恋愛依存症候群


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
葛城先生、そろそろ出てってくれると有難いんですけど。正直、気が散ります。」
「ンだよ冷てぇなー。キャー!銀児様から会いに来てくれるなんて感激ィ!
位可愛い事が言えねぇのかお前はー!」
「言えませんよ!って言うか、単に九影先生や鳳先生から逃げて来ただけでしょうが!」

まったく。
言って、あたしは手元の本を棚に戻す作業を続ける。
今は放課後。
そしてここは図書室の一角。
図書委員であるあたしは先生に頼まれて、
本棚の整理もかねて本を棚に戻す作業をしていた。
残る本は後十数冊。
だけどそのペースは明らかに落ちていた。
その原因は当然、今あたしの隣でぶちぶちと文句を垂れ流しているホスト教師のせいだ。
まぁ一応、あたしの、彼氏、でもある人だったりする訳だけど。

「グスッ、グスッ、が俺を虐めるー。
これが泣きそうな顔して俺に告白してきた女の態度かねぇ。銀ちゃん、悲しいゼー!」
「な゛!!!!!!そう言う話持ち出すのって卑怯じゃありませんか!?」
「“・・・わたしはイケメンで優しくて素敵な葛城先生が・・・大好きなんです。”
って、あン時のお前はマジ可愛かったのになぁ。」
「ぜ、絶対言ってないし!!そんなこと!!過去を勝手に捏造しないで下さい!!」

思わず手にある本をぶん投げてやりたい衝動に駆られつつ、あたしは顔を赤くして反論する。

「照れるな、照れるな、マイシュガーベイベー!」
「照れてないですから!!エコー入れないで下さい!!
ああーもう!!いいですよ!
そんなことばっか言って邪魔するんだったら、鳳先生達に通報します!」

言いざま、あたしは図書室のドアに向かって歩き出した。
まったくあたしは何でこんな人が好きなんだろう。
動力が謎過ぎる手マイクでエコー響かせるわ、激しく間違った方向のホストにしか見えないわ、
その上女好きでしょっちゅう中等部から転任してきた南先生追っかけまわしてるわ。
挙句ギャンブル好きの借金大魔王だし。
それにそれに、そのせいで鳳先生の家に居候中だし。
何だか挙げれば挙げるほど色々と情けなくてあたしの方が泣けてくる。
B6の連中の方が未成年なだけまだ救いようがあるってもんだ。
そう、マジで凄くそう思う。
そう思うけど。
でも、無茶苦茶呆れる要素しかないのに、それでも絶対憎めない。
実はああ見えて結構生徒の事をよく見てる、だとか、優しいところだって沢山ある、だとか、
ふざけてるのは実は照れ隠し、だとか。
何だかんだで最終的に短所よりも長所に目が向いてしまうあたしも相当どうかしてる。

「九影先生か鳳先生に連行してもらいましょう、そうしましょう!」
「わあああ!!待て、待て!早まるなぁああ!!
特に今日の太郎さんは不機嫌MAXなんだぞ!!殺される〜!!俺は絶対殺される〜!!」

慌てに慌てた葛城先生が背後からあたしの腕を掴んで悲痛な叫び声をあげる。
その行動が唐突過ぎて、あたしは思わず2,3歩よろけた後、背中を先生の体に軽くぶつけてしまった。
同時に煙草と男物の香水の香りがして、さっきよりももっとがっちりと抑え込まれてしまう。


って言うか、これは、この状態は・・・・!!


「ちょっと、葛城先生っ!」
「ああーはいはい、ちょぉっと大人しくしてろよ?あんまり騒ぐと鳳様が来るぞーー!」
「そんなナマハゲが来るみたいな言い方してもあたしは怖くな――。
ちょっと!!葛城先っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

更に言葉を重ねて反論しようとしたその時。
葛城先生はあたしの顎を掴んで強引に自分の方へ上向かせた。
そして、開いたままのあたしの唇に先生の唇が押し付けられる。
薄らと煙草の苦味があたしの口内に広がった。
不意を突かれて呼吸経路を塞がれ、しかも体勢的な苦しさも重なり、
あたしは咄嗟に葛城先生から体を放そうとした。

「ンだよ・・・、逃げンなよ・・・。」

僅かに唇が離れると、先生が半分囁くみたいに言った。

「だ、だって苦しい・・・っ・・・。」

あたしは思わず顔を赤くして答える。


「ああ・・・だな・・・、だったらコレでいいか・・・?」

言って、先生はあたしを体ごと向き直らせた。

「え?いや・・・だ、ダメ!だってここ図書室で・・・っ!」
「大丈夫だ・・・、この位置なら死角になって見えねぇし・・・。
人が入ってくりゃすぐ分かる。銀児様を信じろって・・・。」
「で、でも・・・・。」
「久々の個人授業なんだぜ・・・?ほら・・・。」
「ンぅ・・・」

再度、先生があたしの唇を自分の唇で塞ぐ。
ぎこちなく開いたあたしの唇を割って、葛城先生の舌が口内に入り込んできた。
ぬらりと濡れた自分のものではない舌の感触。
同時にさっきよりも濃厚な煙草の苦味が口の中を満たす。

「・・・、俺の背中に腕回せよ・・・。」

キスの合間に先生が低く囁く。
あたしはおずおずと腕を葛城先生の背中に回した。
先生はすっぽりと完全にあたしをその胸に抱きこむ。

「いいコだ・・・。ほら、舌、もっと絡ませろ・・・。」
「・・・っ・・・。」

あたしの口内をまるで生き物みたいに動き回る先生の舌。
歯列をなぞり、隈なく探索を終えると、それがあたしの舌を簡単に絡め取ってしまった。
生温かくてとろとろとした二人分の唾液が溶け合って、少しずつ少しずつ量を増していく。
その間も先生は強弱をつけてあたしの舌を吸い上げた。

「ふ・・・。」

無意識にあたしの口から甘ったるい声が漏れる。
ここは学園内で。
しかも図書室で。
幾ら死角だと言ってもいつ誰が来るのかも分からない。
なのに、あたしはもう思考まで蕩けそうなほど葛城先生とのキスに夢中になってしまっていた。





「・・・・・・・・・葛城先生、思いっきり不審者全開なんですけど。」
「シィー!!馬鹿!お前、太郎さんや鳳先生に見つかってみろ!考えただけでも恐ろしいっ!!」

外はもうすっかり薄暗くなっていて、星が幾つか瞬いている。
どうにか作業を終えたあたし達は(勿論先生にも手伝って貰った。)今、正門に向かっていた。
葛城先生は図書室を一歩出た瞬間からまるで忍者のような動きで周囲を警戒し、
警戒しまくり、おかげであたしは中々外に出ることが出来なかった。

「っても、葛城先生、鳳先生の家に帰るんだったら同じじゃないの?」
「OH!!NOOOOOO!!!!!お前はそう言う現実を突き付けるんじゃない!!
そう言う事はもっとこう、遠慮がちかつソフトに言え!ソフトに!」
「いやいやいや、無理だから。」

何だかんだといつも通り下らない会話を続けつつ、あたし達はようやく学園を離れる事に成功した。
とは言っても、さっきから言ってるように、葛城先生は一時的に逃げ伸びただけなんだけど。

「葛城先生ってマジで救い難い人だよね。」
「何ぃぃ!?お前このイケメン銀児様に向って何を!?」

そんな事言っちゃノンノンだぜぇー!
またしても謎の手マイクでエコーを響かせ始める先生。
やっぱ変だ。
やっぱおかしい。

「でも、好きなんだからしょうがないか・・・。」

無意識に小さく呟くあたし。
だけどそれはしっかり葛城先生の耳に届いたらしく、その頬がほんの少し赤くなる。
それを見て可愛いなんて思う辺り、あたしも完全に末期だ。


あたしは一人、心の中で苦笑して、そしてまた歩き出す。



明日もまた、幸せな日常がやってくる。
そう、確信しながら。


(END)


あとがき

いつの間にか葛城先生夢が清春夢を追い越して・・・(笑
気づけば葛城先生ばかり書いている気がします。いや、好きだからいいいんですけどね。
しかし葛城先生、もっと書き易いかと思ってたけど、結構考えました。
ではでは、ここまでお付き合い下さった貴重な姫様に深く感謝しつつ、失礼致します!