屋上。
今日も空は快晴で、その真っ青な空を突っ切るように、飛行機雲が作られている。
深く大きく息を吸って深呼吸をすれば、肺の中に澄んだ空気が満ちていくのが分かった。
私のすぐ隣でやきそばパンをパクついている真弘。
その横顔に視線を送っていると、気づいたアイツが言った。

「んだよ、お前も腹減ってんのか?しょうがねーなぁ、おら、食え。」

そんなつもりは全く無かったんだけど、真弘は言いざま私の口元にやきそばパンを差し出した。
私は素直にそれを一口、食べる。

「おいし。」
「だろ?やっぱやきそばパンは最高だぜ!・・・って、お前よく普通に食ったな。」
「?キミが食えって言ったんでしょうが。」

真弘の台詞に、私は口の中のやきそばパンを飲み込んでから答えた。

「だってよ、あの珠妃でさえ『食べかけはちょっと』とか言って食いやがらなかったんだぜ?」
「珠妃でさえって・・・キミねぇ・・・。でも、そうなんだ。特に何も考えてなかったけど。」

ふむ。
と、私はまた空を見上げる。
この季封村に来るまで、そして珠妃たちと出会うまで、
私には『友達』と呼べる存在が居なかった。
だから男の子だろうと女の子だろうと関係なく、
同じ年頃の子達とのコミュニケーションの取り方や考え方が『一般』と少し違うのかもしれない。
今までそんなこと余りよく考えたこともなかったけど。
そこで私はふと拓磨のタイヤキのことを思い出した。

「・・・あ、ああ、だからあの時拓磨、驚いてたんだ。」
「ああん?どう言う意味だ?」
「こないださ、拓磨がここでタイヤキ食べてて、で、あんまり美味しそうだったから羨ましがってた訳。
でもアイツ、『これ一つしか買ってないすから』とか言って私の視線をかわしたのよ。
で、私が『じゃあ一口だけでいいから』って言ったら、『食えるもんならいいすけど』って言うから・・・。」
「・・・・・・おい、まさかお前、それで食ったのか?」

やきそばパンを着々とお腹の中に収めていた真弘が、私の話の途中でピタリと手を止めて言った。
私は軽く頷いて見せる。

「そ、『サンキュ』って一口だけね。その時拓磨が結構驚いた顔してたから、
ちょっと図々し過ぎたのかと反省してた訳よ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハアアーーー!!」

私の説明が終るとすぐに、アイツはこれでもかと言うほど大げさに溜息を吐いた。

「お前な!男が食った後にそんな気軽に口つけてんじゃねーよ!!」
「そう言うもんなの?分かった、じゃあ今度からは気をつける。」

いまいち『一般的な感覚』と言う物がよく理解できず、取りあえず私はそう答える。
それでも真弘はまだ納得していないようだった。

、お前俺が言いたいこと、分かってねぇだろ?」
「そんなことないわよ。ホント、気をつけるから。」
「いいか?俺が言ってんのはな、俺以外の男にそう言うことするんじゃねぇってことなんだよ!」
「・・・え?」

思わず聞き返す私に、彼は拗ねた様な表情で視線を逸らした。
その真弘の頬は少しだけ赤くなっている。

「ったく、あのよ、一体俺はお前のなんなんだ?」
「・・・・・・真弘、それ、女の子の台詞。」

咄嗟に笑ってしまいそうになるのをどうにか堪え、私は言った。
アイツの眉間に深くしわが寄る。

「うるせ!この俺様から聞いてやってんだ、答えろ、答えてみろ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

この男は。
こんなんだから珠妃に小学生みたいだとか言われるんだと思うんだけど。
でも、アホだ、アホだと呆れるのに、結局私もコイツが好きなんだと自覚する。

「真弘は私の好きな人。」

思った以上に素直にスルリと言葉が出た。
と、質問してきた筈の真弘の返事がない。
隣からアイツの顔を覗き込もうとしたら、突然私の肩をグイと彼が引き寄せた。

「・・・・・・真弘?」
「あー・・・その・・・なんつーか・・・お前のその素直なとこ、可愛いと思うぜ。」
「・・・え・・・。」


「けど、そう言うとこ見せんのは、俺の前だけにしとけ。
この鴉取真弘様以上にお前に似合いの男なんか居ねぇんだからよ。」


少しだけ私より低い位置にある真弘の顔。
耳まで、赤い。
私はアイツの肩にコツンと頭をのせた。

このままずっとこんな日が続けばいい。
こうやってずっと、キミの隣に居られればいい。

いつの間にか薄れてしまった飛行機雲を見上げながら、私は心からそう思った。


(終わり)



後書き
気づけばちっさい先輩ばっかり増殖してる(笑)
需要があるのかは謎ですが、好きなキャラだけに一番話が思いつきやすいです。
因みにこれは授業をサボった時の話、昼休みは他のメンバーも居ますから(笑
ではではここまでのお付き合い、誠に有り難うございました!


ブラウザバック推奨