「オレさ、物理的に可能なら多分丹羽先輩と成瀬と中嶋先輩位は殴ってると思うんだよな」
「ええっ!?殴ってるって・・・、どうしたんだよ?いきなり」
昼休み。
和希と啓太と、いつもの面子で学食に足を運び、
他愛ない会話をしながらのランチタイム、が口にしたその内容に、啓太は驚いたように声を上げた。
一応今まで話してた話題が『王様の化けものっぷりについて』みたいな感じだったから、
そう流れから外れてもいないと踏んだんだけど。
和希は苦笑してを見た。
「んー、まぁ王様には啓太が仕事を押し付けられてるし、
成瀬先輩に関しては俺も分からないではないけどな」
成瀬の愛しのハニーへのラブアタックは和希と付き合い始めた今でも健在だ。
一応彼らが付き合ってることは周囲に触れ回ったりしてる訳じゃないし、
公然とベタベタしてるってほどでもないので(でも第三者から見れば全くとは言えない)
きちんと二人が『そういう仲』だと知っている人間は限られている。
例えば当然のように、それから和希の正体を最初から知っていた会計の二人だ。
とは言え、勘のいい一部の人間はきっと和希と啓太が単なる親友じゃないってことに気付いてると思う。
中嶋もそうだし、何より啓太に愛ラブ光線を送ってる成瀬なんかは二人がくっつく前から、
その気配を感じ取っていたんじゃないだろうか。
そしてきっと今は二人が完全に付き合ってること本当は分かってるはずだ。
それでも成瀬は以前と変わらず啓太をハニーと呼ぶことをやめてない。
まぁ、さすがに前みたいに時間があればいつでも突撃ラブ訪問的なことまではしなくなったけど、
それでも顔を合わせれば啓太を口説いて距離を詰めようとしている。
そして当然のようにその間に和希が割って入ってバトル開始のゴングが鳴るって訳だ。
そりゃ啓太の恋人の和希にしてみれば一発や二発ぶん殴りたいと思ってしまうのも仕方ないかもしれない。
和希もああ見えて大人だから本気でそんな真似はしないとしても、心理的な面だけで言えばという意味で。
「和希、成瀬先輩に関しては分かるって・・・お前・・・」
啓太は和希の言葉に困ったような、それでいてどこか喜んでいるような、微妙な笑顔を浮かべる。
和希からの独占欲や嫉妬心の混じった台詞を嬉しいと感じつつ、
成瀬を殴りたいと言う言葉が引っかかっているんだろう。
「因みにオレが成瀬殴りたいのは面白さ通り越して鬱陶しいなって思うからで、
和希のとは意味が違うから安心して」
「!鬱陶しいって・・・。そんなの安心出来る訳ないだろ!」
本人の居ない所でこんな話をすれば陰口だとしか思われないだろうし、
啓太はそう言うことを嫌う人間だと分かってる。
は箸の先でちょいちょいっと啓太の後ろを指し示した。
啓太と和希は?マークを浮かべつつ、が示した方向に二人揃って視線を向ける。
それと殆ど同時に成瀬が啓太を後ろから抱きしめた。
「やぁ、ハニー!!会いたかったよ!今日も君は可愛いな!」
「な、成瀬さん!?」
「ちょ、成瀬さん!いきなり啓太に抱きつくのは止めて下さい!まだ食事中ですよ!?」
突然背後から抱きしめられてあわあわしている啓太に、和希は成瀬の腕を掴んで眉を吊り上げ抗議する。
成瀬は微妙に不満げな表情を浮かべつつも、予想外にあっさりとその手を離した。
以前までの、和希と啓太が付き合う前までの状況なら、
彼はもっと粘っていたはずだからやっぱりそこの所は彼なりに理解してるようだ。
啓太を困らせてるのが分かるからだろうけど、それなら最初から抱きつくなと言う話になる。
とは言え、成瀬の場合啓太を目にしたら何かしら仕掛けるのはもうある意味条件反射に近いのかもしれない。
ジロリと成瀬を睨みつけたままの和希を無視し、彼は啓太の背後から離れるつもりはないらしい。
まぁ、ピッタリくっついてる訳じゃないのでの方は大目に見ておくことにした。
啓太は困ったように笑いながらも和希を宥めている。
成瀬はに視線を向けてわざとらしくしょんぼりしたような表情を見せた。
「ところで、僕のことを鬱陶しいなんて酷いな」
「こないだも言ったけど、オレは本当のことしか言ってませーん」
そう。
実はは成瀬本人にもこの話はしたことがある。
自分にもっと筋力があれば(この場合成瀬はの性別を知らないので、
もっと男っぽくなりたい的な話からの流れだった)
殴りたい奴らが何人か居るって話で、その時に今みたいに彼の名前も出していたのだ。
因みに、今も成瀬が啓太を見つけて近づいてきてるのが分かっていたので、
としては啓太と和希に聞かせると同時に成瀬にも話しかけてるような感じだった。
「ふぅん?本当のこと・・・ね」
そこで今度は丁度啓太と和希と背中合わせになるテーブルから聞き慣れた低い声がした。
成瀬、啓太、和希の三人はその声に驚いた様子で振り返ったけれど、
はただ小さく鼻を鳴らして視線を明後日の方向へ向ける。
何故ならは『アイツ』がその席に座っていることに、気付いていたから。
中嶋英明。
我が校の切れ者生徒会副会長様。
でも今のにとって中嶋は単なるド鬼畜エロS野郎だ。
「中嶋・・・さん」
うわぁと引きつった顔で啓太がにちらりと視線を移す。
でもの様子にすぐにが中嶋の存在に気付いていてわざとさっきの話題を口にしたことを理解したらしく、今度は少し呆れたみたいな表情を浮かべた。
和希も啓太と同じく、中島が達の声が届く距離に座っていることをしっていて、
が『殴りたい相手』の話題を出したんだと気付いたようだった。
苦笑してこっちを見ている。
「お!何だ?お前ら、そんな近くに居たのか」
そう声を掛けてきたのは、生徒会長で王様こと丹羽哲也だった。
当然だけど、これも分かってたことだ。
この二人がいつもベッタリ一緒な訳じゃないのは知ってるけど、
学食に入る直前に遠目に二人が居る所が見えたから。
どうやら丹羽は一時的に席を離れてたらしい。
啓太も和希も彼の登場にはもう驚かなかった。
二人とも普通に丹羽に挨拶をしている。
ただし、成瀬だけは、ハニーとこんなに近い距離で食事をしていたなんて!まさか二人とも狙っていたんですか!?
なんぞと的外れなことをのたまっている。
その後は何故かどこからか俊介も現れて、
気付けば皆でわいわい下らない話をしてランチタイムを終えていた。
例の話題は引っ張られずに済んだけど、には分かってる。
中嶋は絶対この話をどこかで持ち出してくるつもりだってこと。
まぁ、どうなるか分かっててあんなこと口にしたのもだけど。
◆◇◆
放課後。
毎度毎度のことながら、丹羽は生徒会の仕事をサボって逃亡を図っていたが、
今回は中嶋がヤツを捕獲することに成功。
現在進行形で丹羽は書類の山と向き合っていた。
ぶつくさ文句を垂れているものの、仕事をする手は流石に早い。
リアルに接して本当によく分かったんだけど、丹羽は能力面だけでみると本当に優秀な人間だ。
外見はどう見ても筋力に頼るタイプなのに、実際そう言う部分も有るし腕っ節強いどころのレベルじゃないが、
頭脳明晰ってのもまた事実。
画面越しだと軽い感覚程度にしか分からなかったけど、さすがこの学園の生徒会長になっただけある。
何だかんだ言ってあの中嶋が丹羽のことを信頼してるってのも頷けた。
外見も中身も正反対なのに、彼らは二人一緒に居ることがしっくりくる。
「何だー?、どうした?さっきからぼーっと俺のこと見てるが、何か気になることでもあるのか?」
「え?あ、いえ、そうやってちゃんと仕事してれば出来る男に見えるんだなぁと思って」
ぼんやり考え事をしてたせいで、いつの間にか丹羽の姿を見つめてるみたいな形になったようだ。
まぁ、丹羽のことを考えてたと言えばそうなんだけど。
「見えるって何だよ?見えるって。見えるだけじゃなくて、俺は正真正銘出来る男なんだよ!」
うわあ、素敵、殴りたい。
確かに事実は事実だけど、出来るくせに仕事サボって逃げ回ってる男にそんな堂々と言われたくない。
その上その仕事を啓太の人の好さにつけこんで押し付けたり、
無駄に仕事の山を築いた結果、中嶋が休みを返上してまで働く羽目になったりしてるんだから尚更だ。
「丹羽、無駄口を叩いていないで手を動かせ」
そこでそれまで黙ってパソコンと向き合っていた中嶋がそう言って口を開いた。
視線は画面に落としたままで、当然のようにキーを打つ手も止めてない。
「へいへいっと。つーかこっちの書類は全部終わらせちまったんだが、
これは会計に持って行かなきゃならねぇんだよな?」
「あ、じゃあオレが――」
言って、が椅子から立ち上がりかけると、中嶋が不意に瞳をに向けた。
「いや、会計部には丹羽が直接届けてくれ。西園寺がその書類について話したいことがあると言っていたからな」
「お!んじゃあ久しぶりに郁ちゃんとお話出来るって訳か。仕事以外だと冷たいからなぁ、郁ちゃんは」
丹羽は機嫌良さげにそういって書類の束をバサリと片手で持上げた。
あれだけの厚さの量を片手で持てるなんてさすがだ。
なんて、そんなことを考えている場合じゃない。
このまま丹羽を行かせれば、確実にコイツはここには戻らないだろう。
間違いない。
丹羽はそう言うヤツだ。
「そんじゃ、行ってくるぜ」
「え?いや、ちょっと、丹羽先輩!」
「ああ、頼んだ」
「た、頼んだって、中嶋先輩!?」
が引き止める言葉が聞えているのか居ないのか、丹羽はそのまま生徒会室を出て行ってしまう。
中嶋もそれを普通に見送ってしまった。
は椅子から立ち上がったまま、中嶋に視線を向ける。
「いいんですか?今日はもう戻ってきませんよ」
「だろうな」
中嶋はの台詞を短く肯定する。
そりゃ中嶋だって丹羽を一人で行かせたら戻ってこないこと位最初から分かってるだろう。
分かってて丹羽を一人にしたのは見りゃ分かる。
だけど、何でそんなことをしたのか分からない。
毎度生徒会の仕事から逃亡している丹羽を見つけて捕獲するのがどれだけ重労働で手間なのか、
それは中嶋が一番良く分かってるだろうに。
「期限が迫っていた一番厄介な仕事は片付いたからな。今回はそれだけで十分だ」
納得出来なさMAX顔なに向けて、彼はそう付け加えた。
勿論そんな理由じゃはいそうですかと頷ける訳がない。
ここの仕事を全部把握してるなんてことは全く言える立場じゃないけど、
それでもこの生徒会室内の状況を見れば第三者でも仕事が山積みなのは見て取れる。
その一部を終わらせたからといって、
折角仕事を少しでも進められるチャンスを自分から手放すなんて中嶋らしくなかった。
確かに中嶋は同じ高校生だと思えない位に有能だし、一人で普通の人間がこなせる何倍もの仕事をこなしてるけど、
だからって限界がないはずはないし、自分の時間を全く持てずに仕事尽くしな時も少なくない。
それもこれもあの暴君野郎が仕事から逃げ回ってるせいなのだ。
あー、やっぱり殴りたい。出来るものなら、本当に殴りたい。
「」
「っ!?」
その場に突っ立ったまま一人でもやもや考え込んでいると、中嶋はいつの間にか自分の席を立って、
の傍まで近寄ってくる所だった。
瞬間的には身構える。
中嶋と『付き合っている』って感じの関係になってもう結構経ってるけど、未だにこの男は色々油断ならないのだ。
この世界に来る以前みたいにキャラとしての中嶋英明に対してきゃいきゃいしたりうっとりしてたりした頃とは違う。
現実として彼と一緒に居ることになると、ある意味いつも油断出来ない。
そして、未だに何を考えてるのかよく読めない男だった。
但し、空気で分かることがある。
コイツ、絶対今から卑猥ワード口にする気だ。
「さっきは随分熱心に丹羽を見つめていたな。アイツ相手に発情でもしたのか?」
案の定、のすぐ傍まで距離を縮めた中嶋はそう言って眼鏡の奥の瞳を僅かに細めた。
「だ、誰が!?あれはそんなんじゃありません!」
呆れたヤツだ、こう言う所は本当に歪みない。
が丹羽相手に発情なんて、そんな意味深な視線じゃなかったことは、
中嶋ならすぐに見抜いていただろう。
それなのにわざとこういう言葉の選び方をする。
「ふぅん?」
「っ」
中嶋の両腕が伸びてきたと思った時にはもう遅かった。
見た目よりずっと逞しいあの手が、がっちりとの体を絡め取り、一瞬で動きを封じられる。
もう何度も体験した、この状況。
またこのパターンかいと言っていいほどなのに、毎度はこれから逃げることが出来ない。
の太股を割って中嶋の長い脚が益々密着してくる。
お互いのズボンの生地越しに、相手の体温を感じた。
はせめてもの抵抗代わりに至近距離まで顔を寄せてきている中嶋の瞳を睨みつける。
「殴りたいって思ってただけです」
「・・・、くっくっく、昼間の続きか?」
「そうですよ」
ランチタイムの話題は中嶋の方からふってくるという予想だったのに、
結局自分が持ち出してしまった。
だけど本当のことだから仕方ない。
啓太や中嶋に苦労ばかりかけてる丹羽を殴れるものなら殴り倒してやりたいと思ったのも本当のことだ。
当然、彼に何で丹羽を殴りたいのか詳しい理由なんて説明してやる気はさらさらないけど。
「そうだとしても、俺以外の男をあんなに長い時間見つめる事は許せたものではないな」
「・・・、・・・は?」
中嶋から予想外の返事をされ、は思わず間抜けな声を出して彼を見つめた。
目の前にある端整な、そしてどこか冷たい印象を持たせる中嶋の眼鏡の奥の瞳に、
はほんの一瞬ゆらりと揺れる青い炎を見た気がした。
ぽかんと開けたの唇を、あの薄く整った唇が唐突に奪う。
なす術なく呆然としたの口内をねっとりと熱を持った生き物が暴れまわっていた。
それと同時に押し付けられた下半身をわざとすり合わせるようにいやらしい動きで更に密着させられる。
この男は毎度毎度生徒会室を何だとおもってるんだろう。
校内だってだけでも問題なのに、よりによって生徒会室でこんなことをするなんて。
でもそんなことよりも気になったのは、
もしかして中嶋は少なからずさっきのの行動に嫉妬してくれてるんだろうかってことだった。
とは言え、状況が状況なので、思考回路はあっという間に乱されて、深く考えてる余裕なんてなくなってるけど。
お互いの唾液で溢れた口腔から粘着質な水音が響き始め、その中で彼の舌がの舌を弄ぶ。
この人に会うまでキスの上手い下手なんて考えたことも比べたこともなかったけど、
中嶋のキスは悔しい位にいつもの全部を蕩けさせた。
「・・・ふ、・・・っ中嶋、せんぱい」
彼が唇を放した僅かな間には途切れ途切れに口を開く。
体温が上昇して、足が、体が、小刻みに震えていた。
本当にムカつく男だ。
どうすれば、どの程度で、がこうなるかをこのドS眼鏡は熟知してる。
眼鏡のレンズの奥の切れ長の瞳が、ジッとを見つめていた。
今の今までの口内を荒らしてた真っ赤な舌が、もっと欲しいんだろうと誘うように覗いていた。
いつも、いつも思う。
あの赤い舌がの口の中で暴れてる間に噛み切ってやれば良かったと。
「何だ?」
「・・・、丹羽先輩よりも、あんたを一億発位殴ってやりたい」
「物理的に可能なら・・・か?」
ランチタイムにが口にした台詞をなぞる様に、そしてどこか面白そうに中嶋はそう言った。
呼吸を軽く乱したまま、が小さく頷くと、彼はククッと喉を鳴らして笑う。
「いつも俺にこれほど反抗的な瞳を向けておいてまだ足りないとは、
お前には長期的な躾が必要なようだ」
卑猥だけじゃなくて鬼畜ワードも毎度のことだ。
「それが仮にも嫉妬した相手に対する言葉ですか」
「嫉妬・・・だと?」
「違いました?」
―――俺以外の男をあんなに長い時間見つめる事は許せたものではないな。
折角仕事をさせる機会を得たのに、その丹羽を生徒会室から解放してまでに向けた言葉。
いつも感情が読み難いだけに、素直に言ってしまえばとしては独占欲の滲んだあの台詞を嬉しいと感じていた。
それが『嫉妬』であればいいと、感じてしまった。
別に、束縛されたい願望がある訳じゃない。
ただ、いつもいつも振り回されてばかりのでも、
少しでも中嶋の心を乱せる位に想われているように感じられて―――
「さぁな」
中嶋が素直に肯定してくれるとは最初から思ってない。
それでもは思わず不満げな表情を浮かべた。
ふっと笑った彼が、その唇で再びの唇を奪う。
あっという間に深くなるキスにまたしても思考が攫われそうになる一瞬前。
彼が不意にの耳元に唇を移した。
「・・・?」
「さっきの話だが」
「え?」
「お前の言う通りだ。
・・・、覚えておけ、余り俺を煽るとお前にはきついお仕置きが待っているんだとな」
熱い吐息と同時に言葉のひとつひとつを吹き込むようにして中嶋の低い声がの鼓膜を震わせた。
その内容に頭がついていかなくて、思考をどうにか働かせようとしたその時。
彼は再びの唇を塞ぎ、極自然な、それでいて驚くほど鮮やかな手つきでの衣服を乱していく。
合わせたままの唇の奥から、温い唾液が量を増して、ちゅぷり、くちゅりと音がする。
縺れる舌の感触と湿り気と熱を帯びた吐息が絡み、中嶋の手や体が触れている全部に反応して、
の体温が上昇していくのが分かった。
はその頃になってようやく彼が言ってた言葉の意味を理解出来た。
ああもう本当に、殴りたい。
何度もいうようだが、物理的に可能なら、の話だ。
そんな日はいつまで経っても来ないだろうことは分かってる。
中嶋を見てると成瀬や丹羽に対しての感情とは別の意味でいつもメチャクチャに殴ってやりたくなる。
でも同時に、メチャクチャになるまでを抱きしめて欲しいとも思ってしまうのだ。
こんな感情、この世界で彼に出会う前までは知らなかった。
これがどんな気持ちなのか、実は今もよく分かってない。
はMなつもりはないし、当然Sなつもりもない。
バイオレンスな展開なんて全力で拒否だ。
それなのに、中嶋と居ると自分でも信じられない衝動が襲ってくることに気付く。
それが時々スゴク怖い。
その瞳を見てるだけで、もしもが中嶋を殴ることが『物理的に可能』になったとしても、
結局はそれを実行に移すことが出来ない気がした。
「」
浅い息の合間に中嶋がを呼ぶ。
甘く掠れた低い声。
はそれに応えて彼の唇に噛み付く。
殴るか殴らないかなんて、今はもう考えるのはやめておく。
それよりも問題なのは、今の口内に侵入してきた憎らしい真っ赤な舌をいつ噛み切ってやるかどうかだ。
(END)