好きで、好きで、

「あぁ・・・、ごめん、起こしちゃったね・・・」
「・・・え?イッキさん・・・」


不意に目覚めたベッドの上。
ぼやけた視界のまま、真っ先にの耳に届いた声は聞き慣れた艶やかなものだった。
だけど寝ぼけたままの頭は一瞬何でここにイッキが!とパニくりかけて、
そしてすぐに思い出す。


そうだった、今日はイッキの部屋に泊まってるんだ。



それにしても、こんな風にふと目が覚めた時に相手が起きてて、
しかもこんな至近距離で顔を合わせるってのはかなり気恥ずかしいものがある。
イッキはを抱きしめたままだったから、寝てる間も似たような体勢だったんだろうけど、
今更ながら妙に意識してしまうのだ。
そして以外に逞しい彼の胸板の硬さとか、
肌の温度、香り、自分を包んでるイッキの全部を改めて実感する。
この部屋に泊まるのは初めてじゃないけど、まだ片手で余裕で数えられる程度で、
実は未だに緊張してしまう。
自分がここに居ることが信じられなくて。


「どうしたの?。硬くなっちゃって・・・」


の緊張がを抱きしめてるイッキにも文字通り直に伝わってしまったらしく、
彼は元々至近距離にある顔を更に寄せての顔を覗き込んできた。
それと同時にイッキの吐息がの肌を撫でるように掠める。


「いや・・・!!あ、あの、な、何でもない・・・です」
「?そう?だったらいいけど」
「あ、えーっと・・・今・・・何時ですか?まだ夜明けじゃない・・・ですよね?」


自分の挙動不審っぷりやその理由を知られたくなくて、は慌てて話題を変えた。
イッキはそんなを特に気に留める様子もなく(慣れたのかもしれない)、
軽く頷いて応えてくれる。


「そうだね、まだ夜明けには早いかな。ついさっき僕が時計を見た時は4時半だったから」
「4時半・・・か」
「うん、アレからもう3時間近く経っちゃってたんだなって一人で驚いてたところ」


言いながら、イッキはの髪を梳くように手でさらりとの頭を撫でた。
そう言えばさっきはこの感触で目が覚めた気がする。
優しくてここちいい長くふしくれだった指が何度か同じ場所を移動して、
それから頬に滑り落ちてきた。
この人と付き合い始めて画面越しじゃ気付かなかったことは色々ある。
の視点というよりは、第三者に近いものがあったから仕方ないかもしれない。
イッキは元々綺麗な顔をしてるけど、間近で見ると益々それがよく分かる。
きめ細やかな白い肌に切れ長の瞳、形のいい眉、艶やかな唇。
そんじょそこらの女じゃ敵わない位の色気は、瞳の力なんかなくても誰もが惹きつけられずにはいられない。


・・・っと、また見蕩れてしまった。
いかん、いかん、い、今はイッキと話してて・・・!


ぼんやり、うっとり、そのまま意識を飛ばしてしまいそうな自分をは強引に呼び戻した。
イッキのことはいつまで見てても飽きないけど、
それ以上にが彼の隣に居るんだって事実が信じられなくて確かめる意味でもは彼をじっと見てしまいがちだ。


「あ、・・・そういえば、イッキさん、今・・・」
「何?」
「えっと・・・」


―――アレからもう3時間近く経っちゃってたんだなって一人で驚いてたところ。


ついさっきイッキが口にした言葉のニュアンスに微妙な違和感を覚えた。
違和感ってのはちょっと言い過ぎにしても、少し疑問に思った。
でもそれはないだろうか。


「寝て・・・ない、とか?」


一応続けてみる。
もしかしてのせいで眠れなかったとかかもしれない。
寝相が悪いなんてことはない、はずだ。
寝言もいびきも今まで指摘されたことはないし、歯軋りもない、と思う。
ここに泊まるのはさっき言ったようにこれが初めてじゃないし、
今になってこんなことを気にするのはおかしいかもしれないが、
イッキのことだからもしがそのどれかに当てはまることをしてもには言わないでおいてくれてる可能性もある。
そう思うと何だか一気に不安になってきた。


「・・・、うん、実はそうなんだ」


クスリ。
イッキは小さく微笑んで頷いた。


「っ!!あ、あの、それってのせい、だったりします?」
「え?」
「だから、・・・寝相悪かったりとか、いびきとか寝言とか歯軋りとかしてるとか・・・。
だからイッキさんが眠れなかったんじゃ・・・」


自分で口に出してしまうと益々不安になってきた。
寝相の悪さは自分で大体判断できるけど、寝言やいびき、歯軋りってのはわからないものだ。
この中でなんとなく一番怪しいのは寝言だけど、もしかしたらいびきもあり得るかもしれない。
そんな可能性考えたくもないけど、それが原因だとしたらイッキにそんな姿を見られてたことになる。
想像しただけで絶望感半端ない状況だが、もし万が一それが原因でイッキが眠れなかったのなら、
とにかく何とかしなくちゃいけない。


「ぷっ・・・あはははは!」
「え゛!?イッキさん!?」


一人動揺を隠せずわたわたと結局挙動不審になったに、
イッキさんはいきなり吹き出して大笑いした。
以前までのそんなに親しくない時は余り見なかった表情だから、本当なら喜ばしいことなんだけど、
理由が理由だけに全然笑えない。
いや、笑った理由の本当の部分がどれなのかは分からないけど、間違いなくの言動にあったことだけは言える。
イッキはひとしきり声を上げて笑った後もくすくすと言う小さな笑いを漏らしていた。
彼のこの笑い方、嫌いじゃないんだけど、これもまたさっきと同じ理由で今は嬉しいとは言えない。


「くっくっく、君ってほんとに・・・一緒に居ると飽きないよね」
「・・・それは、・・・微妙に嬉しくないデス。
・・・あの、結局が言ったことって外れてるんですよね・・・?」
「うん、安心して。君はいつも凄く静かに僕の腕の中で眠ってるよ」


にっこりと笑顔でそんな返事をされ、ホッとするよりも照れてしまった。
この人って本当にいちいち仕草とか口調が色っぽくて困る。
他の野郎が口にしたら間違いなくぶん殴りたくなるような台詞や行動がいやになるくらいにピタリとはまってるから。
特に今は同じベッドで密着してるせいもあって威力倍増だ。


「でも僕が眠らなかったのが君が原因って言うのは当たり」
「・・・ええっ!?」
「ふっ、大丈夫。が心配してるような理由じゃないから。
あー・・・でも理由を聞いたら君は僕に呆れちゃうかもしれない」
「?」


がイッキに呆れられるような真似をしてる自覚はあるが、その逆なんてあっただろうか。
まぁ確かに彼はケントが一緒だと面白いくらいに子供っぽくなるけど、それも見てて微笑ましい位だ。
イッキの眠れない理由がで、しかもがイッキに呆れるようなことなんて全く想像できない。
いまいちよく分からずには「?」マークを浮かべたままイッキからの答えを待った。
彼は困ったように小さく笑った後、もうこれ以上になくくっついているお互いの体を、
片腕の力を強めて更に密着させると、の耳元に唇を寄せた。


「君がこの部屋に泊まってくれてるのが嬉しくて、
君が隣に居るんだって一晩中でも確かめて居たいって本気で思っちゃってたんだよ」



「っっ!!??」


の耳朶に触れる吐息と鼓膜を震わせる彼の声は、ぞくりとするほど甘かった。
イッキはそれから再度、の顔を至近距離から覗き込み、苦笑を浮かべた。


「呆れちゃうよね。自分でも何してんだろって思ったんだけど、
どうしても眠れなくて、眠りたくなくて。
だってやっぱり君が僕の部屋にずっと一緒に居てくれるなんて嬉しすぎるじゃない?
それがまた今日一日だけなんだって思うと、貴重な時間は無駄に出来ないって言うか・・・、
とにかく嬉しくて幸せで、気付いたら3時間近く経ってたんだ」


そんな甘えたような声音で、それでいて色っぽい声でそんなこと言わないで欲しい、頼むから。
既に随分前から脳内ピンクな状態だったけど、本気で溺れるだけじゃなくて沈んでしまう。
画面越しで第三者だった頃は、直に言われる台詞だったら恥ずかしくて聞けたもんじゃないだろうな、
とか寧ろこんなこと言う男リアルに居たら恥ずかしいとか思ってたくせに、嬉しくてしょうがなくなる。
目が覚めたときはイッキが起きてを見てるのは単なる偶然だと思ってた。
だけどそうじゃなくて、彼はわたしと居る今の時間を大切に思っててくれて、が隣に居ることを確かめるために起きててくれたんだ。


・・・?」


は無意識にやけてしまう口元を、咄嗟に手で押さえていた。
暗闇の中慣れてしまってるだろう彼の目は、きっとのだらしない表情を捕らえてしまう。
少女マンガのヒロインのように、そうだ、
例えばみたいに可愛らしく照れて見せることが出来ればいいのに、
には顔を真っ赤にして俯くというような素敵な反応は出来ない。


「み、見ないでください・・・」
「どうして?」
「今、・・・嬉しすぎて・・・、凄く・・・変な顔してる・・・」


イッキから視線を逸らしてどうにかそれだけ口にする。


「してないよ、変な顔なんて。って言うか僕は君のそう言う顔見てみたいな」
「・・・うっ、ひど、・・・いつも見てるじゃないですか・・・」


自分で言うのも何だけれど、彼とは初対面の電柱激突鼻血事件から始まり、
その後もあれこれと間抜けな姿を見せてしまってる。
だからこそ、どうしてこんなをイッキが好きになってくれたのか分からない。
ひとつベッドの上で抱き合った後の(少々時間が経過してるとは言え)
甘い空気をぶち壊すような真似をしてるを。


「見せて」


艶やかに掠れた声で囁くようにそう言って、彼はゆっくりとの口元を覆ってる手を退けた。
そして間近から鼻先を擦れあわせる距離でを覗き込む。


「・・・僕は君のその顔好きだよ。
君は変な顔だって言うけど、僕のことで嬉しがって喜んでるから笑ってくれてるんでしょ?
つまりそれは僕だけの表情だ。・・・ねぇ、お願いだから隠さないで見せて」
「・・・・」


ああ、もう。
ああああ、もう。
こんなにやにやしてだらしのない顔。
イッキだからこそ見せたくないのに。
それでも、そんな風に言われたら恥ずかしさよりも嬉しさの方が上回ってしまう。
は逸らしていた視線をイッキと合わせた。


「・・・可愛い」
「・・・っ」


こんなはちみつと砂糖と生クリームとジャムをぶちこんだような空気、の柄じゃない。
柄じゃない、柄じゃない。
そう思うのに、イッキと一緒に居ると、は本当に救いようのない脳内ドピンク女になってしまう。





イッキは掠れた小さな声での名前を呼び、ゆっくりと瞼を閉じての唇に自分の唇を重ねた。
彼はやわらかく触れ合わせた唇での唇を辿るように撫でたあと、ぬるりと口内へ舌を侵入させてくる。
それと同時に太ももを割って長い足がの足に絡みついてきた。
わき腹付近をイッキの掌が滑るみたいに動く。
その間もの口内をねっとりと弾力を持った彼の舌がまるで生き物みたいに蠢いていた。


「は、・・・ん・・・」
「君があんまり気持ちよさそうに眠ってるから、本当は今日はもう止めておこうと思ってたんだけど」


キスの合間。
二人分の温い唾液を飲み下した後、イッキは濡れた唇を再び開いて言った。


「我慢できない、ごめん・・・今日の休み・・・もしかしたら潰しちゃうかもしれない」


言いざま、彼はの返事も聞かずにまた唇を塞いだ。
その手が既に乱れたパジャマの下から直にの胸元を弄ぶ。
いつもは手袋をしてる彼の長い指一本一本の熱が直接肌に伝わってきた。
イッキが手を動かすたびにの体の一部がぐにゃぐにゃ形を変える。



「・・・、先にもう一回謝っておくね。今日は僕の部屋から出さないよ・・・」



耳朶を甘く食んで直接鼓膜を震わせるようにそう囁くと、
イッキはに何度目かのキスをした。
さっきと同様返事の出来る状況じゃなかったけど、そんなものは必要ない。
言うまでもなく、最初からの返事なんか決まってる。
脳内ドピンクだろうが、はちみつと砂糖と生クリームとジャムをぶちこんだような空気だろうが、
柄じゃなかろうが関係ない。
イッキが望んでくれるなら、の返事は、いつだってひとつだ。



(END)




アアアー\(^O^)/という位に何か糖分過多になったような気がするんですけど、
どうでしょうか 笑。少なくとも私は書いてて途中でGYAAAAなりました。
イッキは公式ヒロの時もそうですけど、今までまともに恋愛してないせいで、
本当に好きになって両思いだとベタ甘になると思うんですよね^p^イッキ大好き、美味しい←
もう無駄に長くなることについては諦めました・・・(遠い目)。
ではでは、ここまでのお付き合い、誠に感謝感謝ですーvv失礼します!
Title by 確かに恋だった