ああーー!もう!あり得ない!
信じられない!!恥ずかし過ぎる!!!


「ごめん!ごめんなさい!僕が悪かったって、!ホンット!許して、このとーっり!」


スタスタスタスタスタ。
速足で歩くの隣。
同じように足を速めて歩きつつ、ユキが両手を合わせてに謝り続けている。

「無理!って言うか、キミはこないだも同じこと言ってまた同じことやらかしたし!」

は真っ直ぐ視線を前に向けたままそう答えた。

「だって君があんまり楽しそうにセイと話してるんだもん。ちょっとヤキモチ焼いちゃってさ。」
「だっ、だからって・・・!って言うか、ユキだってが清一郎とはいつもあんなもんだって知ってるじゃない。」
「ええー!?でもさ、僕の目の前で自分の家に遊びに来いなんて言うセイが悪いと思わない?」
「それは清一郎が何も知らなかったからだし!しかも、アレ、明らかにサツキのオマケ扱いの誘だったし!」


スタスタスタスタ。
スタスタスタスタ。

憎らしい位にとほぼ同じリズムでユキが並んでピタリと付けてくる。

「オマケでも何でも許せないもんは許せない!君は僕の彼女でしょ?
それにセイにはあれで分かって貰えたんだからいいじゃない。」
「よ、よくないないないないから・・・!!大体あの時だってもうしないって言ってたのに!」
「んーまぁそのつもりだったんだけど、ほら、今回はトウワが相手だったからさ、
手強そうだったし、あれが一番手っ取り早くけん制できるって思ったんだけど。」
「牽制する意味ないからね!?しかも夜凪の奴は達の仲なんか言う前から気付いてたし!」


スタスタスタスタスタスタスタスタ。
スタスタスタスタスタスタスタスタ。


もういっそ小走りになった方がいいのかもしれない。
どうにか必死で足を『速足』程度の動きで抑え込みながら、はひたすら正面を向いていた。
ユキは自分の身長を気にしてはいるものの、と比べればやっぱりそれなりに差がある。
当然コンパスの差もある訳で、が軽く息を弾ませ始めても彼は全くそんな様子を見せてない。

「気付いてたのは知ってるけど、
何だかんだ言ってトウワは君のこと気に入ってたから、僕としては心配だったんだって。
あ、そこは右に曲がって。」

口論しつつもはユキの指示通り右に曲がる。
勿論、この時も彼に視線を向けずに。

「トウワがを気に入って!?それこそない!って言うか、あの瞬間(・・・・)アイツすっごい呆れてたしね!」
「あー、うん。まぁ確かに呆れてたね。だけどアレでハッキリ伝わったみだいだから僕は満足。」
は超不満ですから!」
「あーもう!ごめんなさい!ごめん!許してよ、。機嫌直してってば!」


すたすたすたすたすたすたすたすた。
すたすたすたすたすたすたすたすた。


そしてまた振り出しに戻る。
――――――――と言う訳じゃなくて、そこで唐突にユキから腕を掴まれた。

「っちょっと!?ユキ!?」

不意を突かれたは驚いて声を上げる。
彼はそれもお構いなしで、をビルとビルの間にある細い路地に連れ込んだ。
ビールケースが高く積んであるその向こうまでを引っ張っていき、
そこでトンっと軽くの背中をビルの壁に押し付ける。

「つまり、君はさ、皆が居る前でキスされたのが嫌だったんでしょ?」
「あ、当たり前でしょうが!・・・・・って言うか、急に何をっ・・・!?」
「僕にキスされるのは嫌じゃない、そうだよね?」
「えっ!?・・・・・・・・そ、そ、それは・・・・・・・・・・・・・・・うん。」

な、何を、何を言わすんだ!!
と言うか、まさかユキ・・・・・・!!??


体勢的には勿論、ユキの悪戯っぽい笑顔に反射的に身構えてしまう
ユキとは学園時代からの付き合いで、しかもサツキを除けば他の部員よりも早く友達関係を築いた。
アカンサス卒業後もサツキを交えてだったり二人でだったり、何度か遊びに行ったりもしてた。
それで学んだユキの性格について。
何気に彼は曲者なのだ。
そりゃもう色々な意味で。
明るくてとっつきやすくてとにかく人懐っこいけど、ただそれだけの人間じゃない。
それを承知で彼の事を好きになってこうして付き合ってる訳だけど、
だからこそユキのこう言う時の表情は要注意だと知ってたりする。

「さすが!僕が何をしようとしてるのか分かったみたいだね。」

の表情の変化に気付いたのか、彼はにっこりと満面の笑みを浮かべた。
はすっかり毒気を抜かれて脱力する。


やっぱりそう来るか!


「人が見てなけりゃいいってもんじゃ・・・。」
「いいじゃない、仲直りのキスってことで!」
「え?仲直り・・・?」
「だって、もう怒ってないんだよね?」
「・・・・・・・・・うん、まぁ・・・・・・・。あ!でももう今度こそ二度とやらないって約束して!」
「ええー?どうしよっかなー。」

わざとらしくそう言って、ユキは明後日の方向を向いた。

「ユーキー!」
「あはははっ!分かってるって。僕だってさっきみたいに君にこっち見て貰えないの辛いしね。」
「・・・・・・辛い・・・?」
「そりゃ辛いよ!だってさっきの君、全然僕の顔見てくれようとしなかったじゃない。」

少し拗ねたようにそう返されて、思わず照れてしまった。
確かにさっきは少し意地になり過ぎてたかもしれない。
それに余りにも大人げなかった。

「・・・・・・・・・ごめん。」
「えっ!?何でが謝ってんの?悪かったのは僕じゃん。」
「それは、まぁ・・・、けどちょっと・・・それにしたって大人げなかったかなと・・・。」

の正面に立っているユキを見上げて今度はしっかりと視線を合わせて答える。
彼は小さくクスリと笑い、の体に腕を回した。

「それじゃ、改めまして、仲直りのキスってことで。」

が軽く頷いて踵を上げたのと、ユキが腕に力を込めてを抱き寄せ、
屈みこんできたのはほぼ同時だった。
それから、触れ合わせるだけのキスを2回。
3回目。
キスはすぐにねっとりとした濃厚なものに変わった。

そう言えば。
前回セイの前でキスをされた時も結局同じような終り方をした気がする。
色んな意味で不安が頭を過ったけど、その後はユキとのキスに夢中での思考は溶けてしまい、
まともな思考が働くどころじゃなかった。

でもとにかく。
3度目は絶対に許さん!!


―――――――――――――――――――――――――――多分。


(END)



アトガキ
2度目のユキ執筆。可愛らしい嫉妬の仕方をしてくれるユキが書いてみたかったんです(笑)
だってユキ君てばキレると色々と怖いしい(大笑)でもそこもイイ!(聞いてない)
ではでは、ここまでお付き合い下さった貴重過ぎる姫様!本当に有難うございます。
溢れんばかりの感謝を表しつつ!失礼致します