いつもの場所


「結婚しちゃいましたねぇ、南先生と衣笠先生。」
「ううー、くそー!まだ逆転のチャンスはあると思ってたのに・・・!
っていうか、あれ反則だろ!?衣笠先生!いきなり結婚式挙げちゃうってどんな流れだよ!?」
「でもほら、南先生納得してましたし、幸せそうだったし、いいんじゃないですか?」
「うっ・・・、そ、そうなんだよなぁ・・・。何だかんだで先生、スッゴク嬉しそうだったんだよな・・・。」

しょぼーーん。
どよーーん。
と言う効果音がピッタリの真田先生は、そう言って深い溜息を吐いた。
その真田先生の隣。
並ぶように木陰に座っていた私。
チュッパチャプスを片手に青空を見上げ、会話を続けていた私は、ポンポンと先生の肩を叩く。
でも申し訳ないけど真田先生、正直、私は喜んでます。

「って、!お前メチャクチャ笑顔なんだけど!?」
「あらま、顔に現われてましたか。」

あはははは。
笑って誤魔化しながら、私は敢えて口に出さなかった言葉が、真田先生の台詞で表情に出てしまっていたことに気付く。
即座、先生はツッコミを入れてきた。

「おれが振られて嬉しいのかよ!」
「嬉しいですよ。先生こそ私が告ったこと分かって聞いてます?」
「えっ!?あ、いや・・・わ、忘れてた訳じゃ・・・ないけど・・・。」

もごもごとそこで言葉を濁す真田先生。
この人、一見生徒に見間違える位に童顔だし、行動も大人の男とは程遠いんだけど、
それでもやっぱり教師で、生徒に告白されたことだってそう少ないようには見えない。
なのにそれを簡単にあしらうという事には慣れてなくて、
私はある意味で真田先生のそんな所も好きだったりする。
勿論、振られてあげるつもりはさらさらないけど。

「ま、今回はこの心のひろーい、さんが先生の愚痴を思う存分聞いて差し上げましょうか!
真田先生、今のご心境・・・お察しいたします!さぁ、そのやるせない思いをマイクに向かって!」

言って、私は真田先生にマイクに見立てたチュッパチャプス口元に差しだした。

「くそーう!おれは本当に君が大好きだった!南先生!絶対絶対、幸せになってくれよな!!!!!」
「ブッ、お人好しですねぇ、真田先生は。」
「え?そ、そうかな?けどさ・・・やっぱりほら、好きな人には・・・いつも笑ってて欲しいもんじゃん?
例え・・・・・・・・・・・それが・・・俺の隣でなくても、さ・・・。」

フッ、と、少しだけ寂しげな笑顔を浮かべて先生が呟いた。
私はマイク的に差し出していたチュッパチャプスをパクリと無言で咥え、ジッと先生の横顔を見つめる。
さやさやと優しい風が私と先生の体を通り過ぎて行った。

「けど、何でおれ、生徒のお前にこんなことべらべら話してんだろ・・・。二階堂先輩に知れたらまた怒られちゃうよ。」
「それは私が毎度毎度何故か真田先生のリハーサルに遭遇してしまうからかと。」
「・・・確かに、はおれがどんなに警戒してもいっつも顔合わせてたよな。
でも・・・何かそれだけじゃないような気もするけど・・・・。」

最後の方は殆どぼそぼそと呟くようにそう言って、
真田先生は不思議そうな表情を浮かべて私と視線を合わせた。

「あ!先生、空、空見て!」
「え!?な、何!?空ぁ!?」

私が唐突に上げた声に真田先生は驚いたように空を見上げる。
先生が反射的に開けた口に、私は素早くチュッパチャっプスをさし入れた。

「んおっ!」
「あげます、真田先生!だからそれで早く元気出して、明日からはまた私のアタックに応えて下さいね!」

先生はわたわたと口の中のチュッパチャプスを取り出し、駈け出した私の背中に向かって呼びとめる。

「お、おい!!」
「また明日!それまで私との間接ちゅーでも楽しんで!」

けらけらと笑い声を上げる私の背後。
少しだけ振り返ると、顔を真っ赤にして何かを叫んでいる真田先生。
その姿が何だかやたら可愛くて、私は凄く満足した気分だった。


(END)

あとがき

またしても久々にビタ夢。そして真田先生はこれで・・・えーっと、3作目?ですかね。
甘い夢を書いてみたいとも思ったんですけど、
真田先生は片思いして色々やってる姿がいいと個人的に思ってるので(酷い)
どうしても微糖感覚になります。
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様、誠に有難うございます!失礼します