タイムリミット


「What?! 何故俺がそんな一般ショミンのようなジミーな真似をせねばならんのだ!?」
「はっはっは!!!そりゃあ翼お坊ちゃまが本日の日直だからにございますよ!!」
「フン、貴様は知らん様だから教えてやろう。
俺は今までただの一度も日直のシゴト等と言うジミーなシゴトはした事がない!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふ。」
「ん?何だ?驚きすぎて声も出んのか?そうだろう、
俺程Perfectな人間にそんなジミーな仕事は似合わん。」

この。

「せいぜい自分の合意を恥じてハンセイするんだな。」

こんの。
こんのおおおおおおお。
こんのドグサレ頭のつんつる脳みそめええええ!!!


―――バンッ!!


クックック、ハァーハッハッハ!
奴がいつもの嫌味でムカつく笑いをしようとするその一瞬前。
あたしは側にある机を勢い良く両の掌で叩いた。
ピタリ。
周囲のクラスメイトも含め、真壁翼の動きが停止する。

「どこっから・・・、一体どこからツッコメばいいのか分からん位に頭の悪い発言の数々をしておいて、
人をコケにした挙句、日直の仕事をやったことがない?
ふ、ざ、け、ん、な!!でございますよ、ドグサレ翼坊ちゃま!!」
「What!?転校生、またこの俺にそのようなプレイな事を!!」
「無礼だろうが!!つか、この際前の分もツッコンでやるけど、ジミーじゃなくて地味!
合意じゃなくて、行為!分かった!?」
「くっ、、貴様・・・毎回毎回人の上げ底を取りおって・・・!What a slob!」
                          (嫌な奴め!!)

真壁翼。
奴と会話していると最近凄く、思うことがある。
真剣に思うことがある。
それは。


コイツ、本当にただのバカなんだろうか?


と言うこと。



もしかしてハイレベルなお笑い芸人なんじゃないの?
っていうか、力抜けるんですけど!!


ツッコミどころが多すぎるだけじゃなく、マジで普通に笑いたくなってしまう。
見た目が見た目だけに、色んな意味でギャップがあり過ぎる。
もしかしてやっぱり狙ってやっているんだろうか。
だとしたら本当に本当にかなりの才能を持った芸人だ。

「・・・とにかく、是が非でもあんたには日直の仕事をして貰いますから。
・・・・・・・・・・・・・・それと、上げ底じゃなく上げ足だからね。」

いい加減ツッコミに疲れてスルーしようと思ったあたしだけど、結局ツッコンでしまう悲しい性。
このドグサレボンと会話をしていると、妙なスキルが身についてしまう。


ツッコミのスキル・・・い、要らなさすぎる!!!
その管轄は南先生だけの筈なのに!


「・・・フン、お前が何と言おうと俺はそんなことにキチョウな時間を費やすつもりなどない。
―――――――――――なが「はい、じゃあこれね。」

た。
と言う最後の文字を翼坊ちゃまが言い終えるより早く、私は奴に雑巾を押し付けた。
秘書の永田さんを呼びつけて彼に掃除をさせるつもりだろうなんてことは、予想しなくてもすぐ分かる。


いや・・・、っていうか、下手したらコイツ・・・。


「なっ!!!!こっ、この俺に象菌を持たせるとは!!」
「はいはい、もうツッコミ入れないから勝手にボケててよ。掃除に取り掛かるわよ。」
「ふざけるな!!俺はソウジなどせん!」
「いいえ、します、っていうか、しろ!!」
「フン、この俺に命令するなど100年早いわ!
・・・チッ仕方ない、そんなにこの教室をcleanにしたければ、俺が特別に業者を呼んでセイソウさせてやろう。」

言いながら、奴はついさっきあたしが奴の手に押し付けた雑巾をぺいっと床に叩きつけた。
このドグサレボンはどこまでもあたしの予想を裏切らない。
下手したら清掃業者を呼ぼうとしそうだ、なんて思った途端にこれだ。
本当に恐れ入る。
余りにも馬鹿すぎて。
余りにもど阿呆過ぎて。

「待っていろ、今すぐに永田に手配させてやる。有難く思うがいい。なが――――」
「ちょおっと待ったああっ!!!」
「・・・さっきから何なんだ!?お前は!?」
「それはこっちの台詞だっつのよ!どこの世界に日直の教室掃除を業者に任せる馬鹿が居る訳!?
ああ、居たか、ここに、超ド級の馬鹿が。ホンットマジでバカ!
いい?掃除はあたしとあんた、真壁翼とでやるの、お分かり!?」


ゼェハァ。
ゼェハァ。

息切れがしてきた。
本当ならもうとっくに掃除を済ませて日誌を書きだしている頃だ。
それなのに、最初の一歩すら踏み出せてない状況なんて。
明らかにコイツとの無駄過ぎる会話のせいだ。
勿論、だからと言って真壁の坊ちゃまを逃がしてやる気はさらさらない。
いつの間にかさっきまで周囲に居たクラスメイト達も教室から出て行ってしまっていた。
色々と真壁坊ちゃまを庇っていた女子たちも、あたしの勢いに負けて今日は大人しく帰ったようだ。
とは言え、そうなるまでに彼女たちともそれなりにバトったこともあったりするんだけど。

「フン、馬鹿馬鹿しい!俺は貴様と違ってヒマではない!帰るぞ、な「帰さないって言ってんでしょうが!!」

如何にも不機嫌な表情であたしの側から立ち去って行こうとする真壁。
あたしはその進路を塞ぐようにして奴の前に立った。
そしてズズイ、更に前へ進み出る。

「なんっ・・・!」
「いい!?真壁翼!あんたが何と言おうと今日と言う今日は日直の仕事をして貰うから!
クラス全員やってる事をB6だからとか言う意味不明の理由で許しやしないわよ、あたしは!」

そうだ、最終的にはB6の連中皆まとめて日直の日はやるべきことをやってもらう。
それにはまず、B6のリーダーだと言うコイツを抑え込むのが一番いい。
南先生ばかりに厄介事を押し付けても居られない。

「是が非でもやって貰う、もうクラスメイトも誰も残ってないし、あんたとあたしだけなんだから、
二人だけで掃除するしかないのよ。元々日直なんだから当然だけど、とにかく、
このまま暗くなって見回りの先生が来ても、あんたが首を横に振ろうが選択権は与えてやらないわ!」

そこまでまくしたてるように言った後、あたしは再度、
ゼェハァゼェハァと荒い息を整える為、少し間を置いた。
と、いつもならその間に頭の悪さ全開の反論をしてくる筈の真壁は、
何故か珍しく黙りこくっている。


まさか、まさかとは思うけど・・・、今回は聞き入れてくれる気になった・・・?


なんて正直あり得ないなんて思いつつ、万が一、億が一の確率に賭け、
あたしは真壁の反応を待った。
すると、奴は唐突にフッと瞳を細めて微笑を浮かべる。
同時に、真壁の眼鏡の奥の赤褐色の瞳が、いやに嬉しそうに輝いた。

「・・・真壁?」
「フッ・・・お前は転入当時からいやにこの俺に絡んで来るとは思っていたが、
まさかそんな理由だったとはな。いや・・・、これもこの俺がPerfectであるがユエか・・・。」
「はい???え?ちょっと、何言ってんの??・・・つか掃除!!」

急に奴に何が起こったのだろうか。
元から色々な意味で問題のあるドグサレボンではあったけど、今回ばかりは本当におかしすぎる。
お互いの会話に食い違いがある程度ならまだしも、次元が違うことを言っているんじゃないだろうか。
どちらにしろ、あたしには真壁の言っている意味が全く理解できない。
ナルシストになっても許される程度の容姿じゃあるにしろ、だからってこんないきなりぶっ飛ぶものだろうか。

「もしもーし??真壁??マジで戻って来てよ!掃除!」
「良かろう、転校生。いや、、お前にたった今からこの俺の隣に立つ事を許そう。」
「はい?はいいいい??????な、何?何言ってんの?マジで!」
「お前こそ、今更何を言っている?
俺をこの教室に閉じ込めてまで二人っきりになりたがったのはお前の方だろう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。え?」

あれ?
え?
え?
え??え??ええええええええ!!!???
えええええええええええええええええええええええええええええ!!!???


あたしの台詞の何をどうしてどうやって聞いていたらそんな結論に達するのだろうか。
いや、と言うか、未だにコイツの言っている意味が分からない。
分からないと言うか脳みそが追い付かない。
つまりあれだろうか、コイツは、あたしが真壁に告白したと、そう言いたいのだろうか。


どんな!!??どんな流れでそうなった訳!!??
いや、っていうかそんな流れなかったよね!?明らかにちっとも全然全くなかったよねえええ!!!??


「今まで口うるさい女だと思っていたが、中々可愛い所もあるじゃないか。そう思わないか?永田。」
「ええ、さようでございますね、翼様。」
「俺の隣に立つにはいざこざ不釣り合いな点も多いが、まぁ許してやれん事もない。」


いざこざじゃなくて、いささかだろうが!!!!
――――――じゃなくてえええええええええええ!!!
そうじゃなくてええええ、どんな展開よこれはあああ!!??


今までどうにか永田さんが姿を見せるのを阻止してきたあたしだけど、
この時ばかりはそんな悠長なことをしていられる余裕はなかった。
あたしが一人、パニくっている間も、意味不明な急激すぎる展開のまま、二人は話を進めて行く。

「仕方ないな、今回だけはの顔を立てて、掃除とやらをしてやるか。永田、お前も手伝え。」
「はい、翼様。」
、二人っきりとはいかんが、お前のノゾミ通り掃除をしてやろう。
帰りはこの俺自らお前を送り届けてやる。有難く思え。」

フッ、と、真壁はいやに嬉しそうな顔であたしを見つめて笑う。
どうやら奴は本気であたしが告ったと勘違いしているらしい。
いつの間にやら早々に呼び方まで変わっている始末。


どんな展開これ!?どんな!?え?ええ!?ええええ!?


狼狽えまくりつつ、テンパりつつ、視線だけで永田さんに助けを求めてみるあたし。
永田さんは今までの成り行きを全部見ていた人だ。
絶対に真壁の勘違いだって事に気付いている。
さすがにこんな勘違いを放置し続けるなんてことはしないだろう。
しないでほしい。
しないで下さい。
だけど、あたしの救世主様となる筈の永田さんは、あたしの視線に気付くとニッコリと笑ってこう言った。


さん、翼様を宜しくお願い致します。
さんならば、翼様をしっかりと支えて下さるかと。」
「!!!!!!!!!!!!!!」


永田さんの笑みが黒く見えたのはきっと気のせいじゃない。
気付いてる。
この人、絶対気付いてる。
だけど助けてくれないのは。

「・・・・・・・・・・・根に持ってません?あたしが永田さん登場シーン削ったから・・・。」
「ふふ、まさか、私は心から、お二人を祝福しているだけですよ?」
「いやいやいやいやいや!!あり得ないでしょ!!それ絶対あり得ないから!!」
「やはりさんは照れ屋さんでいらっしゃいますね。」

言って、永田さんが笑う。
混乱状態のあたしを前にして。
まったくちっとも助けてくれる様子もなく。


、さっさと掃除を終わらせて帰るぞ!」


あたしの背後から、真壁の声がした。
奴は最初と打って変わって掃除をやる気満々で。
それはつまり日直の仕事やってくれるってことだ。
こんなことは奇跡としか言えない位凄いことで。
だけど、そんなことよりも。
そうだ、そんなことよりも。


ちょっと待て。
これって、このまま行くと・・・。
もしかして、もしかしなくても、真壁とあたし・・・付き合うことになったり・・・する?


自分自身で導き出した答えに、呆然&パニックと言う複雑な状態に陥るあたし。
ヤバイまずいと思いつつも、悲しいかなあたしは素直に彼らと掃除を進める。


嗚呼神様!!
嗚呼神様!!


あたしはどうすればいいんですか!!!!???


手際の良い永田さんのおかげで、タイムリミットはもうすぐそこ。
せめて日誌をかく間に、何か逃げきる方法が見つかればいいと切実に思う。
だけどホントは分かってる。
逃げ出すなんて、不可能なこと。

(END)


あとがき

翼とヒロBだとこんな感じでしょうか(笑)
会話夢の「First battle! 」転校初日から結構日数経った後って設定です。
Vitamin夢久々書いたんですけど、翼が予想以上にお笑い要素強くて申し訳ないです。
何故か私の書く翼は方向性を間違った感じになります(苦笑)
ではでは、ここまでお付き合い下さった姫様に深く深く感謝しつつ、失礼致します