窒息するまでキスして
「あー・・・もう、普通女子生徒に頼む?これ・・・」
放課後。
両手に抱えた段ボール。
中身は生物の教材が入ってんのは間違いないけど、詳しくは確認してない。
大きさの割に中々ずっしりしているこれは、私が生物室に忘れ物をして取りに行った際、
新見先生に押し付けられた物だ。
「ああ、君、丁度いい所に来てくれました。私はこれから少し用事が有りましてね、
この段ボールを第二倉庫に持って行って下さい。
中身は出さずにこのまま第二倉庫の隅にある棚の上に置いておいてくれればいいですから。
場所は一番奥の右の片隅です。その一番上の棚に置いておいて下さい。間違えないように」
私がYESかNOの返事をする以前に新見先生は私に段ボールを強引に手渡し、
そのままさっさと生物室を出て行ってしまった。
周りにクラスメイトの男子でも居れば手伝って貰ったとこだけど、
既に生徒は全員教室に戻った後。
生憎とそんな都合のいい事は起らなかった訳だ。
で、今、私は仕方なく何気に予想以上に重い段ボールを抱え、
第二倉庫を目指して廊下を歩いていた。
「あああっ!ちょ、返せよ!新ぱっつぁん!それオレのカレーパンだっつーの!」
「馬鹿野郎平助!お前、ちゃんと永倉先生様と呼べ!先生様と!
このカレーパンはこの俺が責任持って処分してやる、有難く思いやがれ!」
「はぁっ!?意味分かんないし!先生ってだけでも驚きなのに、何で様が要るんだよ!?
新ぱっつぁんなんて新ぱっつぁんで十分だって!
って言うか、どうでもいいからマジで返せよ!
やっと手に入れたんだぞ!その限定50個の特製カレーパン!」
聞き慣れた声に私が足を止めると、
廊下の片隅でお馴染のやり取りをしてる教師と生徒の姿があった。
生徒の方は私の2コ下の幼馴染、教師の方は体育の担任。
どっちも、色んな意味で良く知ってる。
どうやら平助のカレーパンを新八が奪ってる所らしいけど、
既に新八の手にはカレーパンがあって、
身長差のせいで平助の方が不利な状況みたいだ。
方向的にも二人が居る場所はどうせ通り道だから、私は彼らの傍まで近付いて行った。
平助も新八もまだ私には気付いてない。
と、彼らの背後からまた一人、教師が姿を見せた。
長身で赤毛、自然と目を惹くルックスの良さ。
私のクラスの担任であり、数学教師の原田左之助だ。
周囲の女子生徒の視線が分かり易くそっちに集まったのが分かる。
「なーにやってんだよ、お前らは。騒々しい奴らだな」
「あ!左之さん先セ助けてよ!新ぱっつぁんがオレのカレーパンを強奪しようとするんだぜ!」
「んだと!?平助っ!強奪たぁ何だよ!?強奪たぁ!人聞きの悪ぃこと言うな!」
「ああー、はいはい、分かった分かった!ったく下らねぇことでまたお前らは・・・。
土方さんに見つかったらまた怒鳴られんぞ」
呆れた口調で左之がそう言うと、平助がぶーたれた様子で口を開く。
「知るかよ!大体新ぱっつぁんが大人げなく可愛い生徒の楽しみを奪ったりすんのが悪いんだろ!?」
「可愛い生徒だって!?馬鹿野郎!そう言うのは偉大な教師を尊敬する奴の事を言うんだよ!
と言うことで、このカレーパンは貢物として頂いた!」
「ふざけんなっ!誰が新ぱっつぁんなんかに貢ぐかっつんだ!」
「・・・ま、確かに・・・新八が偉大だってんなら、そこいら中偉大な人間だらけだわな・・・」
結局左之も二人を本気で止めようとか、そう言う事は考えてないらしい。
やれやれ的な目線をくれながらも、何だかんだでその下らない会話に加わってしまっている。
ま、これもまたいつものことだ。
私は苦笑しつつ三人の傍まで歩を進める。
「おお!姉!いいとこに来た!見てよ、この年寄り達がオレのカレーパンをさー!」
「年寄り達・・・・?おい、待てよ、平助。そりゃまさか俺も含まれてんのか?
俺はお前のカレーパンになんざ全く興味ないんだがな。
しかも新八はともかく、俺まで年寄り扱いとは心外だぜ」
「何ぃ!?左之!お前この俺を裏切る気か!?」
ぎゃーぎゃーわいわい。
三人しか居ないってのに毎度毎度よくまぁここまで騒がしく出来るもんだと思う。
画面越しに見てた頃はそんな姿をほのぼのと微笑ましいものの様に見てたけど、
リアルに目にして既に日常茶飯事となった今では「はいはい、またですか!」と言う感じだ。
それでもまぁ、この三人のこう言うやり取りはやっぱり嫌いじゃないんだけど。
「それより、お前、その手に持ってる段ボールはどうしたんだ?」
「あ、これですか・・・。実はさっき生物の授業の後、
生物室に忘れ物しまして、それを取りに戻ったんですが、」
左之に新見先生に押し付けられた段ボールの話を説明していたその途中。
唐突に、ひょいっとその段ボールが私の両手から消えた。
余りに突然の出来ごとだった為、重い物を抱える体勢を続けて居た私の両腕が不自然に上がり、
ほんの一瞬足元が1,2歩よろける。
「うっわ!えっ!?えっ!?」
「姉、大丈夫か?」
言った平助が軽くその私の肩を支えてくれた。
「あ、うん、あんまり急だったから驚いただけ・・・・、??」
答えつつも、私は一瞬何が起きたのか分からずにきょとんとした表情を浮かべる。
すると、いつの間にか平助の傍にいた新八が私のすぐ隣に立っていて、
その彼の手には例の段ボールが抱えられていた。
左之に視線を向けていた事と、新八と私に身長差が有り過ぎな事も有り、
咄嗟にそのことに気付けなかった。
「おっと、悪ぃな、。何か重そうだったから先に俺が持った方がいいと思ったんだけどよ」
そう言った新八に、左之が呆れたように口を開く。
「あのな、新八。そう言う時は一言言えよ」
「だから悪かったって。しっかし新見さんもひでぇな、
何も女の子にこんなもん持たせるこたねぇだろ」
「だな・・・。ったく、困ったもんだな、あの人も・・・」
説明の途中だったにも関わらず、新八も左之も大体の事情を把握してくれたらしい。
平助も新八の言葉で、ああー、と眉間にしわを寄せながら頷いていた。
「で?、どうせこれを倉庫に運んどけとかって言われてんだろ?
第一か?それとも第二の方か?」
「あ、第二の方です・・・けど、いいんですか?」
「おう、任せとけ。俺にゃこの程度どってことねぇけど、女の子には重すぎる荷物だろ」
答えた新八がニッと白い歯を見せて笑う。
私もつられて笑ってしまった。
単純かもしれないけど、こういうさり気ない優しさってのはやっぱ嬉しいし、
こう言う所、新八の格好イイ所の一つだと思う。
「つーか第二倉庫ならオレの教室のが近いし、オレが持ってってもいいけど?」
「いや、もう段ボールは新八が持っちまってんだからアイツに任せとけ。
それより平助、お前はこれ持ってさっさと逃げちまった方がいいんじゃねぇか?」
左之はそう言っていつの間にやら新八が奪っていた筈の平助のカレーパンを、
彼に手渡した。
それを受け取った平助が嬉々として親指を立てる。
「お!左之さん先セ、グッジョブ!」
「おお、これで俺を年寄り扱いすんのはなしな」
「って、左之!?お前いつの間に俺の尻ポケからそれを!!??」
「うげぇっ!?新ぱっつぁん人のカレーパンそんなとこに入れてんなよ!」
新八の言葉に平助は自分の手に有るカレーパンを凝視しながら心底嫌そうな顔をした。
微妙にカレーパンが潰れてるのは、二人が散々触りまくったからなのか、
それとも新八の尻ポケ被害からなのか、私には分からない。
いや、多分ほぼ八割方新八の尻ポケによる被害なんだろうけど、
そこはもう、言っちゃいけないお約束なんだと思う。
平助は少しの間歪な形のカレーパンと睨めっこをした後、決心したように頷いた。
「だ、大丈夫だ!大丈夫だって!そ、そうだ、アレだよ!三秒ルールみたいなもんだ!
この程度で約一ヶ月ぶりに手にした限定カレーパンを手放せるかっての!」
うんうん、と、平助は自分自身に言い聞かせるようにして激しく肯いている。
その顔が何気に引きつってるのは、まぁ仕方ないかもしれない。
本人だって本当は三秒ルールが適用されるには余りに余りな状態なんだと分かってるんだろう。
つまりはそれでも諦めきれない位の魅力が、あの限定カレーパンにはあるってことだと思う。
「・・・・・・・・・・・・食べるんだ、やっぱアレ」
「・・・・ははっ、みたいだな」
私と左之は、平助に聞こえない程度のひそひそとした声で言って苦笑した。
「じゃ、姉、オレもう行くわ!左之さん先セ、ありがと!じゃあな!」
「待てぃ!平助!俺にも挨拶くらいしてけ!」
「はいはい、バイバイ、新ぱっつぁん!」
そう言い残すと、平助は教師二人の前だと言うのに堂々と廊下を走って行ってしまった。
「俺も職員室に戻るとするか」
「私は永倉先生と一緒に第二倉庫に行きますね」
「おう、じゃ、行こうぜ。っと、左之、また後でな」
「ああ、そんじゃ二人とも、またな」
左之は私達に軽く片手を上げてそのままその場を離れて行く。
私と新八は揃って第二倉庫に向かうことにした。
二人並んで歩きながら、不意に私と視線を合わせた新八が照れたように笑った。
「・・・・左之の奴にゃ感謝しねぇとな・・・・」
「・・・・・・・・・ですね」
周囲には他の生徒も居たけど特にこっちを気にしてる様子はない。
それでも私達は不自然にならない程度の『普通』を装いつつ、
小さな声でそう言って微かに笑い合った。
左之は、私と新八が付き合ってる事を知ってる数限られた人間の一人だ。
だからこそ、彼はこうして私達が二人になれる機会を作ってくれたんだと思う。
原田左之助はさり気ない気遣いの出来る男、
ってことはリアルに接する前から思ってたけど、
こう言う時、ホントにそれを実感する。
「相変わらず散らかってんなぁ、こっちの倉庫は」
第二倉庫に到着してすぐに、新八はやれやれと呆れた溜息交じりにそう言った。
確かに彼の言う通りではある。
ここは第一倉庫と違い、広い割には色々な物が乱雑に、所狭しと置かれていた。
「まぁね。でも永倉先生の部屋よりはマシだと思いますよ、ホント」
「てめぇ!言いやがったな!このっ!」
しみじみ言った私に新八が段ボールを片手に持ち替え、
私の頭をぐしゃぐしゃ掻き回す様にして乱暴に撫でた。
「ぎゃ!」
「、お前は、ぎゃ!とか言うんじゃねぇよ、
女の子のならもっときゃっ☆位言って、この俺のハートを狙い撃ちしてみやがれ!」
笑いながら私の頭から手を放し、新八は倉庫の奥に進んで行く。
私もその後に続いた。
「いやいや、きゃっ(ほし)なんてキャラじゃなさ過ぎるし。
てか、永倉先生、そう言うの好きなんだ?ベタですね。
それで狙い撃ちされる訳ですか。あ、その一番奥の棚の上にお願いします」
「ん?まぁ別にお前は今のままでも全然いいけどよ・・・。
・・・・考えてみりゃもうとっくに狙い撃ちされちまってるっつーか・・・」
後半。
何故か妙に照れた様子で珍しくぼそぼそと新八が何か続けたけど、
私の耳にはよく聞き取れなかった。
それで私がもう一度聞き返してみたものの、
彼は妙にぶっきらぼうな様子で結局答えてくれなかった。
そして私が示した棚の上に例の段ボールをひょいっと載せる。
この高さの棚の一番上に足場も使わず簡単にアレを置けるなんて、
身長があるって部分だけじゃなく、やっぱさすがに男の人だなと思った。
「ったく、こんな重いもん、しかもこんな場所、
どう考えたって女の子に任せる仕事じゃねぇだろ・・・!」
新八がぶつくさ文句を垂れてる内容は、どうやら新見先生に向かっての物らしい。
その意見には激しく同意だけど、でも、今回に限ってはちょっと違うかもしれない。
現金としか言いようのない話だけど、
新八とこうしてここに二人で居られるのもそのおかげ、と、言える訳だし。
「・・・・そう言えば、久しぶりかも」
「あん?何がだ?」
「うん、学校でこうやって二人っきりになるのってさ・・・」
「っ!」
ぼそり、と。
呟くように返した私の一言に、何故か新八は驚いたように瞳を見開いて固まった。
え?何かマズい事言ったっけ?
不安になって私はチラッと廊下の方に視線を向けてみる。
もしかして他の生徒の気配がしたとか。
なんて思ったんだけど、考えてみりゃこの第二倉庫は広くて、今私達が居る場所はその一番奥の片隅だ。
余程大声出さない限りは外まで声は届かないし、例え万が一窓やドアから覗かれたとしても、
真っ先に目に入る様な所じゃない。
ってことは、問題はそこじゃないんじゃないだろうか。
「?どうかした?」
念の為、さっきよりも声を潜めて聞いてみる。
「・・・んでもねぇよ、ただ・・・その・・・、まぁ、お前の言う通りだなと思ってよ」
「だよね。ま、仕方ないんだけど。
やっぱちょっと嬉しくて、さっき新八が言ってたけど、原田先生に感謝しとかないと」
久々に校内で新八と二人っきりって状況に浮かれて、私は珍しく素直にそう口にした。
いかん、いかんと思いつつ、頬が緩みっぱなし。
だらしない。
分かってるけど、無理に抑える必要性も感じなかった。
新八に視線を向けると、彼はどうやら私の言葉に照れているらしく、
分かり易く顔を赤くしてさっきより更に硬直している。
その様子がおかしくて、可愛くて、私は思わず吹き出しそうになってしまった。
それをどうにか堪え、私はそこで不意にある物に目をとめる。
ある物。
それは、一般に私が良く知る物よりはちょっと低めの脚立だった。
「?どうした?」
「ちょっと待って」
答えつつ、私はその脚立の上に立ってみる。
「あ、やっぱりね」
「は?一体何だ?」
「うん、ちょっと、こっち来て」
言った私に、新八はきょとんとした表情をしつつも、近寄って来た。
そして丁度私の正面に立つ。
その私達の目線は、ほぼ同じ位になっていた。
「私がこれ位だったら、し易いのかも・・・・」
「し易いって、何がだよ?」
脚立に上ったことで目線が同じになったってことは分かったらしい新八は、
だけど私がたった今口にしたことの意味は分からなかったようだ。
まぁ、そりゃそうかもしれない。
相手は新八だし。
だからこそ新八だとも思うし。
何より、今私が考えてる事は、いつもなら校内で自分から言う様な内容じゃない。
だけど仕方ないじゃないか、と開き直ってしまう。
だって今、どうしてもそう言う気分になってしまったんだから。
私はニッと笑って新八の質問に答えることにした。
「キス」
二文字。
答えた私に、新八は一瞬目を点にする。
そりゃもう、米粒どころか、針の先で刺した程度の大きさの目の点レベルで。
更にそのまま硬直する事数秒。
そして。
「・・・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・・っなっ!?なななっ!?何言ってやがるっ!?」
声を裏返らせながら、一瞬にして顔を真っ赤にする新八。
彼はやっぱり予想通りの分かり易い動揺と焦りを示してくれた。
ああ、駄目だ、これはもう、笑ってしまう。
私は今度ばかりは堪え切れずに思わず吹き出していた。
だって今はこの人は私にとって教師で、つまりは大人で、
明らかに年上の男性ってヤツな筈なのに、この可愛過ぎる反応。
私なんかよりよっぽど乙女と言うか、本当に可愛らし過ぎる。
勿論、いい意味で。
「って、笑うな!!お前、俺をからかいやがったな!?」
「っち、ちが、違う、けど・・・・・!っくっくく・・・!し、新八、可愛いから・・・!」
「はぁあ!?可愛いだと!?!お前そりゃまさか俺に向かって言ってんのか!?」
今はほぼ同じ高さにある彼の真っ赤な顔がズズイと私に近付く。
私は口元を押さえつつ、それでも笑いを止める事が出来なかった。
そのままの状態で、コクコクと首を縦に振って肯定を示す。
だって、ホントに可愛い過ぎる。
少しの間笑い続けて居ると、すぐ目の前に居る新八が急に黙り込んだことに気付いた。
さすがに笑い過ぎたか、なんて思って視線を再度、彼に向けた、その時。
「―――――だったら、本当に俺が可愛い野郎だって言えんのか、
試してやろうじゃねぇか、なぁ?」
「え?・・・・・・・・ぅ、っンンッ・・・・・・!!??」
声のトーンがいつもより低くなり、
今までも何度か聞き覚えのあるその声と変化に私が驚いた一瞬。
時、既に遅し。
唐突に抱きすくめられ、強引に唇を塞がれた。
唇が重なり合った途端、新八の肉厚で大きな舌が私の口内にぬるりと入りこむ。
「っ、ん、っ・・・!」
反射的に私の体が小さく震えた。
その間も彼の舌が荒っぽい動きで口腔をぬらぬらと蹂躙する。
新八の熱く湿った吐息があっという間に私の喉まで満たし、
本気でそこから焦げ付くんじゃないかなんて馬鹿な事を考えた。
喰らいつくと言う表現がピッタリの荒々しいキスに息が弾む。
「っは、ン、ふ・・・」
無意識に漏らす吐息が、自分でも笑える位に甘ったるい。
「・・・まだだ・・・、こんな・・・もんじゃ、許さねぇぞ・・・・」
キスの合間、熱を含んだ声で低く囁くように新八が言った。
そして再度、まるで私の口内を抉るみたいに彼の舌が蠢く。
同時にとろみを帯びた二人分の温い唾液がくちゅくちゅと粘着質な水音を発した。
それから後は新八は私に呼吸をする暇さえ与えてくれず、
蕩けて麻痺した思考が本気でキスで殺されるかもしれないと言う錯覚に陥る始末。
相当イカれた馬鹿すぎる考えだと思うけど、そう思わずにはいられないようなキスだった。
新八の大きな舌の形や温度、その動きの全部、私に叩きこまれている。
空気を求めて喘ぐ声まで飲み込むなんて、中々どぐされてると思うけど、
そんなことさえ愛しいと思ってる私の頭はもっとどぐされてる自覚はあった。
脚立の上に立ってる私の足元はそうしっかりしてるとは言えない。
だけど、新八の腕がしっかり私の体を支えてくれてるせいか、そっちを不安に思う事はなかった。
と言うより、そんな余裕がなかっとも言える。
搦められた舌と舌が新八に強く吸われ、ちゅくりと唾液が溶けあう音がした。
彼の片手が私の胸元を制服の上から弄っているのが分かる。
食われる。
このままじゃ、本気で食われてしまう。
ここはそもそも倉庫の中とは言え、校舎内。
余り人気のない場所ではあるけど、生徒も教師も有る程度出入りは自由な場所だ。
そんな場所だって分かっちゃ居る、分かっちゃいるけど、分かってるのに、
もう、私は抵抗する気なんか微塵も起きちゃ居なかった。
長く荒っぽく、激し過ぎるキスが終わった後。
新八は私を強く抱きしめながら、それでも明後日の方向に視線を向けている。
「・・・あー・・・、すまねぇな・・・、その、
何か・・・ちっとばっかし突っ走り過ぎちまったぜ・・・」
ついさっきまで肉食獣も真っ青なことをやってのけてたくせに、
今は耳まで真っ赤でそんなことをのたまう。
その姿がやっぱり可愛く思えてしまい、私は彼の体に回した両腕にぎゅうっと力を込めた。
ホント、私は自分で思った以上にどぐされた甘酸っぱい思考の持ち主になったもんだと思う。
だって笑うしかないじゃないか。
あのままキスで窒息死しても良かったと、本気でそんなことを考えるなんて。
(END)
「あー・・・もう、普通女子生徒に頼む?これ・・・」
放課後。
両手に抱えた段ボール。
中身は生物の教材が入ってんのは間違いないけど、詳しくは確認してない。
大きさの割に中々ずっしりしているこれは、私が生物室に忘れ物をして取りに行った際、
新見先生に押し付けられた物だ。
「ああ、君、丁度いい所に来てくれました。私はこれから少し用事が有りましてね、
この段ボールを第二倉庫に持って行って下さい。
中身は出さずにこのまま第二倉庫の隅にある棚の上に置いておいてくれればいいですから。
場所は一番奥の右の片隅です。その一番上の棚に置いておいて下さい。間違えないように」
私がYESかNOの返事をする以前に新見先生は私に段ボールを強引に手渡し、
そのままさっさと生物室を出て行ってしまった。
周りにクラスメイトの男子でも居れば手伝って貰ったとこだけど、
既に生徒は全員教室に戻った後。
生憎とそんな都合のいい事は起らなかった訳だ。
で、今、私は仕方なく何気に予想以上に重い段ボールを抱え、
第二倉庫を目指して廊下を歩いていた。
「あああっ!ちょ、返せよ!新ぱっつぁん!それオレのカレーパンだっつーの!」
「馬鹿野郎平助!お前、ちゃんと永倉先生様と呼べ!先生様と!
このカレーパンはこの俺が責任持って処分してやる、有難く思いやがれ!」
「はぁっ!?意味分かんないし!先生ってだけでも驚きなのに、何で様が要るんだよ!?
新ぱっつぁんなんて新ぱっつぁんで十分だって!
って言うか、どうでもいいからマジで返せよ!
やっと手に入れたんだぞ!その限定50個の特製カレーパン!」
聞き慣れた声に私が足を止めると、
廊下の片隅でお馴染のやり取りをしてる教師と生徒の姿があった。
生徒の方は私の2コ下の幼馴染、教師の方は体育の担任。
どっちも、色んな意味で良く知ってる。
どうやら平助のカレーパンを新八が奪ってる所らしいけど、
既に新八の手にはカレーパンがあって、
身長差のせいで平助の方が不利な状況みたいだ。
方向的にも二人が居る場所はどうせ通り道だから、私は彼らの傍まで近付いて行った。
平助も新八もまだ私には気付いてない。
と、彼らの背後からまた一人、教師が姿を見せた。
長身で赤毛、自然と目を惹くルックスの良さ。
私のクラスの担任であり、数学教師の原田左之助だ。
周囲の女子生徒の視線が分かり易くそっちに集まったのが分かる。
「なーにやってんだよ、お前らは。騒々しい奴らだな」
「あ!左之さん先セ助けてよ!新ぱっつぁんがオレのカレーパンを強奪しようとするんだぜ!」
「んだと!?平助っ!強奪たぁ何だよ!?強奪たぁ!人聞きの悪ぃこと言うな!」
「ああー、はいはい、分かった分かった!ったく下らねぇことでまたお前らは・・・。
土方さんに見つかったらまた怒鳴られんぞ」
呆れた口調で左之がそう言うと、平助がぶーたれた様子で口を開く。
「知るかよ!大体新ぱっつぁんが大人げなく可愛い生徒の楽しみを奪ったりすんのが悪いんだろ!?」
「可愛い生徒だって!?馬鹿野郎!そう言うのは偉大な教師を尊敬する奴の事を言うんだよ!
と言うことで、このカレーパンは貢物として頂いた!」
「ふざけんなっ!誰が新ぱっつぁんなんかに貢ぐかっつんだ!」
「・・・ま、確かに・・・新八が偉大だってんなら、そこいら中偉大な人間だらけだわな・・・」
結局左之も二人を本気で止めようとか、そう言う事は考えてないらしい。
やれやれ的な目線をくれながらも、何だかんだでその下らない会話に加わってしまっている。
ま、これもまたいつものことだ。
私は苦笑しつつ三人の傍まで歩を進める。
「おお!姉!いいとこに来た!見てよ、この年寄り達がオレのカレーパンをさー!」
「年寄り達・・・・?おい、待てよ、平助。そりゃまさか俺も含まれてんのか?
俺はお前のカレーパンになんざ全く興味ないんだがな。
しかも新八はともかく、俺まで年寄り扱いとは心外だぜ」
「何ぃ!?左之!お前この俺を裏切る気か!?」
ぎゃーぎゃーわいわい。
三人しか居ないってのに毎度毎度よくまぁここまで騒がしく出来るもんだと思う。
画面越しに見てた頃はそんな姿をほのぼのと微笑ましいものの様に見てたけど、
リアルに目にして既に日常茶飯事となった今では「はいはい、またですか!」と言う感じだ。
それでもまぁ、この三人のこう言うやり取りはやっぱり嫌いじゃないんだけど。
「それより、お前、その手に持ってる段ボールはどうしたんだ?」
「あ、これですか・・・。実はさっき生物の授業の後、
生物室に忘れ物しまして、それを取りに戻ったんですが、」
左之に新見先生に押し付けられた段ボールの話を説明していたその途中。
唐突に、ひょいっとその段ボールが私の両手から消えた。
余りに突然の出来ごとだった為、重い物を抱える体勢を続けて居た私の両腕が不自然に上がり、
ほんの一瞬足元が1,2歩よろける。
「うっわ!えっ!?えっ!?」
「姉、大丈夫か?」
言った平助が軽くその私の肩を支えてくれた。
「あ、うん、あんまり急だったから驚いただけ・・・・、??」
答えつつも、私は一瞬何が起きたのか分からずにきょとんとした表情を浮かべる。
すると、いつの間にか平助の傍にいた新八が私のすぐ隣に立っていて、
その彼の手には例の段ボールが抱えられていた。
左之に視線を向けていた事と、新八と私に身長差が有り過ぎな事も有り、
咄嗟にそのことに気付けなかった。
「おっと、悪ぃな、。何か重そうだったから先に俺が持った方がいいと思ったんだけどよ」
そう言った新八に、左之が呆れたように口を開く。
「あのな、新八。そう言う時は一言言えよ」
「だから悪かったって。しっかし新見さんもひでぇな、
何も女の子にこんなもん持たせるこたねぇだろ」
「だな・・・。ったく、困ったもんだな、あの人も・・・」
説明の途中だったにも関わらず、新八も左之も大体の事情を把握してくれたらしい。
平助も新八の言葉で、ああー、と眉間にしわを寄せながら頷いていた。
「で?、どうせこれを倉庫に運んどけとかって言われてんだろ?
第一か?それとも第二の方か?」
「あ、第二の方です・・・けど、いいんですか?」
「おう、任せとけ。俺にゃこの程度どってことねぇけど、女の子には重すぎる荷物だろ」
答えた新八がニッと白い歯を見せて笑う。
私もつられて笑ってしまった。
単純かもしれないけど、こういうさり気ない優しさってのはやっぱ嬉しいし、
こう言う所、新八の格好イイ所の一つだと思う。
「つーか第二倉庫ならオレの教室のが近いし、オレが持ってってもいいけど?」
「いや、もう段ボールは新八が持っちまってんだからアイツに任せとけ。
それより平助、お前はこれ持ってさっさと逃げちまった方がいいんじゃねぇか?」
左之はそう言っていつの間にやら新八が奪っていた筈の平助のカレーパンを、
彼に手渡した。
それを受け取った平助が嬉々として親指を立てる。
「お!左之さん先セ、グッジョブ!」
「おお、これで俺を年寄り扱いすんのはなしな」
「って、左之!?お前いつの間に俺の尻ポケからそれを!!??」
「うげぇっ!?新ぱっつぁん人のカレーパンそんなとこに入れてんなよ!」
新八の言葉に平助は自分の手に有るカレーパンを凝視しながら心底嫌そうな顔をした。
微妙にカレーパンが潰れてるのは、二人が散々触りまくったからなのか、
それとも新八の尻ポケ被害からなのか、私には分からない。
いや、多分ほぼ八割方新八の尻ポケによる被害なんだろうけど、
そこはもう、言っちゃいけないお約束なんだと思う。
平助は少しの間歪な形のカレーパンと睨めっこをした後、決心したように頷いた。
「だ、大丈夫だ!大丈夫だって!そ、そうだ、アレだよ!三秒ルールみたいなもんだ!
この程度で約一ヶ月ぶりに手にした限定カレーパンを手放せるかっての!」
うんうん、と、平助は自分自身に言い聞かせるようにして激しく肯いている。
その顔が何気に引きつってるのは、まぁ仕方ないかもしれない。
本人だって本当は三秒ルールが適用されるには余りに余りな状態なんだと分かってるんだろう。
つまりはそれでも諦めきれない位の魅力が、あの限定カレーパンにはあるってことだと思う。
「・・・・・・・・・・・・食べるんだ、やっぱアレ」
「・・・・ははっ、みたいだな」
私と左之は、平助に聞こえない程度のひそひそとした声で言って苦笑した。
「じゃ、姉、オレもう行くわ!左之さん先セ、ありがと!じゃあな!」
「待てぃ!平助!俺にも挨拶くらいしてけ!」
「はいはい、バイバイ、新ぱっつぁん!」
そう言い残すと、平助は教師二人の前だと言うのに堂々と廊下を走って行ってしまった。
「俺も職員室に戻るとするか」
「私は永倉先生と一緒に第二倉庫に行きますね」
「おう、じゃ、行こうぜ。っと、左之、また後でな」
「ああ、そんじゃ二人とも、またな」
左之は私達に軽く片手を上げてそのままその場を離れて行く。
私と新八は揃って第二倉庫に向かうことにした。
二人並んで歩きながら、不意に私と視線を合わせた新八が照れたように笑った。
「・・・・左之の奴にゃ感謝しねぇとな・・・・」
「・・・・・・・・・ですね」
周囲には他の生徒も居たけど特にこっちを気にしてる様子はない。
それでも私達は不自然にならない程度の『普通』を装いつつ、
小さな声でそう言って微かに笑い合った。
左之は、私と新八が付き合ってる事を知ってる数限られた人間の一人だ。
だからこそ、彼はこうして私達が二人になれる機会を作ってくれたんだと思う。
原田左之助はさり気ない気遣いの出来る男、
ってことはリアルに接する前から思ってたけど、
こう言う時、ホントにそれを実感する。
「相変わらず散らかってんなぁ、こっちの倉庫は」
第二倉庫に到着してすぐに、新八はやれやれと呆れた溜息交じりにそう言った。
確かに彼の言う通りではある。
ここは第一倉庫と違い、広い割には色々な物が乱雑に、所狭しと置かれていた。
「まぁね。でも永倉先生の部屋よりはマシだと思いますよ、ホント」
「てめぇ!言いやがったな!このっ!」
しみじみ言った私に新八が段ボールを片手に持ち替え、
私の頭をぐしゃぐしゃ掻き回す様にして乱暴に撫でた。
「ぎゃ!」
「、お前は、ぎゃ!とか言うんじゃねぇよ、
女の子のならもっときゃっ☆位言って、この俺のハートを狙い撃ちしてみやがれ!」
笑いながら私の頭から手を放し、新八は倉庫の奥に進んで行く。
私もその後に続いた。
「いやいや、きゃっ(ほし)なんてキャラじゃなさ過ぎるし。
てか、永倉先生、そう言うの好きなんだ?ベタですね。
それで狙い撃ちされる訳ですか。あ、その一番奥の棚の上にお願いします」
「ん?まぁ別にお前は今のままでも全然いいけどよ・・・。
・・・・考えてみりゃもうとっくに狙い撃ちされちまってるっつーか・・・」
後半。
何故か妙に照れた様子で珍しくぼそぼそと新八が何か続けたけど、
私の耳にはよく聞き取れなかった。
それで私がもう一度聞き返してみたものの、
彼は妙にぶっきらぼうな様子で結局答えてくれなかった。
そして私が示した棚の上に例の段ボールをひょいっと載せる。
この高さの棚の一番上に足場も使わず簡単にアレを置けるなんて、
身長があるって部分だけじゃなく、やっぱさすがに男の人だなと思った。
「ったく、こんな重いもん、しかもこんな場所、
どう考えたって女の子に任せる仕事じゃねぇだろ・・・!」
新八がぶつくさ文句を垂れてる内容は、どうやら新見先生に向かっての物らしい。
その意見には激しく同意だけど、でも、今回に限ってはちょっと違うかもしれない。
現金としか言いようのない話だけど、
新八とこうしてここに二人で居られるのもそのおかげ、と、言える訳だし。
「・・・・そう言えば、久しぶりかも」
「あん?何がだ?」
「うん、学校でこうやって二人っきりになるのってさ・・・」
「っ!」
ぼそり、と。
呟くように返した私の一言に、何故か新八は驚いたように瞳を見開いて固まった。
え?何かマズい事言ったっけ?
不安になって私はチラッと廊下の方に視線を向けてみる。
もしかして他の生徒の気配がしたとか。
なんて思ったんだけど、考えてみりゃこの第二倉庫は広くて、今私達が居る場所はその一番奥の片隅だ。
余程大声出さない限りは外まで声は届かないし、例え万が一窓やドアから覗かれたとしても、
真っ先に目に入る様な所じゃない。
ってことは、問題はそこじゃないんじゃないだろうか。
「?どうかした?」
念の為、さっきよりも声を潜めて聞いてみる。
「・・・んでもねぇよ、ただ・・・その・・・、まぁ、お前の言う通りだなと思ってよ」
「だよね。ま、仕方ないんだけど。
やっぱちょっと嬉しくて、さっき新八が言ってたけど、原田先生に感謝しとかないと」
久々に校内で新八と二人っきりって状況に浮かれて、私は珍しく素直にそう口にした。
いかん、いかんと思いつつ、頬が緩みっぱなし。
だらしない。
分かってるけど、無理に抑える必要性も感じなかった。
新八に視線を向けると、彼はどうやら私の言葉に照れているらしく、
分かり易く顔を赤くしてさっきより更に硬直している。
その様子がおかしくて、可愛くて、私は思わず吹き出しそうになってしまった。
それをどうにか堪え、私はそこで不意にある物に目をとめる。
ある物。
それは、一般に私が良く知る物よりはちょっと低めの脚立だった。
「?どうした?」
「ちょっと待って」
答えつつ、私はその脚立の上に立ってみる。
「あ、やっぱりね」
「は?一体何だ?」
「うん、ちょっと、こっち来て」
言った私に、新八はきょとんとした表情をしつつも、近寄って来た。
そして丁度私の正面に立つ。
その私達の目線は、ほぼ同じ位になっていた。
「私がこれ位だったら、し易いのかも・・・・」
「し易いって、何がだよ?」
脚立に上ったことで目線が同じになったってことは分かったらしい新八は、
だけど私がたった今口にしたことの意味は分からなかったようだ。
まぁ、そりゃそうかもしれない。
相手は新八だし。
だからこそ新八だとも思うし。
何より、今私が考えてる事は、いつもなら校内で自分から言う様な内容じゃない。
だけど仕方ないじゃないか、と開き直ってしまう。
だって今、どうしてもそう言う気分になってしまったんだから。
私はニッと笑って新八の質問に答えることにした。
「キス」
二文字。
答えた私に、新八は一瞬目を点にする。
そりゃもう、米粒どころか、針の先で刺した程度の大きさの目の点レベルで。
更にそのまま硬直する事数秒。
そして。
「・・・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・・っなっ!?なななっ!?何言ってやがるっ!?」
声を裏返らせながら、一瞬にして顔を真っ赤にする新八。
彼はやっぱり予想通りの分かり易い動揺と焦りを示してくれた。
ああ、駄目だ、これはもう、笑ってしまう。
私は今度ばかりは堪え切れずに思わず吹き出していた。
だって今はこの人は私にとって教師で、つまりは大人で、
明らかに年上の男性ってヤツな筈なのに、この可愛過ぎる反応。
私なんかよりよっぽど乙女と言うか、本当に可愛らし過ぎる。
勿論、いい意味で。
「って、笑うな!!お前、俺をからかいやがったな!?」
「っち、ちが、違う、けど・・・・・!っくっくく・・・!し、新八、可愛いから・・・!」
「はぁあ!?可愛いだと!?!お前そりゃまさか俺に向かって言ってんのか!?」
今はほぼ同じ高さにある彼の真っ赤な顔がズズイと私に近付く。
私は口元を押さえつつ、それでも笑いを止める事が出来なかった。
そのままの状態で、コクコクと首を縦に振って肯定を示す。
だって、ホントに可愛い過ぎる。
少しの間笑い続けて居ると、すぐ目の前に居る新八が急に黙り込んだことに気付いた。
さすがに笑い過ぎたか、なんて思って視線を再度、彼に向けた、その時。
「―――――だったら、本当に俺が可愛い野郎だって言えんのか、
試してやろうじゃねぇか、なぁ?」
「え?・・・・・・・・ぅ、っンンッ・・・・・・!!??」
声のトーンがいつもより低くなり、
今までも何度か聞き覚えのあるその声と変化に私が驚いた一瞬。
時、既に遅し。
唐突に抱きすくめられ、強引に唇を塞がれた。
唇が重なり合った途端、新八の肉厚で大きな舌が私の口内にぬるりと入りこむ。
「っ、ん、っ・・・!」
反射的に私の体が小さく震えた。
その間も彼の舌が荒っぽい動きで口腔をぬらぬらと蹂躙する。
新八の熱く湿った吐息があっという間に私の喉まで満たし、
本気でそこから焦げ付くんじゃないかなんて馬鹿な事を考えた。
喰らいつくと言う表現がピッタリの荒々しいキスに息が弾む。
「っは、ン、ふ・・・」
無意識に漏らす吐息が、自分でも笑える位に甘ったるい。
「・・・まだだ・・・、こんな・・・もんじゃ、許さねぇぞ・・・・」
キスの合間、熱を含んだ声で低く囁くように新八が言った。
そして再度、まるで私の口内を抉るみたいに彼の舌が蠢く。
同時にとろみを帯びた二人分の温い唾液がくちゅくちゅと粘着質な水音を発した。
それから後は新八は私に呼吸をする暇さえ与えてくれず、
蕩けて麻痺した思考が本気でキスで殺されるかもしれないと言う錯覚に陥る始末。
相当イカれた馬鹿すぎる考えだと思うけど、そう思わずにはいられないようなキスだった。
新八の大きな舌の形や温度、その動きの全部、私に叩きこまれている。
空気を求めて喘ぐ声まで飲み込むなんて、中々どぐされてると思うけど、
そんなことさえ愛しいと思ってる私の頭はもっとどぐされてる自覚はあった。
脚立の上に立ってる私の足元はそうしっかりしてるとは言えない。
だけど、新八の腕がしっかり私の体を支えてくれてるせいか、そっちを不安に思う事はなかった。
と言うより、そんな余裕がなかっとも言える。
搦められた舌と舌が新八に強く吸われ、ちゅくりと唾液が溶けあう音がした。
彼の片手が私の胸元を制服の上から弄っているのが分かる。
食われる。
このままじゃ、本気で食われてしまう。
ここはそもそも倉庫の中とは言え、校舎内。
余り人気のない場所ではあるけど、生徒も教師も有る程度出入りは自由な場所だ。
そんな場所だって分かっちゃ居る、分かっちゃいるけど、分かってるのに、
もう、私は抵抗する気なんか微塵も起きちゃ居なかった。
長く荒っぽく、激し過ぎるキスが終わった後。
新八は私を強く抱きしめながら、それでも明後日の方向に視線を向けている。
「・・・あー・・・、すまねぇな・・・、その、
何か・・・ちっとばっかし突っ走り過ぎちまったぜ・・・」
ついさっきまで肉食獣も真っ青なことをやってのけてたくせに、
今は耳まで真っ赤でそんなことをのたまう。
その姿がやっぱり可愛く思えてしまい、私は彼の体に回した両腕にぎゅうっと力を込めた。
ホント、私は自分で思った以上にどぐされた甘酸っぱい思考の持ち主になったもんだと思う。
だって笑うしかないじゃないか。
あのままキスで窒息死しても良かったと、本気でそんなことを考えるなんて。
(END)
な、な、なんがあああああああ(大笑)!毎度のこととはいえ、
新八はトリオで登場させて楽しくなって、気付いたらえれぇ長さに!
でもカレーパンのシーンは前々から書きたかったものなので、
今回入れこめて幸せでした。
リクエスト頂いた内容は「新八で不器用で加減を知らない感じ」とのことでしたが、
うちの新八は暴走し過ぎなんじゃあ・・・(笑)。
そしてやっぱりヘタレ気味になったと言うオチ!
ではではこの度リクを下さったアハト様、そしてここまでお付き合い下さった姫様、
誠に有難うございますvv少しでも楽しんで頂けたなら幸いです〜。失礼します
新八はトリオで登場させて楽しくなって、気付いたらえれぇ長さに!
でもカレーパンのシーンは前々から書きたかったものなので、
今回入れこめて幸せでした。
リクエスト頂いた内容は「新八で不器用で加減を知らない感じ」とのことでしたが、
うちの新八は暴走し過ぎなんじゃあ・・・(笑)。
そしてやっぱりヘタレ気味になったと言うオチ!
ではではこの度リクを下さったアハト様、そしてここまでお付き合い下さった姫様、
誠に有難うございますvv少しでも楽しんで頂けたなら幸いです〜。失礼します