快晴の蒼。
寝転がって空を見上げると、真っ青な空に吸い込まれていきそうな錯覚を覚える。
澄んだ空気を胸一杯に吸い込みながら、実感する。
ああ、今日も平和だ。
カミも人も。

「おい、この俺様の特等席に陣取ってんじゃねぇよ。」
「真弘!」

ひょい。
と、唐突に私の視界に現れたのは同級生の鴉取真弘。
偉そうに立ったまま私を見下ろしている。
まぁ、偉そうなのは今に始まったことじゃなく、常に態度はLサイズの男だ。
因みに、身長はその態度とは反比例していたりする。

「いつここがキミの特等席になったって?真弘。」
「うるせぇな。俺が入学した瞬間からここは俺様の為の場所なんだよ。」
「・・・・・・・・・どんな理由よ。」

呆れた溜息を漏らしながら私はゆっくりと上半身を起こした。
アイツは未だに私を見下ろしたまま立っている。
彼自身が風を操るカミ、鴉を祖先にもつ守護者だからだろうか、
青い空を背に立つ真弘はやけに絵になっていて、私は思わずジッと彼を見つめていた。

「ん?何だ何だぁ?この真弘様の余りの恰好良さに見惚れてるのか?」

ニヤリと笑ったアイツが、いつもの軽口を叩く。
鴉。
その身を犠牲にしてまで、鬼斬丸の封印を完成させることを約束した哀しい存在。
玉依姫・珠妃と守護者達の悲劇。不意に私の脳裏に掠める、記憶。

「おい、・・・?」

呆然と真弘を見つめたまま何も答えない私に、彼は不思議そうに声を掛けた。
ハッとして、私は真弘と視線を合わせる。
悲劇はもう終った。彼と、彼の仲間達、そして玉依姫によって終らせることが出来た。
そうだ、彼は今、ここに居る。

「真弘・・・!」
「ん?ってわああああ!!ばっバカヤロー!お前いきなり何をっ!!」

アイツの名前を口にして腰を上げると、私は両腕を伸ばして真弘の首に巻きつけた。
唐突過ぎる私の行動に焦る真弘が声を上げる。
私は構わず腕に力を込めた。

「・・・お、おい、マジでどうしたってんだよ、・・・。」

私の様子がおかしいことに気づいた彼が、少し声のトーンを低くして言った。

「・・・別に、ちょっと血迷ってみた・・・だけ・・・。
いいでしょ、どーせキミは私なんか男女だっていつも言ってるんだから、この位気にしなきゃ・・・。」

キミの存在を確認したくて。
なんて、恥ずかしくて口に出来るわけない。
私は彼の肩口に顔を埋めて言った。

「・・・・・・・・・・・・思ってねぇよ・・・。」
「・・・・・・え?」
「男女なんて・・・思っちゃいねぇ・・・。」
「真弘・・・。」

視線を上げて彼を見ると、耳まで真っ赤に染まった横顔が私の視界に入る。
ぶっきらぼうに言ってくれたその言葉が嬉しくて、私はまた彼の肩に顔を押し付けた。
心拍数が信じられない程の数値を叩き出しているのが自分でも分かる。
彼の背中にある掌で、真弘の制服をぎゅっと握り締めた。


・・・俺はよ・・・」


真弘が私の体に腕を回し、何かを言いかけた、その時。


―バンッ


屋上のドアが荒っぽく開けられる音がした。
それからすぐに数人の人の声。
と言っても、ここに来るメンバーなんて分かってる。


「ちょっと拓磨、そんな乱暴な開け方しないでよ。」
「ああ?別にいいだろ、これ位。」
「ここのドアはたまに開きにくいからな、仕方がない。」
「あ、そう言えば僕もこないだ少し苦労しました。」

思ったとおり、珠妃、拓磨、祐一、真司の4人が姿を見せた。
最初のドアの音で私達は慌ててお互いから離れたから、幸い彼らに気づかれることはなかった。
珠妃が笑顔で小走りに私の側までやって来る。

先輩、真弘先輩、先に来てたんですね!」
「私が一番乗りだったわ。」
「おう、コイツが偉そうに寝転がってるのを俺が叩き起こしてやったぜ!」

私も真弘も、必死でいつも通りの会話を繰り広げる。
私の心臓は未だにどくどくと恐ろしい程の速さで鼓動を刻んでいた。

「・・・あれ?何だかお二人とも、顔が赤くないですか?」
「「!!」」

不意に真司が私と真弘とを交互に見ながらそう言った。
咄嗟に固まる私たち二人。
拓磨がチラリと真弘に視線を移した。

「真弘先輩、先輩、俺達が居ない間に何かあったんスか?」
「うるせぇ、なんもねぇよ!」
「・・・フッ・・・察してやれ、拓磨。真弘がこう言う態度を取る場合は大体何かあった時だ。」

祐一が悟ったように言う。
私の隣に居た珠妃が、他の4人に聞こえない程度の声で訊ねて来た。

先輩、やっぱり何かあったんですか?」
「・・・ノーコメント。」

こほん。
小さく咳払いして、私は珠妃に返す。
と、真弘が突然ずんずんとドアに向かって歩き出し、大声で言った。

「俺はやきそばパンを買ってくる!!」

そう宣言し、皆の返事も聞かずに階段を下りていってしまった。

「逃げたな・・・。」
「逃げましたね。」
「逃げたわね。」
「分かり易いヤツだ。」

口々に言う4人を前に、私は一人、苦笑を漏らす。
今日も世界は平和で、私達の日常は平凡で、そして幸せだ。
真弘、キミとの微妙な関係を縮める時間もこれからまだまだある筈。
未来。
そうだ、私にもキミにも、そして勿論皆にも、未来がある。


それだけで、私の胸は幸せに満たされる。


(終わり)


後書き
初緋色夢はちっさい先輩真弘でした(笑)私の一番のラブキャラです。
「あの空の下で」プレイ後すぐに執筆。彼の性格はやっぱり好きです。
ではではここまでのお付き合い、真に有り難うございました、失礼します。


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