「ん〜?おい、、どうした?おぅ、啓太と遠藤も一緒か。」
「「あ、王様!」」

BL学園学食前。
私は伊藤とカズに連れられ、寮にある伊藤の部屋へ向かおうとしている所だった。
正面の廊下から此方へ歩いて来ていた丹羽は、私の悲惨な姿を目にして驚いた様子を見せる。

「どわっ、、何だぁ?その洋服につているすっげぇ色の液体は。」
「・・・・滝だ。アイツ、また意味不明なドリンク買って来やがって・・・。」

私は忌々しげに言いながら、片手で拳を握った。
私の右隣に居るカズも半ば呆れた様に頷いて補足する。

「確か『バブリースライムドリンク』だったな・・・、名前も凄いけど、蛍光黄緑のどぎつい色だったよな。」
「ははっ・・・俊介・・・あんなもんどっから見つけて来るんだろ・・・。」

伊藤が引きつった笑顔を浮かべ、そう呟いた。

「つまり滝の持ってきたその怪しいドリンクひっかぶっちまったって訳か?」
「省略すればそうなるが・・・。もっと詳しく説明すると原因も全てアイツにある。
どうやら缶に10回以上は振ってくれと言うようなことが書いてあったらしくて、
滝の奴妙に張り切って缶を振りまくって・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

説明を口にしながら、先程の惨状を思い出す私。
そうだ、滝は「どうせならクリーミーな舌触りの方が美味いやろ!」とか何とか言って、
恐ろしい勢いで缶を振り続けていた。

『なぁ、俊介、もうそろそろ止めといた方が良くないか?万が一飛び出しでもしたら大変だし・・・』

伊藤がそう言って止めた時には、既に10回どころか30回以上は振りまくった後だったように思う。
ようやく満足したらしい滝は、そこでやっと動きを止めた。

『滝さん、念の為、人の居る方に向けて開けないで下さいよ。』
『何や遠藤も啓太も心配性なやっちゃなー。
大丈夫や、炭酸が入っとる訳でもないんやからこの位・・・・『!俊介!!』


バッシュゥゥゥッ!!!



滝が蓋を開けた瞬間、缶の中身は狙った様に、
滝から数メートル近く離れた席に居る私のスカートへぶちまけられた。
文字通り、バブリーでスライミーな蛍光黄緑色の、それはそれは鮮やかな液体だった。

「ったく、滝の奴しょーがねぇな。」

私の説明が終ると丹羽は苦笑と共に溜息を吐き、再び私のスカートへ視線を向けた。
つい先程までの鮮やかな蛍光黄緑は、時間が経つと同時に変色し、
オレンジ色がかっているようにも見えた。
一体どんなものを入れればこんな液体が出来上がるのか、全く謎だ。

「で?当の本人のサル君はどうしてんだ?」
「ああ、その後騒ぎを聞きつけた篠宮さんが駆けつけて来て、今は説教食らってるとこです。
あの分じゃあ当分解放して貰えないでしょうね。」
「ま、当然だな。篠宮が現れなければ私自身が思い知らせてやってるところだ。」

「あの・・・、先生、早めに着替えた方がいいんじゃあ・・・。」

伊藤が私のスカートにチラリと視線を落とし、遠慮がちに言った。
私とカズが同時に頷く。

「そうだな、さっさとしないと染みになりそうだ。またな、丹羽。」
「ああ、ま、俺と啓太はこの後も特に用事がある訳じゃないからいいけど。
じゃあ、王様、俺達はこれで失礼しますよ」

言って、私達3人がその場を後にしようとしたその時、再度、丹羽が声を掛けてきた。

「?お前ら今からどこに行く気だ?」
「あ、さすがにこのままじゃマズいだろうから、
先生には寮の俺の部屋で着替えて貰おうってことになったんです。
スカートもクリーニングに出さなきゃいけないからって。」

そう伊藤が話すと、丹羽は何を思い立ったのか、余りにも唐突な提案をしてきた。

「・・・・・そうか・・・、じゃあ、俺が部屋を貸してやる。遠藤と啓太はここまででいいぜ。
後は俺がを寮まで連れてってやるからよ。」
「丹羽・・・、キミは何を言って・・・!」

咄嗟に私の声が高くなる。
まったく何を言い出すんだ、コイツは。
ここだけの話、私と丹羽はただの教師と生徒と言う関係ではなく、
率直に言ってしまえば付き合っている、言わば恋人同士というヤツだ。
そしてそれは勿論、他の生徒や教師に知られていい筈もない。
とは言え、ここに居る他の二人、つまり伊藤啓太とカズ・・・遠藤和希には知られてしまっていたりするのだが。
(まぁ、カズの場合は身内で、しかもコイツも人のことは全く言えた義理じゃないと来ている。)
と言うか、知られているからこそ気まずくも有り、
そして他の生徒に寮に入り込むのを見られることを考えれば、丹羽と二人だけと言う状況よりも、
他の生徒が一緒に居たほうが言い訳のしようもあるように思えた。

「別にいいじゃねぇか。堂々と歩いてりゃ誰も疑ったりしねぇよ。な、お前もそう思うだろ?啓太。」
「はぁ・・・確かに・・・そうかもしれませんけど・・・。」

ちらり。
と、伊藤が私の様子を伺う。
私が反対する理由も分かると言う事だろう。
丹羽に賛同するのを少々躊躇っているようだ。
と、カズが最もな質問を丹羽に投げかける。

「でも王様、今から学食に向かうところじゃなかったんですか?夕食食べに来たんですよね?」
「ああ、まぁな。けど別にそこまで腹が減ってた訳でもねぇし。
つーか、こんなとこで話し込むよりさっさと洋服クリーニングに出せるようにした方がいいんじゃねぇか?」
「・・・丹羽、キミが・・・・・・って!コラ、人の腕を引っ張るな!カズ・・・・遠藤!伊藤!助けろ!」

話が前に進まないことに業を煮やしたらしい丹羽が、実力行使に出た。
私の腕を掴んだまま、ずんずんと廊下を歩き始めたのだ。
それを半ば呆然と見守るカズと伊藤。
いや、呆然としていたのは伊藤だけだったとも言える。
何故なら。

「啓太、今日は俺も珍しくこの後の予定もないし、二人でのんびりしようか。」

と言う言葉が、私の耳にもハッキリと聞こえたからだ。





「丹羽、ここまで来たからには私も有り難くキミの部屋を使わせて貰う。」
「ははっ、最初っから素直にそう言えよ。。」

寮内。
結局私はあのまま哲也の部屋へと連れ去れらていた。
まぁ、元々男の、しかもこの馬鹿力を誇る丹羽哲也の力に、女の私が敵う訳もなかったのだが。

「哲也、この際だからシャワーも借りるぞ。」
「おお!こっちはそのつもりだったから好きに使え。」

言いながら、ヤツが私にタオルを渡す。

「有り難う。じゃ、遠慮なく。」
「おぅ!」

タオルを受け取ると、私はすぐにバスルーム(と言ってもユニットバスだが)
に入り、手早く洋服を脱いだ。
因みに、スカートに着いた例のドリンクは既に変色がかなり進み、鮮やか過ぎるオレンジになっていた。
太股の辺りもベタベタして気持ちが悪い。


―ガチャ

「!」
「ああ、着替えは俺ので悪ぃがここに・・・って、どわっ、す、すまん!!」


ノックもせずにバスルーム内に入ってきた哲也。
しかも私の下着姿にかなりの動揺を示し、ヤツは自分の背中を激しくドアに打ち付けた。

ドンッ

その拍子にドアが閉まり、完全な密室状態になる。
半ば呆然とヤツと視線を合わせる私。
下着姿を見られたショックを感じているのではなく、哲也の反応に驚いていた。

「あー、その、なんだ!俺は別にわざと入って来た訳じゃねぇんだ!これは不可抗力であってだな!」

哲也と付き合い始めたのはほんの1週間程前。
学園内での彼との付き合いもそれ程長いとは言えないが、
それでもそれなりに彼の性格は分かっているつもりだった。
才能豊かで個性的な生徒の中で、一際異彩を放つBL学園の生徒会長。
王様の名に恥じない、いつ見ても自信に満ちた態度。
それなのに、今の彼は――――。


「フッ・・・くっくっ・・・!」
「なっ!?おい、!い、今は笑ってる状況じゃ・・・!」
「悪い、キミが思った以上に・・・」

可愛かったから。
と言う言葉を咄嗟に飲み込んで、哲也の持ってきてくれた洋服に手を伸ばす。
それだけでヤツの手が大げさにビクンと震えたものだから、
私は我慢できずに声を出して笑い始めてしまった。

「ははははっ・・・どれだけ驚いてるんだ・・・!」

受け取ったばかりの洋服を側にある籠の中に押し込みながら、私は哲也に言った。

「るせぇっ!くそっ、お、俺はもう出るからな!」
「一緒に入ってもいいんだぞ?」
「ばっ・・・!お前なぁ・・・周りの目を気にしてここに来るのが嫌だとか言ってたのはの方だろうが!」

赤くなって反論するヤツの姿がこの上なく可愛い。
コイツをこんな風に見たのは、哲也の大の苦手とするトノサマと遭遇した時以来だ。
そう言えば、中嶋も似たような事を言っていたような気がする。

「哲也。」

ドアを開けて出て行こうとするアイツの背中に声をかける。
奴は振り向かずに返事をした。

「ああン?」
「キス、しようか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ふふ、どうだ?振り向けないのか?」
「だぁーーー!!ったく、お前って女は!!!」

言いざま、奴がぐるりと此方を振り返り、私の前まで進み出る。
そして少々乱暴に私の裸の両肩を掴んだ。

「お前がその気なら俺も容赦しねぇぞ。大体なぁ、さっきも言ったが、
ここに来ることにも反対してたのはお前の方だろうが。それを・・・」
「ふふっ、そう怒るな、キミがあんまり可愛いから我慢できなくなった。」

先程飲み込んだ言葉が、思わずポロリと私の口から零れ出る。
ほんの一瞬、哲也の動きが停止した。

「へぇ、可愛いねぇ。この俺にそう言うこと言えるとはな。」
「年上の特権だな。」

私はそうからかうように口にしつつ、再び頭の隅に中嶋を思い浮かべ、笑ってしまう。
こんな姿を見せられれば、年齢関係なく、このデカイ男も可愛く見えてしまうものだろうが、
それはさすがに言わないことにしておいた。

「いいぜ、。俺が本当に可愛い坊やで済むのか、試して貰おうじゃねぇか」


ニヤリ


奴の口角が上がり、それとほぼ同時に私の唇に食らいつく。
私の愛しき獣。
時に大人の男よりもずっと魅力的な色気を発散し、
そして年相応の可愛い姿も見せてくれる。
もちろん、そういう所も含めて全部、好きなんだがな。


(終わり)



後書き
初ヘヴン夢・・・丹羽哲也でした。
いや、本当はSSSの練習のつもりだったのですが、何コレ、普通の長さだし。
一応補足としてはヒロインは和希は親戚同士。
でも一応ヒロインは教師なので他の生徒の手前「遠藤」と「カズ」ってのを使い分けてます。
丹羽に対しても同じ。そして丹羽も普段はあだ名で呼んでますが、二人きりのときは呼び捨て。
しかし、やっぱり初書きは緊張するな・・・・。
ではでは、今回はここまでのお付き合い、誠に有り難うございました、失礼します


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