片想いにキス「あーあ!キヨってばホンットにセンセのこと彼女にしちゃった・・・。」 「・・・・これは俺達に報告って言うより、見せつけてる意図丸見えだな。」 「フン・・・してやられたか・・・、悔しいが・・・担任もいい顔をしている・・・。」 「ふふ、さようでございますね。 先生はどうやらカメラが回っている事には気付いていらっしゃらないようですが。」 「・・・先生が幸せなら・・・僕はそれでいい・・・。トゲーもそう?」 「トゲートゲトゲー!」 「しかし告白シーンからオレ達に見せつけるとは、相変わらず悪趣味な奴だ・・・。 先生もこれから苦労するな・・・。一番厄介な相手を選んだ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 卒業式終了後。 バカサイユ内。 キヨを除くB6メンバーとトゲーと永田さん、そしてあたしは、揃ってテレビの前に居た。 リアルタイムで流されているテレビ画面にはキヨと南先生が映っている。 今はキヨが先生に告白して、それが見事成功したところ。 先生はかなり戸惑ってるみたいだけど、それでもやっぱり幸せそうで。 何だかんだで意地の悪いことをしつつも浮かれているキヨ。 キヨは甘いセリフを連発し、先生は恥ずかしがって真っ赤になってる。 そしてカメラに向かっての何度目かのキスシーン。 あたしはそこでとうとう堪えられなくなって、 皆に気付かれないようにそっと立ち上がり、その場から抜け出した。 あたしは知らない、あんなキヨの顔。 あたしは知らない、あんなキヨの声。 見た事もない、聞いた事もない。 だけど、いつかはこうなるってことだけは、覚悟してた。 キヨが南先生を好きだって知った時から。 キヨは言っていたから。 さっき先生にも言ってたけど、欲しい物は必ず手に入れる、って。 絶対的な自信の完璧なオレ様男。 どぐされてて意地悪で、口も性格も悪くて。 だけど、あたしは好きだった。 そんなキヨの事が。 久世さん・・・告って振られてスッキリしたって言ってったよな・・・。 「まーったく、趣味悪いったら、あり得ないっつの・・・。あたしも、久世さんも・・・・・・・、南先生、も。」 ボソリ、一人、呟いて、あたしは校舎の壁に寄りかかった。 そして空を見上げた後、両手で目元を覆う。 「振られとけば良かった・・・・。 ここで思いっきり泣いたら・・・少しはスッキリ・・・するかなぁ・・・。」 「それなら、俺の胸で泣いとくか?。」 「――――っえ!?」 ビクリ。 掛けられた声は聞き慣れたもの。 だけど、あんまりにも突然で、しかもこんな場面だったもんだから、 あたしは必要以上に驚いて体を震わせた。 「は、一・・・、何でここに・・・。」 「んー?お前が俺達に何も言わずにこっそり出て行ってたのが見えたからさ、追っかけてきた。」 「・・・んで、聞いてた訳だ、今の・・・・あたしの独り言・・・。」 ま、そーゆうこと。 言って、一は少し困ったように苦笑した。 それからすぐに、つかつかとあたしのすぐ傍まで近づいてくる。 「お前・・・清春の事好きだったんだろ。だったら 「・・・・・・・・・・・・もしかして、気付いてた?前から・・・。」 「ああ、まぁな。」 「そっか・・・。他の皆も気付いてると思う?」 「いや、多分知ってんのは俺だけだと思うぜ。」 あたしはそれを聞いて少しだけホッとした。 だからどうにか笑ってみせようと思ったんだけど、結局上手くいかなくて、逆に泣きそうな顔になってしまった。 「・・・。」 「・・・・・・・・・・。一、さっきの、マジなら・・・甘えてもいい?」 「ん?」 「俺の胸で泣いとくかって、ヤツ。」 「――――ああ、いいぜ。泣いとけ、思いっきり。」 クスリ。 小さく笑って、一があたしの肩に手を伸ばす。 あたしはその胸に縋りつくように体を寄せた。 「マジでムカつくよ、アイツ・・・。人の気も知らないで、カメラとか回しちゃって。」 「ははっ、ありゃあ翼達も見た目より参ってたぜ。」 「ああ、そっか・・・皆も失恋したんだっけ・・・。みん、な・・・、も・・・。」 ツンと。 目の奥から、胸の奥から、込み上げてくる。 失恋の痛み。 ぽろり。 一滴、涙が零れて。 そっから先は、もう滝のように止め処なく涙が溢れてきた。 自分でも、制御できない位に。 「・・・あたしも・・・分かってた、キヨが誰を好きかなんて・・・とっくに・・・し、知ってた、んだけど・・・」 「・・・そうだな、好きな相手の事は、だからこそ気付いちまう・・・。 ソイツが誰を見てるのか、気付きたくなくても自然と分かっちまうよな・・・。」 言いながら、一は小さな子供を優しく宥めるようにあたしの背中をゆっくりと撫でてくれた。 あたしの体が無意識に小刻みに震える。 鼻水を啜りながら、掠れる声であたしは続けた。 「うん・・・。分かってたのに・・・、でも、諦めきれなくて・・・・。 キヨの奴・・・南先生だけでなく・・・あたしにも・・・い、悪戯仕掛けてくるし・・・、 へ、変に・・・期待、したって言うか・・・。」 「・・・アイツは何だかんだ言ってお前の事も気に入ってたからな・・・。 なぁ、・・・こんな事言っても、お前は嬉しくねーかもしれないけど・・・、 清春は・・・お前の事も特別だと思ってんじゃねぇかな?」 「・・・・・・・・・・・・・・・え?」 一の言っている意味がイマイチ理解できなくて、 あたしは涙でぐしゃぐしゃの顔を咄嗟に上げて彼と視線を合わせた。 フッ、と、少しだけ一が瞳を細める。 「考えても見ろよ、 友情関係築いてたんだぜ?しかも、女のお前相手にだ。これってさ、十分スゲェことだと思わねぇ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・一・・・。」 「ま、こんなの、今のお前にとっては辛いだけの話かもしれねーけど。けど俺は、マジでそう思うぜ。」 そう言って、あたしの頭を撫でてくれる一の大きな掌がやけに温かく感じる。 トクベツ。 あたしの望んだ意味とは違うけど、それでも、 あたしはキヨにとって重要な位置に居ると言うことだろうか。 嫌われてはいないと思う。 そうだ、その自信はある。 だからこそ何処かで期待してしまってたのだから。 特別。 今はそれを喜べる心の余裕はないけど、でも。 「・・・・・・・・・・・・・ありがと、一・・・・。」 ヒィック。 大きく震える体、涙と鼻水で鼻声になるあたし。 一はとても優しい表情で少しだけ笑って見せると、あたしの顔を自分の胸に押し付けた。 「いや、いいよ。俺には、こんな事くらいしかしてやれねーし。」 「・・・・・・・・・・・あんただって、ショックだった筈なのに、・・・ご、ごめ・・・。」 「え?俺が?」 「南・・・先生・・・。」 「あ?ああー・・・そう言う意味か・・・。」 そうだ。 南先生を好きだったのはキヨだけじゃない。 先生は子供っぽい所もあるけど、優しいだけじゃなくて、強くて、いつでも体当たりで彼らにぶつかっていた。 だからこそ、皆に好意を持たれて居たのだ。 そしてそんな中、先生はキヨを選んだ。 きっと、南先生自身はアイツ以外の皆も自分を好きだったなんて知らないんだろうけど。 「は・・・マジで清春しか見えてなかったんだな・・・・・・・・・・・・。羨ましいぜ・・・。」 「え?」 「あ、いや、何でもねぇ・・・。」 独り言のように呟いた一が、そう言って苦笑した。 それからあたし達は暫くの間その場所で会話をして、 その間にあたしはまたしてもぼろぼろと不細工な泣き顔を一に晒してしまった訳だけど、 一はただ何も言わずにあたしに胸を貸してくれたのだった。 「・・・そろそろ戻んないと皆心配するわよね・・・。」 「んー、そうだな、目が赤いのもどうにか治ったみたいだし、行くか?」 言って、一がバカサイユに向かってゆっくりと歩き出す。 あたしはその後に続いて進みだしながら、彼の名前を呼んだ。 「・・・・・・・・・・・・一・・・。」 「何だ?」 「本当に・・・有難うね・・・。」 「なぁーんだよ、さっきっから。別に礼言われるようなことじゃねーって。だからそんな、気にすんな。」 くしゃり。 一の手があたしの髪に触れる。 やっぱり、大きくてあったかい、優しい手だと思った。 「それにさ、キッチリけじめつけねーと・・・進めねぇだろ?」 「え?進む?」 「そう、次の恋にさ。」 「次の・・・・・・・・・・。」 「いや、今はまだ・・・んなこと考える段階じゃねぇだろうけどな。」 ぽふぽふ。 軽く2.3度、あたしの頭を叩く、一の手。 「けどさ、時間が経って・・・お前の心の中で清春が過去になったその時は・・・俺も遠慮はしないぜ、。」 続けられた台詞は、呟くように小さなもので、あたしの耳には届かなかった。 それから聞き返してはみたんだけど、結局一は教えてくれなくて。 そしてその後あたし達はあたしと一がバカサイユを抜け出したいい訳を考える為に色々と頭を捻ったのだった。 空は泣きたくなるような目に痛い青空。 数時間前の失恋の痛みは勿論消えてなくて。 少しでも気が緩めば泣いてしまいそうな位に切ない。 しかもキヨの馬鹿は人の気も知らず、 ――――――――どーだ、オマエら!羨ましいーだロ? 先に言っとくけどなァ、オレ様の悠里に手ぇ出そうなんて考えンじゃねェーぞ! なんてわざわざ生で見せつけに来るもんだから、思わず本気で殴り飛ばしそうになった。 だけど一に思いっきり泣かせて貰ったおかげだろうか。 苦しくて、切なくて、どうしようもないやりきれない気持ちもあるにはあるけど。 それでも同時に、スッキリした気分でもあって。 卒業式、この校舎で過ごす最後の日。 キヨへの恋心からの卒業の、第一歩を、踏み出すことが出来た。 (END) あとがき
ら、ラスト、色々考えた挙句、まとまらなくて微妙なことにっ(涙)
この失恋ネタ自体は結構前に考えたものなんですけど・・・、 ラストどうやってまとめるつもりだったかをどうしても思い出せずにこんなことに。 ではでは、ここまでのお付き合い、誠に誠に有難うございます!失礼致します |