ベタ甘恋愛進行中

・・・な、なんか緊張するな。


トーマの部屋のバスルームの脱衣所。
は一人、ギクシャクとした動きで雨で湿った服を脱ぎ始めた。
ここでシャワーを借りるのは初めてじゃないけど、それでも実は結構久しぶりなことと、
予想外の展開だったことで、妙に緊張してしまう。
水気を含んだせいで脱ぎにくくなってる洋服と格闘しつつ、
は何だかそわそわと落ち着かない気分になっていた。
単に雨で濡れた服を乾かすことと、体を温めることが目的なのは分かってるんだけど、
分かっててもトーマの部屋のバスルームを使ってるってことを意識してしまう。
トーマはが風邪を引かないようにと気を使って言ってくれたんだと分かってるのに、
余計なことをあれこれと考える自分が恥ずかしい。
今日は天気予報で夕方から雨だと言ってたのに、
それを知ってたにも関わらず折り畳み傘も持たずに外出したのはで、
そのせいで突然降り出した雨に濡れたのも自業自得だ。
今日は前からトーマと会う約束をしてて、彼がを迎えに来てくれることになってたんだけど、
急遽に用事が出来てしまったのと、トーマに会うついでに渡しておくものがあったのとで、
から彼の部屋に向かうことにした。
渡しておくものってのは、トーマが今度の課題レポートに使う資料で、
偶然にもが以前使ったものと内容が同じだったから、
今は必要なくなったが彼に貸すことになったものだ。
早い内に渡しておいた方がいいと思ってたし、
部屋に直接持って行った方がトーマも持ち歩く時なんかに邪魔にならないだろうし、
もうひとつのの用事ってのも彼のマンションからそう離れてない場所だったから、
から自分が行くと伝えたのだった。
雨が降り出したのはトーマのマンションに着く少し前だったから、としては大して濡れずに済んだと思っていた。
だからトーマにタオルを借りて軽く拭かせて貰えばな、程度に考えていたんだけど。



さん!?そんなに濡れちゃって・・・、俺に電話してくれればすぐ迎えに行ったのに」
「え?ああ、ありがと、でも大丈夫だから、悪いけど拭くものだけ貸してくれる?」
「何言ってんの。それだけ濡れてんだから、体だって冷えてるだろ。拭くだけじゃダメだって」
「いや、ホントそんな大げさなもんじゃないし、大丈夫・・・」
「それで風邪引いたら笑えないよ?さん。女の子が体冷やしちゃダメでしょうが」
「・・・お母さん?」
「誰がかな?ほら、ふざけてないで、シャワー貸すからあったまっておいで」



―――と言うような流れで、は強制的にバスルームに押し込められてしまった。
本当に、どっちが年上なのか分からない。
でもやっぱりトーマは過保護すぎると思った。
今までだって似たような状況で雨に濡れたことはあるけど、風邪を引いたことは一度も無いし、
この程度本当に全然平気だ。
まぁ、そんなこと何度繰り返したってきっとトーマは聞き入れてくれないだろうけど。
そんな訳で、は大人しくシャワーを借りる事にした。



◇◆◇



「トーマ、シャワーありがと。後、Tシャツとかズボンまで借りてごめん」


バスルームから出てトーマに声を掛ける。
まさかがリアルに少女マンガ的な所謂彼シャツ(まぁ長袖Tシャツだけど)みたいなことをするなんて思いもしなかった。
一応が着るってことで小さめのサイズを選んでくれたらしく、
分かりやすく大きすぎるって程じゃないけど、やっぱり全体的にには少し大きすぎる。
それにやっぱりトーマが着てたものだと思うと妙に照れくさかった。


「ああ、さん上がっ・・・」


キッチンに居たトーマがの声に振り返り、そこで何故か一瞬動きも言葉も停止する。
それからおもむろにをジーっと眺めた後、ぎこちない動きでから視線を逸らした。
なんだ、なんなんだ、どうしたトーマ。


「トーマ?」
「いや・・・、うん、ごめん・・・。何か、さ、あ〜・・・。
・・・俺、自分がこんなベタベタなことにここまで反応出来るんだって今知ったわ・・・」
「はい?」


を見ようとせずに口元に手を当て、明後日の方向を見始めたトーマに、
は思わずきょとんとして聞き返した。
その彼の目の周辺が薄っすらと赤くなってる。
これはもしかして、がたった今まで考えてたのと同じようなことをトーマも考えてるってことだろうか。


「スッゲェお約束だよな、こう言うシチュ・・・。結構普通で居られる自信あったんだけど、
・・・何か、思ったより・・・、照れるね」
「そ、そそ、そう言うこと言われると、も照れるんだけど」


なるべくいつも通りを装うつもりだったのに、トーマがそんな風だから、
あっという間ににまでそれが伝染してしまった。
なんと言うか、甘酸っぱい空気だ。
まるで一昔前の中高生の甘酸っぱい青春!みたいなこっぱずかしさがある。
確かに、さっきも思ったことだけど、状況がベタ過ぎる。
お互いに、特には柄じゃない。
うああああ!!と頭を掻き毟って自分に対して鼻で笑ってやりたくなる衝動に駆られそうな位には。


「ごめん、・・・自分でもここまで照れてることに驚きなんだけどな。
・・・えーっと、取りあえず食事にしようか?」
「あ!ありがと!部屋来た時いい匂いしてるなと思ってたんだ。
まさかご飯まで作ってくれてると思わなかった」


ぎこちなくて甘酸っぱい空気を振り払う為に、
はトーマが持ち出した話題にここぞとばかりに飛びつく。
実際、シャワーを浴びる前に玄関で話をしてた時も、いい匂いがしてることには気付いてた。
そこまでして貰ったことに申し訳なさ半分、嬉しさ半分。
実は結構お腹も空いてる。


「ははっ、まぁ大して手の込んだものじゃないけどね」
「いや、トーマの料理は美味しいからも見習わないと。
運ぶの手伝う、トレイ借りるね」
「ああ、サンキュ。じゃあそっちの皿と飲み物頼むわ」
「了解」



◇◆◇


その後、達は食事を済ませ、後片付けはだけでやらせて貰うことにした。
シャワー借りた上にご飯まで作って貰ったのだ、その位はさせて貰わないと色々と心苦しい。
トーマはそんなこと気にせずに座ってればいいと言ってくれたけど、そこまで甘える訳にはいかない。


「トーマ、食器洗い終わった」


ソファに座って雑誌を眺めていたトーマにそう声を掛けると、
彼は顔を上げて少し苦笑じみた笑みを浮かべた。


「ありがとうな。でも悪かったね、全部さんに任せちゃって」
「いやいや、から頼んだんだし、大体何度も言うけどシャワーとご飯のお礼だから」


言って、は彼の隣に座ろうとその横へと移動する。
でもその途中、不意にトーマがの片手を掴んだ。


「何?」
「ここに座って」
「・・・え?ここって・・・」


トーマがぽんぽんと自分の膝辺りを軽く叩いてを見ている。
一瞬意味が分からなくてぽかんとしてから数秒、は思わずずささっと後ずさった。
まさか、まさか。
でもそれ以外に答えなんてない。


「な、ななななに言ってんの!?ひ、膝とか、まさか膝とかのたまう!?」


慌てすぎてキョドって文法がおかしい。
彼氏に服を借りて更に彼氏の膝に座っていちゃつく図なんて、甘ったるくてベタすぎて、
余りにも恥ずかしすぎる。


「はははっ!のたまうって、さん驚きすぎでしょ。
っていうか、そんなに嫌なの?ここに座んの」
「い、嫌って言うか・・・」
「ここは俺の部屋だよ。で、見ての通りここには俺とさんしか居ない。
他の誰に見られる訳じゃないんだし、恥ずかしがる理由なんてないでしょうに」
「・・・そ、そう・・・だけど・・・」


言ってることは分かる。
分かるけれども。


「おいで」
「・・・」


再度、トーマがそう言って掴んだままのの腕を軽く引っ張る。
は数秒間、下を向いたまま固まった後、結局おずおずと彼の膝に腰を下ろした。
それと殆ど同時に、背後からトーマの両腕がを抱きすくめる。
いつもは正面で感じる硬い胸板の感触を背中で感じつつ、
は視線を泳がせた。
何だろう、今更かもしれないけど、やっぱり照れくささが半端ない。


「な、何か、ものスッゴク恥ずかしいんデスガ」
「うん、クックック、さんの耳、赤いね」


笑いを堪えるように喉の奥で小さく笑った後、彼はの耳朶に小さく音を立ててキスをした。
その感触とリップノイズには思わず大げさにビクンと体を震わせる。
それでもトーマは耳元から唇を離してはいないようで、
その吐息がの肌をぬるく撫でた。


「トーマ、人で遊ぶの止めてくれないか!」
「・・・遊んでないよ。俺は本当にさんとこうしたかったからさ」
「あ・・・」


お腹に回されてたトーマの手がそこでするりとTシャツの中に入り込み、
の胸の膨らみを下から持上げた。


「さっきさんがバスルームに居る間、
さんはあのドアのすぐ先で服を脱いでるんだなぁって思うと、
気になって仕方なかったんだよね」
「っ!」


彼の長い指がの胸を粘土細工のようにぐにゃぐにゃとこねるのが、
その感覚で分かる。
時々その指先が焦らすみたいに胸の先端を擦った。
それと一緒にトーマはの耳朶の裏を舌でねっとりと丹念に舐める。
舌の独特のやわらかさと濡れた感触に、の体がぞくりと反応した。


「俺の服着てるさん見た時、実はあのままさんに触れたくて仕方なかったんだ。
何かベタベタなシチュでかなり恥ずかしい反応見せちゃったけど、あれでも我慢してたって訳・・・」
「ま、まぁ確かに・・・。あれはも恥ずかしかったけど、てか今も十分恥ずかし・・・」


そこでトーマが片手での顎を持上げて軽く後ろへ振り向かせる。
気付いた時には最後まで言葉を口にするより前に、彼に唇を塞がれていた。
あっという間にキスが深くなると、お互いの吐息が混じり、唾液が溶ける。
気付けばはキスに夢中になって、呼吸を微かに荒げていた。


「ところで、さんの服、さっき洗濯機で洗い始めたばかりだから、
乾くまで結構時間かかるんだよね、・・・乾燥機使っても乾くのは一時間以上後だけど、どうする?
帰るなら送っていくけど、結構遅い時間になっちゃうよ」
「・・・・それって、泊まってってもいいってこと?」


うちの親は基本的に連絡さえ入れれば突然の外泊も特にうるさく言うことはない。
それは帰宅時間が遅くなる場合も同じで、電話さえすればどっちも普通に受け入れられる。
今日は一応家を出る前に帰りは遅くなるってことだけは伝えてあったから、
このままここに泊まるなら電話を1本入れれば済むことで。


「俺はそうしてくれると嬉しいかな」
「・・・・・・」


は少しの間考えながら、ちらりと窓の外を見た。
カーテン越しに見える窓の外の空は相変わらず厚い雲に覆われてる。
雨も、どうやら止んではいないようだ。


「泊まってく・・・」
さん」


静かに瞼を閉じると、再びトーマの柔らかなキスが降ってきた。
そのまま甘ったるい空気に身を任せ、思考はあっという間に溶けていく。
何か何だかんだ言って、
とトーマってもしかしたら結構バカップルって部類に入ろうとしてるんだろうか。
人目に付く場所でいちゃつくような真似はしてないけど、
もしも万が一そうなった場合、は拒絶できるんだろうか。
多分、きっと、また何だかんだ言って受け入れてしまうに違いない。
それこそバカップルの第一歩になってしまう。


そう思ってるのに、分かってるのに、それでもいいかと思ってしまうあたり、
もう既に第一歩を踏み出してるも同然、なのかもしれない。


(END)

何か中途半端なしめ方になってしまいました。
と言うか、まいっどまいど、糖分過多過ぎてビックリだYO!
どうやら私がアムネ夢書くとこんなんばっかになるみたいです。
ヤンデレ力を発揮できないトーマ(笑)
そしてトーマで雨ネタ二本目だというツッコミと、このサイトの話別にトリップじゃなくてもよくね?(自覚あり)
と言うツッコミはなしの方向でお願いします^^^
ではでは、アニメシア始まって結構経つのに何故夢サイト様増えないの(ギリィ)
と言う思いを抱きつつも、ここまでお付き合い下さった姫様方には大感謝ですvv
失礼いたします〜