「・・・・・・、サツキ、それ・・・マジで?」
「・・・うん・・・。やっぱり、驚いた?」
「いやいやいや、驚いたって言うより・・・・・、何でよりによって夜凪!?
他にも居た筈なのに!
清一郎の奴は馬鹿だけど扱いやすいし、ハルはちょっと頼りないかもしれないけど大切にしてくれるだろうし!
それにそれに・・・・・・・、とにかく!何でよりによってあの鬼畜で黒々しい副部長!?」

は興奮の余りに立ち上がって声を大きくしてしまっていた。
ここは達がよく立ち寄る馴染みのカフェ。
ほんの一瞬、近くに居る席の他のお客さんの視線を集めてしまい、は慌てて再び席に着く。
だって、信じられない。
と言うか、信じたくない。
そうかな、それっぽいかな、いやまさか、そんな、やっぱりそうなのか!?的な空気が、
最近夜凪とサツキの間に漂っていたのはだって実は薄々感じていた。
だけどそれはあくまでの中の話だけであって、ハッキリそうだと確信があった訳じゃない。
でもそれを当の本人であるサツキの口から聞かされてしまうと、もう否定しようがなくて。

、・・・お、落ち着いて・・・。それにどうしてそこで東君や日下部君が出てくるの・・・?」
「え゛!?どうしてって・・・。」

そりゃ二人ともサツキのことが好きだからなんだって。
なんて、そんなことは勿論言えない。
ハルは元々大人しい性格で消極的だから仕方ないとしても、
清一郎なんてこっちが笑いのネタにする位分かり易いのに、サツキは全くちっとも気付いてない様子。
彼女の場合は鈍感とかそう言うこと以前に自分に自信がなさ過ぎる事が大きな原因の一つだと思う。
実のとこサツキはあの大きめのレンズの眼鏡を外すとこっちが気後れしそうな位に綺麗な容姿なんだけど、
過去のトラウマが原因で周囲の異性から寄せられる好意にかなり疎くなってしまっている。
それだけでなくサツキ自身がハルや清一郎を意識したことがないってのもあるかもしれないけど、
それにしたってまさかアイツが、
あの明らかに本人自覚してるとしか思えないドS野郎が選ばれるなんて。

「・・・・・清一郎やハルは無害じゃない?あ、清一郎はそうでもないか。」
・・・、さっきから二人の扱いが酷いよ。」
「とにかく!・・・・・サツキ、マジであのド鬼畜野郎と!?」
「・・・・・・・・・う、うん・・・。その・・・確かに少し言い方がキツかったりすることもあるけど、
でもああ見えて夜凪君・・・最近前より優しいし。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

数十秒。
は、思わずサツキをジッと凝視してしまった。
伏せた長いまつげ、赤く染まった頬。
一瞬、どきりとする位に、女の子な、表情。


「・・・・・・・・・・・・・・、サツキ・・・・・・、夜凪のこと、マジで好き・・・なんだ。」
「えっ・・・!?・・・・・・・・あ、・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・。」

一瞬にしてさっきの数倍真っ赤になるサツキ。
消え入りそうな声での肯定と一緒に、彼女は小さく頷いた。
夜凪トウワ。
アイツはにとっての天敵。
だけど、サツキが好きになった相手。
彼女が好きになったと言うことは、当然それなりの要因と言うか、いい部分があった筈で。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ〜・・・・。」
・・・?」
「何かアイツにサツキをとられるんだと思うと色んな意味で切ないけど、
あんたが好きになったってんならがどうこう言える立場じゃないしね。うううっ!」
「とっ、とられるなんて!そんな・・・・!」

テーブルに突っ伏す様にして泣き真似をするにサツキが慌てる。
は顔を上げて向かい側に座っている彼女の腕をガシッと強く掴んだ。

「サツキ、あのド鬼畜腹黒副部長に酷い事されたらにいつでも言って!」
・・・・・・・・、あ・・・・・・・!」
「?あ?」

不意にサツキが何かに気付いたみたいに声を上げた。
それと同時に、フッと、の背後。
誰かが立っている気配がする。
そして。

「人の居ない間に随分と言いたいことを言ってくれている様だね。」
「っ!!!???」
「や、夜凪君・・・・!」

バッとが瞬間的に振り向いた視線の先。
にっこり。
一見温和で人の良さそうな笑みを浮かべ、の天敵・夜凪トウワはそこに立っていた。
奴はゆっくりとした歩調での横を通りぬけると、当然の様にサツキの隣りに座る。

「どうしてここに・・・?」
「お前が今日、駄犬と約束が有るって言っていたからね。どうせここだろうと思って。」
「・・・・・だっ、駄犬って言うな!って言うかさ、だからって何で来る訳!?」
「別に、少し時間が空いたから、通りがかったついで。」

しれりとした様子で夜凪の奴はそう答えた後、テーブルにお冷を運んできたウェイトレスに紅茶を頼んだ。

「その程度で女同志の話の邪魔をしないで欲しいんだけど。」
「女同士の話、ね。単に俺の悪口しか言ってなかったみたいに聞こえたけど。」
「つーか、キミ、どっから聞いてたのよ!?」
「ふっ・・・否定、しないんだ?まぁ、盗み聞きなんかしなくても、お前の話す内容位安易に想像がつくけどね。」
「っ!!!」
「夜凪君、そんな言い方やめて。も落ち着いて、ね?」

正直サツキが居なかったら、この超最低野郎を殴り飛ばしてやりたいところだった。
だけど、こいつはどんなどぐされ男でも、サツキの好きな人。
こんな人目のある場所で彼女に恥をかかせる訳にもいかない。
は自分の心を必死で抑え込みつつ、それでもジロリと夜凪を睨みつけていた。

「安心しなよ、俺だって暇じゃない。この後は人と会う約束が有るんだ。」
「ソーデスカ。」
「・・・・あっ!・・・ごめん、二人とも、家から電話がかかっちゃって・・・少しだけ、いいかな?」

マナーモードにしていたらしいサツキの携帯のバイブの振動がテーブル越しに僅かに伝わってくる。
はチラリと夜凪を一瞥した後、軽く頷いた。

「うん、平気。」
「行ってくれば。」
「すぐ戻るね。」

明らかに険悪ムードの達を二人だけにするのが心配なんだろう、
サツキは不安そうに何度か達に視線を走らせた後、足早に店外に出て行った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

案の定。
と夜凪の間には、微妙な棘っぽい空気が流れる。
夜凪の頼んだ紅茶が運ばれてくると、奴は妙に優雅なゆっくりとした動作でそれに口をつけた。
容姿端麗。
本当に嫌味な位にこの男にはそんな四文字熟語が似合う。
色素の薄いさらさらの髪、透き通ったみたいに白い肌、形のいい唇、整った綺麗な瞳。
外見だけで言えば、女生徒達が騒ぐのもまぁ良く分かるかもしれない。
でもあくまで、外見だけ。
実際はお腹は真黒だし、心臓に毛が生えてそうだ。
勿論、サツキが外見だけでコイツを好きになったとは思ってないけど。

「・・・・・・・・・・・・何?さっきから人の顔をジロジロと・・・。相変わらず駄犬は礼儀がなってないね。」
「だから駄犬って言わないで・・・!・・・・・・・それより、キミ・・・・・・・。」
「何?」


「サツキのこと、・・・・・・・・・・・・・・・泣かさないでよね。」


しまった。
思いっきりベタ過ぎる、陳腐な言い方をしてしまった。
だけどコイツにはこの言葉を一番言いたかった気がする。
サツキが好きになる位だから、そりゃ優しいところもいいところもあるんだろうとは思う。
(と言うかサツキ以外のその他の人間も含めて)の前ではこんな(・・・)感じだけど、
二人きりになると別人みたいになるのかもしれないし。(想像できないし、したくもないけど)

でも、いつものコイツを見る限り、サツキを傷つける要素を全く持ってないなんてそんなことはあり得ないと思う。
そりゃ一般的に付き合ってる人間だってそれなりに喧嘩なり何なりあるだろうけど、
夜凪の場合は一方的に傷つけてそうなイメージがあるし、
問題はそれが間違ってないんじゃないかって確信が結構あるところだ。


「・・・・・・・・・・・・、、お前、青春ドラマか何かの見過ぎじゃないの?」


手元のカップの紅茶をひと啜りして、夜凪は小馬鹿にしたような笑みを浮かべてに言った。
予想通り、案の定過ぎる態度。
確かにもかなりベタベタなこと言ってるなとは思ったけども。
気付いてたけども。
それにしたって夜凪に言われるといちいちムカつくのは何でだろうか。
夜凪はもう一度紅茶を啜ると、さっきと変わらない人を見下すみたいな笑いを口元に浮かべて続けた。

「お前にそんなことを言われる筋合いも、約束する義務もないけど・・・。
そうだな、これだけは言っておいてやろうか・・・・。」


何を言う気だ、コイツ。


身構えつつ、ジッと次の言葉を待つと、夜凪の視線がカチ合った。
ニヤリ。
形のいい薄い唇が、笑う。



「この先・・・、サツキのことを泣かせる人間は、俺だけに限定されるってことをね・・・。」


「・・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な゛っ!!!!!!!!!」

自信たっぷり。
宣言された台詞の内容に、が咄嗟に立ち上がろうとしかけた、その時。

「お待たせ、ごめんね、少し遅くなっちゃって。」

慌てた様に小走りにサツキが戻って来た。
同時に夜凪が立ち上がる。

「いや、いい。俺はそろそろ行く時間だ。」
「え?もう行くの?」
「ああ、・・・・・・・・・・・・・・・楽しい話もできたし、ね。」

ククッ。
意味深に喉の奥で笑う、夜凪。
サツキが不思議そうにとアイツを見比べる。
それから、少し、不安そうに。
もしかしたら、ヤキモチ的なものをやいてるのかもしれない。
当然、そんな必要は全くちっともないんだけど。
でも多分、夜凪のどぐされ野郎はそれさえも楽しんでるっぽくて。

「・・・・・・・・や、夜凪〜っ、キミ・・・・・・・!!」
「じゃあ、俺は行くよ。」
「あ、うん・・・。またね。」

少しだけ寂しそうに夜凪を見送るサツキの隣り。
は心の中で思いっきり中指を突き立てた。



あんな男にサツキはやれん!!!!!!!!!



―――――――――なんて、今更無理なのは知ってるけど。


(END)





アトガキ
久々のすみれ夢でした。以前拍手からサツキとの友情夢についてのお言葉を頂いたので、
それを元に書いてみたんですけど・・・・・・・・サツキの登場場面が少ない上に、何かトウワ夢???
友情夢書くならまずは恋愛相談とかかなーと思ってたんですけど、特に相談してる訳でなし(苦笑)
ではでは、ここまでお付き合い下さった貴重な姫様!
誠に有難うございます。感謝の気持ちを表しつつ、失礼します!