち、全部、山崎先生が埋めて下さい」
「・・・・・・」
私が言い終えるのとほぼ同時に再度、彼に唇を奪われる。
ぬるりと私の口内に侵入して来た烝の舌が私の舌を捕らえ、絡まり合った。
深く濃厚なキスを交わしながら、私達を少しずつお互いの衣服を乱していく。
彼の骨ばった手が私の制服の赤いリボンを解き、シャツのボタンを外した。
そして服の中に侵入した手が、少し躊躇いがちに肌を撫でる。
更に、その手がゆっくりとブラのホックを外し、掌が私の胸の膨らみに触れた。
やわやわと指先が動き、
私の体の一部がそれに合わせて粘土細工のようにぐにゃぐにゃと形を変える感覚がある。
「っ・・・」
それに反応して漏れた吐息さえ奪う様に、烝は私の唇を貪り続けた。
温い唾液が口の中で溶けあい、溢れだす。
クチュリと粘着質な音が私の鼓膜を震わせる。
心音は未だにドクドクと不自然な速さで鼓動を刻んでいた。
窓の外はもう随分暗くなってて、室内の電気は付いてても暖房は入ってない。
だけどそれでも、私の体はもう十分熱を持っていた。
そしてこの熱は、この人が更に上昇させてくれるに違いなくて。
「、・・・君が好きだ・・・」
甘く掠れた声がキスの合間に囁くようにそう告げる。
私は微かに笑みを浮かべ、彼に答えた。
「私も烝が好き」
いつもなら恥ずかしいとからしくないとか、余計なことをゴチャゴチャ考えて余り口にできなかった台詞。
だけど今回ばかりは自然にそう返すことができた。
そしてそれは正解だったと思う。
その瞬間に彼は今まで見たどの表情より幸せそうな笑顔を浮かべ、
私の唇に何度目かのキスをくれたから。
(END)
き、ききききんちょーしたぜっ!山崎君っ(笑)。
初書きで甘さを求めたら何やら途中ちょっと迷走しちゃいましたが、
どうにか書き終えました。ベタベタな終わり方になりましたけど(笑)。
因みに本来SSLでの山崎君の位置づけは保健委員ってことで、
生徒らしいですね。私は先生にしちゃいましたけども。
話が逸れましたが、リクとしては『ストイックなイメージの彼の違う面が見てみたい』と言う事だったのですが、・・・・・クリア出来ているといいなぁ(←・・・)。
実はツッコミ所が満載になった自覚は有るんですが、一生懸命執筆させて頂きました!
初書きだった事も有って新鮮で楽しかったですv
ではでは、リク下さった月白様、
そしてここまでお付き合い下さった姫様、誠に有難うございます!
初書きで甘さを求めたら何やら途中ちょっと迷走しちゃいましたが、
どうにか書き終えました。ベタベタな終わり方になりましたけど(笑)。
因みに本来SSLでの山崎君の位置づけは保健委員ってことで、
生徒らしいですね。私は先生にしちゃいましたけども。
話が逸れましたが、リクとしては『ストイックなイメージの彼の違う面が見てみたい』と言う事だったのですが、・・・・・クリア出来ているといいなぁ(←・・・)。
実はツッコミ所が満載になった自覚は有るんですが、一生懸命執筆させて頂きました!
初書きだった事も有って新鮮で楽しかったですv
ではでは、リク下さった月白様、
そしてここまでお付き合い下さった姫様、誠に有難うございます!