珍しく仕事が早く終わったその日。
仕事場関係者出入り口付近。
見慣れた桔梗色の着物の長身の影が見えた。
「ん?清一郎、こんなとこで何やってんの?もしかして誰か待ってる?」
「っ!?お、おお!ではないか!ききっき、奇遇だな。俺はそのー・・・アレだ!アレ!」
清一郎はを見るなり大げさに驚いて、妙にどもりつつ口を開いた。
最近彼とは何故か町中なんかでもよく顔を合わせる。
清一郎は元々おかしな奴だけど、今回はまた激しい動揺っぷりだ。
彼がこう言う反応をする場合、大抵はサツキが絡んでいることが多い。
学生時代からそうだけど、清一郎は未だに彼女に片思い中らしい。
分かってはいたけど、こう言うとこ見せられると、やっぱり胸が痛む。
本当は、だって―――――――。
「つまりだな!アレだ!分かったか!?」
「いやいやいや、あれってどれ?全然分かんないし!・・・・・・・って言いたいとこだけど・・・・分かった。」
は苦笑しながら軽く溜息を吐く。
衣装部は確か以前よりヒマな時期に入ってはいる。
だけど仕事量としてはまだまだ少なくなったとは言い切れない時期だとサツキが言っていた。
今週一杯は早々すぐには帰宅できないと言う様なこともその時に聞いた。
それを知らない清一郎は彼女が出て来た所を偶然を装って迎え、家まで送り届けようとしてるに違いない。
ホント、歌舞伎役者としてあれ程名を馳せてるにも関わらず、こう言うとこは学園時代とちっとも変らない。
「なっ、ななななな何ぃい!!??・・・わ、分かったのか!!??俺が何をしにここに来ているのか!」
「いや、何でそこで驚くの。キミが聞いたんでしょうが。キミが。
・・・・・・・・分かるよ、清一郎って色々分かり易いし。」
「ぅっ!?お、おお、おおお、俺、俺は・・・!」
顔を真っ赤にして更に焦ってどもっている清一郎。
昔ならこんな彼を笑い飛ばしてからかってやることも出来たのに、
今はちくちくと胸を刺す痛みが一層強くなるばかりだ。
「サツキならまだ出てこないと思う。今週一杯は微妙に忙しいらしいから。
今回は諦めて帰った方がいいと思うけど。・・・・・・それじゃあ、はこれで。」
言いざま、その場を後にする為に清一郎に背を向けて一歩、踏み出したその時。
「ぅおおおおいいっ!!!!待て!!待たんか!!!!」
「え!?って、わああっ!!??」
―――ガシィッ
凄い勢いで背後から肩を掴まれたかと思うと、は無理やりにまた清一郎と向き直らされた。
「な、何!?まだ何か用!?つーか、痛い、痛いから!」
「おっ!?おお、す、スマン・・・!」
さっきから思ってたんだけど、なんでこの人相手にこんな状態になってんだ。
そう言えば最近顔を合わす度、コイツは挙動不審さが増している気がする。
サツキが傍に居る時は勿論、そうじゃない時までこれだ。
何かあったんだろうか。
目の前の清一郎は赤い顔のまま明後日の方向を眺めつつ、何やらぶつぶつ口の中で呟いては、
いやいやそれはイカン!とかそうじゃないだろう!とか自分でツッコミを入れている。
自分のやってることが変だって認識があるのか、なんて思いながらはまた溜息をひとつ、吐いた。
「清一郎、、帰りたいんですが。」
「・・・・・・・・・、。きょ、きょ・・・・今日はだな!メガネを迎えに来た訳ではないんだ!!!」
の言葉が聞こえてないのか聞いてないのか、彼は唐突にそう切り出した。
「え?そうだったんだ?」
「そうだ!俺はぁーーー!俺はだな!!アー従姉妹がここに居るのは知っているだろう?」
「前に紹介してくれた銀ホノカさんよね?うちのステラ劇団3番手の。」
「ああ、その通りだ!それでだ!アイツと顔を合わせた際に・・・・・・ソノーーーーー・・・。」
な・・・、長いな。
話の要点だけ言ってくれればそれなりに早く済みそうなんだけど、
変に語尾を伸ばしたりしてるせいでそうはいかなくなっている。
まぁ別に、清一郎と話すのは苦じゃないからいいんだけど。
「お、お前の姿が見えたからな!!お前を送って帰ってやろうと思ったんだ!!」
「・・・・・・・・・はい?」
「どうだ!!光栄だろう!こっこの俺自らがお前を送り届けてやろうと言っているんだぞ!」
「え!?えええええっ!?じゃあ・・・キミが待ってたのって・・・。」
「お前だと言っているだろう!!ばっ馬鹿者!!何度も言わすな!!」
ぽかんと間抜けな顔で聞き返すと、清一郎は怒った様にそう言って真っ赤な顔を更に赤くした。
その目がから逸れて泳ぐどころか溺れてしまってるように見える。(妙なところで器用だ)
え?けど、清一郎って確かずっとサツキが好きで・・・今でも好きで・・・。
いまいち清一郎の行動が理解できず、ぐるぐると思考がおかしな回り方をする。
だって彼から見れば友達なんだから、別にサツキに対しての気持ちの様に恋心を抱いてなくても、
送ってくれたりすることは珍しいことじゃないだろう。
だけど、それにしたって清一郎の態度は色々な意味で見覚えがあり過ぎて、
は少しどころじゃなく混乱した。
「何をぼーっとしている!ゆ、行くぞ!!」
「っ!」
言いざま、清一郎は強引にの手を取り、歩きだす。
はそれに引っ張られる形で後に続いた。
「・・・・・・ねぇ、清一郎、人力車だとうちのアパート遠すぎると思うんだけど。」
「ハヤタはそんなに柔じゃないぞ。お前も早く人力車の魅力に気付け!
だが、今回はお前に合わせて電車に乗ってやる。・・・・・・・・・つ、つつつつ次からはそうはいかんからなっ!」
気付けば清一郎はに歩調を合わせ、隣に並んで歩いていた。
ぎゅっと握られたのものより一回り近く大きな彼の手から熱が伝わってくる。
チラリと視線を上げると、清一郎の瞳とカチ合った。
彼は慌ててから視線を逸らした。
より高い位置にある顔はやっぱり未だに赤い。
思わずクスリとの口から笑みが零れる。
ねぇ清一郎。
さ、少しは、ほんの少しは、期待してもいい?
誰を待ってるの?(君待ちです)
(END)
セイ様初・執筆!!!(笑)管理人の最愛キャラはセイです。(聞いてない)
とは言え、それと性格きっちり掴んでるかは別の話。うふふ、あはは(涙)
ユキで執筆したお酒ネタもセイとかで書いてみたいなぁ。予定は未定ですけれども。
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様!!ありがたや、ありがたや・・・(ホロリ)
深く感謝しつつ、失礼致します
Title by 群青三メートル手前