あたし、きっと美人になりますよ聖帝学園敷地内。 その中庭の片隅にある木々の一本。 私は丁度そこで昼寝をしてるとこだった。 そこに現れたのは人目を気にするようにしながら近づいてきた、 我らが学園のアイドル的存在、真田正輝先生。 先生は周囲をかなり警戒している。 端から見ると中々挙動不審だ。 「・・・こ、今度こそ!今度こそ南先生を寄席に誘うぞ!!よおおーし!! ――――――――――っと気合入ったとこで、 やっぱここはいつものリハーサルだよな!うん!!」 ・・・あ。 ヤバイ。ってか、またデスカ。真田先生。 私は先生の居る位置から丁度真上に当たる場所から真田先生を見下ろしていた。 実を言うと、先生の『イメージリハーサル』に居合わせてしまったのはこれで3度目。 1度目は屋上で2度目は資料室で。 先生としては人気のないとこを選んだんだろうけど、どっちも私が昼寝してる時だった。 途中で姿を見せたらえらい慌てようだったのを覚えてる。 ふむ、さすがにこっから飛び降りてくってのは、先生の方の心臓に悪いかな。 無難にゆっくりめでおりてくか。 「・・・南先生、ちょっといいかな?話があるんだけど・・・。」 木から下りるタイミングを見計らっていたら、真田先生がリハーサルを開始してしまった。 まだ序盤だからいいけど、中盤になると先生の中で色々とヒートアップしてしまうから厄介だ。 それより何より、私としても余り真田先生のイメリハの内容を見てたくなかったりする。 私はさっきよりも少しだけ急いで木から降りることにした。 その間も真田先生のイメリハは順調に進んでいる。 「実は凄くいい席で寄席のチケットが手に入ったんだけど、その・・・もし良かったら―――」 そこまで先生が言いかけた。 その瞬間だった。 私の足元。 あると思っていた太い枝が予想外に下の方に位置してて、空振りを食らった私の足が、 ストンと空中で妙な動きをした。 そして。 ドサササッ!!! 「わああああ!!!???何だ!?何だ!?何だ!!??」 「うおっとおおお!!!!」 私はバランスを崩してしまい、事もあろうにそのまま先生の上に落下してしまったのだった。 「いってぇええ!って・・・えええええ!!??!!??」 「やはは、ドモ。」 「ドモじゃねぇよ!!って言うか何で上から落ちて来てんだよ!お前は!」 「それはまぁ、色々と事情がありまして。」 適当ないい訳が思いつかず、そう答える私。 先生の顔は綺麗に熟したリンゴに例えられそうな位真っ赤だ。 まぁ、生徒にアレを目撃されりゃ仕方ないかもしれない。 「どんな事情だよ!?お前絶対ただ昼寝してただけだろ!?斑目かっつーの!」 「あっはー、そうですね。斑目クンかぁー。そうとも言うかな。」 笑って誤魔化す私に、真田先生はとうとう深く大きな溜息をついて項垂れた。 「・・・うう・・・もういいや。 おれが居たからに怪我なかったんだしさ・・・。あ、怪我、ないよな?」 「おかげさまで。」 「・・・そっか、うん。まぁそれは良かった・・・・ってやっぱ良くねぇよ!! !お前女の子なのに何でよりによって木の上に登って昼寝なんかしてんだよ!!」 くるくると良く変わる表情。 私を叱る姿すら愛らしい。 高校生と間違われても仕方ない童顔。 斑目クンが子犬と言ってたのもよく分かる。 さすが学園のアイドルだ。 さすが私の――――――― 「この木が一番風と日当たりの具合がグッドなんで。」 「いや、おれの聞いてんのはそう言うことじゃないって! しかもお前これでおれのリハーサル見たの3度目だろ!?」 「デスね。名付けて『真田正輝(26)南先生ゲッツ☆への道、イメリハ・テイク3』」 「わああああああああああああああ!!止めろおおっ!!名付けなくていいって!! つか名前のセンス無さ過ぎだから!!!」 耳まで真っ赤になって叫ぶ真田先生。 私は先生の上に乗っかったままなのを思い出し、そこでようやく立ち上がる。 「ああ・・・クソっ・・・今日は周りに人居ないの散々確認したのになぁ・・・。 葛城さんも猫もトカゲも斑目も居ないと思ったら、今度は・・・お前か〜。」 「敵が多いッスね、真田先生。それだけ邪魔されるってことは、この恋路・・・難しいと見ました。」 言いざま、私はしても居ない眼鏡を押し上げる仕草をしてみせる。 ここでキラーンと言う効果音が鳴れば尚よし。 「不吉なこと言うなよ!!て言うか眼鏡押し上げる真似やめろよ!二階堂先輩に失礼だろ!」 「まぁそれはそれとして。」 「勝手にまとめんな!」 テンポよく繰り広げられるわたしと真田先生の会話。 自分で言うのもなんだけど、いいコンビになれると思う。 とは言え、私が先生となりたいのは断じてお笑いコンビじゃない。 まぁ、それはそれで楽しそうだけれども。 「真田先生が南先生を好きなのは知ってましたけど、 南先生って最近衣笠先生と仲いいですよね。」 「うっ・・・!! い、いや、でもまだちょっとだけ仲が良さそうっていう感じなだけで、 衣笠先生も本気なのか分かんないし・・・・。 っじゃなくてええ!何でおれ、生徒にこんな話ししようとしてんだ!」 「まぁまぁ。で、話を戻しますけど、 相手が衣笠先生って時点でコレもう勝負ついてると思いません?」 にっこり。 思いきり爽やかな笑顔を向ける私に、真田先生は分かり易く弱腰になっている。 「うううー・・・た、確かに衣笠先生は色んな意味で強敵だけど・・・。」 「デスよ。ってことで、ここはもう次の恋を見つけるっきゃない☆訳だと思います!」 「どんだけ安易な結論だよ!それが出来れば――――」 「『それが出来ればおれだって苦労しないよ!出来ない位好きだから困ってんだろ!』」 真田先生が続けると思われる言葉を選んで私は言った。 一瞬、驚いたみたいに眼を見開く先生。 「何で・・・おれの言いたいこと・・・。」 「さて、何故でしょう?」 言って、私はまた笑って見せる。 だけど本当のところ、笑えるほど気分は良くなかった。 自分でやっといて何だけど、 真田先生がどれくらい南先生を好きか再確認したみたいになってしまったのだから。 そう、何を隠そう私は入学以来ずっと真田先生が好きだった。 だから分かってしまった。 だから気付いてしまった。 真田先生は確かに分かり易い性格だけど、そうじゃなくとも気付く自信があった。 初めて屋上で先生のイメージリハーサルを目撃してしまった時も、 驚くよりも胸が痛かったりした訳だ。 なのによりにもよってその私の前で(わざとじゃないとは言え) 3度もイメリハをおっぱじめてくれるなんて。 これはもう、こっちも一発宣戦布告をするべきじゃないだろうか。 「真田先生。」 先生を呼ぶと同時に、私は一歩、前に出た。 「え?な、何?ってか顔、近っ!」 「よく見て下さい、私の顔。私、きっと美人になりますよ。」 踵を上げて先生に顔を寄せ、私はニヤリと笑って見せた。 真田先生は未だに驚いたみたいな顔で私を見てる。 だけど私を突き放したりはしなかった。 と言うより、私が何を言うのか未だに測りかねてるに違いない。 「年下でちょっとトボケてて、だけど将来有望! しかも私、先生の事、ずっと好きでいる自信があります。お買い得だと思いません?」 「え?え?え?ええええええええええええええええ!!??」 私の唐突な告白に、今度は声を上げて驚く真田先生。 ホント、分かり易くて助かる。 可愛い人。 「って・・・・・・・お前・・・。」 「真田先生が南先生をどれだけ好きかは知ってます。 それ以前に私は単なる生徒だって分かってましたから、 諦めようと思った事もあるんです。でも・・・」 そこでひとつ、私は小さく深呼吸する。 自分で思ってる以上、緊張、している。 だけどもう、後には引けないのだ。 引くつもりもなかった。 「さっき真田先生が言おうとしてた台詞。 『それが出来ればおれだって苦労しないよ!出来ない位好きだから困ってんだろ!』 ってヤツ。私も一緒なんですよ、真田先生。」 「・・・。」 真田先生は戸惑ったように私の名前を呼んだ。 どう答えていいのか、どう言えば私を傷つけずに済むのか、そんな顔だ。 だけど、当然、今答えを聞くつもりなんか、私にはさらさらなかった。 「そんな訳で、長期戦上等!次回のイメリハには私を招待しない方向でお願いします!」 「いや、アレは最初っから誰も呼んでないって!・・・って、え!?!?」 「これからのの活躍、乞うご期待!!んじゃ、授業行ってきますんで!」 「え?え?え?ええええええええええええええええ!!??」 背後に聞こえる真田先生の声。 卒業まで後半年。 だけど学園を卒業しても終わらせてなんかやらない。 先生のイメリハの相手、いつか私にしてみせましょう! 何故か込み上げてくる笑いを堪えつつ、私は教室に向かった。 (END) あとがき
ワンシーン部屋に引き続き、真田夢第2弾。
スランプ時なこともあり、予想以上に時間がかかってしまいました。 そして今回の短編ヒロインも何だか一癖ある感じに(笑) リハビリ気分で書いた夢でしたが、どうにか書きあがって良かったです。 ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様に深く感謝しつつ、失礼たします。 |