最近ようやく実感してきた、・・・・ムツキとって付き合ってるんだなって。」
「え?どうしたの?さん、急に。あ、それとも俺って彼氏っぽくないかな?」
「いやいやいや!そうじゃなくて!・・・・・・何か、・・・・・・未だに驚きが続いてると言うか・・・。」

言いながら、は隣のムツキから少しだけ視線を逸らした。
そう、驚いてる。
つい最近まで、ホントに信じられない位だった。
まさかムツキがを好きなんて。
まさかムツキとが付き合うなんて。


アカンサス学園に転校して以来、あの惨劇部と悪名高い演劇部に詐欺同然の形で強制入部させられ、
その縁でムツキの姉、サツキとはクラスが違うながらも仲良くなった。
それで学園時代にも何度かサツキの家に遊びに行かせて貰ったりしたんだけど、
その時は顔を合わせて軽く挨拶を交わす程度で、ムツキとはそこまで親しかった訳じゃない。
それでも学園卒業後もサツキと交流を続ける間、いつの間にか彼とも一緒に外出する回数が増えていた。
最初の内は勿論サツキが居るのは当たり前で、二人きりで遊びに行くことなんかなかった。
それがこれまたいつの間にか、達は自然に二人して出かける事が多くなっていたのだ。
その間にに敬語を使い続けてた彼に、敬語を止めて貰ったり、
ムツキ君と呼んでいたに、呼び捨てにして欲しいと言われたり、そう言ったことで距離を徐々に縮めて。
気付けば、はムツキのことを好きになってしまっていた。
年下だとか社会人じゃないとか、そう言う事は全く気にならなかった。
そんなことを頭で考えるより前に、自分も知らない間にムツキを好きになってたから。
だけど正直、彼がを好きになってくれるなんて思ってもみなかった。
まぁ勿論、二人で外出してくれるんだから、好意は持たれてるんだろうと言う自信はあった。
でもそれは友情に近い好意で、大事な姉の親友ってのが大きな要因なのかもしれないとも思ってた。
そうじゃない、と、ムツキがハッキリ口にしてくれた時。
本当にホンットに、凄く驚いた。


『最初はね、姉ちゃんの話聞いてて、面白そうな人だなって思ってたんだ。』


まだと彼がそう親しくなかった学園時代。
サツキはどうやら演劇部でのの様子をムツキに話して聞かせてたらしい。
あの頃のは今と比べるともっと夜凪や清一郎に噛みつきまくってたから、
正直言って可愛げの欠片もなかったと言う自覚がある。
だから彼からその話を聞いた時は少し複雑だった。

『それからこうやって会って話をするようになってさ、
弟の俺以外にも姉ちゃんの事で一生懸命な人が居たんだって・・・嬉しくなって。』

でもそれなら他にもそう言う人はちゃんと姉ちゃんの周りに居てくれてる。
なのに何でさんが、さんだけがこんなに気になるんだろう?
ある時何となくそう思ったのがきっかけだった、と、ムツキは少し照れたようにそう言って笑った。
そして彼はその後、の瞳を真っ直ぐに見詰めて言ったのだった。


『俺はさんが好きなんだ。』


告白された瞬間は、驚き過ぎてただただ馬鹿みたいにぽかんと口を開けてた様に思う。
果てしなく色気とは対極に位置する女だと自分でも思ってしまった。
だけど、とにかく驚いて。
それからは、無意識の内に、自分からも彼が好きだと告げていた。
そして達は晴れてお付き合いってやつを始めた訳だけど、さっきも言った通り、
つい最近まで、はどうしてもその実感が持てなかった。
そして1ヶ月目にしてやっと、はムツキと付き合ってるんだと頭も体も理解してきたと言う状況。


「じゃあ、さんには俺と付き合ってるってもっと実感して貰わなくちゃね。・・・・・・・・・じゃないと俺が寂しいし。」

苦笑しつつ、ムツキは繋いで歩いていた手に少しだけ力を込めた。

「・・・・・・ごめん。」
「謝らなくてもいいよ。ただ、俺がさんのこと好きだってことだけは、信じてくれよな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・うん、っって、・・・・・・・ム、ムツキっっ!!」

不意を突くみたいに囁かれた言葉に、は咄嗟に顔を赤くする。

「ブッ・・・!さん凄い、一気に耳まで真っ赤になった!」
「ムツキ!キミねぇ・・・!!」

声を上げて彼を睨みつける
だけど、彼の顔を見てすぐに笑ってしまった。
何故なら、ムツキもに負けず劣らず顔が赤かったからだ。

「自分だって照れてるし!」
「・・・うん、実は俺もちょっとストレートすぎたかなって・・・照れた・・・。」

言って、と視線を合わせて照れ笑いを浮かべるムツキ。
こう言う所は、何と言うか、可愛らしいと思ってしまう。
本人に言うと嫌がるかもしれないから、言わないけど。

「ねぇさん、今日、どこかに食事に行こうって言ってたよね。」
「うん、ムツキがよく行く店に行こうってことになってたね。」
「うん、でも俺・・・・・・今その店の料理とは別に、スッゴク食べたい物があるんだ。」
「?別のお店に行こうってこと?」

がそう質問をすると、彼は少しだけ視線を伏せて言い難そうな表情を見せた。
それからピタリと足を止め、思い切った様にムツキが返事をする。

「・・・・お店って言うかさ、・・・・・・さんの手料理、食べたいなって・・・。」
の、手料理・・・?」
「うん・・・。・・・・・・・駄目、かな?」

恐る恐る、と言った感じのムツキの顔を見つめ返しつつ、は瞬時に自分の部屋の状況を思い浮かべた。
部屋の掃除はこないだしたばっかだし、
冷蔵庫の中も昨日の帰りに買い出しをしといたからいつもよりは充実してる。
二人分の夕食位なら用意できるだろう。
後はの心次第。
がハッキリ口に出さなくても、迷いがあればムツキはすぐに読み取って、
また別の機会にって笑って言ってくれる事は分かってる。
だけど。
迷いなんか、ある訳もない。
は笑顔でムツキに言った。

「料理の腕は正直自信ありって訳でもないけど、の作ったものでいいなら。」
「・・・・さんの作ったものがいいんだって・・・!あ、勿論俺も手伝うつもりだけど!」
「何かムツキの方が料理上手そうな気がする・・・。そしたら立場ないな、。」
「そんなことないって!こないださんが作って持ってきてくれたケーキ、凄く美味しかったし。
姉ちゃんも褒めてたよ、羨ましいってさ。」
「有難う。でもね、お菓子と料理は別物なのだよ、ムツキ君。」

なんて会話をしながら、達はまた二人並んで歩き始めた。
微妙に緊張していたムツキの周りの空気は、またいつも通り和らいでいる。
こう言う甘え方をされる時、は自分がホントにムツキと付き合ってるんだと実感できる。
は思わずニヤニヤと緩みそうになる口元を片手で押えた。
ふとそこでムツキと目が合う。
しかも、彼もと同じように片手で自分の口元を隠す様に押さえていた。

「・・・・・さん、何で口を押さえてるの?」
「・・・ム、ムツキこそ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・、俺は、さんの料理食べられるんだと思うと、
嬉しくて・・・・・・・勝手に口がニヤニヤしちゃうからさ・・・かっこ悪いだろ?何か・・・。」
「そんなことない!!・・・・・・って言うか、も・・・・・・・同じような理由でニヤニヤと・・・・・・・・・。」

そして達はお互いに視線を合わせ、プッと同時に吹きだした。
それから声を立てて笑いながら、どちらからともなく肩を寄せる。
ムツキと密着した部分が、ほんのりと温かい。
そんなことすら全部が全部愛しくて、そんなことを恥ずかしげもなく考える自分がおかしくて。
達はまた、目を合わせて笑い合った。



ムツキと付き合ってるんだって実感が湧いてきたのは、こう言う事の積み重ねのおかげだ。
の大好きな人と、こうやって他愛ないことで笑い合える事。


本当に、幸せだと思う。


きみへと続くやわらかな道


(END)



アトガキ
初・ムツキ夢でした!ムツキは大好きなんですけど、メインの攻略キャラじゃなかったですからね。
とは言え、もしも攻略出来ても私は近親相姦ものは苦手なのですが(苦笑)
しかしムツキは本当に好きです!何気にセイ様(笑)と同じ位好きかも知れない。
・・・・あれ?後書きじゃなくなってますね、すみません。
ではでは、ここまでお付き合い下さった貴重な姫様!誠に有難うございます。
深く感謝しつつ、これにて失礼します
Title by 群青三メートル手前