「清光君の口元のほくろとか、安定君の泣き黒子とか何か色気があっていいね」
「えっ?なに、急に。まぁ、それはトーゼンだけど!
あー、でもコイツと一緒にされんのは嫌だな」
「それは僕の台詞!・・・うーん、でもありがとう」
仕事の合間の休憩中。
丁度その場に居合わせた清光君と安定君の二人とは、
お茶を啜りながら他愛ない世間話をしていた。
あの有名な新撰組・沖田総司の愛刀の付喪神である彼らは、一見容姿も性格も正反対だ。
小さなことでよく憎まれ口を叩き合ってるけど、何だかんだで仲がいい。
要はお互い気心が知れてる分、遠慮がなくて何でも言い合えるんだろう。
喧嘩するほどって言葉は、彼らにも十分当てはまると思う。
「ほくろって沢山あると気になるけど、目元や口元にひとつだけあるやつは別だよね」
「俺、そこまで深く考えたことなかったけど、ま、そうかもね」
「うん」
改めて清光君と安定君の顔を見つめて言うに、
二人はどこか落ち着かなさげな様子を見せつつも笑って答えてくれた。
「あ、でも主にもあるじゃん。色っぽいホクロってやつ」
不意にそこで清光君が思い出したようにそう口にする。
「へ?」
と色っぽいと言う形容詞が全く結びつかないし、咄嗟に自分のことだと思わず、は聞き返していた。
ほくろがないなんて勿論言わないけど、今話題にしてるのはそういうことじゃない。
「確か・・・」
言いかけた清光君は突然ハッとした様子で今度は口を閉じた。
そして何故か見る見る顔を真っ赤にしてる。
それから激しく動揺したように視線を泳がせた後、明後日の方向に目を向けたまま言った。
「や、やっぱいいや。俺の勘違いだわ」
「・・・ねぇ、今お前いやらしいこと考えただろ?」
今まで黙って清光君の表情を観察するように見ていた安定君はそう言って、
あの可愛らしい大きな目を少しだけ細めて彼に冷ややかな視線を送った。
「は、はあ!?なっ、いやらしいって何だよ?」
「僕は知らない、お前が今考えたことじゃないの?」
「っ、や、やらしいとか言うお前の考えの方がいやらしいよ!」
「そんなに顔赤くして言われても説得力ない」
おおっと、いつものあれが始まってしまった。
何だかよく分からないけど、今回は安定君の方が優勢なようだ。
清光君が突然真っ赤になった理由が安定君の言う通りなのかは謎だが、
確かにあれじゃ説得力はないかもしれない。
どっちかっていうと可愛く見えてしまう。
なんてが考えてる間も、二人はまだ口喧嘩を続けてる。
とは言え、これが彼らなりのコミュニケーションみたいなものだと思ってるので、
特に止めることもなくは少しの間そのやり取りを傍観していた。
その後少ししてから話題は別の方向へ向ったので、それを見計らってもまた会話に混ざる。
結局清光君が突然動揺した理由は分からなかったけど、特にはそれについて深く考えることもなく、
休憩を終えて仕事に戻ったのだった。
[newpage]
その日の仕事が終わり、ゆっくりお風呂に浸かって一日の疲れを癒し、
刀剣の皆におやすみの挨拶を告げてが自室に向ったのは、
いつもより少し早めの時間だった。
今夜は少し肌寒い。
誰も居ない廊下をぼんやり庭や空を眺めて進んでいると、奥にあるの部屋の前に誰かが立ってるのが見えた。
それが誰なのかはすぐに分かる。
「清光君」
さっき皆に挨拶したとき、彼の姿を見かけなかったし、何となくコッチに来てるような気がしてた。
は苦笑しつつも声を抑えて彼を呼び、近付く。
「やっぱここに居たんだね」
「あ、バレてた?」
「なんとなく」
「じゃ、俺が何でここに居るか分かってたりするんだ?」
言った清光君が意味深に笑う。
その表情が妙に艶かしくて、は咄嗟に彼から視線を逸らした。
こういうことは、今までも何度かあったことだ。
途端に分かり易く跳ねた心臓と、その後の脈拍の速さに自分で自分に苦笑するしかない。
「・・・多分」
「そっか」
短く答えたに、彼は満足げに軽く頷いた。
そして、極自然にするるとの腰に自分の腕を伸ばしてくる。
「主が湯冷めしないように、早く部屋に入ろ」
「う、うん」
清光君はを片腕に抱いたまま既に布団が敷いてある奥の部屋まで進み、
布団のすぐ手前で足を止める。
と向かい合わせに立った彼はそこで口を開いた。
「ねぇ、主・・・。昼間のことなんだけどさ」
「昼間?ああ、もしかして休憩中の話?がほくろの話した」
「そ、それ。・・・あの時は安定に図星指されたのがムカついて否定しちゃったけど、
本当はアイツの言う通りだったんだよね」
「・・・ど、どしたの、いきなり」
なんとなく、嫌な予感がする。
こういう時に聞き返すのはその嫌な予感を確信に変えてしまうフラグだと知ってるのに、
は反射的に問い返していた。
案の定、清光君はニヤリと可愛らしくない笑い方をしてを見下ろした。
しかもこういう笑いをする時ほど、彼の口元の黒子はやけに色っぽく見えるから困ったもんだ。
「今なら二人きりだし、教えてあげようと思って」
「・・・な、何か怖いから遠慮します」
「怖いことなんて何にもないって。それに遠慮なんかしなくったっていいよ。てか今更遠慮ってなに」
「じゃあ、知りたくないからいいです」
「はいはい、主は素直じゃないからなぁ」
「いやいやいやいや、はいたって素直・・・・っ」
が言葉を言い終わらない内に、清光君はの唇を塞いでしまった。
開いたままのの口内に、彼の吐息が滑り込む。
やわらかな唇がの唇を包みこんで、軽く吸い付いた。
「・・・知りたくなった?」
「・・・・」
至近距離でを見つめる清光君は煽るような口調でそう言ってまた例の笑いを浮かべている。
こういう時は、どんなにがNOだと言っても無駄だと知ってた。
何より、本当はが嫌がってないことを清光君は分かってる。
だから、の否定は全部肯定にされてしまう訳だ。
「ほくろ位あるだろうけど、色っぽい・・・と言うのはないと思う」
「あるよ。自分じゃ見え難いかもしんないけど、俺しか知らない場所に、ある」
「?」
何かのなぞなぞなのかそれは。
よく分からなくてが頭の上に「?」マークを浮かべていると、彼はふっと微笑した。
「そこに座って、壁、背中にして」
「?うん」
明かりもつけないまま、達は薄暗い室内を移動する。
は彼に言われたとおり、壁を背にして畳に腰を下ろした。
清光君もの真正面に座っている。
「両膝立てて」
「??」
彼の指示に従って、俗に言う体育座りをしてみる。
「そうそう、それで足広げんの」
「っ!?それは無理!」
何でここで突然のM字開脚要求になるのか。
は慌てて両手でがっちり両足を守る体勢に入った。
更に既に間近まで迫ってきてる清光君に対してガルルっと威嚇する。
「俺が手伝ってあげようか?」
「いらない、と言うかしません」
「ええ〜?ここまで来て逃げんの?それはナシでしょ」
「こんなに暗いんじゃほくろもなにも見えないし、もう良くないですかね」
両腕で足をがっちがちにガードして、は真顔で彼に返事をした。
ニヤリ。
またまたまたしても、清光君がアノ笑い方をする。
「じゃ、明るくしちゃおっと」
そう言った清光君が明かりをつけようと立ち上がりかけた。
は慌てて両手を足から解き、それにすがり付く。
明るい室内でM字開脚なんてそれこそ冗談じゃない。
恐ろしい羞恥プレイだ。
「ひぃっ!?や、やめて!!」
「っと見せかけてっと!」
「っっ!!!」
ほんの一瞬何が起きたの分からないほど早業で、
清光君はの両手首を掴んでそれをの背後の壁に押し付けて動きを封じ、
更にの両太ももの間に体を割り込ませて強制的に足を広げさせた。
まさに色んな意味でそれは神業だった。
と言うか、こんな場面で神としてのスゴ技を披露してくれなくて結構すぎる。
は壁に背中も両腕も貼り付けられた状態で、まるでかえるみたいになってた。
その足の間に満足げに両膝で立ってを見下ろしてる清光君が居る。
今日に限っていつもみたいな上がシャツで下がパンツのパジャマじゃなく、
ネグリジェを着てる自分もバカだ、大バカだ。
出来るならせめて、間近に居る彼に頭突きのひとつでもぶちかましてやりたいけど、生憎それもかなわない。
「何で無駄にそういう神様的なスキル使ってまでにM字開脚させるの?嫌がらせ?」
は思い切りむっつりとした表情を浮かべて憎まれ口を叩いてやる。
ある意味負け犬の遠吠えみたいになってるけど、素直に言うこと聞くだけなんてやっぱり癪だ。
「そんな訳ないじゃん。それに、主は俺が何しに来たか分かってて部屋に入れてくれたんだろ?
まさか俺が普通に添い寝しに来たなんて思ってなかったよね」
「っ、そ、それは・・・」
確かに彼の言う通り、は彼がどうしての部屋の前で待ってたのか、
その意味を承知で彼を部屋に入れた。
それは今までも何度かあったことだ。
は清光君が好きで、清光君もの気持ちを受け入れてくれてる。
いわゆる両想いというやつだ。
「でもほくろがどうのという流れからのこれって・・・」
「すぐ教えてあげる」
クスリ。
小さく笑った清光君がその唇で再びの唇を塞ぐ。
一度。
軽くやわらかく、啄ばむだけのキスをする。
それをニ、三度繰り返した後、少しずつの唇を解して彼の舌がぬらりと口内に侵入してきた。
の手首を壁に縫い止めていた彼の真っ赤な指先が離れ、滑るように下へ移動した。
そしてむき出しのの太ももに触れる。
彼の指が肌をくすぐり、手のひらがその周辺を撫でた。
更に、内腿と右の足の付け根近くでその手が止まり、清光君はの肌に爪を立てないようにして、
親指の腹をぐっとそこに少し強めに押し付けた。
際どいその位置に、無意識にの体が震える。
それとほぼ同時に、清光君がから唇を離した。
「ここだよ・・・」
「え?」
「主の、ここ・・・、ホクロがひとつあんの」
「・・・・」
何と返事をしていいのか言葉につまるを間近で見つめ、彼は綺麗な唇で孤を描いた。
嫌な、予感がする―――
が思わず口元を引きつらせた一瞬。
清光君がの両腿を軽く手で押さえつけ、よりによって足の間に顔を埋めた。
「っっ!!??ちょっ、なっ・・・!?なに考えてっ・・・」
「ああ、先に下着脱がせた方が良かった?確かにこれじゃやり難いよなぁ」
「そ、そういう問題じゃないっ!」
「そんじゃ、先に下着脱がせるね」
が返事、というより抵抗するより早く、彼はまたしてもあっと言う間にの下着を脱がせてしまった。
だからなんでこういう場面で無駄に神業を見せるのか。
そしては清光君の前で下着なしで両足を広げると言う最低最悪の体勢を取らされている。
咄嗟にスカートの裾を引っ張って隠そうとした行動さえ、彼は許してくれなかった。
「えっ、あ、や、清光く・・・っ」
の両足の付け根の間で彼の綺麗な髪が揺れる。
薄暗い室内でも、こんな体勢であれだけ間近に寄られれば、何一つ隠しようがない。
清光君は何の躊躇いも無くの一番敏感な部分に口を付けた。
それからすぐに独特のやわらかな弾力を持った彼の舌が、ぬるとの入り口を掻き分ける感触がする。
にちゅ。
濡れた音と一緒に、彼の舌が少しずつ奥へと入っていく。
指とは違う、唇の感触と生き物みたいに蠢く舌のその動きに、の思考はあっと言う間に追い詰められた。
彼の温い吐息が敏感な肌を撫で、彼の唾液とのナカから溢れる潤いが混ざり合うのが分かる。
決定的な刺激が与えられないのがもどかしいのに、そのギリギリの線が気持ちよくて、の呼吸が浅く乱れた。
清光君の舌が襞を捲り、吸い付く。
ぬちゅ、ぬちゃと湿った小さな音がやけにいやらしく耳にまとわり付いた。
「清みつ・・・くん、・・・っ、も、もう・・・いっ・・・からっ」
半分涙目で掠れ声に近い口調では懇願した。
これ以上続けられたら、頭が溶け切って自分から妙なことを口走りそうで怖い。
「でもさ、ここはほら、まだ欲しいって・・・一杯濡れてるよ?」
顔を上げないまま、清光君がそう言って、の下腹部に尖った舌を埋め込んでくる。
瞬間的にびくりとの体が震えた。
「は・・・っ」
「主、可愛い・・・」
「っ!」
下からを見上げて清光君が妖しく笑みを浮かべる。
濡れた口元に見えるほくろがいつも以上に艶かしくて色っぽい。
がバカみたいにぼんやりそれに見蕩れた一瞬。
彼はゆっくりと向かい合わせに座り直し、の手を取った。
「・・・ねぇ、主。あのホクロだけじゃなくて、
俺だけしか知らない主の可愛いとこ・・・もっと俺に見つけさせてよ」
どこか小悪魔みたいな清光君の微笑。
はまるで魅入られたみたいに頷くしかなく―――
「俺の可愛いところももっと見せるから、・・・俺のことも、もっと沢山知ってよね?」
(了)