Sweet Jealousy「真田先生、この間はわざわざうちのクラスの面倒を見てくださって有難うございました!本当に助かりました。」 「へへっ、そうかなぁ?あ!じゃあさ、南先生、今度はこのプリントをクラスの奴らに配っておいてくれないかな?」 「え?これは・・・、わざわざクラスX用にプリントまで作って下さったんですか!?」 「うん、丁度手が空いてたし、おれも何かアイツらの事で力になれないかと思ってさ。」 「・・・真田先生・・・。ほ、本当に、有難うございます!」 放課後。 職員室前の廊下。 その日の日直で南先生に用事のあったあたしは、 よりによって真田先生と南先生が二人で会話をしている最中に出くわしてしまった。 よりによって。 マジでそんな感じ。 しかも、真田先生のあの全身の筋肉緩みきったみたいな笑顔。 いつもはスゴク可愛くて、見てるこっちまで気分が明るくなったりする笑顔なのに、 今は全くそう思えない。 逆にあたしの心を妙にざわざわとざわめかせた。 つまりアレだ、俗に言う、嫉妬というやつ。 だけど、あたしと真田先生が実は付き合っているというのは当然ながら秘密なわけで。 あたしは素知らぬ顔でいつもと同じように南先生に話しかけることしかできなかった。 だって、ここまで接近してるのに、このままUターンして教室に戻るほうが不自然すぎる。 正直なとこ、気分的にはなかりそうしたかったんだけど。 「南先生、お話し中失礼します。」 「あら、さん。あ、今日提出のプリント、まとめて持ってきてくれたのね。 ・・・えっと・・・・・・・・未提出者は・・・・・・、居る・・・?」 あたしの手にしているプリントの束に目を止めた南先生は、そう言って殆ど恐る恐る、あたしに訪ねた。 先生の言いたいことはわかってる。 奴らだ。 Class Xの問題児共・B6。 彼らがきちんとプリントを提出してくれたのかと暗に聞いているのだろう。 あたしは軽く首を左右に振ってから答えた。 「いませんよ。・・・真壁君と仙道君にはかなり手こずりましたけど、先生が少し期限を延ばしてくれてましたから、 どうにか説得して提出してもらいました。」 (この言葉は色々と大きく省略してるけど、実際は : どぐされボン真壁翼とどぐされ小悪魔キヨの奴は最後の最後までごねやがり、 メチャクチャあたしの手を煩わせた結果、最終的に口論の末、殆ど無理やり叩き伏せた。 因みに、二人以外のB6ともそれなりにひと悶着あり。・・・勿論、その際のあたしの被害は甚大だ。) あたしの言葉を聞いた南先生は、ホッとしたように口元を綻ばせる。 「そう、良かった・・・!さんが日直の時って提出率が良くて本当に助かるわ、有難う!」 「いいえ、・・・・・・・B6だから、とか言う意味分かんない理由で提出しないって言うのが許せなかっただけですんで。」 言って、あたしは小さく肩を竦めた。 最近B6の連中は南先生を信頼してきてるから、先生を困らせるような真似は余りしなくなってきている。 それでも、何の気まぐれか、たまに思い出したみたいに自己中発言をかましたりするんだけど、 それを許してやるほどあたしの心は寛大には出来てない訳だ。 結果、奴らから提出物をむしり取ることに成功することが多い。 「はははっ!B6の連中も、には敵わないんだな! お前が転校して来た初めの頃はアイツらと喧嘩してばっかみたいだったからどうなることかと思ったけど、 今じゃだけがクラスXの連中の中であの6人に真正面から物言えるんだから、大したもんだぜ!」 それまで黙ってあたしと南先生の会話を聞いていた真田先生が笑顔でそう言い、ぽんぽんとあたしの肩を軽く叩いた。 「有難うございます、真田先生。・・・・・・・、 じゃあ、南先生、あたしは日直の掃除と日誌があるんで、これで失礼しますね。 後、今日先生の補習を受けるゴロ・・・風門寺君ですけど、バカサイユで待ってるそうです。」 真田先生にわざと事務的な口調でお礼を言って、あたしは南先生へと視線を向ける。 南先生は頷いてあたしからプリントを受け取った。 「分かったわ。じゃあ・・・今日は日直一人になっちゃったけど、本当にお掃除まで頼んじゃっていいかな?さん。 もし良ければ私が手伝おうと思っているんだけど。」 「いえ、大丈夫です。それより風門寺君の所に行ってあげた方がいいと思います。・・・・本気で拗ねますから。 あ、じゃあ、あたしはこれで!」 言いざま、その場から離れるその瞬間まで、あたしは結局一度も真田先生と視線を合わすことが出来なかった。 これが子供っぽいヤキモチだってのは分かってる。 そんなの十分承知の上だ。 だけど、あたしは真田先生が南先生を好きだったことを知ってるから、 どうしても、心穏やかでは居られなかった。 「・・・・・・・・・・よし、日誌も書き終えた!」 そう独り言を呟いて、あたしは手元の日誌をパタンと閉じる。 後は職員室の南先生の机にこれを置いて帰るだけか。 ぼんやりそんなことを考えつつ、それでもすぐに立ち上がろうという気になれない。 本当は日直とは言え教室にも余り長居は出来ないんだけど。 コテンと頭を日誌の上に置き、あたしはそのまま小さく溜息を吐いた。 日直の仕事をしてる間も、そして今も、頭から離れないのは真田先生の笑顔。 正しくは、南先生に向けて笑いかけてる真田先生の図、だ。 そして、そのことを考えれば考えるほど、あたしのお腹の底からドス黒い感情が込み上げてくる。 あああー!もう!駄目だ、帰ろう!そうしよう! そしてようやくあたしが椅子から立ち上がりかけた、その時。 ―――ガラ 「お!じゃん!へへっ、やっぱお前まだ日直の仕事終わってなかったんだ?」 「さ・・・真田、先生・・・。」 何というか、これはもう、ベタベタなお約束か何かなのか。 それとも、こうやってその人の事ばっか考えてると妙な引力でも働いてしまうんだろうか。 唐突に開いた教室のドアから顔を見せたのは、他の誰でもない、 あたしが今一番顔を合わせたくない相手、真田先生だった。 「・・・・・・・日直の仕事はもう終わったんで、後は日誌を南先生のとこに置いて帰るだけです。」 「え!?マジで!?今日の日直の相方が居ないって聞いたからさ、 掃除とか手伝おうと思って来たんだけど。」 「・・・それはどうも。でももう終わってるんで大丈夫です。」 言いながら、あたしはさっきまでとは違い、速やかに帰り支度を整える。 その間に、真田先生はスタスタと速足であたしの机の傍まで来ていた。 「あのさ、・・・、何か機嫌悪くないか?」 「・・・・・・・・別に、いつも通りですけど。・・・じゃあ、あたし、帰ります。さよなら、真田先生。」 あたしは言いざま軽く頭を下げ、彼の隣りを通って教室のドアに向かおうとした。 「うぉ!ちょっと待てって、!」 「っ!」 呼び止められたと同時に、真田先生はあたしの腕を片手で掴む。 あたしは仕方なく、立ち止まるしかなかった。 「・・・・・・・・何・・・ですか?帰れないんですけど。教室さっさと出ないといけないんですよね?」 「ちゃん・・・、さっきから俺と目を合わせてくんないのは何で?」 「なっ・・・・・・・!?」 不意を突いて名前を呼ばれた上、今一番触れてほしくないことを質問されてしまい、 あたしは瞬間的に硬直してしまった。 真田先生はそんなあたしの様子をの覗き込むようにジッと観察している。 「さ、ささ、真田先生・・・!ここ、教室ですよ!?」 「分かってるって・・・。キミがおれの質問に答えてくれたら離すよ。」 「あ、・・・・あたしは別に・・・!」 「あ!目を逸らしたりしてないってのはなしだからな? 気のせいじゃないって確信があるからおれだって聞いてるんだぜ。・・・だから正直に答えてよ、ちゃん。」 そう口にする間も、真田先生の瞳はあたしを捕らえたままだ。 あたしは咄嗟に目を床に向けた。 それからすぐに、ぎゅ、と、あたしの腕を掴んだ真田先生の手に少しだけ力が込められる。 「・・・もしかして、何か悩み事とかあるんじゃないのか?おれはキミの担任じゃないし、 それに・・・その・・・プ・・・プライベートな面とか、色々・・・知られちゃってるから・・・、 頼りない教師だって思われてんのかもしれないけどさ・・・、 ・・・・・・・・・・おれは、・・・・学校以外でも勿論だけど、キミの学園生活にだって関わっていきたし、 ・・・・おれの出来る限り・・・キミの力になりたいんだ。」 「・・・・・・・・真田先生・・・。」 「さっきから機嫌悪いのかなって思ってたのもあるけど、ちゃん、元気なかったじゃん? だからちょっと心配になっちゃって・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 ちらりと視線を上げると、彼は本当に気遣わしげな表情であたしを見下ろしていた。 勝手に嫉妬して勝手に機嫌悪くなって、ツンケンした態度を取っていたのはあたしで、真田先生は全然悪くない。 しかも、そんなあたしを本気で心配してくれてる。 あたしはもう一度床に視線を落とした後、ふっと小さく溜息を吐いた。 何やってんだか、自分。 本気、そう思った。 「真田先生、ちがうんです。」 「え?」 「さっきの、あたしが・・・先生と視線合わせなかった理由・・・・・・。」 「じゃあ、何で・・・?」 真田先生にそう聞き返されて、あたしは少しだけ間を置いた後、心の中で軽く深呼吸をした。 それから、再度、口を開く。 「・・・・・・・・・・、真田先生が・・・・南先生と、あんまり楽しそうに喋ってるから・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫉妬、してました・・・・・・・・・・・・・。」 「ええっ!?って、それさっきおれが南先生にプリント渡した時のこと!?職員室の前の廊下で!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」 素直に返事をし、頷くあたし。 真田先生は本当に驚いてるようだった。 つまり、彼としては微塵もあたしが思ってたような気持ちはなかったってことで。 そう思うと、ほんの少し、嬉しかった。 とはいえ、今はそれより恥ずかしい方が勝ってるんだけど。 「け、けどあれは普通に生徒の話してただけで!その、マジでやましいことなんかないよ!?」 慌てたり焦ったりすると逆に怪しい場合もあるんだけど、真田先生の場合はそうじゃない。 殆どテンパり気味になりながらも、必死にあたしの抱いてる誤解を解こうとしてる感じだ。 「分かってるんですけど、・・・その、・・・・・・・・・・すみません。」 「え!?いや、キミが謝ることないよ。っつーか、うん・・・まぁ、楽しそうだったって言うのは間違ってないし・・・。」 「・・・・・・ええ!?そこ肯定しちゃうんですか!?」 「ああああああ!!違う、違う!!そういう意味じゃなくて!!」 そう言うと、声を上げて大慌てで否定する真田先生。 あたしはいつの間にか無意識に視線をじっと先生の目に向けていた。 「あのさ・・・、南先生のことは・・・その、おれはこの人のこと好きだったんだなって感じで・・・、 やっぱ今でも何か力になれればいいって思うよ。けど、それは恋愛感情とは違ってて、 ・・・・・・・・上手く言えないけど、・・・多分スゴク、友情に近いもんだと思う。だっておれ・・・・・・。」 そこで真田先生は一度言葉を切ると、あたしとしっかり視線を合わせなおした。 気のせいか、いつも子犬みたいな先生の顔がちゃんと大人の男の人に見える。 「だっておれ、今誰かに一番大事な、大好きな人は誰だって聞かれたら、 何の迷いもなくちゃんの名前、出せる自信あるし!!」 言って、真田先生はあたしの両肩をガシっと力強く掴んだ。 「・・・・・・・・・・真田先生。」 「だから、・・・安心してくれていいよ。」 彼はあたしのことを片手で軽く抱き寄せると、照れ笑いをしながらそう言った。 ここは教室内で、いつ他の先生が姿を見せるかわからない。 そう思ってはいても、あたしはその腕から離れることが出来なかった。 「・・・・・・・・・・へへっ、実はちょっと嬉しかったりするんだけどさ、ヤキモチ焼いてくれたこと。」 「・・・・え!?」 「うん!やっぱちゃんは可愛い!!マジで、すげー可愛いよ!!」 「ななっ、なんっ、何言ってんですか!」 さすがにこんなセリフを何度も繰り返されると恥ずかしすぎる。 あたしの体に回した腕を、真田先生がぎゅうっとさっきよりも力を込めて来たので、あたしはわざとじたばた暴れてやった。 そこで不意に、廊下の方から足音が聞こえてきて、あたし達はじゃれ合い止めると素早く体を離した。 慌ててた分、二人ともコントみたいな動きになってしまう。 「ってことでぇえええ!!は早く家に帰るようにな!!」 「はい、じゃ、じゃあ、さようなら!真田先生!」 あたしは真田先生に向かって軽く頭を下げ、教室のドアに一歩、足を踏み出した。 その時。 フッ。 と、ほんの一瞬、あたしの前に影が迫る。 それは勿論、真田先生なんだけど。 その一瞬。 唇を掠めるように、彼は触れるだけのキスをした。 「っっ!!!!」 「んじゃあ、また明日!!おれは見回りがあるから、は気をつけて帰れよ!」 へへっ。 悪戯っ子のような顔で笑いながらそう言うと、真田先生はあたしよりも先に教室を出て行ってしまった。 あたしは少しの間その場に突っ立って、それからようやくのろのろと教室を後にする。 口元が勝手に緩んでニヤケてしまうのは、これはあたしのせいじゃない。 だけどこのまま廊下に出るわけにもいかず、あたしはどうにかそれを我慢しようと努力した。 本当に、あたしも随分とヲトメになってしまったものだ。 教室に入って来た時とは裏腹に、教室を出るあたしの足取りは信じられないくらいに軽かった。 (END) あとがき
なんがあああああ!!・・・そして前回と言い、久々にビタ夢書くと真田先生(笑)
しかもヒロBと真田先生って初めて書きます。そしたらば、予想以上に長ったらしく・・・。 でも真田先生は誰(B6・T6両方含めて)と悠里がくっついても常に片思いしてそうなイメージがあったので(笑) というか、寧ろ私は真田先生にそんな位置を求めてたりします。いや、好きなんですけどね!! でも、あの片思いでもだもだしてる真田先生が特に好きなので(酷い) 今回はヒロBちょっと大人しめになったかな??と個人的に思ってます。 ではでは!!ここまでお付き合い下さった姫様、誠に誠に有難うございます!失礼いたします。 |